No.821675 Fate/GO 短編 旅団メンバーとの大晦日篇Blazさん 2015-12-30 09:14:50 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:913 閲覧ユーザー数:762 |
幕間の物語 「大晦日の夜」
マシュ「あ、始まる前に一つご注意を。今回のストーリーでは大人数のマスターが出ますが、あくまでパラレルストーリーであると自覚したうえで読んで下さると幸いです。
すっかりと人数の増えたので…
尚、登場するサーヴァントは各マスターの皆さんがお気に入りの人たちを各一人ずつ挙げており、詳しい内容は後書きでご説明いたします。
それでは前置きはここまでにして…先輩を迎えにいかないと!」
= カルデア 某所 =
人理継続保障機関カルデア。
そのとある一室ではマスターたちと、そのサーヴァント。そして彼らをサポートするものたちが集まり、大晦日の夜を迎えていた。
『ええ、今回のカウントダウンパーティーの司会を務めさせていただきますDr.ロマンでーす!
始まりましたカルデア・カウントダウンパーティー。
もしここに所長が居れば一人キャッキャしている姿をみんなで監視カメラからのぞき見すると思いますけど、残念ながら所長は居ないのでこうして楽しくできたしだいでーす!!』
ロマンの言葉によって歓声を上げるスタッフたち。
本来なら所長ことオルガマリーによって普段と変わらず仕事を強いられるが、彼の言葉通り彼女は最初の任務の地である冬木にて行方不明。しかし裏切った人物と科学的な理由から形式上は死亡扱いとされ、居なくなったカルデアでは地味に活気にあふれていた。
このパーティーもその一つで、本来なら空しく踏みつぶされていたところをロマンとダ・ヴィンチが息抜きも兼ねてという事で実施を決定。
こうしてカルデアのスタッフたち総出でカウントダウンパーティーが実施されているのだ。
『クリスマスに続いて大晦日。いろんなイベントが目白押しで楽しめているけど、僕らの目的は人類の継続…
だからみんな…
明日に残さない程度に羽目を外しまくってくださいねー!!』
「…人類の存亡がかかっているのに…こうも楽しみ続けてていいのでしょうか…?」
「まぁいいじゃないですか。楽しむことも大切ですよ」
会場の一角で話すのは黒鉄刃と「ルーラー」のジャンヌの二人。
彼の陣営で守りの要でもある彼女は同時にカルデアの陣営にとっても重要なサーヴァントの一人だ。
ジャンヌ自身、別にクリスマスを嫌う理由もなければ気もないのだが、自分たちの目的が人類の継続という大きすぎる使命なために「こんな事をしていていいのだろうか」とふと疑問に思ってしまったのだ。
だがマスターである刃はむしろだからこそではないか、と言い彼女を説き伏せていた。
「確かに人類の継続は絶対に成すべきことです。
けど、その前に私たちが潰れてしまってはそれどころでも無い…そうでしょ?」
「…それは…そうですけど…」
「あらあら。ジャンヌは楽しまないの?折角のパーティーなのに」
「あ、マリー」
後ろから姿を見せたマリーことマリー・アントワネットは彼女と同じく白い服に身を包み、変わらぬ明るい立ち姿で歩み寄る。
以前、百年戦争の時代に起こった聖杯戦争で共に戦った二人は他のマスターたちやスタッフでさえも認める友情関係を持っているので互いに呼び合う仲を築き上げているのだ。
「どうした。刃」
「あ、ユキナさん」
マリーのマスターであるユキナは他の者たちと比べればやや中性的な顔立ちをしているが、性格は明るく勇ましい。ある種「正統派」といえるマスターの一人だ。
ちなみに入ってきて間もないころにロマンに女と間違われた時にしばらく顔の原型がないほど○されたので、カルデア内で彼を女呼ばわりするのは禁句とされている。
「心配いらないわマスター。ジャンヌが少し湿っぽい顔をしていただけよ」
「ん。そっか、そういうのほっとけないもんな、マリーは」
「フフフッ…ありがとう、マスター」
また、カルデア一のバカップルとも呼ばれている。
「ま、マリー…」
「デオンさんが見たら微笑ましく思いますけど、アマデウスさんとサンソンが見たら…」
「卒倒間違いなしですね…」
そんなマリーとマキナのイチャつきっぷりに他のフランスサーヴァントたちが見たらどうなるだろうかと思う二人の脳裏には、確実にカルデアが火の海となってしまいそうな気がしてならず、ジャンヌに至っては多分バーサーカーでも勝てないだろう、となぜか考えてしまった。
マリーと少なからず関係を持つサンソンとアマデウスは彼女を内心では溺愛しているのでほぼ確実と言って差し支えないほどそうなってしまうだろうと言うのが大きな根拠だ。
「二人を呼ばないで正解でしたね」
「ああ…まったくだ」
パーティーが始まり一時間ほど。立食ではあるが飲み食いをしていた二人は、唐突にある事を思い出す。
「…そういえば…マスターの人数が少ないですね」
「んむっ…そういえば…」
刃とジャンヌが確認しただけでマスターは自分たちを含め三人。
カルデアには全七人のマスターがいるが、その内の半分しか会場には集まっていない。
他のマスターたちは何処にいるのかと気になった刃は、近くでオケアノスで調達した魚の刺身を食べている朱雀と「セイバー」のサーヴァントである沖田に訊ねた。
「朱雀さーん」
「ん、刃さん」
「あ、ジャンヌさんもだ」
カルデアの所属するマスターの中でも年下の部類である朱雀はその見た目と違い強力と言えるサーヴァントたちを使役している。その中の一人に、今回参加している沖田も名を連ねている。
時代が近代であるので神秘については低いが、それを補う程の高いステータスを持ち、ハンデ持ちながらも古代の英霊と肩を並べる。
だがそれでも年相応な所もあり明るい口調で話すことが多い。
「んぐっ…どうしたんですか、刃さん?」
「いえ、朱雀さんここに来るまでにユキナさん以外にマスターの人って見ませんでしたか?」
「マスターの皆さん…ですか」
「そういえば見ませんでしたね…」
いかの刺身を食べる沖田の返答に本当か、と押す刃だが本人の顔は平然としており嘘をつく様子もなく首を縦に振る。
「私たちもここに来る前はおろか、しばらくは見ていませんね…」
「そういえば…ここ数時間見なかったな…」
「皆さんどこにっん…居るんでしょうね」
「…総司。食べるかしゃべるかどっちかね」
「あ、失敬失敬…」
苦笑して面目ないと答える沖田にジャンヌや刃もつられて苦笑する。非番の時の彼女はどうしても子どものような所が多く見られマスターである朱雀は時折恥ずかし気に彼女の腕や背中を叩いたりしている。沖田本人も改めようとしてはいるが、やはり礼儀の居る場所、という所の知識に疎いためかそんな面を見せたりもするのだ。
「沖田さん、口に食べかすですよ」
「うえっ…すみませんジャンヌさん…」
「総司…」
「大丈夫ですよ。ジャンヌもそういう所ありますから」
「刃さん。どういう意味でしょうか」←若干オルタ化
「…いえ、なにも」
「い…一瞬、ジャンヌさんの後ろに黒いオーラ―――」
「総司、それ以上は言うな。巻き添え喰らう」
オルタ化しかけているジャンヌに詰め寄られている刃から離れた二人は、背の方向にある自動ドアが開く音に振り返る。奥からは多くの料理が並べられた大きなカートと共に数名が入り、その中の二人に見覚えのあった朱雀は声をかけた。
「あ、Blazさんディアーリーズさん!」
「お、おう朱雀…」
「無事だったか…」
「なんか二人ともこの上ないほどやつれた顔しているんですけど」
「うん。お二人とも大丈夫なんですか」
何故か見た目より年寄った感じでしかも数歩あるくだけで更に歳をとっているかのように思えた二人は疲れ切った顔で彼らのところへと寄っていく。しかし近づけば感染してしまいそうに思ったのか朱雀たちは半歩後ろに下がり二人から距離を置いた。
「これで大丈夫と思うか?」
「いや…」
「というかお二人ともどうしてそんな事になってしまったんですか?」
「聞くも涙、語るも涙ですよ…」
「ほへ?」
「お、沖田さん取り合えず私とマルタさんとで説明します…」
「二人は少しそっとしておいてあげて。ドクターの方にも言っておいたから」
そう言って近くにあるソファに倒れた二人を気遣ったマシュとマルタからどうしてああなったのかと事情を聴くことにした二人。
スタッフたちが新たに来た料理に釘づけになっている間、彼らは移動して少し角側の方に移り、サーヴァント二人から話を聞く。それは朱雀も想像するだけで苦笑いが限界になるような事で、内心同情するほかないと倒れたマスター二人を哀れんでいた。
「…で、二人とも…ですか」
「はい…」
「私たちもなんでか駆り出されてね…やになっちゃうわ」
マシュとマルタからによると、二人は確かに会場へと向かっていたが厨房で料理を作っていた料理人に引き留められ、そのまま四時間ぶっ続けで手伝わされていたと言う。
しかも彼女たちも巻き添えを食らってしまい、料理の手伝いはしなかったものの料理をカートに乗せるだけだったにも関わらず厨房内を走り回っていたとの事…
「食材の皮切りをはじめ、オーブン、フライパン、ソース、スープ…肉料理のステーキや魚のムニエル、野菜のサラダとか…」
「えげつないほどの量をやらされてたわ…」
「ええ…どんどんとやつれていく先輩たちにもう見ていられませんでした…」
「少し言い方過剰じゃない、マシュ…」
だが実際そうとしか言い表せないような状態だったゆえに過剰に言うマシュ。
マルタも否定はしないが流石に言い過ぎでは、と目をずらしてとある方向を見つめる。そこには料理を配る二人の男女のサーヴァントが居ており特に男の方は話を聞いてそうで気が気ではなかった。
Blazのサーヴァントである赤い外套を着たアーチャーこと英霊エミヤ。
そしてその隣では主である彼のための料理をとっておき、それ以外を丁寧に配っている清姫。元々はエミヤだけを連れていくはずだったが、どうにも彼女にストーキングされていたようで、清姫はまた個人でと考えていた。
だが彼女の攻めにどうしても守り切れず、最後の抵抗としてエミヤの手伝いをし、その間に代案を考えようとしていたが、彼女が料理上手で更にあまりに驚異的なスピードだったために失敗。ダメ押しで彼に手伝わされ、結局文字通り身が尽きるまでそうされたのだという。
「…まぁ…一理あるか」
「そうでしょ?」
「ど、どんだけの事をやらされてたんですか…」
「沖田さんが一歩でも歩いただけで吐血するほど」
「あ、わかりました」
「いや分かったの!?」
「取り合えず五人はそろいましたね」
「あ、ジャンヌさん。それに刃さんも…」
「…なんか顔、ひきつってるわよ?」
何を言われたのか、戻って来た刃とジャンヌは微妙に顔を引きつらせており、刃の顔色は少し青ざめていた。
いいえ何も。と断固とした声で言う彼女の言葉に誰も追及することはできず、更に微妙に伝わってくる威圧感に反論はおろか口を開くことさえもままならず、結局ジャンヌの言葉に嫌でも納得するしかなかった。
「………大丈夫ですよ、ね。マスター?」
「う、うん…」
(心中察します、刃さん)
(ああ…あれって調子に乗り過ぎた結果でしょうね)
(総司も気を付けなよ?)
(了解です。うっかり後ろから刺されるのは優雅なオッサンだけでいいですので)
「あとは…誰が残ってましたっけ…?」
「ええっと…」
残っているマスターは四人。
「ライダー」ことメデューサのマスター、本郷耕也
「セイバー」の騎士王アルトリア・ペンドラゴンのマスター、蒼崎夜深
「アーチャー」のアタランテのマスター、kaito
そして「ランサー」スカサハのマスターであるUnknown、またの名をアン姉さん(見た目が中性的だから)
その中で参加すると返答したのは本郷とUnknownそしてkaitoの三人。蒼崎陣営も参加はすると言ったが、答えたのはサーヴァントだけな為、来るのかは怪しいところだ。
「けど確かアン姉さんたちって少し用事を済ませてからって言ってましたよね」
「ええ。本郷さんたちも似たような…」
「お二人とも何をしているのでしょうか…?」
そろそろ一時間半ほど経つ。
来ても可笑しくないが、何かトラブルでもあったのではと思っていたサーヴァントとマスターたちの前に、ふたたび自動ドアが開く。
ようやくかなと思い振り向いたが、そこには意外な人物が姿を現した。
「あ、蒼崎さん!」
「………。」
「よかった。セイバーさんたちも来られたんですね」
「はい。マスターが了承してくれました」
青のドレスのような服装に身を包んだサーヴァント。後ろでは長い髪を結んでいることから女性であるのだが、歴史では男性と語られている。誰もが一度は耳にしたことのある名を持つ王と剣。
騎士王アルトリア・ペンドラゴン。それが彼女、セイバーの真名だ。
その彼女も今回のパーティーを心から楽しみにしていたのか上機嫌な顔でマシュの問いに答え期待に胸を膨らませている。騎士としての経験は豊富だが、まだまだこのような事には純粋に喜ぶようだ。
「年の瀬にはこうして祝うというのは良い事ですし、他のマスターとも交流を結べます」
「ですが本音では食べたいのでしょ?」
「ッ…そ、それま違いますソウジッ!!」
からかう様に言う沖田に頬を赤らめて答えるセイバー。
だが、その後ろでは寡黙なマスターが一人孤立しており、それに気づいた刃と朱雀は気遣うように声をかける。
「蒼崎さんも食べましょう。私たちも無理に話させるつもりもないですし、今回はパーティーです」
「………。」
「あ、何か食べたいのがあれが僕が持ってきます―――」
「「肉(を)」」
「「あ…はい…」」
何故か妙なところで息が合わさった二人に失笑するマスター二人。
考える事は同じか、と改めて彼がセイバーを引き当てた理由に納得したのだった。
残るマスターは三人だが、再び壇上にロマンが上がるとスタッフやマスターたちも視線を彼に向け、何をするのかと注目する。
『えー…パーティーを楽しんでいるところで、そろそろ軽いゲームでも始めようかなって思います!!
題して!!!
第もう何回目か分からないの回!!!
チキチキ、ゲームリレー!!!!』
「…取り合えず色々とツッコミたいのですがゲームですか」
「ロマンノリノリですね」
「ああ…この上ないほどに」
「酔っぱらってるのかしら?」
「あ、ロマンさんの足元に酒瓶」
『これから僕らが作った三つのゲームであるビンゴ・くじ引き・クイズの三つを行います。
三つにはそれぞれ一位から三位まで景品があり、更に頑張った人には特別賞もあげちゃいます!ルールや景品については恨みっこなし!
また不正行為が発覚した場合には景品没収等のペナルティもあるのでご注意を!!』
「…なんでしょ。そこはかとなく嫌な予感しかしないのですが」
「ええ。私も沖田さんと同意見です」
「私もよ」
「偶然ですね私も」
「まぁ…こういうのでカオス展開はお約束ですからね…」
「刃さん。なぜかこの先の結末が薄っすらと見え始めたのですが」
と。サーヴァントたちとマスターたちが(若干一陣営まだイチャイチャしているが)嫌な予感に汗を滲ませている中、ゲームは問答無用にスタート。
そしてその解説としてダ・ヴィンチが壇上に立った。
『それじゃ、まずはビンゴゲームからだ。ルールは簡単。縦横それぞれ伍マスの計二十五マスのカードの中で一列でもビンゴしたら勝ち。ただし、そこにあるカード全てに絶対に書かれていない数も出たりするから、まぁ気を付けておくれ。ちなみに真ん中は今回開けられない方式だから』
「普通のビンゴなら真ん中は開けますけど、こっちでは少し難しめにするためですかね」
『まぁそうと受け取ってくれ。こうでもしないと幸運持ちのサーヴァントたちに景品全てかっさらわれるからね』
確かに、と納得した顔で自分たちのサーヴァントを見るマスターたち。それなりに幸運が高いサーヴァントも居るのでそれも影響し彼女の言った通り総なめになってしまう。だからこそのハンデなのだろう。
『んじゃ。まず最初のナンバーは…』
幸運で左右される。だからこそのハンデと始まったビンゴゲームは予想通りサーヴァントとマスター、そしてスタッフたちが対等にできるほどに白熱する。
中々リーチにならないのでしかめた顔をするセイバー。同じくリーチには届かないが、狙った番号が当たれば複数リーチになれるマルタ。早くもリーチはしたが中々ビンゴにならないジャンヌ。セイバーよりも当たりの悪いせいで苦戦している沖田。
そしてビンゴ自体が初めてで肩にのったフォウと共に楽しんでいるマシュ。
それぞれ表情は違うが思い思いにゲームを楽しんでいるのには変わりはない。
『次は…二十一番!』
「またですか…」
「よしっ…やっとリーチ」
「あ、マルタさんがリーチです」
マルタがリーチし隣に立つマシュは嬉しそうにそれを言うが、ビンゴてなければ意味はない。だが、他のサーヴァントたちにはある意味プレッシャーなようで時に先にリーチをしたジャンヌは子どものように追い越されるのではと焦る。
子どものようにはしゃぐ彼女たちの姿は不思議と和やかな雰囲気に変え、マスター二人も自然と笑みをこぼす。
ただ一人その中でもくもくと食べ続けながらもビンゴをしている者も居たり、やっと体力が回復したのか軽く口に何か入れたり飲んだりして参加するBlazとディアーリーズも居たが後者二人に関してはまだ完全回復とまではいかなかったようだ。
「あ…頭がようやく動き始めた…」
「
「い、いや…まだ待って…腹が本調子じゃないから…」
(Blazさんたちが地獄絵図なのはほっておこう…)
(僕らには関係ないですからね)
「ビンゴッ!」
「「「「「えっ!?」」」」」
そんな彼らの夢を飛び越えるように一番乗りを告げた声。
先ほどまで二人、別空間を作り上げていたマリーとユキナのペアでサーヴァントである彼女がその澄んだ腕を高々と掲げていた。
「ま、マリーさん…」
「そういえば私たちだけで夢中になっていたから…」
「ま、マリーの事…すっかり忘れてた…」
「何気にそれって酷いことですよ」
「言わないのが吉です。ソウジ」
『おお。一番乗りはマリーか。常に笑顔だったから分からなかったけど…それでも一番乗りには変わりない!』
「フフッありがとう。とても楽しいゲームね!」
『では、そんなマリーには………これだ
叡智の火種、七十個』
「なんでじゃい」
紙束のように火種を出されてはどうだろうか。
取りあえず不満の発火点としてユキナからその第一声が吐き出された。
『ん?不満かい?』
「いや不満というよりなんでソレ!?別に嬉しいのは確かだが…もっとこう…」
『普通のプレゼントが欲しかった?』
「そうそう…って分かってるじゃねーか!!」
『だってそれじゃあ面白みもへったくれもないだろ?』
「面白み重視かい!!」
『当然。ああ。それとその火種はタダの火種じゃない』
「はぁ…?」
『一つ使えばスリーサイズが増える(いくつとは言ってない)』
刹那。ユキナは盛大に鼻血を噴射しその場に倒れた。
それも発砲音のような音を出して。
「なんでそんな火種作ったんですか!?」
『暇だったから』
「アンタ自分の立場分かってる!?」
『Oh,yes!流石だよダ・ヴィンチちゃん!!』←笑顔で鼻血垂らしてる
「鼻血だしながら言うなよスケベロマンッ!!!」
「使わないのでしたらぜひ私に下さい!!」
「せ、セイバーさん?」
ちなみに。
この後に沖田が挽回し二位に滑り込み、更にマルタが三位を取り、それぞれ景品は金の果実(三つセット)と再臨の素材である歯車。
一位と比べればこちらが良かったな、という事だったりこれが一位の景品だったのではという声が漏れ出ていたのは言うまでもない。
更に今回は省くこととなったくじ引きだが、紙に一位や二位と書かれたのが当たれば勝ちという完全に運を味方にしなければいけないものでブーイングも多く、それでも一位をとったのはマシュ(フォウ)で、二位にディアーリーズ。そして三位にジャンヌが入った。
順当としては最初にディアーリーズが二位を引き当て、その後一位のマシュ。だがここは彼女ではなくフォウが引き当て、最後にジャンヌという順番だ。
「なんでくじ引きは省いたのでしょ?」←景品の呼符を持つマシュ
「あまりネタにならなかったんじゃないですか?」←さっきの火種を貰い迷うジャンヌ
「ああ…特にディアーリーズさんが」←外れを引いた刃
「二人ともひどい事言いますね」←オルフェンズという紙を引いて外れと知った朱雀
「事実だからな」←『溺死』と書かれたくじを引いたエミヤ
「あらあら…」←『成就確実』と書かれたのを引いた清姫
「オイ。なにげに清姫の引いたくじ、文字が溶けてないか?」
「Blazさんそれは言わない方が…」
話のネタにもならないくじ引きが終わり、残るはクイズだけとなったゲーム大会。
しかし司会者側であるロマンとダ・ヴィンチは困り果てたような顔で話し合い、彼に至っては顔を渋らせていた。
「…どうする?先にクイズ始めよっか」
「うん…けど、担当した三人の事も気になる。特に…ね」
実は、後の三人のマスターは事前にロマンたちに頼まれてサンタ役を引き受けており、本人であるとバレていたとしても楽しませるという名目でそのまま押し切ろうという目的があった。すっかりクリスマスの季節はすぎたが、それでもそうした方が面白いのでは、という彼らとの話し合った結果だ。
その為、三人は後から仮装して会場に入り、パーティーを盛り上げるという役目もあったが、同時にプレゼントと題しクイズでの景品も渡す算段となっていた。
しかし結果はこの通り、三人の姿は予定していた時間にも現れず、ロマンは次第に焦りを見せていた。
「こんな事ならプレゼントはこっちで持っとけばよかったかな」
「仕方ないだろ。もうこうなってしまったんだから。手持ちの物で誤魔化すか、後でプレゼントもまとめて渡すかだ」
「…呼符二枚と石五つ」
「んじゃそれを公平に分配だ」
「ダメッ!それだけは絶対にダメだ!!これで新年一発目のガチャをするんだ!!!」
「諦めな。そこは年長者としてだ」
「そ、そんな…」
しかし、突如どこからか聞こえる音にフォウが気付き、あらぬ方へと首を動かす。
「フォ…?」
「…フォウさん、どうかしたのですか?」
「フォ、フォウ!」
「どうしたのですか、急に?」
「わかりません。突然フォウさんがそわそわし始めて…」
それから遅れて気づくサーヴァントたちは近づく気配と音に耳を傾け、せわしなく辺りを見回す。
どうやら自分たちでも気づける範囲に何かが近づいてきているようだ。
「…何か…近づいて来てません?」
「総司、何か感じるの?」
「気配…というより、振動といえばいいんでしょうか…」
「あ、それは私も。それに妙に甲高い音も聞こえるわ」
沖田とマルタ、そしてマシュとジャンヌも言葉にはしないが気付ている様子で耳を研ぎ澄ます。脳裏に想像するのはカルデア内の構造。そこから逆算し一体どこからどう、どの速度で近づいているのかと考え始める。
足音ではない、浮遊する感じでもない。何かがこちらに物々しい音と共に近づいている。
それも甲高い音、何かを響かせながらだ。
「…なんでしょう…これ…」
「…段々近づているのは分かるけど…」
「リズムがあります…よく聞いたことのある…」
「…何も聞こえないよ?」
「あ、でも私は地響きのようなものは感じます」
近づく音に耳を澄ませ始めた一同。
段々とそれは確かに、聞き覚えのあるものに変わっていく。
そう。よくクリスマスに聞く音色。
子どもたちが笑顔で想像する…
「…ベルの音?」
「へー…ベルってこんな音なんですね」
「けど、なんで…?」
「近づいてきますね…こちらに」
リズムよく、楽し気なベルが少しずつ近づき始める。
それは確かに刃や朱雀たちが居る会場に真っ直ぐ近づいて来る。一体誰が、と思うマスターたちと違い、それに覚えのあるロマンは小さく安堵し胸をなでおろす。
ようやく来てくれたか、とそのベルを鳴らす者たちの正体に気付き
その彼らが起こすトラブルを知らず。
「と、いうよりもクリスマスはもう過ぎてますよね」
「ええ。今日は大晦日の三十一日…もう一週間近く前です」
「じゃあ…サプライズ?」
『ああ。みんな、一旦ドアの近くから離れ―――』
「
しかしまさか宝具を使って突っ込んでくるとは思えず、会場内に特攻した光によって一面白一色となる。
その瞬間。一瞬だがマスター二人(Blaz、ディアーリーズ)とサーヴァント一人(エミヤ)そしてロマンが巻き込まれたように思えたマシュだったが、自分たちの身を守るのに精いっぱいなのと何故か無視しなければいけないという気がしたのであえて聞かぬフリをした。
(…大丈夫です。先輩たちは…多分生きてます)
直撃だが。と内心で自分にダメ押しするマシュだが根拠のない理由の通り、四人は一応は無事だった。一応は。
「ん。大変だアン。会場が滅茶苦茶にされているぞ」
「ん、あ…本当だ…一体だれが…」
「どうやら私たちが来た時にはこうなっていたようですね」
トナカイではなくペガサスに引かれていたソリの上から降り立ったのクランの猛犬であるクー・フーリンの師であるスカサハと、そのマスターであるUnknown。ちなみに彼女からは面倒な事もあって「アン」と略されている。
そしてペガサスを操っていたライダーことメデューサも自分たちで無残にした会場に誰がやったのかと怒りのようなものを見せていたが、実際それを自分たちがやったと気づいているのかどうか曖昧な顔だった。
「ってスカサハさんにUnknownさん!?」
「アンタたち、いきなり何してるのよ!!」
マシュとジャンヌの宝具に守られていたマスターとサーヴァントたちは無残な光景に取りあえずは目をそらし、その原因たる彼らに訊ねる。
明らかにライダーの宝具で行ったことだが、本人がそれを認めていない事に納得せず、またその言い出しっぺであるスカサハについても強く追及した。
「ん?なんじゃお前ら、何故宝具なぞ使って居った」
「アンタたちが宝具でここに特攻してきたからでしょうが!!!」
「お陰で死にかけましたよ…」
「大丈夫、総司?」
「ふむ。そうなのか、ライダー」
「いえ。私は宝具を発動した覚えはありません。ただ、楽しくなったので宝具の名を狂声はしましたが、それだけで発動するほどの事は…」
「実際そうなってこうなったんですが」
真名開放して特攻したのに発動していないと否認するライダーに困り果てた顔で見るマシュたち。どうやらそうして来てしまったとスカサハたちも思っていたそうだが、本当にそのつもりは無かったのにと言い訳のように話した。
「ああ…マスター、大丈夫ですか?」
「………。」←プスプスと髪の毛を焦がしながら倒れる
「大変です…マスターが気絶しています。ディアーリーズさん…は、後で平気でしょう」
「いや…なんで…」
「ふむ。本当に宝具をつかってないのですがね」
「…これじゃあ飯はなしかな」
「なんと…それはざんねんだ」
「…あの、ジャンヌさん。マルタさん。私の間違いでなければこの三人、様子が少し変ではないでしょうか」
顔色に違和感を感じたマシュは二人に訊ねるが、そんな事を言うまでもなくマスターである刃が彼女の横に立って小さく頷いた。
三人の口から僅かに香るアルコール臭。そしておぼつかない立ち方と少し赤い顔。
何より―――
スカサハの脇にはクー・フーリンが抱えられ、しかも気絶している。
「…見間違いではないですよね、朱雀さん…」
「ええ…しかもソリの中で動いてるのって…」
ソリの中には顔面に何か叩かれた跡を残す本郷と酔っぱらったせいなのか青ざめた顔をするkaito。
そして…
「ぶっはー!!酒もってこーい!!!!」
と酒瓶一つを丸々ラッパで一気飲みしたアタランテが居た。
彼女に至っては原型が残っていない。
「ふむ…さーヴぁんとは酒ではよわないとおもっていたのですが…」
「アンがつくった酒がうまくてな…飲んでいたらこう、きぶんがぼーっと…」
「………。」
「な、なんで酔うんですか…」
「ああ。それは私から説明するよ」
なんでも、ダ・ヴィンチ曰くサーヴァントでも現世の物を楽しめるようにと開発したらしく、その中には酒などによるアルコール摂取で酔っぱらったりする事ができる水ができたらしい。しかし、まだ試作段階であるので数も無ければ効果だって確かなものでもないし最悪失敗することも考えられたので遊び半分で作ってしまったが、処分するもの持ったいないので本人が厳重に保管していたのだ。
「ですが、それが何故?」
「実は、この水の開発にはUnknownも手伝ってくれてね。素材集めも彼だ。でも結果がダメだったんで私は厳重に保管していたんだけど…どうにもアイツが見つけたようで、それに手を加えて酒に混ぜたらしい。一応、そういうのに混ぜるの前提に作った物だからね」
「では、あのお酒は…」
「うん。多分そうだろうね」
サーヴァントでも酔っぱらえるように作った酒。それを彼が作り上げ、試しにとパートナーであるスカサハに呑ませた、と言ったところだろうと推察するダ・ヴィンチ。
かなり冷静に推察や分析をするので妙に苛立ちを感じる者たちも居たが、結局は彼が事の原因なのだろう。
しかし矢張り彼女も騒動の原因足り得た。
「あ、後すぐ逃げることを推奨するよ。かくいう私も直ぐに逃走するから」
「うえっ…それってどういう…?」
「いやさ。あれ絶対条件として欲情しちゃうんだよ。それもかなり」
「……………え、それって…」
恐る恐るスカサハやUnknownたちの居る方を振り向く。先ほどから妙に水が弾くような音が聞こえるので何かとは気になっていたが、ダ・ヴィンチの言葉にマシュの脳裏に浮かべる予想は確信に変化した。
濃厚な光景。としか言えない有様に純粋たる彼女たちの顔は真っ赤に染まりあがり、マスター二人もその光景に唖然とするしかなかった。
既にスカサハとUnknownの目は虚ろになり、自分たちの行いに一切の抵抗どころか恥じらいすら感じておらず、逆にみられている事に更なる刺激を感じている。
更に受け入れるようにスカサハは押し倒され、Unknownは捕食者の目で襲い掛かる。
ソリの方ではようやく気が付いたkaitoに三本目を一気飲みしたアタランテが襲い掛かっており、しかも四肢は彼女によって完全に抑えられているので抵抗しても振り払なえない。
そして本郷はライダーとなのだが、こちらはなぜか武器である鎖によって首を絞められており、流石にこれを見た彼女たちも同情と哀れみの意思が強かった。それでも、ライダーの目が虚ろで息も荒いのだが。
「んっ…存外力があるな。アンは」
「そうか?スカサハの肌柔らかいし、蒸れてるから掴みにくい…」
「マスター…最初はどこからかじられたい…ん?」
「い、いや何がどうなってる、というかなんでそんな目になってんだ!?」
「ではマスター。こちらも負けずに始めましょう」←Sに目覚めた
「い、いやその前にくるし―――」
「な、なんでそうなるんですか?!」
「知らないよ。取って来たのは彼だし」
「と、止める方法は!?」
「うーん…時間切れまで待つだけ」
「いつまでですか!?」
「丸一日かな。この後も強くなると思うけど」
「え、強くなるって…」
「副作用。アレ時間経つにつれて強くなるけど、段々と弱くなるから。今は五段階で言えば二段めくらいかな」
んじゃ。とさっさと逃げ出すダ・ヴィンチ。当然マシュ達も直ぐに逃げ出そうとするが、スカサハのルーンによって止められ、更にはライダーの鎖で拘束。
トドメとばかりにアタランテが酒を一人一本、人数分取り出し無理やり口に流し込む。
その後。会場がとんだ物になったのは当然いうまでもなく。事件直後にダ・ヴィンチはこれ以上の被害増大を防ぐために水の完全廃棄を決定。
しかし助けることはしなかったという。
また、その酒を造ったUnknownはスカサハ共々しばらくの間、謹慎処分を言い渡され、持っていた残りの酒全てを廃棄。
カルデアではその後一切の酒の醸造などを禁止したのだった。
この事件はのちに「新年酒酔い事件」として言われるようになり、こう名付けられた時にマシュ達はいつの間にか新年を迎えていたと知る。
当然。彼女らが酒を飲まされた直後の事は事件終結まで倒れていたスタッフも含め全員覚えていないが。
オマケ、その壱。
フェードアウトしていたマスターやサーヴァントたちの事。
蒼崎・アルトリアペア
「…マスター。ごはんが無くなりました」
「…厨房に行くぞ」
「了解です」
と言って厨房で残った料理を食べて寝た。
ちなみにライダーの宝具はセイバーが「全て遠き理想郷」で防いでおり、その後知らぬまにその場から去っていた。
ユキナ・マリーペア
「あら。マスター、もう新年ですわよ」
「本当だ…あけましておめでとう。マリー」
「はい…♪」
酒など使わずとも。ちなみに新年になったのを記憶している数少ないペア
Blaz・ディアーリーズ
「んふふふふふ…さぁ、お二人ともどうぞ…」
「え…ちょっまっ…」
「き、清姫さんその手に持っている空の酒瓶は―――」
別の意味でバーサーカー化した清姫に食われる。
ちなみにその後清姫の魔力が回復。ステータスもしばらく向上したトカ。
「っていうかさ。来年で人類滅ぶのにいいのかい、こんな事して」
「あ」←どさくさに紛れて逃げたエミヤ
(※Fate/GOでは2016年に人類滅ぶと宣告されています)
オマケ。その弐
各マスターのペア
Blaz・エミヤペア
互いに揃って出番少なかったけど
黒鉄刃・ジャンヌダルクペア
数少ないまとも・真面目ペア。時折服装について色々言われる
本郷(げんぶ)・メデューサペア
多少ボケさせろというお達しがあったので
朱雀・沖田ペア
仲が良いという事で下の名前で呼び合う関係に
蒼崎・アルトリアペア
寡黙な人だけど実は…ってね。毎回ありがとうございます。
kaito・アタランテペア
出番少なくてスミマセン…けどノッブとか凄いです
ディアーリーズ・マルタペア
おう。ディアよ、フラグ増設覚悟しとけや。あと、他の子も育てい
ユキナ(キリヤ)・マリーペア
イチャイチャギシギシ………よし。
Unknown・スカサハペア
絶対にブラックホース枠。だってアン姉さんだもの。
それではみなさん、よいお年を
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さーてさて今年もあと二日。
そんな訳でタイミングを見計らって投稿した次第です。
ちなみに各自ペアについては後書きをご参照ください。