No.821066 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルートsoranoさん 2015-12-27 00:30:14 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1202 閲覧ユーザー数:1106 |
~トールズ士官学院・1年Ⅶ組~
「わわっ!?」
「ビックリした~!」
「というかもしかしてタイミングを見計らって現れたんじゃないの?」
リザイラの登場にエリオットとミリアムは驚き、フィーはジト目でリザイラを見つめ
「ハハ……まだ二日しか経っていないのにもう帰って来て大丈夫なのか、リザイラ?確かノルドの用事とメンフィルから依頼された件で戻って来るのに、数日はかかるって言っていたけど……」
「ええ。ノルドの用事の方は高原各地にそれぞれ住むノルドの民達の代表者と私の部下達―――イフリート達との顔合わせだけでしたから。ああ、後はノルドの地とエレボニアの地の国境を守る兵達の新たな責任者との顔合わせもですね。」
リィンの問いかけにリザイラは静かな表情で答えた。
「えっと……それだけですか?”国”になったのですから色々とやる事があると思うのですが……」
「うむ。リザイラ―――いや、リザイラ精霊女王陛下はノルドの元首なのですから、元首として多忙になるものだと我々も思っていたのですが……」
「私が望むのは人々が緑溢れたあの地で自然と精霊と調和して暮らし続ける事なのですから、特に何かを変えたいとは思っていませんし、自然や精霊達を脅かすような事をしない限り私はノルドに住まう人間達のする事に口出しするつもりはありません。―――それと呼び方や接し方は以前と同じで構いませんよ。精霊王女―――いえ、精霊女王たるこの私を今まで敬うような事をしてこなかった貴女達が今更そのような事をすれば天変地異が起こるかもしれませんので。」
リザイラの答えを聞いたエマは戸惑いの表情で尋ね、ラウラの問いかけに答えたリザイラは静かな笑みを浮かべてリィン達を見回した。
「よくそんな事が言えるわね……その天変地異を起こすのは貴女の方でしょうが。」
「実際リザイラは雪崩を発生させたり、竜巻を巻き起こしたりしたことがあるしな……」
アリサはジト目でリザイラに指摘し、マキアスは疲れた表情で今までの事を思い返し
「まあ天変地異くらい起こせないと”精霊女王”と言えないもんね。」
「”精霊女王”と言えばフィニリィさんもそうですが、もしかしてフィニリィさんもできるのでしょうか?」
「う、う~ん……多分できると思うけど……」
エヴリーヌは静かな表情で呟き、ツーヤの疑問を聞いたプリネは困った表情をしたが
(失礼ですわね!そのくらいの事、私にとっては容易い事ですわ!)
(わ、わかったから大きな声で念話を送らないで。)
自身の中で憤っているフィニリィの念話を聞くと苦笑し始めた。
「…………リザイラ、ずっと聞こうと思っていたんだが本当に独立したノルドの地の元首になってよかったのか?」
「ガイウス……」
リザイラを見つめて問いかけるガイウスをリィンは心配そうな表情で見つめ
「最初にその話を持ち掛けられた時、正直私は断るつもりでした。ですが時代が変われば、いつか必ずあの緑豊かな素晴らしい自然を手に入れようとする愚か者達が現れるというクロスベルの皇帝の言葉を聞いて考え直しました。自然や精霊達、そして彼らと調和して共に生きる人々の生活がこれからも維持できるようにする事もあの地を管理していた精霊王女―――いえ、”精霊女王”たる私の役目です。ですからあの素晴らしい緑溢れた地の平和を保つ為にも、受ける事にしたのですよ。」
「リザイラさん……」
「ほえ~……何だか今のリザイラ、王様っぽいよね~。」
「”ぽい”ではなく、元々精霊族の”本物の王女”だったろうが、阿呆。」
「フフ、ずっと気安い間柄で接していましたから、ミリアムさんの反応も仕方ないかもしれませんわね。」
リザイラの答えを聞いたプリネは驚き、呆けた表情をしているミリアムにユーシスは呆れた表情で指摘し、セレーネは苦笑していた。
「ノルドの為に本当にありがとう………―――そして改めてよろしく頼む。」
「ふふふ、私は”精霊女王”として当然の事をしただけで別に礼を言われるような事はしていないのですがね。――――それよりも、メンフィルから依頼された件の関係でノーザンブリアとやらの大地を見て来ましたが……まさかあれ程までに酷い大地がこの世に存在するとは思いませんでした。」
ガイウスに感謝されて静かな笑みを浮かべたリザイラだったがすぐに表情を戻して答えた。
「ええっ!?メンフィルの依頼って、ノーザンブリアに関係する事だったの!?」
「一体どのような依頼をメンフィルからされたのだ?」
リザイラの答えを聞いたエリオットは驚き、ラウラは真剣な表情で尋ねた。
「”塩の杭”とやらに滅びたノーザンブリアの地の自然を復活させる事です。」
「し、自然を復活させるって………!」
「め、滅茶苦茶過ぎるだろう……」
「確かノーザンブリアの大地の大半は”塩の杭”の呪いによって作物どころか、草木一本生えない塩の大地と化しているという事ですが……幾らリザイラさんが”精霊王”だからと言っても、さすがに滅びた大地を元通りにする事はできないと思うのですが……」
リザイラの話を聞いたアリサは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情をし、エマは不安そうな表情で呟いた。
「ふふふ、”精霊女王”を甘く見てもらっては困ります。リスレドネーの精霊達と共に”初源の歌”を奏でれば滅びた大地も時間をかければ、復活させる事は可能です。」
「しょ、”初源の歌”!?”大崩壊”によって破壊された大地を憂いた精霊達が歌い、破壊された大地を蘇らせたというあの伝説の歌をリザイラさん達は奏でる事ができるのですか!?」
リザイラの口から出た驚愕の答えを聞いたエマは信じられない表情で声をあげ
「そう言えば……以前リザイラ達が俺達やノルドの民達を襲おうとしていた貴族連合軍を殲滅した後、戦闘によって荒れ果てたノルドの地を復活させたな……」
「ああ……オレは今でも鮮明に覚えている。」
「まさに”奇蹟”を見ているみたいでしたわよね……」
リィンとガイウス、セレーネはかつての出来事を思い出していた。
「ちなみにどうしてメンフィルの依頼を請けたの~?」
「今のお前は曲がりなりにも”国家の元首”。ノルド精霊共和国の元首であるお前がメンフィルの依頼を請ければ、ノルド精霊共和国はメンフィル帝国の属国だと思われてもおかしくないぞ。」
ミリアムの質問に続くようにユーシスは真剣な表情で指摘した。
「私は対等な取引をしたまで。ですからそのような心配をする必要はありませんよ。」
「と、”取引”ですか……?」
「私達も初耳ですが……一体どのような対価をリザイラさんはお父様達に提示したのですか?」
リザイラの答えを聞いたツーヤは戸惑い、プリネは不思議そうな表情で尋ねた。
「もしノルドの地を侵略しようとする愚か者達が現れた際、メンフィルが無条件で援軍を出し、ノルドの地を守る事です。無論メンフィルが派遣した援軍の総指揮権は私という事も了承してもらっています。」
「ええっ!?ど、どうしてそのような事を……?ノルド精霊共和国も『西ゼムリア同盟』に調印したのですから、他国から侵略を受ける可能性は低いと思うのですが……」
リザイラの答えを聞いた仲間達と共に驚いたセレーネは驚きの表情で尋ねた。
「時が流れれば人々は変わり、考えも変わります。それは国の”皇”も同じ事。ノルドと隣接しているエレボニアとクロスベルの現代と次代の皇はあの条約を無視し、ノルドの地を侵略しよう等という事を考える可能性はほぼないでしょうが………その子供、子孫の代になればわかりません。」
「そ、それって……」
「……リザイラはエレボニアやクロスベルがいつか、『西ゼムリア同盟』を無視してノルドを侵略するかもしれないと思っているのか?」
リザイラの話を聞いてある事を察したエリオットは不安そうな表情をし、リィンは複雑そうな表情で尋ねた。
「ええ。対して遥かなる時が過ぎようとメンフィルには”今”―――当時を知る”魔神”や”神格者”、そして長寿の異種族達の皇族達がいるのですからこちらが出した条件を守ってくれる可能性は高いでしょうから、ちょうどよかったのです。しかもメンフィルは”全ての種族との共存”を謳う国。その中には当然”精霊”も入っていますから、精霊達の女王の一人たるこの私とした取引内容を違える可能性は低いでしょう?」
口元に笑みを浮かべたリザイラがリィン達に問いかけるとリザイラの狡猾さを知ったリィン達全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「まさかメンフィルの理想まで利用するなんて、恐れ入りました……」
「精霊って自然の事以外興味ないと思っていたけど、意外と黒いね、キャハッ♪」
我に返ったプリネは苦笑し、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべた。
「―――話を戻しますがノーザンブリアの地は余りにも酷い大地でした。あの大地を元の大地に戻す為に”初源の歌”で祝福を与えても、相当な年数がかかりますね。」
「……リザイラ達――――精霊達の力でもノーザンブリアの地を元通りにする為には時間がかかるのか……」
「でも、”時間がかかる”だけで”できない”じゃないから、充分凄いと思うけど。」
「そうだよね~。ちなみにどのくらいかかるの?」
リザイラの話を聞いたガイウスは重々しい様子を纏って呟き、フィーの言葉に頷いたミリアムはリザイラに尋ねた。
「そうですね……”初源の歌”は精霊達にも相当な負担をかけますから、精霊達の命の支障がないように定期的に奏でても恐らくあの地の大地を完全に復活させるには、長く見積もって10年前後と言った所でしょうか。」
「じゅ、10年!?たったそれだけの年数で何とかなるのか!?」
「たった10年で滅びたノーザンブリアの大地を甦せるなんて……」
「精霊達の力が偉大である証拠ですね……」
「ここにも非常識の塊がいたな。」
「ハハ……」
リザイラの答えを聞いたマキアスとエマは驚き、ツーヤは真剣な表情で呟き、ジト目で呟いたユーシスの言葉を聞いたリィンは苦笑していた。
「しかし何故わざわざノルドを他国からの侵略を守る為にメンフィルの力が必要なのだ?リィン達の話によれば内戦時にそなた達の力だけで”機甲兵”に加えて空挺部隊も所有していた貴族連合軍を圧倒したと聞いたが。」
「ふふふ、貴女達がそれを私に言うのはおかしいのでは?何せかつて”精霊王女”であったこの私に人に与えられた力は時には精霊をも超える事を証明して見せたのですから、いざという時の為に人の力も頼る事は当然かと思うのですが?」
ラウラの問いかけに意味ありげな笑みを浮かべて問いかけ返したリザイラの答えを聞いたリィン達――――以前ノルド高原での”特別実習”の間にリザイラと戦った事があるメンバーはそれぞれ冷や汗をかいて気まずそうな顔をしてリザイラから視線を逸らした。
「フフッ、理由はどうあれ滅びた大地が甦る事はノーザンブリアの人々にとっては嬉しい事だろうな。」
「はい……!きっとサラさんも喜ばれるでしょうね……!」
「でも、ノーザンブリアの大地が甦った事でサラがノーザンブリアの人達と一緒にメンフィルからの独立を主張して、反乱を起こすかテロを起こしたりするかもしれないね。」
ガイウスの言葉にセレーネは微笑みながら頷いたが、フィーが静かな表情で呟いた言葉を聞くとリィン達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「洒落にならない事を言わないで下さいよ……滅びた大地に自然が甦って豊かになった事で、なし崩しにメンフィル領になった事に不満を持っていたノーザンブリアの民達が反乱を起こす可能性やテロを起こす可能性は十分に考えられるのですから……」
「え、えっと……さすがに遊撃士に復職するサラ教官がそんな事に加担しないと思うんだけどなぁ……」
疲れた表情で頭を抱えているプリネにエリオットは困った表情で慰めの言葉を送った。
「さて。そろそろ私は失礼させてもらいます。ご主人様。」
「ああ。お疲れ、リザイラ。」
そしてリザイラはリィンの身体の中に戻った。
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第140話