No.821279

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

soranoさん

第141話

2015-12-28 00:06:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1211   閲覧ユーザー数:1125

~トールズ士官学院・1年Ⅶ組~

 

「フフ、国家の元首になっても全然変わっていないわよね、リザイラ。」

「というか国家の元首が今もリィンの使い魔をしている事自体がありえないのだがな。」

「そうだよね~。それどころかクロスベルの第一皇女まで使い魔にしているもんね~。」

「しかもリィンの”パートナードラゴン”のセレーネだって、養子とは言えメンフィルの皇族の上、アルフィン殿下とも結婚するからリィンの元に4つの国の皇族がいる事になるよね……」

「う”っ……」

リザイラがリィンの身体に戻るとアリサは微笑み、ユーシスとミリアム、エリオットはそれぞれリィンに視線を向け、視線を向けられたリィンは冷や汗をかいて唸った。

 

「メサイアと言えば……確か『西ゼムリア同盟』の数日後に行われたクロスベルの”二大皇帝”の戴冠式にもメサイアも出席し、その際にヴァイスハイト皇帝から正式にメサイアが”クロスベル第一皇女”であると認められたのだったな?」

「あ、ああ。それがどうかしたのか?」

ラウラの問いかけに答えたリィンは尋ね

「いや……もしかしたらメサイアなら、クロスベルが『西ゼムリア同盟』でエレボニアの領地の一部の返還等の要請に応じた事について何か知っているかと思ってな。」

「い、言われてみれば確かに……」

「今のメサイアさんの公式な身分はヴァイスさんとマルギレッタさんの”養子”―――――”クロスベル第一皇女”ですからね。皇帝の一人であり、父親でもあるヴァイスさんから何か聞いている可能性はありますね。」

ラウラの答えを聞いたマキアスは冷や汗をかき、プリネは真剣な表情で呟いた。

 

「―――メサイア!もしかして何か知っているのか?」

そしてリィンはメサイアを召喚して尋ねた。

「ええ。……ただ、皆さん――――特にエレボニアの人々は知らない方がいいと思うのですが……それでも構いませんか?」

「そ、そう言う言い方をするという事は……」

「どう考えてもエレボニアにとって、良くない内容なんだろうね。」

「フィ、フィーちゃん。」

メサイアの問いかけを聞いたセレーネは表情を引き攣らせ、フィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。

 

「そんな言い方をされたらむしろ知りたいよね~。」

「そうだな……それに今のオレ達ならどんな事を聞かされても大丈夫だ。是非聞かせてくれ、メサイア。」

ミリアムの言葉にガイウスは静かな表情で頷いた。

「……わかりました。まずクロスベルが『西ゼムリア同盟』に関してリベールが要請したエレボニアの領地の一部の返還等に応じた理由ですが……お父様――――ヴァイスハイト・ツェリンダー皇帝陛下から3つの理由があり、その理由があるからこそリベールの要請に応じたと伺いました。」

「え……3つも理由があるのですか?」

「ヴァイスの事だから、とんでもない理由だろうね、キャハッ♪」

「冗談になっていませんよ、エヴリーヌお姉様……」

メサイアの答えを聞いたツーヤは目を丸くし、口元に笑みを浮かべているエヴリーヌの言葉を聞いたプリネは疲れた表情で指摘した。

 

「まず一つ目ですが……クロスベル帝国は新興の国家――――それも他国に侵略して領地を奪い取った事で成り上がった国家です。混迷に満ちたゼムリア大陸の平和の切っ掛けとなる条約を守る為とは言え、他国から奪い取った領土の一部を返還するという殊勝な姿勢や寛大な心を見せる事を世間に印象付けし、周辺国家との関係を良くする……―――それが一つ目の理由です。」

「それは……」

「そ、そんな事を考えていたの!?」

「あの”鉄血宰相”すらをも超える狡猾さだな。」

「しかもそれで”一つ目”という事は、後の”二つ”は一体どのような理由なのでしょう……?」

「……残りの二つも何らかの思惑である事には間違いないだろうな。」

クロスベルの思惑の一部を知ったリィンは真剣な表情になり、アリサは驚き、ユーシスは目を細め、エマは不安そうな表情をし、ガイウスは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「そして二つ目に関してですが、エレボニアに返還した領地が関係しているのです。」

「エレボニアに返還した領地が関係しているって……」

「確か返還されたのはラマール州の”フォートガード地方”だったよな?」

「うむ。ラマール州の首都である”オルディス”に次ぐ都市で、オルディス程ではないが大規模な港がある上鉱山もある資源豊かな地だ。」

「普通に考えれば返還する領地ではありませんわよね……?」

メサイアの答えを聞いたエリオットが戸惑いの表情をしている中、マキアスの確認にラウラは頷き、返還された領地の事を知ったセレーネは不思議そうな表情で首を傾げた。

 

「……お父様の話では”フォートガード地方”の貴族達はユーディット様やキュアさん―――”今のカイエン公爵家”に従う事に反感を持つ者達が多いとの事です。」

「なっ!?カイエン公爵家は元々ラマール州の統括領主だったし、ユーディットさんがクロスベル皇家に対するカイエン公爵家の”忠誠の証”としてヴァイスハイト皇帝の側室の一人として嫁いだお蔭で、カイエン公爵家はそのままラマール州の統括領主を任せられた上、他の貴族達もそのままクロスベルの貴族として帰属する事を許されたんだろう?なのにどうして……」

メサイアの答えに驚いたリィンは信じられない表情で尋ねた。

「どうやら父親であられる”貴族連合”の”主宰”―――前カイエン公爵や兄君のナーシェン卿、そして公爵家に協力した貴族の方々を切り捨てた事もそうですが、前カイエン公爵の暴走によって貴族連合が敗北する状況を作った原因――――オーレリア将軍達を降伏させた件と元”四大名門”の”カイエン公爵家”の長女―――つまり”尊き血”を引く由緒ある大貴族の子女でありながら成り上がりの皇――――”尊き血”を引いていないお父様の側室の一人として嫁いだ事に反感を持っているようでして。また政治家としての経験が無く、しかも女性であるユーディット様がカイエン公爵家の”当主代理”を務め、更にはその妹であられるキュアさんが将来のカイエン公爵家の当主になり、ラマール州の統括領主になる事にも不満を持っているとの事です。」

「それは…………」

「ユーディット殿がその身でクロスベル皇家に”忠誠の証”を示して爵位を剥奪されて平民に落とされる可能性もあった彼らを庇った上メンフィルに裁かれたカイエン公達に関しては自業自得だし、オーレリア将軍達を降伏させたことに関してもユーゲント陛下達―――”アルノール皇家”の方々はオーレリア将軍達を降伏させたユーディット殿の行動は間違っておらずユーディット殿も内戦を終結させる切っ掛けを作ったエレボニアの恩人の一人であると公言されたというのに、ユーディット殿達を恨むのは筋違いだぞ。」

「しかも公爵家の当主が”女性”だからって言う理由だけ不満を持つなんて、私達―――女性を馬鹿にしているじゃない!」

「馬鹿じゃないの、そいつら。”男”だから偉いなんて、馬鹿過ぎる考え方だよ。」

「ユーディットさんの政治家としての能力は高く、ヴァイスさん達―――クロスベルも彼女の能力を高く評価して行政・外交の重要な役職に彼女に就かせた上、既に”実績”は十分残しているのに、まだそんな事を言っているんですか。」

「それに女性の有力者を侮辱する事はエレボニアの為にクロスベルとメンフィルに領地返還等を嘆願してくれたリベール王国のアリシア女王陛下やその跡継ぎであられるクローディア王太女殿下をも侮辱する事にもなりますよね……?」

「愚か者共が……その様子では内戦を引き起こした事やエレボニアを衰退させてしまった事にも、全く反省していないようだな。」

事情を知ったプリネとラウラは真剣な表情になり、エヴリーヌとツーヤは呆れた表情をし、エマは不安そうな表情で呟き、ユーシスは厳しい表情をした。

 

「その……ユーディットさんは大丈夫なのか?今の話だと他のラマール州の貴族達にも恨まれていると思うけど……」

「確かにその可能性は考えられますが、だからと言って彼らはユーディット様を含めた”カイエン公爵家”に危害を加える事はありえませんわ。ユーディット様はクロスベルの皇帝であられるお父様の数多くいる側室の中でも”第一側室”でもあるのですから。妃達の立場の中で正妃の次に高い位を持つ”第一側室”やその関係者に危害を加えれば、今度こそ自分達が滅ぶ事は目に見えていますし、お父様の側室であるユーディット様が自分達の事を庇ってくれているからこそ自分達は今も貴族でいられる事はわかっているでしょうから。その為にお父様はお母様を含めた他の側室の方達とも話し合ってユーディット様を”第一側室”にしたと仰っていました。」

「そ、そこまで考えていたの!?」

「……ちなみにユーディット殿はその事をご存知なのか?」

リィンの質問に答えたメサイアの話を聞いたアリサは驚き、ラウラは真剣な表情で訊ねた。

「ええ。ちなみにこれは余談なのですがユーディット様に訊ねて答えてもらった事なのですが、ユーディット様はお父様に持ちかけた取引――――ユーディット様がクロスベル皇家に対するカイエン公爵家の”忠誠の証”としてお父様に嫁ぎ、カイエン公爵家を保護してもらう取引をお父様が断る可能性はほぼ”ゼロ”であると確信していたそうです。」

「なっ!?ど、どうして確信していたんだ!?」

「”黄金の戦王”がリィンみたいに好色家だからじゃないの。」

(だから、何でそこで俺が出て来るんだよ……)

メサイアの話を聞いたマキアスは信じられない表情をし、フィーはジト目で呟き、フィーの言葉を聞いたリィンは疲れた表情をしていた。

 

「それも理由の一つですが、一番の理由はラマール州の統括領主であった”カイエン公爵家”にお父様達―――クロスベル皇家に忠誠を誓わせる事ができれば、ラマール州の貴族や平民の大半が納得してラマール州の領地経営をやり易くできる上、本来なら爵位剥奪どころか一家郎党処刑されてもおかしくない立場である”カイエン公爵家”を救った所か配下として新たな国造りに携わらせた事で、国内の人々は当然として、諸外国に対してもクロスベルが簒奪者の国ではなく慈悲深く、また懐が広い国であると印象付ける事もできる為、自分が持ち掛けた取引に応じてくれる可能性は極めて高かったと仰っていました。」

「………………」

そしてメサイアの口から語られた驚愕の事実を聞いたリィン達は絶句し

「そ、そこまで考えてメサイアのお父さんに取引を持ちかけたなんて……」

「あのカイエン公のご息女とはとても思えない程思慮深い方ですね……」

「ユーディット嬢は社交界でも”才媛”と名高い事で有名だが……兄上と同等―――いや、それ以上の慧眼の持ち主だな。」

我に返ったエリオットは表情を引き攣らせ、エマは戸惑いの表情で呟き、ユーシスは真剣な表情で呟いた。

 

「ふ~ん……なるほどね。要するに自分達の状況がわかっていない無謀で厄介な反乱分子をエレボニアに上手い事押し付ける事ができる上世間からしたらクロスベルが寛大な心を持っているように見られるから、資源が豊かな”フォートガード地方”をそんなあっさりと手放したんだ。」

するとその時クロスベルの思惑を理解できたミリアムは意味ありげな笑みを浮かべてメサイアを見つめ

「それはさすがに考えすぎだと思うのだが……」

「―――いえ、クロスベルは新興の国家です。国内を早期に安定させる為にも制圧した地域の貴族や民達の反発はできるだけ抑えたいというのが本音でしょうから、恐らくミリアムさんの推測通りでしょうね。そうですよね、メサイアさん?」

ミリアムの推測を聞いたガイウスが呟いた言葉を否定するかのようにプリネは複雑そうな表情でミリアムの推測に同意した後メサイアに視線を向けた。

「はい。そして最後の理由ですが……―――”次の戦争”に向けての足がかりです。」

そしてプリネの言葉に頷いたメサイアは驚愕の事実をリィン達に伝えた。

 

 


 
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