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Another Cord:Nines = 九番目の熾天使達 = 男女逆転篇 パート弐

Blazさん

という事で始まりました、男女逆転篇。

今回の終わりにメンバーの容姿とか現状とかを書いてますのでよろしくです


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2016-04-04 23:14:11 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:660   閲覧ユーザー数:598

男女逆転篇 パート弐

 

 

 

 

 

 

 

「―――どうやら、原因はコレみたいですね」

 

 

 

発端はある出来事からだった。

六課から胃薬一ダースを受け取った旅団は、それを管理する医療スタッフたちへと渡した。

その中にあった一つの小瓶。それが今回の事件の原因そのものだったのだ。

 

薬の入った瓶を整理する中で見つかったその小瓶はラベルが張られていなかったことから何らかの理由で紛れ込んだものだと思われてしまい、スタッフが中身を調べた。

短時間の内に毒性のものではないと判明したが、次の瞬間には彼らはあるトラブルに巻き込まれて調べるどころではなくなってしまう。

旅団メンバー主催による酒盛りが行われ、それに酔いつぶれたメンバーを介抱するべく彼らも駆り出されてしまったのだ。

 

しかも、その時に蒼崎が遊び半分である闇市から買ったお香を使ったことによってその場は更にカオスに。楽園内全域にお香の香りを広げないようにと各所の空調が全開で回っていたのだ。

 

 

 

「…で。その時になんかの原因でビンが倒れて…」

 

「中にあった粉が全部空調で運ばれた…と」

 

「喚起していたので一旦集まりはしたけど、粉が粒子だったから空調内や空調室とかに残って、それが再度広まっていった…約半日かけてね」

 

全ての始まり、グラウンドゼロにはもうその種たちが飛び去った跡の(ビン)しか残っていなかった。

それを拾い上げて語るディアーリーズは自分の胸に邪魔されながらも沈んだ表情でそれを見ていた。

 

「粉ってことは…俺たちは吸ってって事になるな」

 

「それに空調は楽園内全域に網の目で広がってる。拡散規模にも納得がいく」

 

「いずれにしても…もうここには空のビンしかありませんがね…」

 

気を落としてビンを握りしめるディアに、仕方がないと切り捨てるキリヤ。既に起こってしまった事を悲観していても状況に変化が訪れるわけではない。勿論、同情していないと言われればそれは嘘になる。彼女も同じく気が付けば巻き込まれていた一人なのだ。

だからといって納得していない、焦っているわけではない。冷静に今はこの状況をどうにかして元の体に戻ることだけを第一に考える。

 

 

「―――確かに空のビンだが…中はどうかな?」

 

「え………あッ………!」

 

キリヤの言葉に一瞬どういう意味なのか分からなかったディアだが、改めてビンを見た瞬間にその言葉の意味と僅かだが差し込んだ希望の光に表情を明るくした。

ビンの中を覗けば、そこに僅かだが粉末が残っていたのだ。

 

 

「粉末が少し残ってる!」

 

「これなら…!」

 

彼女たちの細い指一本に乗る程度しか残っていないが、それでも十分な量のサンプルだ。残り貴重なサンプルによろこぶ三人の顔はあかるくなり身も心も歓喜に揺れる。

 

「早速竜神丸さんの所に行きましょう!」

 

「分かってる。けど、慌てて落とすなよ」

 

これでやっとワクチンが出来ると喜ぶディアに同じく喜びながらも落ち着いて運ぶようにと促す。ココでそれを落としてしまえば、それこそ全てが終わるのだ。一時の喜びと慢心で気を緩めるのは戦いでも死を意味する。

ここでは物理的な死は意味を持たないが、この場合は彼女たちが永遠に元に戻らないかもしれないという未来的な事だ。

 

斯くにも、こうしてサンプルを手に入れられた三人は風で飛ばないように小瓶に蓋をして医療区画を後にする。

後はこれを竜神丸に届ければワクチンの開発は一層早く終わる。そうすれば元に戻れると目の前に照らされる希望の光に自然と足を急がせた彼女たちは真っ直ぐ向かう。

目的地は彼女のラボ。時間は惜しいと辺りの地獄絵図の中を走り抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方。

Falsig、miriと合流したBlazと刃は次の旅団ナンバーズの居る部屋の前に立っていた。

 

 

「……………」

 

 

だが、四人の顔色は悪く額に僅かだが汗がにじんでいる。

蛇睨みでもされたかのように硬直していた彼女たちは、その目の前にある扉の奥に居るメンバーの状態に息をのんでいた。

 

 

「………」

 

「…オイ。誰か行けよ」

 

喉の奥から絞り出した声で言うFalsig。だが他三人は揃って激しく首を横に振り拒絶する。

もし一歩でも動けば自分がその奥へ引き込まれて二度と帰ってこれないかもしれないという恐怖で動くことも前に進むこともできない。そもそも前に進めば二度と戻ってこれないという怯えに彼女たちの体は止められていたのだ。

 

 

「…なんで次がコイツなんだよ…」

 

「俺に言うな…」

 

別に嫌なら後回しにすればいいが、それだと被害を受ける人数も増えるだろう事と、どの道最後にはこの部屋も調べなければいけないというわけで、いわば必須事項までの時間が延びるか否かというだけの話になってしまう。

強迫観念ではないが、ある種強制的でもあるので、避けられることは難しい。

できるとするならば、それは竜神丸がワクチンを完成させた時だ。

 

「…で。誰が行く?」

 

「え、一人だけなの?」

 

「え」

 

「え」

 

Falsigのセリフに顔を合わせる三人。

そうした場合の結末は誰の目からも明らかすぎる。

 

 

兎も角。今は目の前の部屋の主―――ZEROの様子を見なければいけない

 

 

 

 

「…アイツ、寝てるハズだよな」

 

「いや…最近は起きてる…というかアイツ基本寝るって概念がないし…」

 

「単にエネルギー消費抑えるために寝るってことも偶にあるけどな…」

 

人外というよりある種の規格外であるZEROは睡眠の概念を持たない。しかし最近では人体に負荷をかけているのか、それとも何かのためにエネルギーを蓄えているのか。偶に地響きともいえるレベルのいびきをかいて寝ることもある。

その場合、寝起きは悪いというのはなく、単に何かを蓄えていたというだけで睡眠前と機嫌が変わらなかったりすることもよくあるのだ。

 

 

「…兎も角。それは置いといてだ。どの道俺たちはこの先に居るであろう魔物と対峙しなけれゃならない。それはどうやっても避けられないことだ」

 

「ホント…ドアがノブ式だったらよかったんですけどね…」

 

今更ドアを取り換えることはできないが、それでもそうであってほしかったと嘆く刃にmiriも同意してため息をつく。

 

「今更悲観しても仕方ねぇよ。こうなりゃしなば諸共で俺たち全員でこの先の魔境に突っ込むしかあるまい」

 

 

「―――というかよ。なんでFalsigは俺の肩に乗ってるんだよ」

 

現在、横一列に並んでいるのは背丈にあまり変化の見られないBlaz、刃、miriの三人。しかしただ一人幼少化してしまったFalsigは何気ない顔でBlazの背中から肩に捕まっていた。

さながら某携帯獣のようだが、こちらはこちらで体格相応の体重がかけられているので片方に錘を乗せられているのと同じだ。

 

「楽だから」

 

「いや楽だからじゃねぇから」

 

「んじゃあ…キャラを立てるため」

 

「今すぐに降りろ」

 

 

 

しかしZEROの部屋の前に立って約十分。四人は揃って向こう側に居る彼女の姿を拝みに行こうとはせず、むしろ恐怖で動けないという状態だ。

 

「…別に…ZEROだけ見に行かなくてもいいんじゃねぇか…? アイツだって多分その内出てくるだろうし…」

 

当然のことを言ってその場から早く離れたいmiri。他の面々もそれは同意見だが、刃はそれが避けられないとばかりに反論する。

 

「ですが、それが何かの原因でトラブルになれば大変なことです…今の私たちにとって些細なトラブルの芽も摘み取っておくべきです」

 

「…だからってなぁ…」

 

刃の言葉も分からなくもないが、感情的に行きたくないというのが彼女らの本音だ。

いくらそれが大事なことであっても、嫌なものは嫌であってそれを断らなければいけないという状態でもない。

中に居るのは人外上等の本物の魔物だ。しかも好戦的かつやや短気の傾向であればなおさら、もしかすれば帰ってこれないのかもしれない。

 

 

「…マジで行くのかよ」

 

「行かなきゃ…ダメなのか」

 

「行かなきゃ…ダメでしょ。私も本音では行きたくないですが仕事というなら納得するしかありません」

 

刃も本心は彼女らと同じだが、そこは義務感に割り切って向こう側に行くことを薦める。

行きたくないと未だぼやくBlazとmiriは内心を理解しているが、それでも行きたくはないといってうなだれているのも彼女らの本心なのだろう。ZEROに関わるとロクな事がない。

恐怖ではない経験が彼女たちにそう囁いていた。

 

「つってもなぁ…相手はZEROだろ? 女でも」

 

「女のZEROってどんな感じだって言われると…こー…なぁ」

 

「三角目と八重歯で全身傷だらけの…」

 

「三人とも妙に興味持ってません?」

 

 

この時、BlazとFalsigはカメラをもって撮影しようとしていた。

 

 

「…別に」

 

「女体化した姿を永遠に黒歴史にしてやろうとは思ってないよ」

 

「物理的に私も巻き込まれますのでやめてください」

 

いずれにしても全員が揃ってでも入りたくないという状態に変わりはなく、このまま立ち往生していては何の解決にも好転にもならない。

物理的に制裁されるの覚悟で挑もうとしている彼女らは置いておき、どうやって中を調べるかと思い悩んでいた刃。すると彼女が考える間もなく、事態は無理やりにでも動かされた。

 

 

 

「…すまんな。Blaz、Falsig」

 

「ん?」

 

「へ?」

 

 

 

刹那。細い脚がFalsigを背負ったBlazの背に当たり、力強く押し出される。

蹴りではない押し出すような勢いのせいで痛みはないが、不思議とその勢いに乗せられ抗えなくなってしまっている。

そうなってしまえば最後。彼女たちは前へと押し倒され、自動ドアの反応する範囲へと入ってしまう。

だが気付いた時にはもう遅く、二人の姿を捉えたセンサーは何事も無かったかのように自動ドアが開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――は?」

 

 

 

すると。そこには眩い銀色の髪をした少女がベッドの上で一人、しかも裸体のままで息を荒くしてうつ伏せになっており、しわになったベッドのシーツをつかんでもだえ苦しんでいた。

裸体の体は体力が消耗している所為か汗ばんで息も荒い。火照っている体からは激しく暴れていたせいか若干湯だってもいた。どうやら彼女らが入る前に色々となにかあったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「すみません。部屋を間違えました」」

 

 

だがやっぱり気まずいというかエロいので顔を赤面にした二人は直ぐに部屋から退出する。

 

 

「…オイ。そこの女二人」

 

「いや…女っていうか元男っていうか…」

 

 

「うるせぇ………くそっ…体が熱い…」

 

 

「………。」

 

何か言おうとはしているが、不調なのか顔色が優れず汗も嫌にびっしょりとしている。

まるで熱になってしまった時のようにふら付いている姿は二人から見ても心配に思えてしまう。

 

「ッ…」

 

 

「…なぁ…医務室に連れて行って…無理か。多分この騒ぎだし…」

 

「薬でもとってくりゃいいだろ。ほら、あの漢方とか」

 

「…ま。その気になればいいが…なぁ、ZERO?」

 

 

辛うじて中性的というべきなのだろう。

そんなスタイルを保っているZERO(CV川澄綾子)はもだえ苦しんでおりながらも獣のような眼を彼女ら二人に向けてくる。しかしその目も虚ろに近く焦点もそこまではっきりとしていない。

今の彼女は本当にどこか具合が悪いのだろう。

 

「…テメェらの仕業か」

 

「いや。俺たちだって被害者だ。正直、今すぐでもこの体を元に戻そうとしている」

 

「今竜神丸がワクチンの作成に入ってる。しばらくすりゃ直ぐにでも「今すぐ完成させろ…」………無理言うなよ」

 

体調不良のせいなのか、いつも以上に苛立っているZEROは早くその体から解放されたい一心の声で睨みつけている。息も絶え絶えというような姿は改めて考えれば珍しいことだ。

人外の典型例といえる彼女の体質から基本そういったことは考えられなかった。

男だった時でも膝をついたのはかつて二度だけ。いずれも団長クライシスが関連していることばかりだ。

 

 

「…嫌に焦ってるな。気分でも悪いのか?」

 

「………」

 

「ノーコメント…ってことは図星か。ま、見りゃ誰だって分かるか」

 

「うるせぇ…」

 

 

らしくないな、と様子をみながら呟いたBlazとFalsig。よく見れば彼女の体はなにかが蠢いているかのようにうねっている。音こそ聞き取れないほどだがその異様さは改めて見ると気持ち悪さよりも何か恐ろしさを感じられる。

 

「体内の環境変化に異常発生…ってとこだな」

 

「体内って…オラクルか?」

 

「かもしれねぇな。たぶん俺たちが女になった影響がこいつには流行り病か天然痘ウイルス並みの悪玉菌ってことなんだろ。俺たちは単なる花粉症レベルだがこいつにとっては…」

 

「んなワケ…!」

 

「なら今のお前の状態はどう説明するよ。その姿じゃロクな説明もできねぇだろ」

 

「ッ…!」

 

息も絶え絶えな状況で問題ないと言われても誰も納得は出来ない。それを無理に納得しろと言っているのと同じであることに変わりはなく、いつになくZEROは彼女らの言葉の攻撃を受け、言葉を返せなかった。

 

 

(…変に黙ってるのは体調のせいか…それとも…な)

 

「―――なら、これは要りませんかね」

 

「いやいやちょっと待ってやれよ。別にアイツだってそういう意味で言ったワケでもないんだしよ、Falsig」

 

「…いや。俺は何も言ってないぞ?」

 

「え。何言ってんだ。この部屋に居るの後は俺たち位しか…」

 

 

「ぶ、Blazさーん、うしろうしろ」

 

 

後ろから振り向くようにと呼びかける刃の言葉に気付いた二人は、そこに立っていた人物の姿を見て露骨に驚いた顔で固まってしまう。

そこにはまたも女性の姿に変化してしまった旅団メンバーの一人が立っていたのだ。

しかもその姿は一目見るだけで誰だか分かってしまい、彼女の正体を察せた彼女らは震えた声で訊ねた。

 

 

 

「―――が………ガルム?」

 

 

「…? ええ。私ですが、どうかしましたか二人とも」

 

 

一言で言うならば大和なでしこ。煌びやかな黒い髪が地面につくほど伸びており、肌色は滑らかな薄い色をしている。化粧でもしているのかと言われると本人はそのままだと言うが嘘にも思えてしまう。

そしてその肌を隠すように着物を着こみ帯を巻く。その姿は元が男であるということなど信じられないほど似合っていて、彼女自ら説明しなければ恐らく誰も信じないだろう。

斯くして。そんな姿となったガルム(CV 豊田めぐみ)は何事も無かったかのように首をかしげていた。

 

 

 

「お、俺たち以上に女に染まってる…」

 

「お前、性別覚えてるのかよ…」

 

「…ああ。この姿ですか? だからといって男物の着物を着るのもどうかと思ってたので…ここは思い切ってと。早苗から借りてきました」

 

「それアイツのなのか!?」

 

「ええ、むかし夏祭りとかで使ったらしくって」

 

「つかなんでそんなの持ってるんだよ…」

 

「………」

 

 

 

 

―――聞くなよ

 

 

 

 

 

無言の圧力はまるでそう言ってるかのようで見てくる視線は、彼女たちも悲痛な叫びのように見えてしまい、静まり返った室内の中で小さく涙か鼻水をすする音が聞こえた。

このままでは完全に自分たちが悪役になってしまうと感じたBlazは状況打開のために話を戻し、彼女が持っていたという物にスポットを当てる。

 

「そ、そういえばお前なに持ってきたんだ?」

 

「あ、ああそうだった。さっき話してたな…」

 

「………特別な鎮痛剤です。効果はありますが副作用として数分ほど体が動かないんです」

 

 

改めて彼女の手のひらにあったカプセル薬を見て頷くBlaz。

それがあれば目の前であえいでいるZEROは一応大人しくなり、動けないということである程度従わせることも可能だ。

 

「…なら。さっさとそれ飲ませようぜ。そうすりゃそこのエロ女はしばらく黙るんだろ?」

 

「そうですね。その間に服の一つでも着させないと、私たち全員が変態に思われてかないません」

 

「ッ…」

 

悲痛な顔で睨むZEROだが、今の彼女には体を動かしても暴れられる余裕はない。

加えてどの道、激痛から逃れる方法はそれしかない。何時間もその苦しさに苛立っていたZEROはそれが妥当であり、戻るまでの凌ぎであると思って無言ながらそれを受け入れた。

 

「…チッ」

 

「なぜ貴方がそこまで苦しんでいるのかはあえて聞かない事にしましょう。ですが、ワクチン完成まではしばらく大人しくしていてくださいね」

 

「完成したらすぐに寄越せ。それが条件だ」

 

「…そんな事いえる立場でもないんですが…ま、ここにいる四人の内、誰かが覚えていたら約束は果たしましょう。どの道、全員戻るのが目的なんですから」

 

 

小さな新しい水のペットボトルと共にカプセルを渡したガルム。振るえた手でそれを受け取ったZEROは間髪を入れずに薬を喉の奥へと押し込む。そこに更に水を流し込み、胃の中へと落ちて行った薬は彼女らが思っていたよりも早く、そして色濃く効果を現す。

今の今まで体中に響いていた痛みはまるでヒビが元に戻っていくかのように引いていく。だが、その直後に塞がったヒビの場所が膨れ上がり、やがて自分の体を覆いつくすように体中の感覚が失われていく。

 

「ッ…」

 

「…さて。これでZEROは移送可能になりました。何処に隠しておきます?」

 

「サラリとあとが怖いこと言うなよ」

 

「その場合はガルムさん一人に責任を押し付けますのでよろしく」

 

「…なんか女になってから腹黒くなってないか、コイツら」

 

 

女になったせいで女に染まってきているのだろうか。それとも元からなのだろうかと思いつつ動けないZEROに変わって裸体だった彼女に服を着せ、取り合えずは事なきを得る。

肝心のZEROは容赦なく体を触られ服を着せられたので若干不機嫌ではあるが、顔色は先ほどよりもよくなっていた。グレーを基調とした服と紺色のズボンを纏い、万が一という時に動けるような服装だ。

 

 

「意外と似合うじゃねぇか。ま、見た目がこうだもんな」

 

「………」

 

「ZEROの場合、女体化っていうより変化って言った方が正しく思えるな…なんか男にも見えるし」

 

「女男してるって感じですもんね」

 

「ケッ…人が動けねぇからって好き勝手言いやがって…」

 

「…ま。俺たちも聞きたい事とかはあるが…ここは無しにしようや」

 

 

miriの言葉でその場をまとめた彼女たちは次のメンバーの居る部屋へと足を向ける。

記憶が正しければ次に出会うのはokakaだ。

 

「Blaz、刃。あと誰が残ってる」

 

「うん…?」

 

Falsigの問いに顔を動きずらそうに向けると、覚えている限りの記憶を呼び起して残ったメンバーを一人ずつ思い出していく。

 

「…あと残ったのは…

 

Unknown

 

朱音

 

二百式

 

蒼崎

 

okaka

 

aws

 

げんぶ

 

朱雀

 

青竜…の九人か。団長とデルタは出かけてるし」

 

「miriさんはこの中の誰かと会いましたか?」

 

「いや。俺はお前ら以外は誰とも会ってないぞ」

 

 

残るメンバー全員が楽園内の個室に居ることは確かだ。

一部メンバーは各異世界に拠点を持つが、今日ばかりは酒盛りなどの影響で全員が帰れなかったのだ。

取りあえずも他のメンバーがいる部屋に向かうことに変わりはなく、早速次へと向かう彼女たちだった。

 

 

 

 

 

が。

 

 

 

 

 

 

刹那。何処からともなく何かが響く音がする。

 

 

「…? なんでしょコレ…」

 

「地響き…? まさか…」

 

気付いた刃とmiriは辺りを見回し、様子をうかがう。仮に地震であったとしても、それ自体ここではありえないことで構造と環境上から起こる事はないのだ。

であれば残る考えは一つ。

 

「…誰かが響かせてる…か。つっても誰がだ?」

 

「今の私たちは全員ある種のパワーダウンを起こしてますし…」

 

「だよなぁ…けどなんかコレ…」

 

変に嫌な予感がする。怯えではないが汗を滲ませるFalsigはBlazと顔を当たらないように反対側の方を見ていく。といっても彼女らがいるのは一本道なので基本片方を見れば双方で監視できてしまう。

 

「…地響きっつーか…なんか…機械の音っつーか…」

 

具体的な言葉に出来ないBlazは口を締めて黙り込んでしまう。上手く言葉にできず、どうすればいいのかと混乱してしまったのだ。だがそれは彼女らも同じこと。そして同じように感じていたのだ。自然が起こしたというよりも何か規則性に乗っ取ったような感覚。

例えるなら…

 

 

「…誰かが歩いてる…いや、動いてるか」

 

 

「けどこれって誰かっていうより何かって言った方が正しいですよ。まるで怪物です」

 

もしその考えが正しいなら実体は全長数十メートルの怪物のようなものがこの楽園内に居るという事だ。それも考えられないことだが、イレギュラーが紛れ込んだというのであれば話は別だ。

響いて来る音に警戒し臨戦態勢を取るBlazとmiri。刃は仮面ライダーになれず、ZEROは現在まともに動けない状態だ。Falsigは魔眼を持つが現在は生憎と武器を持ち合わせていない。場合によってはBlazの腰に下げられている銃を拝借するとは言っているがそれも非常時に限りだろう。

 

「…怪物…ね。怪物みたいな奴が、この時ねらって来たってか?」

 

「考えられん話でもないな。今の俺たちはこのザマだ」

 

「…特にお前がな。いい加減降りろよ」

 

「いや…思いのほか楽しいぞ」

 

「邪魔だっつーの!!」

 

肩に乗るFalsigと言い合いをするBlazに、そろそろ来るぞとmiriは声をかける。

音は段々と近くなっていてそれによって壁や地面から伝わる地響きも強くなっていき、音が強くなるにつれて心臓へと行き渡り鼓動を早くする。

もうすぐ。もうすぐ、敵と接触する。高まる高揚を抑え、冷静に対処しようと拳を強く握り、全身に力を込める。

正に眼前に来るであろう敵に応ずるために、彼女たちは武器を抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ん?」

 

 

脳裏に過る。それは現れた僅かな影への疑問だった。

 

―――あれは一体なんだ

 

うっすらと見える影は彼女らの予想を覆していた。鳴り響く音と気配から大型の怪物ではないかと予想していたが、見えて来た影の形はそうとは思えないものだった。

寧ろ、なんというべきだろうか。

あまりに小さく、それがこの地響きを起こしているのかと疑問に思えてしまう。

そして、それを起こしている者。それが怪物のように巨体ではない。化け物の典型例である四足歩行ではない。

霊長類などが得意とする二足歩行。しかもしっかりと地面を踏みしめ、向かってくる姿は完全に霊長類の頂点に立つ人類そのもの。

 

しかし、仮に人間だとしてもあれは一体なんなのかと疑問が残る。

 

 

 

確かなのは二つ

 

 

向かってきているのが人であること

 

 

そしてその向かってきているのが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この上ないほどゴリラな姿をした女(?)だからだ

しかも向かってくる顔は異常というほど恐ろしい顔で睨まれたらバジリスクのように死んでしまうのではないかと思えるほど。

鍛え抜かれた肉体は何処に女性の特徴である胸があるのだろうかと思えるほどの胸板で銃弾は軽くはじき返されるだろう。

四肢はどれも筋肉の塊でどれも丸太のように太く、そして筋肉が盛り付けられている。

 

 

そんな女性(??)が某殺戮ロボットよろしく&真っ青になるようなランニングフォームで接近しているとすれば、どう思うだろうか。

そんなこと、答えは一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。四人(ZEROは顔のみ)は奇声ともいえるほどの叫びをあげて全力疾走でその場から逃げ出す。

その中で最初にハッキリとした言葉はBlaz曰く「筋肉が服と知性をもって走ってくる」だった。

 

 

 

 

 

 

 

この時、彼女たちは知らなかった。今回の事件の原因である粉末に感染した人間は全員が全員、女性になるという訳ではないと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、楽園内某所。

そこにはBlazやディア、竜神丸たちとは違い残った面々が集まっていた。

だが全員というわけではない。約数名が未だ発見させず、何処かをさまよっているらしいのだ。

 

 

「…仮にそうであったとしても、まさかこれだけとはな…」

 

黒い髪を腰まで伸ばし左目には眼帯を付ける女性。

スタイルは整っており、着込んだ服からも引き締まった筋が見えている。

男らしくあればあるほど、女性らしい姿となる。それが、そうなってしまった二百式(CV植田佳奈)が思う最大の恥部だ。現にその場にいる四人(・・)の中では最も美貌のスタイルを持っている。

 

「集まったのはたったの四人…他のメンバーは何処にいるのか…」

 

「この場に集まったのが俺たちだけってなだけで他のメンバーも居るんじゃないか?」

 

金髪碧眼という原型が無いに等しい姿になってしまったのはokaka(CV早見沙織)

しかし雰囲気から辛うじて彼女であると理解してもらい、今は自分であると分かってもらえるために男の時に来ていた服を身にまとっている。

 

「けど、他の連中を誰一人として会ってないっつーか…一人も会えなかったぞ。どうなってんだ…?」

 

短髪のややボーイッシュなスタイルのaws(CV伊藤かな恵)は会話に割り込み、四人が一応は気にしていた疑問を口にする。

彼女たちは現在の場所に来るまでスタッフには遭遇したもののメンバーとは誰一人として出会ってなかったのだ。

これがもし他のグループから来たメンバーであれば事情あってのことと理解するが、生憎と彼女たち全員の場所がかなりの距離で離れているので、転移だのトラブルだのではない限りは彼女たちと会う事はない。

 

 

「…込み入った事情か…それとも我々とは別の場所に集まっているかだろう。アイツらとて極まった馬鹿ではない」

 

「じゃあ、他の皆さんは別の場所に居るという可能性があるわけと…」

 

腰まで伸びた銀色の髪を小さく揺らすのは朱雀(CV上坂すみれ) 彼女は女性というより少女のような身の丈でスタイルも三人と違いスレンダーだ。服装も部屋にあった普段よく来ているような男物を着ており、こちらも一目で彼女であると認識させるのが目的だ。

 

「アイツらの事だからな…恐らくそうだろう。一部冷静さのあるヤツも居るが、欠けている奴がこの組織には多い」

 

(そこディスるか…)

 

自分の所属する組織の欠点と言うべき場所を容赦なく言い放つことに頬をかくokaka。いくら事実であっても、そういった自虐行為をする時ではないと言いたいが、あまりに的確かつ否定できないことから言葉を返せなかった。

だか直後に二百式はそれに補正するように続ける。

 

「…だがこういった異常時には慣れている奴らだ。迅速…とまではいかなくても対策を講じているだろう」

 

「なら、当面の目的はどうするんだ?」

 

「まずは竜神丸のラボに向かう。アイツのことだ、主犯であるなしに関わらず何等かのアンチシステムを用意している筈だ。無ければ無理にでも出させる」

 

事の黒幕が誰にしても、こういった異常災害にはそれを専門にしている詳しい人間に当たるのが定石だ。人体に影響を与えるということから、それに詳しい人間。つまり竜神丸の名を挙げた二百式は彼女の居るラボへ向かうことに決めた。

他の三人もそれに同意し、いざ出発と部屋から出た次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――今度は彼女たちの叫びが、木霊することとなる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

現時点で判明している女体化した旅団メンバーのイメージ(ナンバー順)

その他メンバーの現状等

 

 

・クライシス

現在デルタと共に外出。事件中に帰還予定

 

・Unknown

楽園内に居るが行方不明

 

・デルタ

クライシスと共に外出。以下同様

 

・朱音

楽園内でUnknownと居るはずだが現在は不明

 

・二百式

黒髪のロング(腰まで)と眼帯。CV植田佳奈

 

・キリヤ

エメラルドのショート。スタイルはそこそこ。CV田村ゆかり

 

・miri

白髪ロング。グラマラス。ぶっちゃけあの人。CV大原さやか

 

・蒼崎夜深

楽園内に居るが現在不明

 

・okaka

金髪碧眼。原型がほとんど無いので男の時の服を着用。CV早見沙織

 

・ガルム

地面につくほどの長さの黒髪と露出の高い着物を着用。CV豊田めぐみ

 

・aws

こげ茶の短髪。服装はややボーイッシュ。CV伊藤かな恵

 

・竜神丸

銀色のロング(肩あたりまで)。服装はそのままだが、ふくよかな…CV進藤尚美

 

・ZERO

銀色のポニーテール。イメージとしては目つきの悪いリリィ。CV川澄綾子

 

・支配人

黒髪を首元の辺りで括っている。オッドアイが逆になっている。CV折笠富美子

 

・kaito

茶色のロングにウェーブをかけてる。それなりに現状を楽しんでる。CV加藤英美里

 

・げんぶ

楽園内に居るが現在行方不明…?

 

・ディアーリーズ

黒髪三つ編みのメイド服or小さなハット付きロングのゴスロリ。どちらでも。CV伊藤静

 

・Falsig

茶髪のツインテール。現在唯一のロリ枠。CV釘宮理恵

 

・ルカ

少しぼさぼさの黒髪ショート。某境界の主人公に近いが魔眼は使わん。CV坂本真綾

 

・Blaz

ラグナ子。以上スタイルはそこそこよし。CV佐藤利奈

 

・黒鉄刃

朱色のショート。メンバー内では二番目に背丈が低い。CV日高里菜

 

・青竜

楽園内に居るはずだが朱音と同じく不明。

 

・朱雀

銀ロング。スレンダーな体形で背丈は刃よりは高く、他の面々よりは低い。CV上坂すみれ

 

 


 
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