(クリプトン王国 ルカ姫の部屋)
ミクもルカも帰って、手紙の公開も終わり、事件の後片づけも一段落付いた、そんなある日、ルカ姫は一番最初にアキバに行ったときに使っていた小袋をいじっていました。あの“おもちゃ買い取り店”で断られたときに、カウンターに中身をぶちまけて、買い取りをせがんだ時に使っていた、あの小袋である。勿論、中身はミクが来たときにザザっとひっかき集めて入れられたままだった。
ルカ姫:あーーーーーあ、ふぅ。今更だけど、中身のチェックでもしようかな。あのまま放って置いたままだから、換金できなかった金貨とかそんなものしか入ってないと思うけどね
ザララッ・・・・・
ルカ姫は小袋の紐をほどいて、テーブルの上に中身を全部取り出したのだった。中身はおおかた、金貨などあのままだったのだが、見慣れない物が1つ混じっていたのだった。
ルカ姫:んっ? なんか知らない物が1個ある・・・・・人形? あ、なんか店員が“フィギュア”とか言っていたヤツかな?
ルカ姫は“そのフィギュア”を摘んで、しげしげと色々な角度から眺めたのだった。
ルカ姫:知らない人形だなぁ。でも凄く精巧に出来ているな・・・・・・・・・あれ? こういうものって、もしかしてアペンドが言っていた…
『向こうの世界の物品』
ルカ姫:や・・・・やばい・・・・・ミクがひっかき集めたときに、カウンターにあったものも一緒に入れちゃったんだ…。あの事件のきっかけを作って、超怒られたばかりだってのに、まさか今回も私が…
その時、ルカ姫が摘んでいたフィギュアを頭越しに取り上げた“腕”が現れたのでした。
???:はぁ・・・・・・・またやってくれちゃったね、ルカ姫…
ルカ姫が冷や汗を垂らして振り向くと、そこにはアペンドがフィギュアを摘んで、同じく冷や汗を垂らして、困った顔をしていたのでした。
アペンド:姫・・・・またですか・・・・食事の連絡をしようと部屋に入ってみれば・・・・・
ルカ姫:ちょ! これは本当に不可抗力なの! ミクがアキバのお店でカウンターの私の物をかき集めて入れたときに、偶然入っちゃったものなの!
アペンド:そうですか・・・・それなら仕方ないけど・・・・・。しょうがない、テル達と相談して、この異世界の物品の処理を、一緒に考えましょう。というか、姫? もうこれ以上ないでしょうね・・・・
ルカ姫:もう、ほんと、ないよ! それしか向こうで関わった物、ないから!
アペンド:わかりました。では、みんなを集めて、会議しましょう。ルカ姫も同席してくださいね
ルカ姫:はい・・・・・すみません・・・・・
こうして、新たに見つかった、“ミク達の世界の物品”、の始末をどうするか、の会議が行われたのでした。
(クリプトン王国 会議室)
クリプトン王国内のミク達の事件の関係者として、ルカ姫、アペンド、テル、ソニカ、リン、レン、そして国の代表として、カイト王、メイコ王妃、更にルカ姫の執事的存在として、家庭教師のピコも同席していました。
テル:う~ん、今回もルカ姫が、やらかしてくれたんですね
ルカ姫:いや、だから、これは不可抗力なんだって!! 向こうの世界の店を出るとき、ミクがザラッっと荷物を集めて小袋に入れたときに、そのフィギュアが偶然混ざっていたんだよ~、信じてよ~
カイト王:テルとアペンドよ、娘を責めないで欲しいのだが…
メイコ王妃:私からもお願いします
テル:いや、すみません。また難題が湧き出てしまったので、つい、愚痴を漏らしてしまって…
アペンド:この会議では、この“混ざって残ってしまった向こうの世界の物品”をどうするか、の会議なので、すみませんでした
テルにもアペンドにも、別に悪意はなかったのである。ただ、あの大事件がようやく解決して一息つけた時に、また出てきたので、ついつい本音が出てしまったのである。そしてそれを重々理解していたからこそ、カイト王は王なのに丁重にお願いしたのでした。
カイト王:すまんな。私も協力するから、出来るだけ内密で穏便に願いたい
テル:善処します
ルカ姫:あの・・・・・・・また“完成版魔法陣”を作るのは、やっぱり・・・・・だめ?
ルカ姫以外全員:だめっ!
ルカ姫:(´・ω・`)
あの大事件の発端が未完成版の“ソレ”だったわけだから、さすがにその願いはルカ姫以外の全員が、はっきりと断ったのだった。こう言うところをうやむやにすると、後が面倒な物なのである。
アペンド:さ、さて、皆さん。この“向こうの世界の物品”は、この世界では唯一1個、これしかないわけで、あの魔法陣としての使用以外で、何かいい処分の仕方はないか、是非皆さんのご意見を聞きたいのです
テル:“単純なモノ”だと、盗まれた場合、魔法を使った錬金術による“組成分解”によって、再びあのような事件が生まれる可能性が高いから、出来ればそれ以外、ということだな…
ソニカ:インタネ共和国の統治下ですから、開発力に優れたアフスやフォーリナーに、情報を公開してしまって、なにか作ってもらった方がいいのでは…
テル:いや、この問題はこちら側の内々で、出来るだけ処理した方がいいだろう。できたモノについても、ミクさん達の世界のモノで作った事は、出来るなら隠した方がいい
リン:世の中、悪い人がいなくなった例はないですからね
レン:そうですね、出来た後なら、何とでも情報をかぶせられるしね
ピコ:賢明な判断です
アペンド:さて、どうしたものか…
その会話を冷静に聞いていたルカ姫だったが、同時に“その”物品もじっくり眺めてもいたのでした。そして1つ、皆に提案したのでした。
ルカ姫:あ、あの~、私の意見、聞いていただけますか?
アペンド:? ルカ姫のご意見ですか? 会議なんですから、無問題ですが
ルカ姫:あ、あのね、私、ミクさんとかルカさんとか、もう会えないけど、これからもずっと“素晴らしい友達”として心に留めておきたいと思っています。でもね、その・・・・・・ちょっと寂しいんですよね。あ、いや、執事のようなピコとか、無二の友達のアペンドとか、アペンドの旦那さんのテルさんとか、リンとかレンとかソニカさんとか、みんな友達だけど、その、『同年代の遊び友達』が欲しいと思っていたんです。でも、私、役職が“姫”だから、社交辞令でのつきあいばかりで…
カイト王:なんだ、アペンド以外で、そういう友達が欲しかったのか! なら今度私のツテで…
ルカ姫:お父様! そういうのじゃないんです! もっと、その…“~ちゃん”とか付けて呼び合える友達の事なんです!
アペンド:・・・・・・・つまり、この人間の姿をした“フィギュア”を、姫の友達にして欲しい・・・・と?
ルカ姫:そうです! ちょうどこのフィギュア、女の子みたいだし、年齢も私と同じ感じだし。アフスのミキさんも、ミリアムさんの魂を“ミキというクグツ”に定着させたわけだから、“向こうの世界の物品”なら、ソレくらい出来るでしょ?
テルはテーブルの上に置いてある“そのフィギュア”を手にとって、首に巻いてある“輪ゴム”に付いているタグを見てみることにしました。
テル:『惑星の調べ イアちゃん』、『USB接続でパソコンに繋ぐと歌う機能搭載!』、『球体関節による完全可動!』・・・・
アペンド:全くわからない単語のオンパレードですね。アナタ、わかる?
テル:正直、専門用語だと思う部分はわからないが、“名前がイア”、“歌う事ができる”、“可動する”、位はなんとかわかる。つまり、イアというこのフィギュアには、元々、歌唱と話術機能があり、無理なく動くことが出来る機能もある、そういうことだろう。ふむ。それなら、魔力を加える事で、ルカ姫の希望通り、『友達』を作る事はできるな
ルカ姫:!!!! やったぁ!
カイト王:良かったな、娘よ!
テル:・・・・ですが、『人間』を作ることは、当然出来ません。ミキのような“魂を持ったクグツ”止まりです。今では研究禁止にもなってますが、アフスの“人造人間”の研究機関の装置を使うことも出来ません。そもそも人間のパーツではないですからね。魂を持って自我を持つ人形の友達、それでもいいんですか? ルカ姫?
ルカ姫:だ、だって、人間を作ることが出来ないんだから、それでも凄いと思います…。魂も自我も持っている友達なら、大歓迎ですよ
アペンド:ふぅ…、えーなんかこっちだけで話を進めてしまって恐縮ですが、皆さん、“この処理方法”で宜しいですか?
カイト王:私は異議なし!
メイコ王妃:私もいいですわ
ソニカ:なんかアフスとかフォーリナーの研究機関のような気もしますが、いいと思います
リン:素敵だと思います!
レン:友達ができるなら、いいと思うよ
ピコ:私の仕事が楽n・・・・・・姫様の友達が出来るのですから、大歓迎です
アペンド:私も賛成だから、後はテルね
テル:問題ない。なにせ、向こうの世界の物品をいじれるのd・・・・・・・・えー、ごほん、大歓迎だ
ルカ姫:やーーーーーーーーーーーったぁ!!!!!!!!
テル:あ、ですが姫、その“自我と魂”は、このフィギュアに元々込められているモノを定着させて使いますから、正直、どういうキャラの“友達”が出来るかわかりませんよ。それだけは我々でもどうにもなりません。いいですか?
ルカ姫:OK OK OK OK OK!
テル:では、それに決定します。こちらで管理もしやすいですし、組成も変化できますから色々便利です
アペンド:それでは、このフィギュアを私とテルの魔導研究室に持って行きます。一応、情報の共有もありますから、全員ついてきて下さい
こうして会議室の全員が、魔導研究室に移動したのでした。
(魔導研究棟 魔導研究室)
今ではアペンドとテルとソニカのこの部屋も、キチンと整理されており、一時的な封鎖も解かれていたのでした。全員が部屋に入った後は、ドアが閉められ内鍵がかけられたのでした。
テル:一応の事はしておくことにします。それと“私の経験”として、『あの窓』もチェックを入れます
『あの窓』には、誰の気配もなく、問題は特になかったのでした。
アペンド:今回は問題ないようですね
テル:そうですね。では、フィギュアを魔法陣の描かれたテーブルへ置いてください
アペンドは、“モノを錬成する魔法陣”が描かれたテーブルの中央にフィギュアを置き、魔法陣内に他に物品がないことを確認した後、テルに合図を送ったのでした。
アペンド:アナタ、いいよ
テル:よし。では、“魂と自我を持ったクグツ”の錬成を開始します。皆は部屋の隅に待避していてください
テルとアペンド以外は、部屋の隅に移動し、しっかりと魔法陣を眺めていました。テルとアペンドは、魔法陣がプリントされている白い手袋を両手にして、魔法陣に両手を翳して、錬成呪文を唱え始めました。
テル:アルケム リアクト フィグラム
魔法陣のフィギュアが宙に浮き、ゆっくりと回転し始めた。
テル:デコンポ レコンスト
その言葉の後に、魔法陣のフィギュアは光の球体に変化し、グルグル高速回転し始めた。
テル:フィクス ソル エゴール
すると、フィギュアは元の姿に近いが、大きさがルカ姫に近い、等身大の女の子の姿に変化したのでした。ですが、まだ眼は閉じたままでした。
テル:オル! アグリーグ!
最後の錬成呪文が終わると、光の輝きが終わり、そのフィギュアと同じ服を着た“女の子”は、眼を閉じ。口を閉じた状態でゆっくりと魔法陣のテーブルに降りてきて、そして、テーブルに寝た状態で全ての行程が終わったのでした。
テル:はぁ・・・はぁ・・・。アペンド、精神エネルギーの補給有り難う。さ、さすがに錬成呪文は体に効くな
カイト王:テ、テル、これで終わりなのか?
テル:いえ、“開始の合図”がまだです。マスターになる“ルカ姫”、この“クグツの女の子”に、名前と、ルカ姫がマスターになる事を言葉で言い聞かせて下さい。それで終わりです
ルカ姫:は、はい!
ルカ姫はゆっくりと魔法陣の近くまで来て、そこに横になっている“クグツの女の子”に、話しかけたのでした。
ルカ姫:・・・・『イア』よ、汝のマスターになる“ルカ”である。その場から起きあがり、私の友達になりなさい!
すると、クグツの女の子は、ゆっくりと手を使って、上半身を起きあがらせ、そして、ルカ姫の方に顔を向け、初めて眼と口を開けたのでした。
ルカ姫:(ゴクッ…)
そして、遂に“初めての言葉”を口に出したのでした。
イア:・・・・・・・・・いやです
ルカ姫:え・・・・・・・・・・・・・・・・
(続く)
CAST
イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
カイト王:KAITO
メイコ王妃:MEIKO
テルの助手ソニカ:SONiKA
家庭教師ピコ(ピコ):歌手音ピコ
メイド・ネル(ネル):亞北ネル
メイド・ハク(ハク):弱音ハク
メイド・テト(テト):重音テト
その他:エキストラの皆さん
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※今回からの新シリーズは、前作「Dear My Friends! ルカの受難」の続編です。ナンバリング的には2期になります。
現在ピアプロで連載投稿中の最新シリーズとなっております。
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第16作目の第1話です。
☆前シリーズの続きで2期ですが、第1話とさせていただきます。
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