あれからどれくら時が経っただろう・・・。
あの時、あの世界で華琳に別れを告げてから・・・。
あの時の俺は、
(このまま消えてなくなってしまうのだろうか)
と、思っていた。
しかし、実際は、目が醒めれば見覚えのある天井があった。
フランチェスカに入学してからあの世界に行くまで毎日見ていた男子寮の天井だった。
「戻って、来たのか・・・・・・」
ポツリと呟いた。
ポタポタと、ベッドに雫が零れ落ちていく。
「ああ、どうしてあのまま消えなかったのだろう・・・・。」
俺の目から雫がどんどん零れていく。
「華琳・・・・」
どんなに涙を流しても、どんなに愛しい人の名を叫んでも、傷が癒される事はなかった。
戻って来てから、数日が経った。
俺は戻って来てからずっとあの世界のことばかり考えていた。
英雄たちと駆け抜けた過去の日々を。
だが、ある日、夢を見た・・・。
最初は華琳たちと笑っている、幸せなものだった。
しかし、それは突然消えてしまった。
(どうして!どうして、消えてしまうんだっ!)
そう思っていた時、どこからか声が聞こえた。
「今のあなたの姿を覇王が見たらなんというのかしらね?」
聞いたことのない女の声だった。
「目標もなければ、向上心もなく、過去にすがりついて生きているあなたを」
俺は何も言えなかった・・・・。
その通りだ、と思ったから。
(もし、華琳が今の俺を見たらきっと叱咤するだろう。
最悪、嫌われてしまうだろう。
俺は無意識に諦めていたのかもしれない。
あの世界に、華琳のもとに帰ることを・・・。)
「誰だか知らないけれど、ありがとう。俺に大切なことを思い出させてくれて。」
「ふふふ、急に男前になったわね。」
「えっ?そ、そんなことないですよ。
ところで、貴女は誰ですか?」
「ふふふ、ひ・み・つ」
「そうですか・・・。」
「そろそろ、あなたの目が醒めるわ。じゃ、またね?」
そこで、俺は目を醒ました。
(なんだったんだ?あれは?それに「また」って・・・・、まぁ、いいか。)
それからの俺は、ひたすらに努力をした。
あの世界で役に立ちそうなことはどんなことでも学んできた。
農業、為政、工業技術、等々本当に色んなことを・・・。
武術も田舎で道場をやっているじいちゃんに頼み込んだら、知り合いを紹介してくれた。
じいちゃん曰く、「現代の武人」らしい。
武術家ではないのか、と聞いたら、今の武術家がやってる武術なんぞただのスポーツ。とのこと。
そして、その人に実際あって、じいちゃんが言ったことの理由がわかった。
その人の気配とでも言うのか、そのようなものが、華琳や春蘭と似通ったもいのを感じた。
その人のもとで死にものぐるいで修業をした。
そんな日々を過ごしていたある日、夢にあの声が出てきた。
「彼の地の貴方の思い人が前のあなたのような状態でいます。
貴方はどうしたいですか?」
「逢いたい」
俺は即答した。
「夢の中だけで、たった一度だけでも?」
「もちろんだ。」
「そうですか・・・。愛の力は偉大ですね~~~。」
そこで視界がホワイトアウトした。
目が慣れてきて、最初に見たのは、小さな後姿だ。
その姿は覇王ではなく、年相応の少女だった。
彼女もまたおれと同じように迷っていた。
だから、少しだけ道を指し示してあげた。
最後に彼女に約束をした。
「必ず戻る」と。
それは俺自身の「決意」でもあった。
その夢から醒めてから、俺はさらに努力をした。
武術も勉強も・・・。
俺を突き動かすものそれは・・・・・
「いつか必ず彼女に、彼女たちに見合う男になって、自分の大切な人たちを守りたい」
そんな思いだった。
「待っててくれ、華琳。絶対に会いに行くから!」
~終~
あとがき
読んでいただき、ありがとうございます。
千啓と申します~。
厳しいご指摘から励ましの言葉まで、コメントいただけるととてもうれしいです。
これからもよろしくお願いいたします。
続きは書くつもりではいます。
Tweet |
|
|
57
|
0
|
追加するフォルダを選択
前作の一刀sideです。