No.819823

艦隊 真・恋姫無双 93話目

いたさん

今回も続きです。 12/21 華琳様の夢物語を少し修正しました。

2015-12-20 18:43:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1029   閲覧ユーザー数:932

【 束の間の休息 の件 】

 

〖  司隷 洛陽 都城 ??室 にて  〗

 

華琳「……………流石に肩が凝ったわね。 桂花、これで良かったの?」

 

桂花「はい……ありがとうございます、華琳様!」 

 

華琳「いいのよ。 これは──私に対する罰よ。 忠臣の心を疑い、軽んじた矮小な私を、更なる献策で支えてくれた桂花への……謝罪と受け取って欲しいの……」

 

桂花「………華琳様」 

 

華琳「──それにね……これくらい、私に償わせて貰わなければ、覇王など到底名乗れないわ。 それに、この策……北郷だけではなく、私にも益ある展開になるよう考えていたのでしょう?」

 

桂花「はい! この策は、私の言葉を聞き届けて下さいました御礼でもあります。 これで、華琳様の勢力拡大──幾つかの足掛かりが出来たかと……」

 

秋蘭「成る程………兎は、一つの巣穴に脱出路を三つ作るという。 だが、桂花は──諸侯、大将軍、司徒、北郷に恩を売り、華琳様の覇道を手助けする四つの道筋を作り出した。 まったく……桂花の頭の切れは我が軍一だ!!」

 

華琳「だけど、北郷には助けて貰ってばかり。 今回の件で、少しは返せたでしょう。 それに……あまり借りが多くては、後の風聞も心配の種になりかねないわ。 『曹孟徳の力では、覇を唱える事など無駄だ』などと……!」

 

春蘭「──御心配には及びません、華琳様! この春蘭の武と桂花の智、秋蘭や季衣達の活躍、兵士達の忠勤があれば、必ず華琳様の夢は叶います!!」

 

ーー

 

華琳達は、都城内の『部屋』で休んでいた。 

 

本来は専用の宿泊施設に居る所だが、一刀が何進に依頼して、援軍で参加した諸侯や陪臣達に、休息できる部屋を用意して貰った結果である。

 

そもそも………幾ら覚悟していたとは言え、夜中から明け方まで戦い抜き、その後に戻り報告文書を作成。 徹夜で完成させて提出した後、そのまま報告に集まる──全く寝ている暇が無い。

 

一刀も軍人ゆえに、その苦痛を察して、参戦してくれた諸侯専用の休息場所を願い出たのは当然。 また同時に、一刀側から簡単な御礼をしたいと云う申し出があり、その準備が出来るまで待って貰う為でもあった。

 

ーー

 

華琳「貴女の献策により……大将軍何進、司徒王允……そして他の諸侯に、私の名前が生涯忘れられなくなったわ。 そして、同時に貸しを作る事にも成功した。 これは、私の勢力拡大に、大きな貢献を成した事……間違いない!」

 

桂花「────はいっ!」

 

華琳「───何れ機会を見て、存分に利用させて貰うつもりよ! だけど……これは、どういう事なのかしらねぇ?」

 

桂花「………私も………予想できませんでした…………」

 

華琳「はぁ………ある意味、拷問に近いわよ………」

 

ーー

 

春蘭「あ、あの…………華琳様。 この部屋ですが………ものすごぉく……落ち着かな──『姉者!』───うおぉっ!?」

 

秋蘭「迂闊に机や椅子に触るな! 触って壊せば……国許の財政が一気に下がるぞ! もし、欲しい物があれば、私が取ってやる! だから、絶対に辺りの物を触るな、見るな、近付くなぁ!!」

 

春蘭「そ、そんなぁ………………」

 

ーー

 

季衣「……………流琉~~~」

 

流琉「我慢して! 季衣が珍しがって掴んだ物が壊れると──大変なんだよぉ! だから、大人しく正座して待ってて!」

 

季衣「兄ちゃんみたいに、ジッとなんてぇ無理! そんな事、出来ないよぉ────っ!!?」

 

流琉「………………大人しく待って! 季衣が動いて、何か部屋の物を壊せば……季衣が責任取って、一日か二日の間、絶食する事になるんだよ!!」

 

季衣「えぇえええ────っ!?」

 

流琉「ここに置いてある物は、全部──季衣の食事代より高い物なんだから! 華琳様に迷惑掛けたくなければ、大人しくしてなさいっ!!」

 

ーー

 

そして、一刀から相談された何進が協力しない訳がなく、皇帝である劉辯にお伺いが立てられ……王允に打診される。

 

そして、参戦した諸侯………特に華琳達に準備されていたのだが。 

 

ーー

 

華琳「幾ら何でも………『貴賓室』を用意されるなんて…………どうなっているの? これじゃ……余計に落ち着かないわよ………」

 

桂花「………こ、この机……桃花心木(マホガニー)じゃない! 春蘭が壊して弁償する場合………何年タダ働きすれば完済できるの!? ちょっと、その燭台弄るのは止めなさい春蘭! アンタが触って曲がったら何十金掛かるか──」

 

ーー

 

春蘭「うぅ~~~~~~! こんな場所では落ち着かん! 外に出ていた方が─────」

 

秋蘭「待てぇ、姉者! その出入口の扉は私が開ける! 幾ら厚みがある鉄刀木の扉と言えど、姉者の力では簡単に割れるかもしれん! もし割れなくても、傷一つでも付ければ弁償物だ! 私に任せて、姉者は待っていろ!!」

 

桂花「それに、アンタ………道を覚えてる? 迷っても迎えに行けないわし、一刀達の迎えが来れば、直ぐに行かなきゃならないのよ?」

 

春蘭「──────!?」

 

ーー

 

季衣「流琉~~! 退屈だよ! お腹空いたぁあああーっ!!」

 

流琉「ああ──っ! 椅子が壊れちゃう! 季衣、お願いだから静かにしてぇえええっ!!」

 

ーーーーー

 

華琳達が、この部屋になったのは……三人三様の思惑が一つになった結果。

 

何進『私に助けを出すとは………面白い。 その礼だ、この世で最後最高の贅沢を楽しむがいい。 だが、私は──容赦する気は無いのだがな!』

 

劉辯『………御遣い様を助けてくれたのなら、この城最高の部屋で身体を休めて貰わないと! これが私に出来る最大の感謝!』

 

王允『儂の謀を邪魔した挙げ句、恩を着せるような真似をしおって……。 ならば、儂からも意趣返しをしてやろう──!!』

 

そんな訳で、高価な家具類、豪華な調度品、美麗な装飾………正に当代を代表する、名工達の粋を集めて作られた『貴賓室』で、華琳達が休息する事になったのだ。

 

勿論──このような思惑が重なって、この結果が出た事など……知るよしもなかった。

 

 

◆◇◆

 

【 華琳の異変 の件 】

 

〖  司隷 洛陽 都城 貴賓室 にて  〗

 

私は……背後から聞こえる騒ぎに、少し大きな声で独り言を呟く。

 

華琳「このような貴重品がある場所で、もし、調度品や家具類を破壊、もしくは傷一つ付けた者が居れば……即日、私の下より去って貰うよ?」

 

『───ピタッ!?』

 

その一言で、後ろの騒動が鎮静化したわ。 まったく……民からの貴重な税を、こんな馬鹿な事で使用してたまるもんですか!!

 

私は、小言を言うために──顔を向ける途中……ある物に釘付けになる。

 

この部屋の出入口になる大きな扉。 

 

この扉は、私の城内の貴賓室より、遥かに歳月の重みを感じさせ、黒々で重厚な造りをした物であり、持ち手は、太い青銅で出来ている。 その扉も、逸品には違いないけど、今の私には興味は無いわ。

 

私の目が奪われたのは──扉自体ではなく、その扉に彫刻されている彫り物。

 

そこには、前漢時代の文官『東方朔』が、西王母から桃を盗み取り急いで逃げている図が浮き彫りされている。 伝説の話だけど、三千年に実がなる桃を三つも取り、長寿を得たという型破りの人物よ。

 

知識に富み、時の皇帝『武帝』には愛された人物だけど、奇行も多い事で有名な文官。 若い美女を取っ替え引っ替えしていたらしいけど、司馬遷とか署名人に不思議と人望があったわね。 

 

まるで、私の知ってる『??』みた────えっ? 今、私は何を──痛ぅ!!   

 

そんな事を考えていた折り、急に頭が痛くなる! 足が縺れ立てなくなり、床に片膝を着かなければ………居られない!

 

桂花「華琳様ぁ───」

 

春蘭「か、華琳様ぁ! しっかりして下さい!」

 

私は──桂花や春蘭の叫び声を聞きながら……意識を手放した。

 

☆★☆

 

私は───夢を見ていた。

 

周りは既に暗い月夜。 そんな中を川が側近くを流れ、少し開けた場所を木々に囲まれている。 ふと、空を見上げれば………大きな満月が、辺りを淡く照らし出していた。 

 

そこには『少年』と『私』が向かい合い……会話をする。 

 

??「──────」

 

華琳「────逝くのね……」

 

??「──────」

 

昔、麗羽から言われた覚えがあるが、『男と女が二人だけで、雰囲気の良い場所で居れば、心が躍るものですわ!』と言うらしい。 だけど、私と目の前の少年には……そんな艶っぽいものなど無い。

 

いや──少年の外見、声色は……何故か思い起こせないが、私と交えた感情、少年に想い寄せた心──『覇王 曹孟徳』として既に棄てた筈の感情が、その者と話す度に溢れ出そうになる。 

 

どうやら………私にとって……既に愛しき存在らしい。

 

表情が判らないように、私は後ろ姿を少年に見せて、話掛けている。

 

本当なら、どんな時でも相手に顔を向けて語る私なのに……何故か『少年』に顔を向けるのが──無性に怖い。

 

その少年が、この場から消え去る運命にある事が、私には何故か分かり──少年の心情を理解した上で、覇王の仮面を付けて応じた。 

 

────華琳としての心を奥底に秘めて。

 

彼に悔い無く──この地より去れるように………と。

 

ーー

 

??『さようなら………誇り高き王』

 

華琳『─────っ!』

 

??『………さようなら……寂しがり屋の女の子。 愛していたよ───』

 

華琳「─────っっ!!」

 

ーー

 

頭に直接響く──少年の言葉! 

 

まるで、この地に未練が無いような……軽く掛けてくれた台詞回しだが、私には理解できた。 彼が万感の想いで、私に残してくれた最期の絆。

 

慌てて振り返れば……困った表情を浮かべ……双眸より泪を流す『少年の顔』がある。

 

私は、思わず駆け寄り『少年』の身体を掴もうとするが……簡単にすり抜けた。

 

??『………………………』

 

『少年』が呟いたが……その言葉は私の頭に入らない。

 

『少年』の身体が、少しずつ薄くなり……虚空へと消えるのを黙って見ているしかなかったの。

 

完全に消え去ったとき、初めて仮面を取り………寂しがり屋の少女として、本音を吐いた。 

 

もう二度と………出逢う事がない………『少年』への想いが、私の中で膨らんだからだ!

 

ついさっきまで、側に居てくれた『少年』は……もう居ない。 何時までも側に居てくれると、約束してくれたのに、帰ってしまった『少年』が………居なくなった。

 

私は、何度も、何度も………その少年の名を叫んだ! 

 

涙が頬を伝わり、月明りを頼りに辺りを探しまわった!

 

私の身体に草木が傷付け、何時も手入れを怠らなかった自慢の髪が崩れても、探して探して……探し抜いた。 

 

少年が、この世に居る事は……絶対にあり得ない事であり、確かに消えたのを感じていたのに関わらず、それでも──かの『少年』が、何処かに隠れているのではないかと───万が一を期待したっ! 

 

居て欲しいと───切に願った、奇跡を信じたかったっ!!

 

………だけど、『少年』の姿は何処にも見当たらず………私は……暗き森の中で………ひたすら号泣するしかなかったのだ。  

 

かの『少年』が残した言葉通り、私は『寂しがり屋の女の子』となり──自分の心中を泣きながら吐き出すしか術がなかったのよ。 今の感情を……どう押さえればいいのか……全く理解が出来なかったのだから。

 

華琳『───ばか、ばかぁ………馬鹿ぁあああ───っ!!』

 

私の中に残るは──悲しみ、恨み、怒り───そして『寂しさ』──それだけだったの。 

 

 

────それだけ………だったのよ。

 

★☆★

 

この後、私は目を覚ますと──春蘭達が心配したように、私の寝台の周りに集り、見守っていてくれた。 

 

その中から桂花が進み出て言うには、私が倒れた後………何か魘されている様子で、泣きながら叫んでいたそうだ。 秋蘭が心配して医者を呼びに行ったり、桂花達が看病してくれたとの事。 

 

私は礼を述べて立ち上がろうとしたが、桂花から止められた。

 

秋蘭が言うには、体調が落ちている様子で、医者から安静を言われているらしい。 仕方なく……寝台に寝ている事にした。

 

それにしても───何故、このような事が起き、夢を見たのか解らない。

 

いったい………あの夢は何だったのだろうか…………?

 

 

◆◇◆

 

【 川内達の行動 の件 】

 

〖  司隷 洛陽 都城 別室 にて  〗

 

 

一刀は、謁見の間を出た後に、隊を二つに分けて行動を開始した。 具体的には『鳳翔、扶桑、山城、瑞穂、不知火、菊月、如月』で、とある部屋に移動。

 

赤城と加賀は──別件で用事を頼み、此処には居ない。

 

港湾棲姫、北方棲姫は、劉辯に呼ばれて、共に向かった後である。

 

残りの川内達は、一刀の案内により別室に恐々と入った。 別に変な意味で部屋に入れた訳では無い。 

 

川内達が──命令違反を起こした理由を聞く為だ。 

 

今回は、川内の活躍で深海棲艦の伏兵を発見、戦艦棲姫を轟沈させる殊勲を打ち立てた。 実際のMVPは、川内が得た事になるのだか──川内は一刀の命令を無視して行動を開始した違反事項により、次点の山城になった。

 

一刀「川内………何か説明する事は……あるかい?」

 

川内「はい──私こと川内は、提督の指示された作戦行動中、不審なる『光』と『音』を探知! 不審に思ったので、神通、那珂に暗号電信を入れて、独自の作戦を取ることに決定しました!」

 

一刀「鳳翔の報告からして、始めは半信半疑だったんだろう……別れの挨拶まで交わしたそうじゃないか?」

 

ーーー

 

一刀としては、当然の義務で、当時の行動を把握する為に質問するのだが、何故か川内は大慌て。 

 

川内『あ、あの時は確信もなかったし、もし……万が一轟沈したら、私の想いが知られず消えちゃうじゃない! そんな事を考えてて焦ったの! 本当に本当だって! そ、そんな怖い顔しないでよぉ!!』

 

後になり、神通達から当時の事を尋ねられた時、顔を赤くして小声ながらも早口で語り、一生懸命に弁明したそうである。 

 

ーーー 

 

川内「は………いぃええっ!? 鳳翔さん……全部喋っちゃいましたっ!?!? 私の言った事───!!」

 

一刀「鳳翔からは、そんな挨拶を交わしたと言う……だけだが」

 

川内「…………良かった………」ホッ

 

『全部聞かれていない』……その言葉に安心する川内だが……一刀の驚愕な発言を耳にして慌てふためき、その発言を遮る!!

 

一刀「………ふむ、何かあると言うなら、鳳翔に全部、洗いざらい聞いてみ『だ、駄目ぇえええ──聞いちゃ駄目ったら駄目ぇえええっっっ!!』──わ、分かった、聞かないから、聞かない!!」

 

川内「……………ゼッタイ……だからね…………?」

 

川内は、両目に泪を溜めて……上目遣いで見詰める。 一刀は、その顔を直視出来ず、顔を朱に染めて曖昧に頷いて了承するしかなかった。

 

★☆☆

 

一刀「ゴホン──それじゃ話の続きだ。 神通、那珂、夕立、磯風には、途中から暗号電信で攻撃変更を示唆。 川内が旗艦で臨時艦隊を編成して、叱責覚悟で向かった先に深海棲艦を会敵、攻撃に移った訳だ………」

 

川内「う、うん……私は夜戦の猛訓練してきたから……このくらい楽勝だったよ……。 あの……卑弥呼だっけ? あの人と闇の中を鬼ごっこやった事に比べればね。 それに、神通達も私ほどじゃないけど……訓練積んでるし……」

 

神通「私も………闇中で猛特訓した経験もあり、姉さんとの夜戦に付き合ってますので……このくらいの事は………」

 

那珂「もっちろん、那珂ちゃんのファンが大挙してきたらね? 直ぐに雲隠れできる練習を毎日続けてるんだよぉ! だって……那珂ちゃんは皆のアイドルだもん! ───てへっ☆」

 

夕立「………夕立はねぇ、前に立ち塞がる相手を排除しながら行こうと思っていたぽい。 そうしたら………」

 

磯風「そんな事をしていたら……身体が幾つあっても足りん。 夕立と合流してから、奴らの所持する『黒いマント』のような物を奪い取り、身体を伏せながら時期を見定め、川内の後に付いて行ったのだ!」

 

夕立「川内さんは……夜戦になると分かりやすいっぽい!」

 

川内「当たり前でしょ! 夜戦を私から取ったら何になるというのよ!?」

 

磯風「普通に任務をやればいい。 それとも………提督の嫁艦にでも志願するか?」ニヤッ

 

川内「────っ!?」

 

川内が再び顔を真っ赤にすると、一刀が手を叩き会話を中止する。

 

一刀「───そこまで! …………お前達には、反省という言葉は無いのか? 一歩間違えれば、川内達は全滅していたというのに。 これじゃあ、心配していた俺が、まるで馬鹿じゃないか!!」

 

川内「…………ごめん、提督。 心配掛けちゃて…………」

 

神通「ね、姉さんは……悪くありません! わ、私が………」

 

那珂「ここは……『艦隊のアイドル』那珂ちゃんに免じて……許して欲しいんだけどなぁ~!」

 

夕立「提督さん………ごめんなさい………」

 

磯風「一蓮托生だ。 言い訳も理由も……述べる事など無い。 速やかな処分を求むぞ……提督!」

 

ーー

 

一刀の悲しげな言葉に……急に萎れる川内達。 

 

そんな川内達に……一刀が背筋を伸ばし、姿勢を改めてから──口を開く!

 

一刀の口から出た言葉は………………!

 

ーー

 

一刀「───時間も無いから、先に結論を申し渡すぞ! 旗艦の川内、及び艦隊全艦───訓告処分のみで終わりだ! 以上!!」

 

「「「「「 ─────? 」」」」」

 

川内「…………な、何それ?」

 

神通「訓告……『提督からの注意』だけ………なんですか!?」

 

磯風「司令……しつこく尋ねて申し訳ないが、それはどうだろうか? ただでさえ、甘いと言われている司令だ。 ここは、ビシッと決めて規律の低下を防ぐのが最善策でなかろうか?」

 

一刀「そうは言っても……川内が行った事は、敵伏兵発見、戦艦棲姫を単独で轟沈させた殊勲がある。 これは──処罰を帳消しにしても、尚も余る殊勲なんだぞ? 軍規に照らして確認したから間違いないんだよ………」

 

川内「えぇ──? それじゃ……罰は無いの!?」

 

那珂「うん、良かったねぇ! 那珂ちゃんもぉ~超ぅ御機嫌っ!!」

 

夕立「やったー! 川内さん良かったぁあああっ!!」

 

磯風「…………そうか。 それならば………何も言えん。 取りあえず………良かったな?」

 

川内「う、うん………ありがとう、みんな! 私の心配してくれてぇ!! ───だけど、安心して! 私の夜戦は……永遠に、不滅──」

 

神通「姉さんっ!!!」

 

川内「────アッハイ! も、勿論、反省してるよ! 反省してますとも!! 提督に迷惑掛けないように……適度に欠かさず夜戦するからね!?」

 

一刀「まあ………取りあえず無理をするなよ。 それと──皆にも言うが、絶対に轟沈なんかしないでくれ! お前達は、俺の鎮守府所属する艦娘だ!」

 

「「「「「 …………………… 」」」」」

 

一刀「俺と苦を分かち合い、楽を喜びあった仲だ! 敵が──どんなに巨大で強敵だろうが、俺達は戦い生き残ろう! そして、もし……俺が………万が一戦死ししても、出来るだけ………この世界の平和を守ってくれっ!!」

 

「「「「「 ………………………はいっ!! 」」」」」

 

★★☆

 

こうして、川内の処罰が済むと、皆が鳳翔達の準備する別室へと向かった。

 

ーー

 

一刀「こっちだ、鳳翔達が立食パティーの準備をしてくれている! 俺達も手伝わないと!!」

 

磯風「そうか───ならば、この磯風が腕を振る『料理は、鳳翔に任せてあるから』………そうか、残念だ。 助けてくれた礼を、手料理で返そうと思ったのだがな…………」

 

夕立「───磯風さん、赤城さんと加賀さんの摘み食い防止を頼みたいっぽい! お願いしても?」

 

磯風「うむ──任せるがいい!」

 

ーー

 

颯爽と都城の通路を駆け抜ける一刀達。 だが、その行く途中で………川内の足が止まる。 後ろに居た神通と那珂が其々止まり………川内の様子を確認する。

 

川内は、妹達が二人が身近に来た事により、ホッとした様子を見せるが、直ぐに暗い顔をしたのだ。 

 

ーー

 

川内「……………提督が……自分が死ぬような事、初めて言ったんだよ。 いつも前向きな人だったのに。 まるで、あの○○鎮守府撤退の時と同じく……!」

 

神通「…………姉さん…………」

 

川内「提督が………アイツ……南方棲戦鬼に狙われている。 だけど……私達が正面から戦って勝てる相手じゃない。 アイツの強さは、私達以上なんだよ?」

 

「「 ───────!? 」」

 

ーー

 

しかし、奇しくも………一刀が残した遺言のような言葉に、川内達が気に掛かるのも無理はない。 鬼灯……南方棲戦鬼が放った言葉。

 

『…………北郷一刀……かの者の命数さえ………絶てば………フフフ……』

 

南方棲戦鬼を間近に見て、実際に会話して───南方棲戦鬼の実力を把握した川内だからこそである。

 

ーー

 

川内「それなのに、提督を守れるのかな? どうしよう……どうしようか?」

 

神通「……………姉さん、他の皆さんにも……お伝えしましょう!」

 

那珂「那珂ちゃんも賛成だよっ!!」

 

川内「だけど、提督にも……皆にも知らせたくない! まるで予測しているような……悲痛な顔で……遺言みたいに言われて。 本当に……提督が死んじゃたらって考えると…………!!」

 

神通「でも──これは姉さんの問題ばかりじゃないんです。 提督が狙われるのは、遅かれ早かれ分かっていた事。 寧ろ、敵の狙いが判明した分、私達も戦い易くなりました。 これは、逆に考えれると好機なんですよ?」

 

那珂「そうだよっ! こう言う時こそ、他の子達にも手伝って貰って……その間に那珂ちゃん達がねぇ? バワーアップすれば万事解決じゃないかな!」

 

川内「───うん! そうだね………そうしよう! 川内型の改造計画を立案して提督には内緒で、明石さんに頼んでみようか!!」

 

神通「はいっ!」

 

那珂「やったーっ!!」

 

ーーーー

 

そんな取決めを話していたら、到着が遅い川内達を心配して、わざわざ探しに来てくれた一刀より叱られる羽目になるのは御約束。

 

提督からの小言を聞きながら、川内は誓う!

 

必ず護って見せるとの覚悟を心に刻み込んで───! 

 

ーー

 

一説には………『忍』の文字は、『心』の上に『刃』を乗せ、己の心を律する意味だという。

 

余談であるが……川内の改二の姿が『忍の者』に似ている理由──それは、夜戦を好むだけではなく、味方の苦戦を少しでも救いたい為の──覚悟の現れだったのかも………知れない。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

未だに義輝記の内容に手が付かず、結局『艦これ~』になってしまいすいません。 それでも、義輝記は今年までに、投稿したいと思っています。

 

忍の文字の解釈は、昔読んだ漫画の解釈を変更して、作成した物ですから──実際の解釈とは違っています。 

 

今年も、後少しとなりました。

 

やり残した事が無いよう、健康に注意してお過ごし下さい。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
10
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択