桂花「いたっ!!一体何なのよ!!」
桂花は気が付くと、座り込んでいた。
どうもお尻を打ち付けてしまったみたいで、その辺りから痛みを感じた。
すぐに立ち上がり周りを見渡す。
だが、周りは真っ暗で自分が今どこにいるのか全く分からなかった。
ただ雰囲気で、屋外ではないだろうという事は感じ取れた。
桂花「私はどうしてここに・・・そうだ!!」
桂花は気が付くまでの事を思い出していた。
三国平和式典の開かれているある日、華琳がいなくなったと報告を受け、秋蘭、稟、風と共にそれをごまかす事にした。
その時には、呉の孫策、蜀の劉備を始め、主要な武官文官が揃っていたため、華琳がいなくなったとなれば一大事だったからだ。
結果、2国の皆には華琳がいなくなった事がばれる事無く式典も無事に終えた。
その後、魏の他の皆には真実を伝えその日は収めようとしたのだが、風が唐突に華琳様の居場所を知っているという事を言い出し、そこから・・・。
桂花「って事は、ここはあいつの世界だって言うの?」
状況に流されるままにあの鏡に触り、明らかに違う場所に来ているという事は、そういう事なんだろうと桂花は結論付けた。
桂花「しかし、ここはどこなのかしら。」
そう言って一歩前に出たときである。
足下にある何かを踏んでしまい、前のめりに転んでしまった。
体は、その転んだ方向にあった何か柔らかい物に守られ問題なかったのだが、問題はその先だった。
手はその先にある何かに触れて問題なかった。
顔も幸いな事にぶつけてなかったのだが、唇が何かに触れていた。
桂花がその状況に気が付くのに数秒を要した。
桂花「★■※@▼●!!」
桂花は声にならない叫び声を上げながら立ち上がった。
その柔らかい物は人間で、転んだ瞬間にその者と接吻をしてしまっていた。
あうあうと声にならない声を上げながら、その者を見つめる。
だんだんと夜目に慣れてくると、その者を認識しだした。
そして、桂花は再び叫び声を上げることになる。
その者は、桂花が全身精液男と忌み嫌う北郷一刀だった。
桂花(こいつと接吻してしまった・・・。)
事故とはいえ、自分が忌み嫌う男と接吻をしてしまった。
それ以上の事もしているのだから今更感はあるが、あれはどれも華琳の命令で仕方なく行ったと桂花は思っており、自分の中では無かった事にしている。
なので、今自分が犯してしまった行為に、絶望感すら感じていた。
と、ここで桂花をさらに追い込む事態が発生する。
寝ていたはずの北郷一刀が起き
一刀「やあ。」
と笑顔で手を挙げたのだ。
一刀は混乱していた。
一刀(これは誰だ?なんでキスなんかしているんだ?)
その日、孫登と遊んでいると璃々がやってきて、さらに鈴々や美以達南蛮兵も加わって大変な事になっていた。
華琳や桃香、蓮華に紫苑は笑顔でその様子を眺めているだけで助けようとせず、他の面々も同じような感じだった。
父親ってこんな感じなのかなと、嬉しい反面、非常に疲れてしまっていた。
さらにその後、埋め合わせとばかりに華琳の買い物に付き合い、桃香と蓮華は一緒に勉強をした。
他の面々にはまた今度と言って、逃げ帰るように寮に戻った。
もうヘトヘト状態で、着替えもそこそこにそのままベッドに倒れ込むように寝た。
と夜中に、なにやら物音がすると思い、薄目をあけると、何者かが自分の部屋にいた。
泥棒かと一瞬思ったが、その状況に戸惑っているようだったので違うだろうと判断して、少し様子をうかがっていた。
すると、その者が自分の方に倒れ込んできて、キスをしてしまった。
完全に事故だろう、それは分かった。
ただ、自分がここでかわしてしまうと、この人物は顔面を打ち付けてしまう。
それを避けるため、あえてそのままにして受け止める方法をとったのだが、こんな事態になるとは一刀も予想外だった。
薄目だが、至近距離でこの人物を見て気が付いた。
一刀(これって荀彧じゃ・・・。)
状況判断にしばらくかかったのだろう、キスをしたまま数秒が過ぎ突然荀彧が立ち上がった。
なにやら戸惑っている様子だったが、このまま狸寝入りしているわけにもいかず、一刀は起き上がった。
なんと言えば良いのかよく分からなかったが、とりあえず挨拶代わりに
一刀「やあ。」
と、手を挙げた。
桂花はまさに穴があったら入りたいという状態だった。
事故とはいえ、一刀と接吻をしてしまった事。
そして、それを一刀に気付かれてしまったという事だった。
しばらく沈黙する時間が流れた。
先に痺れを切らせたのは一刀だった。
一刀「あのさ・・・。」
桂花「何よ!!」
一刀「なんで俺の部屋にいるの?」
桂花「私だって知らないわよ!!」
そう言ってそっぽを向く桂花。
一刀は、溜息をつくと起き上がり明かりをつけた。
一気に部屋が明るくなる状況に驚き、振り返る桂花。
一刀は部屋を片付け、座布団を出す。
一刀「まあ、ここに座りなよ。」
そう言って、桂花を促した。
桂花「いらないわよ!!」
桂花はそう言い、ムスッとした表情でそっぽを向いたままだった。
一刀は、桂花のその様子にまた溜息をついた。
一刀「あのさぁ、そんなにムスッとしていると可愛い顔が台無しだよ。」
桂花「なっ!!あ・・・あんたはまたそんな事言って・・・。」
そう言った桂花の表情は少し赤みが差していた。
場の雰囲気が和んだかなと思った一刀は、たたみかけるように話を続ける。
一刀「あの、荀彧さん?」
桂花「!?」
桂花は一刀の物言いに違和感を感じた。
自分の事を、桂花という真名ではなく荀彧と呼んだ。
一刀は間違いなく自分の事を真名で呼んでいたはずだ。
だとすると、この目の前にいる一刀は一体・・・。
桂花「あんた!!」
一刀「なに?」
桂花「なんで私の事を真名で呼ばないのよ!!」
一刀「俺、荀彧さんの真名知らないからなぁ。」
桂花「えっ!?」
桂花は、一刀の事発言に驚いた。
なぜ一刀は、自分の真名を知らないのだろう。
別に呼ばれたいというわけではないが、知らないと言われると無性に腹が立った。
一刀「荀彧さん。」
桂花「桂花。」
一刀「は?」
桂花「私の真名よ。」
そう言って一刀の方を向いていた桂花は、横を向いた。
一刀「呼んでいいのか?」
桂花「いいわよ。今更荀彧さんなんて気持ち悪いったらないわ。」
そう言う桂花は、頬を赤く染めていた。
一刀「それじゃ、桂花。」
桂花「何よ!!」
一刀「改めて聞くけど、なんで俺の部屋にいるんだ?」
桂花は何やら考え込むと話しだした。
桂花「華琳様を追いかけて来たのよ。」
一刀「華琳に会いたいのか。」
桂花「華琳様の居場所を知っているの!?」
一刀の口から華琳の名前が出ると、桂花は一刀の体を掴み問いかけた。
だが、桂花は一刀の顔が目の前にある事に気付き、押し出すように離れた。
これで、照れでもすればかわいげがあるのだが、桂花はムスッとすると話した。
桂花「ちょっと、近くに寄らないでよ!!」
一刀「桂花が近づいたんだろ。」
桂花「ふん。まあ、いいわ。それで華琳様はどこ?」
一刀「あ、ごまかした。」
桂花「う・・・うるさいわね!!早く華琳様の居場所を教えなさいよ!!」
一刀「教えてもいいけど、今は会えないぞ。」
桂花「なんでよ。ま・・・まさか、あんた華琳様にあんな事やこんな事を・・・。」
一刀「おいおい・・・。」
桂花のとんでもない発言に呆れる一刀。
仕方ないとばかりに机の上に置いてあった時計を持ち出した。
それは夜中の12時過ぎを指し示していた。
一刀「今はまだ夜中だ。華琳の住んでいる場所に行っても入れないぞ。」
桂花「何ですって!?」
一刀「だから、今日はここに泊まって・・・。」
桂花「あんたと一晩一緒に過ごせってわけ!?」
一刀「仕方ないだろ。」
桂花「あんたってば、相変わらず見境無いわね。」
一刀「どんな想像をしているか何となく分かるが、そんな事はしないぞ。」
桂花「どうだか・・・。」
桂花は信じられないという表情をしている。
一刀は、仕方ないとばかりに、木の板を縛っていた紐を取り出し桂花に渡した。
桂花「なによ、これ。」
一刀「それで、俺の腕を縛ってくれ。そうすれば俺は何も出来ない。」
桂花は紐と真摯な表情の一刀を何度か見直し紐を一刀に返した。
桂花「ふん、そこまでしなくてもいいわよ。」
そう言って、桂花は一刀の寝ていた布団に入り、そのまま寝っ転がった。
一刀「仕方ないなぁ。」
一刀はその様子を見て、部屋の電気を消すと部屋の隅に行き、予備のタオルケットを体に掛け座るようにして眠った。
桂花は、その様子を薄目で見ながら、心の中が暖かくなるのを感じそのまま眠った。
あとがき
桂花のターンでした。
いやぁ、難しいです。
ツン要素多めのツンデレのつもりで書こうと思ったのですが、なかなかデレが出せませんでした。
こんな感じでお許し下さい(笑
次回は・・・まだ未定です。
気長にお待ちいただけると幸いです。
今回もご覧いただきありがとうございました。
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過去作、失われゆく世界で、現代に飛んだ桂花の話です。
桂花要素を頑張って加味しましたが、どうでしょうか。
誤字脱字報告、叱咤激励、感想をお待ちしております。
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