No.847989

真・恋姫†無双~司馬家の鬼才と浅学菲才な御遣いの奇録伝~3話

H108さん

ついに魏の面子とのご対面です。(時期が反董卓連合終了後なので、まだ風と稟はいません)

2016-05-16 14:21:49 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3562   閲覧ユーザー数:3303

陳留にそびえ立つ城の中、政務に取り掛かっている華琳の部屋に扉を軽く叩いた音が響く。

 

「華琳様、只今北郷が帰還しました。どうやら司馬懿を連れてくることに成功したようです」

 

ノックを声の主はどうやら秋蘭のようだ。

 

「そう。ならば今から皆を謁見の間へ集めてきて頂戴」

 

「御意。直ちに集合させて参ります」

 

秋蘭が部屋の前から去った後、華琳はただ一人薄い笑みを浮かべながら小さく呟く。

 

「……あれだけ訪ねても私や他の者の言うことに一切興味を示さなかった司馬懿を予定よりも早く連れてくるなんて……。一体、一刀は何をしたのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

陳留へたどり着いた一刀と司馬懿は馬から降りた後、すぐに城へと向かい、城門で出会った衛兵からすぐさま謁見の間へと進むようにと華琳からの伝言を伝えられる。

おそらく司馬懿を皆に紹介するつもりなのだろうと思った一刀は迷いなく司馬懿を連れて謁見の間へと到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間へ足を踏み入れた一刀と司馬懿。

目の前には玉座に腰掛けていた華琳、その傍に控えている曹操軍の重臣達。

常人には少しばかり窮屈そうな重い雰囲気の中、一刀が先に口を開いた。

 

「とりあえず司馬懿さんをここに連れてくることはできたよ、華琳」

 

「ご苦労様。下がっていいわよ」

 

華琳にそう言われた一刀はすぐに重臣が並んでいる左側の列へと並び、凪と隣り合わせとなった。

二人は喋らなかったものの、お互いを見て挨拶代わりとして小さく頷く。

 

「中央へ」

 

司馬懿は言われるがままに間の中央へと歩み、両膝を下げると同時に顔を下げる。

 

「面を上げなさい」

 

「……この度は我を登用して頂き、誠に感謝致します。改めまして、我が名は司馬懿。字を仲達。以後、宜しくお願い致します」

 

面を上げ、黙々と謝意と自己紹介を終えた司馬懿。

司馬懿と華琳の間に沈黙が続き、一刀や重臣達はそれを見守ることに徹していた。

しかし、一人の武将がその沈黙を破った。

 

「貴様、曹操様の御前だぞ!発言するならばその妙な仮面を取ったらどうだ、不敬者が!」

 

謁見の間に怒声が響き、司馬懿も思わず首を先ほどの声の主に視線を向ける。

激昂していた武将は長い黒髪と赤を基調とした衣服を着た女性。

その名を夏侯惇、真名は春蘭。

曹操軍最強の武官であり、魏武の大剣の異名を持つほどの実力者である。

 

「不敬とは心外なり。先の発言は、貴下に対するものである」

 

春蘭の気迫に怖じ気づかず、彼女の言い分に反論する司馬懿。

 

「な、なんだとぉ!貴様、誰に向かってそのような口を……!」

 

「よせ姉者。気持ちは分かるが、司馬懿の言うことにも一理ある」

 

司馬懿に向かって剣を引こうとした春蘭を両手で抑える秋蘭。

春蘭の暴走は日常茶番時だが、無論そのままに放っておくわけにもいかず、ほぼ毎回その猪突猛進な行動を制御する役目は秋蘭か一刀となっている。

 

「司馬懿といったな。姉の無礼は詫びるが、その仮面はどうにかしてもらえぬか?」

 

「…………」

 

秋蘭の要望に司馬懿は返事をせず、視線を華琳へと戻す。

先ほどのやり取りを見ていた華琳は威風堂々とした姿勢を変えず、

 

「そうね、春蘭と秋蘭の言う通り、その仮面は取ってもらおうかしら。別にその仮面が不愉快というわけではないのだけれど、あなたの素顔がどのようなのかこの目で見てみたいわ。ちなみに一刀は彼女の素顔はもう見たのかしら?」

 

「一応ね」

 

「そう。では改めて司馬懿、あなたの素顔を是非見せて頂戴」

 

覇王としての姿とは裏腹に、美少女愛好家でもある華琳は内心では司馬懿がどのような少女なのかを見るのが楽しみだった。

 

「承知」

 

なんの躊躇もなく、司馬懿はそのペスト医師似の仮面を外す。

そして露わになったのは感情のない目と白髪をもった少女の顔。

司馬懿の容態を見た華琳はじっくりと観察する。

 

「なるほど、これがあなたの素顔なのね。一刀、あなたはどう思うかしら?」

 

「え、俺!?そ、そうだな……可愛い……と俺は思うけど」

 

いきなり話を振られた一刀は一瞬どう答えればいいか困るが、動揺しても意味がないので素直な意見を口にする。

 

「…………」

 

一刀の意見はどうでもよかったのか、司馬懿は両膝立ちで顔を上げた体勢のまま華琳を凝視する。

華琳もこの謁見はそろそろ仕舞にするべきだと考えたのか、司馬懿に立ち上がるよう命令し、最後の質問を問いかける。

 

「では司馬仲達。あなたのその鬼才を、我が覇業のために使ってくれるかしら?」

 

「それが曹操様のお望みであれば」

 

今まで何度も自分からの誘いを断ってきたのに今回はなんの抵抗意思もなく、簡単に出仕を受け入れた。

華琳はその突然の変化に大きな違和感を覚え、どこか胡散臭いとも感じたが、詮索などは後で行えば良いと判断し、最後の段階へと移る。

 

「ならば私の事は華琳と呼ぶことを許可しましょう。あなたの真名を教えてくれるかしら?」

 

自らの命ほど大事な真名を司馬懿に預けた華琳。

本来ならばここで自分の真名を相手が呼ぶことを許す流れだ。

そう、本来なら。

司馬懿は立ち尽くしたまま、一言も喋ろうとしない。

 

「…………」

 

曹操軍の重臣達はこの行動に司馬懿が自分の真名を預ける事に不快に思ったのかと予想していたが、次の行動でその予想は大きく外れる事になる。

 

「……曹操様」

 

「……何かしら?もしかしていきなり真名を預けるのは嫌だったりするの?」

 

華琳も重臣達と同じ考えで司馬懿に問うが、

 

「……大変申し訳ないのですが、我が真名が何だったのかが、思い出せませぬ」

 

平然とした顔で司馬懿はとんでもない爆弾発言を口にする。

 

 

 

 

 

「「「「「「……はあああ!?」」」」」」」

 

 

このとんでもない一言で謁見の間が大騒ぎへと発展した。

 

 


 
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