No.816080

恋姫外史医伝・華陀と一刀 五斗米道の光と影 第6話

アキナスさん

不思議なおはなし

2015-11-28 09:05:34 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3423   閲覧ユーザー数:2827

一刀は趙雲を連れて、あてのない旅を続けていた。

 

村や街を巡っては病人の治療を続ける日々。

 

ある日、道に迷った一刀たちは周囲を見渡しつつ歩いていた。

 

「もう日が暮れるな。野宿の場所を探すべきか・・・」

 

そう一刀が呟いた時、趙雲が指を指しながら言った。

 

「一刀殿。あそこに村が」

 

趙雲の指し示す方向に眼を凝らすと、確かに集落らしいものが見えた。

 

「行ってみますか?」

 

「ああ」

 

一刀は頷き、趙雲と共に村を目指して歩き始めた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

完全に日が落ちた頃、二人は村へと到着していた。

 

しかし、村の中に人の気配は無かった。

 

「廃村ですかな?」

 

「そうらしいな・・・なら寝る場所だけでも貸してもらうとするか」

 

「・・・旅人かな?」

 

「「!!」」

 

一刀と趙雲がギョッとして振り向くと、そこにはカゴを背負った老人の姿があった。

 

カゴの中には、山菜やキノコがぎっしりと詰まっている。

 

「え、ええ」

 

「こいつは武芸者、俺は旅の医者だ」

 

「それはそれは。見たところ、宿泊する場所を探しているようじゃが・・・よければわしの家に来るかね?」

 

「いいんですか?」

 

「構わんよ。老人の一人暮らしでたいしたもてなしも出来んが・・・ついてきなされ」

 

そう言うと、老人はゆっくりと村の中へ入って行った。

 

「少々驚きましたな。全く気配を感じなかった・・・警戒していなかったからですかな?」

 

「・・・・・・」

 

「一刀殿?」

 

「いや、なんでもない」

 

 

 

 

 

 

老人の家へと招かれた一刀たちは、夕食をごちそうになっていた。

 

「さあさあ、山菜とキノコの汁じゃ。遠慮せずおあがんなさい」

 

「では」

 

「いただきます」

 

汁をすすりつつ、一刀は老人に質問をした。

 

「この村に住んでる人間は、他にいないのか?」

 

「ああ、そうじゃ」

 

「何故?」

 

「・・・・・・病じゃ」

 

「病?」

 

「流行り病でな。この村には医者もおらんかったからどうしようもなくてのお。子供も大人もみんなそれにかかって死んでいった・・・」

 

「あんたは大丈夫だったのか?」

 

「何故かわしだけは、症状が軽かったんじゃ。回復した後はもう二度とかからんかった」

 

「抗体が出来たんだろうな」

 

「じゃが、それが良い事だったのかどうか・・・・・・」

 

「?」

 

「いや、気にせんでくれ」

 

老人はそこで病の話を打ち切った。

 

食事を終えた一刀と趙雲は、寝具を借りてそのまま寝入る事にした・・・・・・

 

 

 

 

 

 

深夜

 

ふと、趙雲が目を覚ますと、話し声が聞こえてきた。

 

どうやら一刀と老人の声のようだ。

 

「皆、わしに生きてくれと言いながら死んでいったよ」

 

「・・・・・・」

 

「遺言じゃからと頑張ったさ。じゃが、わし一人生き残ってどうすればいい?この年寄り一人、ただ生きるだけの生活を続ける事がどれほどの苦しみか分かるかい?」

 

「・・・・・・」

 

「夢も希望も無い。死んで楽になりたい。そう思うことはそんなにいかん事かね?そう思うのは罪な事かね?」

 

それを聞いた時、趙雲は起き上がって言った。

 

「人は大なり小なり何か抱えているものです。ここまで生きてきたのなら最期まで・・・・・・」

 

「そこまでだ」

 

最後まで言わせず、一刀は趙雲のそばまでやってきて、肩を叩く素振りを見せた。

 

「痛っ!」

 

思わず後方に飛びずさる趙雲。

 

趙雲の首に一本の細い針が刺さっていた。

 

それを確認した趙雲は何故こんな事をしたのか一刀に問いかけようとしたが、まもなく猛烈な眠気が襲ってきた。

 

「話がややこしくなるから、今日はそのまま寝ててくれ」

 

そう言い放つと、一刀は老人のそばに座り込み、何やら話し始めた。

 

趙雲は必死に眠気に抗っていたが、一分も経たないうちに意識を手放す事となったのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うう」

 

妙な寒さを感じて趙雲は目覚めた。

 

寝ぼけ眼で周りを見渡した趙雲だったが、異常な周りの状況によってすぐさま意識は覚醒する事となった。

 

あまり良い家とは言えないまでも、隙間なども少なく家としての体裁を保っていたはずの老人の家が、見るも無残な廃墟と化していたからである。

 

「起きたか」

 

声のした方を向くと、一刀が出発の準備をしていた。

 

「・・・これでよし。出発するぞ」

 

「ちょ、ちょっと待った。この惨状はいったい・・・それにあの老人は?」

 

「道中で話すよ」

 

そう言うと、一刀は荷物を持って廃墟を出て行く。

 

状況の分からない趙雲は槍を手に、慌てて一刀の後を追うのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「まあ、一言で言うとあの爺さんは幽霊で、俺達は化かされたんだよ」

 

「ゆ、幽霊?」

 

「ああ」

 

「・・・・・・」

 

衝撃の事実に言葉が出ない趙雲。

 

「大丈夫か?」

 

「え、ええ・・・いくつか質問があるのですが」

 

「ん?」

 

「一刀殿はいつからあの老人が霊だと気づいていたのですかな?」

 

「最初に見た時だな」

 

「そんな早くに?」

 

「医療の場ってのは生と死を分かつ場と言っても過言じゃないからな。霊を見ることなんてそう珍しい事でもないんだ」

 

「なるほど・・・では、何故老人の誘いを断らなかったのですか?」

 

「何となくだ」

 

「はぁ・・・では私に針を打ち込んで眠らせたのは何故?」

 

「言っただろ?話がややこしくなるって」

 

「あの後いったいどんな話を?」

 

「・・・そのうち話すよ」

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

話は趙雲が一刀に眠らされた時に遡る。

 

「まあ、普通はああ言うだろうな」

 

「あんたは違うのかね?」

 

「・・・俺にそんな事を言う資格は無いさ」

 

「?」

 

「俺はこの手で人を殺した男だからな」

 

「・・・・・・本当かね?」

 

「ああ。助からない患者を楽に死なせてやった。人が死を選ぶ事が罪だというなら、こんな俺は大罪人だな」

 

「・・・・・・」

 

「ただ、どんな人間にも絶対に死ぬなと言いながら無理矢理生かそうと言うやり方が正しいとは俺は思わない。人が死を選ぶ事を望んでもいい場合もある・・・と、俺は思ってるんだがな。医者が考えていい事じゃないんだろうな」

 

「では、わしは死を選んでもいい人間なのかね?」

 

「生きていた時にそう望んでいたなら、手伝っていたかもな」

 

「・・・気づいておったのか」

 

「ああ」

 

「・・・・・・生きていてくれと言われたから、あの世で会って何と言えば良いのか分からなかったんじゃ」

 

「わしだけ残していったくせに何を勝手なことを!とでも言ってやればいいんじゃないか?」

 

「・・・そうじゃな。そうする事にしよう」

 

老人の姿が薄くなっていく。

 

 

 

 

「世話になったな」

 

 

 

 

「ああ・・・ところで、あんた自殺じゃなさそうだが、何で死んだんだ?」

 

 

 

 

「食中毒じゃ」

 

 

 

 

「・・・・・・アッチョンブリケ」

 

 

 

 

 

 

どうも、アキナスです。

 

正直更新の遅い事を謝るくらいしか書くことがないです。

 

ではまた次回

 

 

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
21
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択