第34話 ポケモン救出作戦
煙突山の単独調査も終わり、ついでにちゃっかりフエンジムにも勝利していたリクガはヒワマキシティへ向かっていた。
「ん、あそこにいるのはもしかして・・・」
その先でリクガは見覚えのある少女を発見する。
「やっぱりラカイだ!」
「リクガ!」
「久しぶり」
実のところ二人はあれから会っていなかった。
一応ポケナビでお互い情報のやりとりはしていたが実際はトウカシティで最初に出会って以来だ。
「こうして会うのもずいぶんね」
「ああ・・・ところでここで何をしているんだい?」
「何をって・・・みての通り特訓よ。
次のジム・・・ヒワマキジムに勝つためにね」
確かにポケモン達はお互いにお互いを相手にしている。
「ヌマクロー、アブソル、キノガッサ、ポワルン・・・そしてエアームドか。
みんなよく育てられているね」
「ありがとう。
ところで、どう?」
「え?」
ラカイはリクガにたいし挑戦的に笑う。
「わたしとバトルをしてみない?」
「いいね! やろう!」
そう返事をしてリクガもその体制に入る。
そのときだった。
「ピィィィィィィッ」
「なんだ!?」
突如ポケモンの鳴き声がこの道路に響いた。
二人は鳴き声の正体を探りに向かう。
「ここら辺から聞こえてきたわよね?」
「ああ・・・」
茂みにかくれてあたりの様子を探っているとリクガは遠目に見覚えのある格好の連中を見つけた。
「奴ら・・・アクア団だ!」
「アクア団・・・あいつらが!?」
「そうだ、にしてもあいつらこんなところで何を」
奴らに気づかれないよう移動してみると彼らの中心に何匹ものポケモンが檻に閉じこめられていた。
その中には縛られたトレーナーと、何個かモンスターボールも見える。
「ひどい、ポケモンを乱獲してトレーナーからもポケモンを奪おうとしているみたいだわ」
「アクア団といいマグマ団といい、まったくけしからん連中ばっかりだな!」
「え、もしかして戦ったことがあるの!?」
「ああ」
リクガは手短にマグマ団と戦ってきたことをラカイに話した。
「わたしは噂で聞いてただけだけど、タチ悪いわね」
「まったくその通りだよ。
よし、ここは共同で助け出そう」
「わかったわ。
早速ここは、わたしに任せて」
そう言ってキノガッサを出した。
「キッサ、きのこのほうし!」
きのこのほうしを浴びたアクア団をすりぬけ、まずは野生ポケモンの檻に向かった。
「にしてもすっごい効き目だな」
「檻、どうやって壊そうかしら・・・力ずくでやるほかにいい方法があればいいけど」
「鍵を奪うしかないね。
でもここで寝てる連中は誰も鍵を持っていないよ」
「いつの間に調べたのよ」
「持っている可能性があるのは幹部クラスだろうね。」
「幹部クラス・・・」
全員服装が統一されているためここで眠っているのは皆下っ端であろう。
「まずはそこで縛られてるトレーナーを解放しよう!
でてこいジュカイン!」
リクガが出したのはジュプトルが進化したジュカイン。
ここにくるまでの道で進化させていたのだ。
ジュカインはリーフブレードでトレーナー達を
縛っていた縄を誰一人傷つけることなく一瞬で切る。
解放されたトレーナーは口々にリクガとラカイに頼んだ。
「お願いします、ぼく達のポケモンを助けてください!」
「当然さ、な!」
「ええ!」
「勝手なことされちゃ、困るな」
「「!!」」
現れたのは、体格の大きいアクア団の男だった。
「誰だおまえは!」
「俺こそがアクア団幹部の一人、ウシオだ。」
ウシオ、と名乗った幹部の男はボールからナマズンとペリッパーを出した。
「さてと・・・ガキ二人でポケモン達を返すだの逃がすだのふざけたことをしようとしているみたいだが、無駄だぜ」
「ふざけたことしてるのは、あんた達でしょ!
犯罪なんていう生ゴミの袋に顔をつっこむようなこと
してるようなお馬鹿さん達!」
「そこの小娘は、特に二度と口利けないようにしてくれるわ!
ナマズン、とっしん!」
「ラグジー、こっちもとっしん攻撃!」
ラカイはラグジーを出してナマズンに対抗する。
リクガの方にも応援に駆けつけた数人の下っ端が襲いかかる。
「ラカイ、この雑魚軍団はボクに任せてくれ!」
「わかったわ」
「ちぃ! ペリッパーもいけ!」
「アル、お願い!」
ラカイはアブソルのアルを同時に繰り出した。
「ペリッパー、でんこうせっか!」
「こっちもでんこうせっかよ!」
このでんこうせっかのぶつかりあいはアルの方に軍配が上がった。
ウシオはナマズンにはかいこうせんを指示するが、それはラグジーのまもるで防御され反動の隙をつかれてアルのシャドーボールをまともに受ける。
「・・・さすがに強い!」
ジュカインで下っ端を取り押さえているリクガはちらりとラカイの方をみる。
幹部であるウシオの力も強いことはわかったが彼女はそれ以上にポケモンバトルが強い。
センリの娘と言われても、十分納得できるものだ。
「オラオラよそ見すんな!
トドクラー、れいとうビーム!」
「みきりからのギガドレイン!」
リクガもそれに劣らぬ戦いを見せる。
そんなことしているうちに、ラカイの方はとっくに決着が付いていた。
「おわったわね」
「ぐぅ・・・!」
ウシオは戦闘不能になったナマズンとペリッパーをさげる。
対するラグジーとアルはぜんぜん余裕そうだ。
「さて、あんたを警察に着きだしてやるわ」
「そうされてたまるかよ!!
今日はここで撤退だーっ!」
ウシオは持っていた手榴弾を地面にたたきつけた。
「え、きゃあ!」
「ラカイッ!」
あたりは爆発により生まれた煙幕に包まれる。
オオスバメを出して煙幕を払う。
「う、ごほっ!
ラカイ、大丈夫か!」
あの距離で手榴弾の爆発を浴びた彼女のことが気になり急いで払い視界を開こうとする。
やがて見えたのは、巨大なポケモンの影だった。
「あ・・・あれは!」
「ありがとう、ラグジー!」
「ラカイ! どうやら無事みたいだね」
「ええ、爆破直前でラグジーが守ってくれたんだ。
ちょうどそのとき・・・進化したの」
「ああ、すごく頼もしそうなラグラージだね。」
リクガもこのラグジーがミズゴロウだったころに父に代わって面倒をみていたことがあるため感慨深い気持ちになった。
「これからもその調子で自分の主人を守るんだよ」
「ラグゥ!」
いい子だね、とリクガはラグラージにほほえむ。
「ラカイ、君にも感謝しているよ。
この子をここまで立派に育ててくれてありがとう。」
「ううん、わたしはやって当然のことをしたまでよ。
あなただってこうして仲間になったポケモンと向き合い育ててきたんでしょう?
それとおんなじよ。」
「・・・そうか、そうだね」
ちらり、とリクガはジュカインをみた。
ジュカインは笑っているのをみてリクガもそれにつられる。
「さて・・・野生のポケモン達はみんな自然に帰ったとみていいのよね?」
「ああ。
人のポケモンも無事にトレーナー全員の手元に戻った。
これで今回のボク達の仕事は終わった」
気づけばすでに日が落ちかけている。
空が赤く染まっており、ポケモン達も先の戦いの疲れをいやすためくつろいでいる。
「バトルしてみたかったけど・・・次あったらにしないかい?」
「そうね、今日はわたしも疲れたもの」
今日はここで野宿することにしたらしい、いつの間にやらテントを用意していた。
「あなたはどうするの?」
「ボクはもう少し先へ進もうと思う」
「へぇ・・・ん?」
ラカイは草むらに誰かがいるのに気づく。
ひょっとしてさっき助けたトレーナーかと思ったがそこからでてきたのは以前出会った少年だった。
「誰かと思ったら、シグレくんだったの」
「あ・・・」
「シグレくん、どうしてここに?」
「・・・・」
「ラカイ、知り合い?」
「ちょっと道中であったことがあるの。」
「へぇ・・・ボクはリクガっていうんだ。
よろしく、シグレくん」
「・・・あ、うん」
リクガが差し出した手をびくつきながらも握り返す。
それをみたリクガはん?と首を傾げる。
「握手いやだった?」
「・・・いや・・・ぼくあの・・・人と話すことに、その・・・慣れてなくて」
「そうか。」
人見知りが激しいことに気づきリクガは優しく笑う。
「すみません・・・」
「気にすることはないさ、人と接するのが苦手なのは君だけじゃないから平気。
苦手なのに、握手してくれてありがとう」
「・・・」
リクガの言葉にシグレは安心した表情を見せる。
「あ、あの・・・短いけどぼくもういかなきゃ。」
「シグレくんも忙しいのね」
「・・・うん」
それじゃ、とだけ言ってシグレは去っていった。
「ちょっと不思議な子だね、彼」
「ええ」
「・・・ボクもそろそろ出発しなくちゃ。
それじゃまたあおう!」
「ばいばい、リクガ!」
リクガも次の町をめざしその場を去っていった。
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今回はクウヤのライバルであり仲間であり親友でもある、そんな二人の視点の話。