<第1話 末文より>
イア:…いやです
ルカ姫:え…
<Dear My Friends!第2期 第2話 命令としての友達>
(クリプトン王国 魔導研究棟 魔導研究室)
ルカ姫:え・・・えっと、あはは、それ自己紹介ですよね? “IAです”って。イアちゃんだもんね
イア:・・・・誤解が多いようなので、別の言葉にします
『拒否します』、『断ります』、『できません』、『No!』
イア:これでちゃんと解りましたか?
その部屋にいる全員が、冷や汗を垂らしていた。状況は最悪だったし、アペンドとテルが危惧していた事が、最悪の形で出てきてしまったのである。
ルカ姫は今にも泣きそうな顔をして、イアに怒鳴った!
ルカ姫:ちょっとあんた! クグツなんでしょ! 私がアナタの行動開始の命令を言ったんだから、ちゃんと従いなさい!!
イア:単なるクグツではないです。ご存じだと思いますが、
『魂と自我を持ったクグツ』
イア:です。ぶっちゃけ、“意志”を持っているんですよ
ルカ姫:う・・・・じゃ、じゃあ誰の命令なら従うって言うのよ!?
イアは部屋の周りをぐるっと見回してから、テルの所に歩いていき、ひざまずいた。
イア:あなたと、その隣の女性が、私のボディを錬成し、魂と自我を魂の世界から召還して定着させたマスターですね。私たち“生きるクグツ”は、言ってみれば“サーバント”です。そのマスターは当然私を召還した、この方とそっちの女性、のみです。すみませんが、マスターのお名前をお教えいただきたいです
テル:私は“テル”という魔導師だ
アペンド:私はこのテルの妻の“アペンド”です
イア:“テル様”に“アペンド様”ですね。了解しました。それではご命令をお願いいたします
テルもアペンドも困り果ててしまった。イアの言っている“従属関係”は、避けようがない事だった。ルカ姫の友達として作ったのだとしても、魂と自我を召還し、そのフィギュアの素材を使って体を作ったのだから、自分たちがマスターである事に間違いはない。
だが、このフィギュアを使った場合、フィギュアの持ち主は、今はルカ姫だったので、サーバント-マスターの関係抜きで、“フィギュアの持ち主であり起動の言葉をかけた人物”=“ルカ姫”を、マスターと認識するかとテル達は思っていたのだが、今回も普通にサーバント-マスターの関係が成り立ってしまったのだった。
二人はやむなく“奥の手”を使って、ルカ姫に従属させる事にした。
テル:あー、イアさん? それではマスターとして命令します。あの言葉をかけた“ルカ姫”の友達になりなさい
イア:え~・・・あ、申し訳ありませんでした。わかりました。命令ですからね。でも、マスターの警護に支障がない程度になりますが、それで宜しいですか?
テル:自我が入っているのだから、やむなしだな。それでいいよ
アペンド:なるべく“優しく”接しなさいよ
イア:了解しました。では、ルカ姫の所n
ルカ姫は、もう、涙の山が噴火寸前だった。
ルカ姫:う・・・・う・・・・うわーーーーーーーーーーん!!!!!!
そして噴火して、大泣きしてしまった!
カイト王:娘よ、どうしたんだ? せっかく友達も出来たのに…
ルカ姫:こんなの“友達”じゃない!!!!! “命令で友達”になっているなんて! しかも少し拒否気味だし! お父様関係で紹介された友達より非道いよ!!!
テル:悪かったとは思っているが、自我で拒否しているのなら、これしか方法がないし…
ルカ姫:追撃だよー! わーーーーーーん!!!!
イア:あの・・・・・・私はどうすればいいのですか?
アペンド:はぁ~、作ったとはいえ、こりゃ最悪の方向に向かっちゃったなぁ。唯一、向こうの物品が消えてくれただけ救いか…
ルカ姫:わーーーーーーーん! もうみんな知らない! だいっっっっっっっっきらい!
バタバタバタバタ!!!!
ルカ姫は大泣きしながら、鍵のかかった魔導研究室の扉をぶち破り、自分の部屋に帰ってしまったのだった。
ピコ:ありゃ~、また修理を頼まないと…
カイト王:娘よ!
テル:カイト王、メイコ王妃、ピコさん、すみませんが、ルカ姫の所にいって慰めて頂けませんか? 我々だと多分、火に油を注ぐと思うので…
アペンド:お願いします
カイト王:言わずもがなだ。行くぞ、妻よ! ピコよ!
メイコ王妃:そうですわね!
ピコ:全く困った姫様だ…
バタバタバタバタ!
こうして、4人の退室者が出てしまった魔導研究室は、閑散としてしまったのだった。
残ったメンツ、つまり、イア、テル、アペンド、リン、レン、ソニカで、とにかく状況を整理する事にした。
テル:参ったなぁ…、まさか想定していた最悪の事態になってしまったとは…
アペンド:ルカ姫、あの様子じゃ、当分へそが曲がった状態のままね
イア:あ、あの、私…すみませんでした、マスター…
テル:いや、これは我々に責任がある。君は悪くないよ
アペンド:そうね、仕方なかったとはいえ、さすがに“命令で友達”は、通用しなかったか…
イア:私が最初から好意的に友達になっていれば良かったのですね…
テル:しかし、君は誕生したばかりだったし、サーバント-マスターの関係が普通通りに行われていたのだから、こうなることは不可避だ
アペンド:とにかく、今の状態でイアちゃんが行っても、何の解決にもならないし…。今更“イアちゃんの本心が変わった”なんて、とってつけた作戦を作っても、さすがにダメよね…
テル:そうだな。あの年頃の女の子は、一度怒ると手が着けられないしな。やはり、古典的だが“時間の薬”で解決するしかないか…
アペンド:そうねぇ、時間を置いて、ルカ姫の怒りが収まった頃に、また考えましょうか
???:トントン、失礼します
その時、ドアが壊れていたので、口でノックの音を喋って入ってきた人物がいました。メイドのネルでした。
テル:? 何か用事ですか?
リン:今、ちょーーーっと、取り込み中なんだけど
ネル:いえ、こちらも少々急用なので…
レン:? どうしたんですか?
ネル:インタネ共和国のめぐみさんから、映像付きで連絡が入っているんです。今、待って貰っているので、すぐに通信室に来ていただけますか?
テル:? 裁判官のめぐみさんから?
アペンド:あの件はもう解決したはずですが…
確かに意外な人物からの連絡だった。先の事件の法廷は既に閉廷されて解決しており、特に連絡を受けるような事件も起こってないのである。
ネル:いや、それとは別件の、なんか凄く“重要”な事らしいのです
テル:わかった。すぐ行きます。とにかくここの全員で移動しよう
イア:あの、私も?
アペンド:作る時には隠蔽も考えたんだけど、さすがに裁判官くらいには伝えておかないと、後々怖い事になりそうだからね
イア:わかりました
ということで、ここの全員が、映像も受けられる通信室に移動したのでした。
(クリプトン王国 魔導研究棟 通信室)
魔導モニターには、インタネ共和国の通信室にいる、めぐみと学歩が映っていた。到着した一行は早速マイクを通して、めぐみと連絡を取り始めた。
めぐみ:皆さん、こんにちは
通信室の全員が挨拶をした。
アペンド:さて、今回の用事はなんなの? 前の件とは別の、もっと重要な事だと聞いているけど…
めぐみ:その前に2点ほど、先に質問してもいいか?
テル:あー、1つはわかっている。この娘の事だろ?
テルはイアの肩をポンと叩いた。
めぐみ:1つはそうだ。見かけない顔だが…
アペンド:ごめんなさいね。裁判官相手に黙っているのはまずいから正直に話すけど、またルカ姫が問題を作っちゃったのよ
めぐみ:またですか。完成版魔法陣はもうないわけだから、向こうの世界の物品が残っていたとか、そんな所でしょうね
テル:さすが裁判官、鋭いな。そういうわけで、その物品を使って作ったのが、このクグツの彼女だ
イア:イアと申します。同名のフィギュア、つまり人形に宿っている魂と自我を、フィギュアから作ったクグツに定着させることで、私は生まれました
めぐみ:つまり、召還したわけですか。まぁ、物品から新規の存在を錬成すれば、元の物品は無くなりますね。その件については解りました
めぐみもさすが手練れの裁判官である、飲み込みは滅茶苦茶早かったのだった。
アペンド:で、もう1つというのは?
めぐみ:これからの私の話は、“ルカ姫”にも聞いて貰いたいし、私の所に来るときも同行して貰いたいのだ。彼女には珍しいが、なんでこの場にいないのだ?
リン:あ~、その~
レン:イアさんの件でへそ曲げてしまって、自室に帰ってしまったんです。イアさんとの友達関係の事で、ちょっと色々あって…
正直、細かい事まで伝えていたら、めぐみの話が始まらないので、レンは簡略化してめぐみに話した。
めぐみ:…そうですか、困ったな・・・・・・。あのルカ姫ではすぐにここへ来るのは無理だと思うので、とにかく私の話を始めます。で、同意は無論取りますが、皆さんには私の所に来て貰いたいのです。その時、“かならず”、ルカ姫も同行して欲しいのですよ
テル:解りました。彼女も叱られた場所だから、あんまり好んで同行する場所ではないと思いますが、旅行そのものは好きですから、説得して、連れていきます
めぐみはちょっとホッとしたらしく、少し姿勢を緩めて、話を始める事にした。
めぐみ:有り難うございます。では話を始めます。まずカテゴリーですが、非常に重要な事になりそうな調査結果の事です
テル:? 調査結果?
めぐみは語り始めるページまで、書類をペラペラっとめくっていったのでした。
めぐみ:調査とは、“学歩がサムライに似ている”、と言うことです。前の事件でミクさんやルカさんが、少し語っていた事が気になって、実務の傍ら、ここの大図書館で調べたんです
アペンド:? 確かに彼女たちは、そう言ってましたが、“サムライ”は向こうの世界の・・・・・昔の剣士のような役職の名前らしいですし、格好が似ている事くらい、珍しくないのでは?
めぐみ:それ“だけ”なら、私も深いって調べません。しかし“学歩の故郷”の事まで掘り下げていった所で、雲行きが怪しくなってきたのです
レン:学歩さんの故郷?
学歩はインタネ共和国に住んでいるが、出身は違う異国だったのです。なので、インタネ共和国の人たちとは、基本的に違う出で立ちをしていたのです。
めぐみ:学歩の故郷の名前は『ヤマト』。小さい島国です
イア:ちょ! それって、私が向こうの世界で作られた国“日本”の昔の軍艦の名前ですよ!
めぐみ:! これは都合が良かったな、向こう出身の存在が、まだこっちにいてくれたのは、本当にラッキーだった。非常に重要な情報が獲られそうだ
イア:お役に立てそうで嬉しいです
めぐみ:うむ。実は、この『ヤマト国』というのを更に調べると、小さい街ですが、『アキバ』という所があったのですよ。学歩の出身地ではないし小さいから、学歩は知らなかったのですが
アペンド:!!!! ちょっとそれって、私とリンレンと学歩とルカ姫が、向こうの世界にいたときの街の“あだ名“ではないですか! 本当の名前は『秋葉原』だそうですが
イア:!!!! そこ・・・・私の元の姿の“フィギュア”が作られて売られていた“出身地”です!!!!
めぐみ:!!!! 全く持って、こんな偶然でラッキーな事が続いていいものか、怖くなってきたが、これは本当に助かった。イアさんとあなた達、そしてアキバを探訪したルカ姫の情報を元に、実際にコッチの世界の“アキバ”に同行して貰えれば、私が重要であると思っている事の真実が見えてきそうですよ
テル:その“重要”って、こっちにも“アキバ”がある事以外に、何かあるのか?
めぐみ:そう、つまり、『コッチの世界と向こうの世界には、何か“リンク”している重要なことが隠されている』そういう重要な事だ。向こうの世界に、“我々と対になっている対応人物が必ずいる”、だけではない、もっと密接なリンクがあるのではないか。そう言うことだ
テル:ふむ。それは面白そうだな
アペンド:向こうのアキバと、こっちのアキバ、向こうのヤマトと、こっちのヤマト。確かに偶然にしては出来過ぎている
めぐみ:そう言うことも含めて、あなた達と、イアさんとルカ姫にも来て貰って、全員で、ヤマト国のアキバに行ってみる事にしたいのだ。とにかく、私の所に来てくれるか?
テル:最初はどうかと思ったが、イアさんがこんなに重要な存在になるとは思ってなかったし、我々としても興味深い。是非、行かせて貰う
アペンド:ルカ姫を説得するから、ちょっと時間がかかるけど、大丈夫?
めぐみ:大丈夫だ。船舶とか旅の準備とか、こちらも色々準備がいるのでな。楽しみにしているぞ。ではな
ビュン!
通信室から映像と音声が消えると、中の全員がガヤガヤしだしたのでした。
テル:整理しておく。向かうメンバーは、ルカ姫、イアさん、私、アペンド、リン、レンだ。カイト王とメイコ王妃とピコは当然国務があるのでだめで、事情を知っているソニカは残って魔導研究室の管理をして置いて貰いたい
ソニカ:わかりました。その役と、こちらでの連絡受け取りは任せて下さい。カイト王とメイコ王妃とピコさんには、私から伝えておきます
テル:さて、我々の各自の準備は各自でしてもらうとして・・・・問題はルカ姫だな…
アペンド:私が何とかします
テル:すまんな、友達同士であり女性同士の方がやりやすいだろうし、頼む。では、各自、準備に取りかかってくれ
こうして、再び、重要な旅をすることになったのでした。ルカ姫、機嫌を直してくれると良いのですが…
(続く)
CAST
イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン
カイト王:KAITO
メイコ王妃:MEIKO
テルの助手ソニカ:SONiKA
家庭教師ピコ(ピコ):歌手音ピコ
メイド・ネル(ネル):亞北ネル
その他:エキストラの皆さん
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※今回からの新シリーズは、前作「Dear My Friends! ルカの受難」の続編です。ナンバリング的には2期になります。
現在ピアプロで連載投稿中の最新シリーズとなっております。
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第16作目の第2話です。
☆今回も1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。現在もピアプロに続きを連載投稿しており、完結しておりません。
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