張三姉妹を連れた一刀一行はある街へと辿り着き、宿を取った後それぞれに時を過ごしていた。
張三姉妹は街角で興行。
貂蝉も三姉妹に触発されたようで、三姉妹と別の場所で踊りを披露していた。
もっとも、貂蝉の周りには人っ子一人集まりはしなかったのだが・・・・・・
そして一刀はと言うと、
「・・・・・・ぐう」
この街にはきちんとした医者がいたので出番も無いだろうと、久方ぶりにゆっくりと惰眠を貪っていた。
ところで、張三姉妹の所には貂蝉と違って人だかりが出来ていたのだが、その中に不審な男が混じっていた。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
男は荒い息遣いといやらしい目線で三姉妹を見つめていたが、しばらくしてその場を立ち去った・・・・・・
日も暮れ、興行を終えた三姉妹は宿へと向かっていた。
「随分遅くなっちゃったね」
「しょうがないじゃない。ここの人達ノリが良かったから辞め時が難しかったし・・・・・・」
「まあ、その分稼げたから良しとしましょう」
雑談しながら帰路につく三姉妹に、路地裏から声がかけられた。
「お嬢さんたち、ちょっとこっちに来てくれないか?」
声の主は先程三姉妹の興行を見ていた不審な男だった。
「誰?」
「おや?俺の事をお忘れで?・・・・・・張宝ちゃん」
「「「!!」」」
三姉妹の顔が驚きに変わった。
男は手招きをしつつ、路地裏の奥へと歩いていく。
三姉妹は唾を飲み込み、自分達に降りかかるであろう災いを予見しながらもゆっくりと男の後を追っていくのであった・・・・・・
路地の行き止まりまでやってくると、男は三姉妹に向き直って口を開いた。
「まさかこんなところでお目にかかれるとは・・・・・・ついてるねえ」
「あんた誰?何でちぃ達の事・・・・・・」
「俺もあそこ・・・・・・黄巾の一員だったんだよ」
「「「・・・・・・」」」
「しっかし、よく逃げ延びてたもんだねえ」
「能書きはいいから要件を言いなさい」
「ふっ、そうだな」
人和の刺々しい言い方を気にした様子も見せず、男は言った。
「簡単な事だ。お前らが黄巾元首領、張三姉妹である事を黙っておいてやるかわりに、俺を満足させてもらいたいんだよ」
男は自分の下腹部を指差す。
「・・・・・・最低」
「下衆野郎」
「まさかこんな人間が、私達の追っかけにいたとはね・・・・・・」
「俺からすれば、あんな子供だましの舞台に騒ぐだけで満足してたやつらの方がどうかしてたと思うがね。それに俺はお前らの歌や踊りに惹かれて入ったわけじゃあない。略奪して楽に生きられたから黄巾党に入ったのさ。お前ら三姉妹に対してはいつか犯ってやろうとしか思ってなかったね。・・・・・・で?どうする?まあ、俺の言う事を聞かなければ捕まって死刑は免れないだろうがな」
「「「・・・・・・」」」
「そうだな。とりあえず脱いでもらおうか?」
三人は黙って男を睨みつける。
「さっさとしろよ。それとも死にたいのか?」
男の発言に、三人は体を震わせながら衣服に手をかけた。
その時一瞬、風が吹いたような気がした。
「ゆっくりでいいぜ。その方がそそられ・・・・・・ぐ!?」
男の体が硬直した。
怪訝な顔をして動きを止める三姉妹。
見ると、男の体に一本の長い鍼が刺さっていた。
「こ、これは・・・・・・体が・・・・・・動かな・・・・・・」
「五斗米道の闇技の一つ。拳法の世界では鶴嘴千本とも呼ばれているな」
三姉妹が振り向くと、そこには険しい顔つきの一刀の姿があった。
「ど、どうしてここに?」
「帰りが遅かったから迎えに来た。そしたら深刻な顔で路地に入って行くのが見えたからこっそりつけてきたんだ」
三姉妹の間をすり抜け、一刀は男の前に立った。
「医者として、人を傷つけるような真似はしたくないんだが・・・・・・外道を放置しておくわけにもいかないからな」
そう言うと、一刀は懐から鍼を取り出す。
「お、俺を・・・・・・どうする・・・・・・」
「すぐ分かる」
そう言うと、一刀は気を溜め始めた。
「ふぅぅ・・・・・・」
無言で気を溜め込む一刀。
その気にいつもの輝きは無く、闇のような黒き気が手に集まっていく。
そして、
「闇技!ダァァァァクネス!ニードルゥゥゥゥ!」
叫びながら男の首筋に鍼を打ち込んだ。
「ガッ・・・・・・」
鍼を刺され、黒き気に包まれた男は白目を向いて、仰向けに倒れた。
「し、死んだの?」
地和の言葉に一刀は首を横に振る。
「いいや。しかし次に起きた時、もう女を犯そうなんて考えは無くなっているだろう」
そう言うと、一刀は男に刺さっていた鍼を抜き、三姉妹に向き直った。
「一応確認しておこう。さっきの話は本当なんだな?」
「「「・・・・・・」」」
「沈黙は肯定とみなすぞ」
一刀は三姉妹に厳しい目線を向け、言葉を続けた。
「俺がさっき言った事を覚えてるな?外道は放置しておかないって・・・・・・」
「?」
「そりゃ覚えてるわよ。さっき言ったばっかりだし」
「・・・・・・」
天和、地和が頭上に疑問符を浮かべる中、人和は一人、深刻な表情で言った。
「その外道には、私達も入っているということですね」
「・・・・・・ああ」
「「ええ!?」」
そんな事を言われるとは予想もしていなかったのか、驚愕の表情を浮かべる天和と地和。
「黄巾党の活動がどれだけの被害をもたらしたか、首領だったお前達が知らないわけはあるまい」
「で、でもちぃ達はそんな事するつもりじゃなかったし・・・・・・」
「しかし実際に被害は出た。そしてお前達は自分達のやった事に責任を取らず、逃げた。俺はそれが許せない」
一刀は激発しそうな感情を抑え込むかのように拳を握り締め、歯軋りをした。
「・・・・・・私達をどうするつもりですか?」
「お前達は民達から大切なものを奪った。だからお前達の大切なもの・・・・・・その美声を奪わせてもらおうか」
一刀は鍼を手に、三姉妹にゆっくりと近付いていく。
「こ、来ないで・・・・・・」
「それ以上近寄らないでよ!」
「・・・・・・」
身を寄せ合い、恐怖に怯える三姉妹。
一刀がその手を振り上げた時、
「待って!ご主人様!!」
天より巨大な肉塊・・・・・・もとい貂蝉が舞い降り、一刀と三姉妹の間に割って入った。
「そこをどけ貂蝉」
「いいえ、どかないわん。ご主人様。あなたがやろうとしていることはただの自己満足。そんな事をしてもご主人様の気が晴れるだけで誰も救われない。責任を取った事になるかどうかもあやしいわん」
「自己満足・・・・・・そうかもしれない。だが、責任を取るというのは被害者が負った痛みを背負う事だ。俺はこのやり方が間違っているとは思わない。それとも貂蝉。お前に何か別の案があると言うのか?」
「いいえ。でも、ご主人様の雇い主ならどうかしらん?」
「・・・・・・華琳か」
「かの曹操孟徳なら、ご主人様のやり方よりも優れた方法を提示できるんじゃないかしらん?」
「・・・・・・つまりお前は、三姉妹の処遇を華琳に委ねろと言うのか?」
「ええ。もしもご主人様が自分のやり方を通そうと言うのなら、全力で阻止させてもらうわん」
一刀と貂蝉の間に重苦しい緊張感が漂う。
固唾を呑んで見守る三姉妹。
「・・・・・・分かった」
一刀は鍼をしまい、路地の出口へと歩き出す。
「・・・・・・止めてくれてありがとうよ」
貂蝉の横を通る時そう小声で呟き、いまだに怯える三姉妹の横を通り過ぎて一刀はその場を立ち去った。
ほっと息を吐き、三姉妹は口々に貂蝉にお礼を言った。
「あ、ありがとう」
「アンタが来てくれなかったらどうなってたか・・・・・・」
「本当にありがとうございました」
「お礼はいらないわん。第一、助かったかどうかはまだ分からないんだから」
「「「う・・・・・・」」」
「宿に戻りましょう。とは言っても、こんな事があったのだからすぐに街を出る事になるでしょうけど・・・・・・。それと言っておくけど、逃げ出そうとは思わないほうがいいわよ?」
「「「・・・・・・はい」」」
貂蝉に連れられ、その場を離れる三姉妹。
そして一刀一行は早々に荷物をまとめ
華琳の下へと急ぐのであった・・・・・・
ちなみに、路地裏に取り残された男であるが、彼が目を覚ましたのは翌日の朝だった。
起きた男はすぐさま辺りを見渡したが、当然そこには誰も居なかった。
怒りに燃える男は何が何でも三姉妹を探し出し、とても口には出せないような事をしてやろうと妄想した・・・・・・が、そこで違和感を覚えた。
下穿きをずらし、中を見ると自慢の息子(実際はそこまで立派ではない)がこれっぽっちも反応していなかったのだ。
まさかと思い、彼は自宅に帰って愛用の春画本を開いたが、やはり反応はない。
そう、一刀はあの一撃で彼の股間を再起不能にしてしまっていたのだ!
あまりのショックに茫然自失になってしまった男。
その後、借りてきた猫のようにおとなしくなった彼は、何をどう間違ったか街でも有名な兄貴の愛人の一人になったとか。
南無南無・・・・・・
どうも、アキナスです。
張三姉妹、色んな意味で間一髪でしたね。
もっとも貂蝉の言ったようにまだ安全圏に行ったわけではありませんが。
そして、何で私はこうもアッチのネタを入れてしまうのでしょうか?
では次回・・・・・・
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何やらひと悶着ありそうで・・・・・・