No.837572 英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版soranoさん 2016-03-16 00:27:34 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:860 閲覧ユーザー数:821 |
~旧校舎~
「やはり君達か……」
エステル達が旧校舎に突入するとギルバートが一人の女子生徒を人質に待ち構えていた。
「ギルバート……あんた!」
「おっと、それ以上は近づかないでくれたまえ。このお嬢さんを傷付けたくなかったらな。」
「い、いやっ……」
エステル達に警告をしたギルバートは女子生徒に銃を突きつけた。
(あ……!クローゼの後輩の……)
(フェンシング部に所属している子だったね……)
「いつもいつも君たちは僕の邪魔ばかりしてくれる……。だがッ!今度ばかりはそうはさせないッ!この娘を手土産に、僕は”結社”の階段を上り詰めるのだからねッ!」
「へ……!?」
「…………」
自分達を睨んで叫んだギルバートの言葉の意味がわからなかったエステルが首を傾げている中、銀は気配を完全に消して空間の中に溶け込むように消えた。
「どうやら”身喰らう蛇”は想像以上に巨大な組織らしい。今、リベールに来ているのもあくまで氷山の一角……。おそらくその影響力は大陸全土に及んでいるはずだ。フフ、さぞかし出世のしがいがあるに違いない。」
「なるほど……そういう発想もあるんだ。」
「何て言うか……いじましいまでの上昇志向ね。」
得意げに自分の未来予想図を語るギルバートの話を聞いたアネラスは目を丸くし、エステルは呆れた表情をしていた。
「黙りたまえッ!元々、リベールなんていう小国ごとき僕には狭すぎたのだッ!”身喰らう蛇”こそ僕が上り詰めるのに相応しい舞台ッ!君たちなどに邪魔はさせないッ!」
「まあ、せいぜい頑張ってと言いたいところだけど……。その子を掠ったところで出世の役には立たないと思うわよ?」
「フッ、どうやら君たちは何も知らないみたいだな……。この娘が、身分を隠したリベール王家の姫であることをッ!」
「だ、だから違うって言ってるじゃないですかぁ!」
エステルの忠告を否定したギルバートは得意げに叫ぶと、女子生徒は必死な様子で否定した。
「フッ……しらばっくれるのは止めたまえ。僕が聞いたところによると、その姫は細剣(レイピア)をよく使うそうだ。そして現在、フェンシング部の女生徒は君しかいないという……。ならば君以外にあり得まいッ!」
「そ、それって……」
ギルバートの話を聞いた女子生徒はギルバートが探している人物が誰であるかを悟ると信じられない表情をし
「はあ……何と言うか。」
「思い込み、ここに極まれりだね。」
「本当にお目出度い人だねぇ。」
エステルとヨシュアはそれぞれ呆れた表情でギルバートを見つめ、アネラスは苦笑していた。
「な、なんだその反応は……」
「あのねえ……。あんた、前にバレンヌ灯台で逮捕された時のことを覚えてないの?」
「わ、忘れるはずがないだろうッ!あの時のことを思い出すと今でも腸(はらわた)が煮えくり返るくらいだッ!」
「だったら僕たちに同行していた女子生徒のことも覚えていますよね?一応、面識もあったみたいですし。」
「……ああ、クローゼ君のことか。そういえば拘束した生徒の中には見かけなかったような……。………………………………。え”。」
ヨシュアの話を聞いたギルバートは自分が狙っていた人物が誰であるかをようやく悟ると表情を引き攣らせた。
「そういう事。灯台でもクローゼ、細剣を使っていたでしょ?」
「そういえば……。……い、いやッ!そんな馬鹿な事はありえない!ここまでやったのに無駄足だったなんてことは……」
「うーん……現実逃避を始めましたねぇ。」
「……哀れな。」
取り乱しているギルバートの様子を見たアネラスは苦笑し、クルツは憐みの表情でギルバートを見つめていた。
「だ、黙れッ!どの道、人質を取っている以上、僕が有利なのは同じことだッ!傷付けられたくなかったら全員、すぐに武装解除しろッ!」
「ひっ……」
一方ギルバートは逆ギレして、女子生徒に銃を突きつけて叫んだ。
(……なんか本気でぶっ飛ばしたくなってきたわね。)
(何とか隙を突ければ…………?そう言えば銀はどこに……?)
ギルバートをエステルはジト目で睨み、ヨシュアが銀が自分達と共にいない事に気づいたその時!
「ピューイ!」
「ぐあッ!」
突如ジークがギルバートに強襲し、突進されたギルバートは女子生徒を離して怯んだ!
「リチェル、こっちよ!」
「は、はいっ!」
そしてギルバートが女子生徒を離すと、女子生徒はエステル達の後ろに走って行った。
「ジーク……どうしてここに!?」
「もしかしてクローゼに頼まれたのかい?」
「ピューイ♪」
エステルとヨシュアの疑問に答えるかのように、ジークは嬉しそう鳴声で鳴き
「はは、これは参った。」
「スゴい!スゴすぎるよ!」
ジークの活躍にクルツは感心し、アネラスははしゃいだ。
「ば、馬鹿な……。そんな馬鹿なあああッ!?」
人質まで奪還された事にギルバートが手を何度も地面に叩きつけたその時!
「クク、茶番はここまでと言う事だ、三下。」
何と銀がギルバートの背後の空間から現れた!
「へ……」
そして銀の登場にギルバートが呆けたその時
「我が舞は夢幻、去り逝く者への手向け…………眠れ、銀(しろがね)の光に抱(いだ)かれ……縛!――――滅!!」
「グアアアアアア――――ッ!?」
銀はSクラフト―――幻月の舞でギルバートを戦闘不能にさせた!
「…………」
「い、一体いつの間に………」
「影のように現れ、影のように消え、狙った獲物は決して逃がさない………敵どころか私達にも悟られずに敵の背後を突くとはまさに噂通りの手腕だな……」
銀の奇襲にエステルは口をパクパクさせ、アネラスは信じられない表情をし、クルツは重々しい様子を纏って呟いて銀を見つめた。
「……あうあう……お、お願いします……。命ばかりはお助けを……」
「まったくもう……。いきなり卑屈にならないでよ。」
「自業自得というものだ。それでは協会規約に従い、君の身を拘束させて―――」
「それは困っちゃうなあ。」
土下座をして命乞いを始めたギルバートの様子にエステルは呆れた表情で溜息を吐き、クルツがギルバートを拘束しようと行動し始めたその時なんとカンパネルラがエステル達の前に現れた!カンパネルラが登場すると、エステル達は警戒して後退した。
「あ、あんた……!」
「廃坑に現れた……!」
「……カンパネルラか。」
「ウフフ、ごきげんよう。君たちが学園に突入するあたりから見物させてもらったけど……。いや~、これが面白いの何のって!まさかあのタイミングで飛び入りの役者が登場するとはねぇ。」
「ピュイ?」
カンパネルラに視線を向けられたジークは首を傾げ
「ウフフ、飛び入りの役者と言えば君もそうだねぇ?彼女達と共に君が学園に突入する所を見た時は本当に驚いたよ♪君がリベール入りしている理由や君と彼女達は水と油同士の関係なのに、何故彼女達に力を貸したのか凄く気になるねぇ?」
「クク、私がリベール入りをして遊撃士共に力を貸した理由はお前達でも絶対に予想できないとだけ言っておく。」
興味ありげな様子のカンパネルラに視線を向けられた銀は口元に笑みを浮かべて答えた。
「カ、カンパネルラ様……。助けに来てくれたんですね?」
その時ギルバートはカンパネルラが救援に来たと思い、明るい表情でカンパネルラに問いかけたが
「……ねえ、ギルバード君。僕、王家の姫君を掠えなんて命令した覚えないんだけどなぁ?」
「ッ……」
カンパネルラの静かな問いかけに息を呑んで黙り込んだ。
「そりゃあ、現場には現場の判断があるからね。あんまり細かいことを言うつもりはないんだけどさ。……でも、それで失敗したら意味ないよね?」
「ひっ……ひいッ……」
カンパネルラの冷笑を見たギルバードが後ずさったその時カンパネルラは指を鳴らした!すると炎がギルバートを包んだ!
「ひああああッ……!?」
「な、なんなの!?」
「炎(フレイム)の舌(タン)……。ルシオラが使うのと同じ攻性幻術の一種か。」
「うふふ、さすがに彼女ほど上手くはないけどね。でも、これくらいなら操れる。」
突然の出来事に驚いているエステルの疑問に答えたヨシュアの推測にカンパネルラが答えると、炎の勢いがさらに増し、ギルバートを吹き上げた!
「うわあああああああッ!!!?」
「ま、ギルバート君の道化っぷりもなかなか愉しませてもらったし。今回だけは死なない程度のお仕置きで勘弁してあげようかな。」
「……ううう………」
カンパネルラが幻術を中断した事で地面に落ちたギルバートが呻いたその時、カンパネルラとギルバートは炎に包まれて消えようとした。
「ちょ、ちょっと!?」
「ま、また逃げるの!?」
「あはは、まあ今回は申し訳なかったと謝っておくよ。今後、”結社”がこの学園に手出しすることはないと誓おう。それでは皆様―――お騒がせさま。」
エステルとアネラスに睨まれたカンパネルラは笑いながら謝罪した後、ギルバートと共に炎に包まれて消えた。
「ま、また……」
「逃げられちゃったねぇ……」
「今回は人質も助かったことだし、仕方がないでしょう。」
「”道化師カンパネルラ”……何とも得体の知れない少年だな。」
「……”結社”とやらにはどうやら予想以上の化物共が揃っているようだな。」
カンパネルラを逃がした事にエステルとアネラスが残念がっている中、ヨシュアは静かな表情で呟き、クルツと銀は重々しい様子を纏って呟いた。
「ええ……そうですね。ですが、彼の約束はある程度信用できると思います。」
「そうか……」
「まあ、心残りはあるけど……。これで一応、一件落着と言っていいのかな?」
「うん、いいんじゃないかな?」
「ピュイ♪」
エステルの言葉にアネラスとジークが頷いたその時
「―――どうやら共闘はここまでのようだな。」
銀はエステル達に背を向けた。
「銀……一つだけ聞きたい。”依頼人”からの”依頼”はまだ続いているのか?」
「無論だ。今回の依頼は特殊な依頼だが、”依頼人”の金払いはよくてな。少なくても”依頼人”が満足できる働きをしなくては”銀”の名折れだ。」
ヨシュアの質問に銀は口元に笑みを浮かべて答え
「金払いは良いって……レンちゃ―――ううん、”依頼人”は一体幾ら貴方に支払ったんですか?」
「――――10億ミラだ。」
「じゅ、10億ミラ~~~~!?」
「……レナさんの護衛をしている”西風の旅団”の猟兵達に支払った報酬の3倍以上か……それ程の莫大な報酬を支払ってまで”彼女”は君に一体何をさせようとしているのだ……?」
アネラスの質問に答えた銀の答えを聞いたエステルは驚き、クルツは重々しい様子を纏って呟いた後真剣な表情で銀に問いかけ
「クク、少なくてもお前達遊撃士協会の規約に違反するような内容の依頼はされていないから安心するがいい。」
銀は口元に笑みを浮かべて答えた後出入り口に向かって進み始めた。
「あ、待って!」
「……何だ?」
するとその時エステルが銀を呼び止めた。
「えっと……お母さんを結社の猟兵達から守ってくれてありがとう!例え守ってくれた人達が猟兵や暗殺者でも、あたし達にとって大切なお母さんを守ってくれた事に関しては感謝しているわ!」
「……それに関しては僕も感謝している。僕の第二の家族を守ってくれて、本当にありがとう。」
「ふふっ、暗殺者に感謝するとはおかしな者達だ。――――さらばだ。」
エステルとヨシュアに感謝された銀は静かな笑みを浮かべて呟いた後その場から去った。
こうして強化猟兵たちによる学園占拠事件は幕を閉じた。王国軍が到着した頃には学園の内外にいた猟兵たちはことごとく撤退してしまい……学園長やジルたちの働きによって生徒の動揺も収まっていった。
銀のSCでの出番はこれで終わり……と思いきや、実はまだ出番があります(ニヤリ)
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