No.85225

~夢~再び、永遠の契り

千啓さん

簡単に言うと、再会編ですね。

2009-07-18 22:03:25 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:7033   閲覧ユーザー数:5121

~華琳side~

 

「美味しくないわね・・・・」

 

 

華琳は呟いた。

 

 

遠くからは、宴の喧騒が聞こえてくる。

 

 

今日で、三国同盟から六年。

 

 

今年は成都で記念の宴を開いていた。

 

 

六度目の三国同盟記念の宴。

 

 

そして・・・・・・、彼が・・・、一刀が消えてから六年の月日が経った。

 

 

「一刀、貴方は何時、此処に、魏に、私の隣に戻ってきてくれるの?」

 

 

 

華琳は、最愛の人と別れた場所で一人、杯を片手に天で輝く満月を眺めていた。

 

 

 

華琳は、”あの夢”を見てから、人が変ったように仕事に打ち込むようになった。

 

 

 

”人が変ったように”というのは少し違うかも知れない。

 

 

 

なぜなら、彼女は一刀が居なくなってからまったくと言っていいほど仕事をしなくなっていた。

 

 

 

いや、できなくなっていた。

 

 

 

それでも、魏の国がうまくいっていたのは華琳の腹心の部下たちの働きによるところが大きい。

 

 

 

だが、華琳は”あの夢”の後、覇王としての自分を取り戻し、政務に励んでいた。

 

 

 

彼女は前だけを見て、ここ数年を駆け抜けてきた。

 

 

 

だが、最近は国も豊かになり、それほど仕事がなくなってきてしまった。

 

 

 

そのせいで、華琳は物思いにふける時間ができてしまった。

 

 

 

考えるのはいつも一刀のこと。

 

 

 

今も、宴の最中に、賑やかに騒いでいる三国の武将たちを見ながら、

 

 

 

(ああ、ここに一刀がいたら、どんな顔をするだろう)

 

 

と、思っていたら、

 

 

雪蓮に、

 

 

「いつまで、たった一人の男のことを思い続けるつもり?そんな顔を隣でされていたら、せっかくのお酒が不味くなるわ!」

 

 

 

と、言われて、ついカッとなってつまらない言い合いをしてしまって、頭を冷やすと言って、此処まで来てしまった。

 

 

~一刀side~

 

 

「ふぅ~、今日はこれぐらいにしとくかな。」

 

 

一刀は日課の素振りを終えて、汗を拭った。

 

 

「戻って来てから、もう六年か・・・。

 長かったような、短かったような。」

 

 

一刀は、”あの夢”の後、勉強に、武術とあの世界に行く前の彼ではありえないほど真面目に研鑽を積んでいた。

 

 

今では、有名大学を卒業し、武術も師範から免許皆伝と言われ今は、じいちゃんの道場で剣術の師範代をしている。

 

 

彼は、暇さえあれば、あの世界の手がかりをさがして日本と中国を旅行していた。

 

 

しかし、手がかりは何も掴めないままだった。

 

 

手掛かりがあるとすれば、”あの夢”だけだった。

 

 

(あの声は誰だったんだろう?)

 

 

「考えてもしょうがないか・・・。

 よし!寝よう!」

 

 

その時、一刀の目の前に光の玉が現れた。

 

 

「なんだ?これ」

 

 

一刀は、それに手を伸ばして触れた。

 

 

その瞬間、まばゆい光が彼を包み込んで、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・・・、夢の中?」

 

 

「夢の中というのは、正しくはないわね。」

 

 

どこからか、あの声が聞こえてきた。

 

 

「じゃあ、ここは何処だ?」

 

 

「世界の狭間。正史と外史、外史と外史のあいだにある空間。」

 

 

「なるほどね。

 それで?何故、俺をここに連れてきた?」

 

 

「貴方が居た、三国志の世界に戻りたい?」

 

 

「戻れるのか!?」

 

 

「ええ、いくつかの条件が出てくるけれど、戻ることは可能よ。」

 

 

「条件・・・。その条件ってのはなんだ?」

 

 

「1つは、まず名前を変えてもらうわ。」

 

 

「それは何故?」

 

 

「少しでも世界に与える負担を減らすためよ。

 だから、あちらの世界に合わせた名前にしてもらうわ。」

 

 

「それはどんな名前でもいいのか?」

 

 

「かまわないわ。」

 

 

「わかった。それで、次は?」

 

 

「次は貴方だけでは無理な条件よ。」

 

 

「どうして?」

 

 

「あちらの世界から貴方のことを引っ張る何かがなければならないわ。

 だから、あちらの世界で貴方の事を強く思い、強く求める人が居なければならない。」

 

 

「それはどうすればいい?」

 

 

「私が、貴方と関係が深い人にアプローチするわ。」

 

 

「じゃあ、その人は・・・・」

 

 

「曹操。で、いいわね?」

 

 

「ああ!」

 

 

「あとは、あちらに行ってからしてもらわなければならない条件よ。」

 

 

「それは?」

 

 

「まずは、子を作りなさい。」

 

 

「ぶっ!そ・それは何故?」

 

 

一刀は、顔を真っ赤にして聞いた。

 

 

「貴方とあの世界の繋がりをより強くするため。」

 

 

「わかった。

 俺も華琳たちとの子供が見たいしな。」

 

 

「ふふふ、頑張りなさい。

 そして、もう一つもっとも大事な条件があるわ。」

 

 

急にキリっとした声色になった。

 

 

「その条件は?」

 

 

「ずっと、大切な人を愛し続けなさい。

 そして、愛され続けなさい。

 そうしなければ、貴方の存在は消えてしまうわ。」

 

 

「愛し続ける自信はあるが、

 愛され続けることができるかどうかは微妙だな。」

 

 

一刀は、苦笑いをしながら応えた。

 

 

「彼女たちに呆れられないように努力なさい。」

 

 

「ああ!」

 

 

「それじゃあ、私は曹操のところに行ってくるわ。

 貴方はここで愛する人の事を、曹操のことを思い浮かべて、呼びかけなさい。」

 

 

「わかった。」

 

 

(そろそろ戻らないとあの子たちが心配するわね。)

 

 

華琳が立ち上がって川辺から離れようとした時だった。

 

 

「この地から去った、貴女の思い人に再び逢いたいですか?」

 

 

「誰だ!?出てきなさい!」

 

 

華琳は、とっさに身構えていた。

 

 

「この地から去った、貴女の思い人に再び逢いたいですか?」

 

 

声は同じ質問を繰り返した。

 

 

さっきはよく聞こえなかったが、今度ははっきり聞こえた。

 

 

「へっ?それは・・・・一刀のこと?」

 

 

 

「この地から去った、貴女の思い人に再び逢いたいですか?」

 

 

「逢いたい!一刀に!」

 

 

「ならば、思いなさい。愛する人の事を。

 願いなさい。再び愛する人と生きる事を。」

 

 

 

 

 

 

 

「華琳に逢いたい。」

 

「一刀に逢いたい。」

 

 

「もう一度、華琳と話がしたい。」

 

「もう一度、一刀と笑いあいたい。」

 

 

「もう一度、華琳に触れたい。」

 

「もう一度、一刀と愛し合いたい。」

 

 

「もう一度、華琳と・・・・」

「もう一度、一刀と・・・・」

 

 

「「一緒に生きたい!!」」

 

 

「なっ!」

「きゃっ!」

 

二人が光に包まれていく・・・。

 

 

 

 

「うまくいったようね。

 ふふふ、あの二人はこれからどんな物語を紡いでいくのかしら?」

 

 

 

 

川辺で光が収束していく。

 

 

 

「な、なんだったんだ?」

「なんなのあの光は?」

 

 

二人は同時に口を開いた。

 

 

同時に、声の主であるお互いをみた。

 

 

「華琳・・・」

「一刀・・・」

 

 

 

 

「ねぇ、一刀。これは夢?」

 

 

しばらくの沈黙の後、華琳は、不安げな表情で聞いてきた。

 

 

「違うよ。俺はここにいる。」

 

一刀は、静かに、だけれどはっきりと答えた。

 

 

「一刀ぉぉ!」

 

華琳は、一刀に抱きついて嗚咽を漏らしていた。

 

「大丈夫だよ。華琳。

 俺はもう、消えたりしない。」

 

一刀は、華琳が泣き止むまで抱きしめていた。

 

 

 

 

 

ドンッ!

 

華琳は泣き止むと一刀のことを突き飛ばした。

 

 

「って!なにするんだ?華琳」

 

一刀は、尻もちをついたまま言った。

 

 

「一刀。貴方は一度、私との約束を破って天に帰ったわ。

 このことに関して何か弁解はあるかしら?」

 

 

華琳が、一刀のことを見下ろしながら言った。

 

 

「・・・・・ない。」

 

 

「なら、貴方に罰を与えるわ。」

 

 

「ああ。」

 

 

一刀は目を瞑った。

 

 

ちゅっ

 

唇に触れた柔らかい感触に一刀は目を開けた。

 

 

「貴方の命が尽きるその時まで私の隣にいなさい。

 それが貴方に与える罰よ。一刀。」

 

 

目の前に頬を赤く染めた華琳がいる。

 

 

「その罰、喜んで受けるよ華琳。」

 

一刀はお返しとばかりにキスをした。

 

 

「一刀。貴方の口から私に誓いをたてなさい。

 永遠に破ることのない絶対の誓いを。」

 

 

「わかったよ。華琳」

 

 

 

 

    「俺はこの身、この命尽きるまで、我が愛しの覇王にすべてを捧げる事をここに誓う」

 

 

     「愛しているよ。華琳!」

 

 

 

あとがき

 

 

 

ども、千啓です。

 

 

今回の作品は如何でしたでしょうか?

 

 

感想など頂けるとありがたいです。

 

 

前回から間が空いてしまい申し訳ないっす。

 

 

次回作も魏で書く予定ですが、もしかしたら呉か蜀の方に走ってしまうかも知れません。

 

 

ご容赦ください。

 

 

 


 
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