【 奇策発動 の件 】
〖 司隷 洛陽 郊外の原野 にて 〗
曹操軍の兵士は、一糸乱れずに行動を実行し銅鏡を照らして、白波賊の策を暴きにかかる! 戦闘を行う者も隠れ潜む者も……急な光に動揺を始めた!
銅鏡は、丁寧に磨かれ光輝き、その鏡面には曇りなど何一つ無し。 焔の明りを反射して、闇に蠢く伏兵達を暴き出す。
だが、井桁に組まれた木材から焔が周辺を照らし、その周りを更に囲む兵士達の額には……汗が浮かぶ。 夜になったとはいえ、未だに気温は高い。
それに、遠くを照らす為には、高所に昇らないと届かない。 梯子を数人で押さえつつ、銅鏡を持って照らす行為は至難の業。
更に……各々持つ銅鏡は、焔の熱を帯びて高熱になり、持つ者を苦難へと誘う。 しかし……誰も手を離さないし、文句を言わない。
曹操軍の兵士は、誰も『あの時』の事を胸に秘めていた。
白波賊の侵攻を許した為、多くの民が犠牲になった……あの戦いの日。 曹孟徳と共に『未来に平和な世を創世する事』を……犠牲者に約した誓いの時。
───兵士達は、これを胸に刻み、互いに励まし鍛練してきたのだ!
その白波賊……しかも頭目が……目の前に見える陣営に存在していると、桂花より聞き及んでいるから尚更の事!
『元凶である白波賊を討てる、この機会! なんの戸惑いがあるものかっ!』
曹操軍の士気は鰻登りに高まり、肉体的限界を凌駕していた!
ーー
桂花「今が好機! 季衣、流琉……頼むわね!?」
「「─────はいっ!!」」
ーー
桂花は、その動揺を見過ごすなく、銅鏡を持つ兵士三百人を、季衣と流琉に百人ずつ預け、左右に展開させるよう命令。
ーー
桂花「季衣! 前進して、銅鏡から発する光を更に反射して、光が届かない場所に照射させるのよ! ──照らす場所は地面! 闇に身を隠す賊は、地面へ無様に伏せているから、その姿を存分に曝せて(さらせて)あげなさい!」
季衣「分かった! みんな──ボクに付いて来てぇ!!」
曹兵「───はっ!」
桂花「流琉 ──季衣達の死角になる場所を照らして! 季衣達を照らせば、季衣からも流琉 の死角を照らして、相互の敵の動きが分かるわ! 闇夜に隠れなきゃ行動できない馬鹿の思い上がり、粉々に潰してしまいなさい!!」
流琉「了解しました! 皆さん、私達も行きますよ!!」
曹兵「───おうっ!」
ーー
桂花の命令が、声高らかに闇夜へと響き、季衣と流琉の部隊が動き出す!
ーーー
ーーー
桂花の行った策は……昔、一刀が語った『天の知識』から編み出された物。
それは……巨大な塔より火光を鏡に反射させ、航海する船に陸標を示し、安全を守ったという『天の七不思議』の話である。
天の七不思議の一つ『アレクサンドリアの大灯台』の話を思い出した桂花は、暗闇を光で消し去る事を思い付いた。
本来なら、完全に包囲してしまえば、複数の鏡による乱反射で、更に光が増幅するのだが……そこまではしなかった。
揃えた銅鏡の枚数が足りなかった……訳ではなく、次の策に邪魔になるので……敢えてしなかっただけである。
その策も……一刀より聞いた戦術で………戦術名『釣り野伏』と言った。
◆◇◆
【 葛藤、戸惑い の件 】
〖 司隷 洛陽 郊外の原野 にて 〗
───今から数刻前
策の準備を用意するため、桂花達が原野を進んでいた。 曹操軍三百名ほども材木を担いで従い、井桁状の柱を準備するために訪れたのだ。
先に放った細作の道案内の中、暗闇の中を進む桂花の目には、二つの物が判断できた。 一つは白波賊とおぼしき篝火の光源。
もう一つは、複数の人数が篝火に向かうとおぼしき中、そこに『白き者』も存在し近寄って行く。 ………まるで、灯火に近付く白き蝶のように。
桂花達と篝火の間は、二里(約0.9㌔)ほどの距離。
曹操兵は、真っ直ぐに篝火に向かう白い者を……賊の仲間ではないかと訝る(いぶかる)が、桂花は『かの白き者こそ、白波賊を討伐に向かう御遣い達よ!』と即断する!
それでも戸惑う兵士達を叱咤し、『天の御遣いが、敵の目を己へ注視させる為に起こした行動を怯えてどうするの! 御遣いの気遣いを無駄にせず、自分達の役目を実行なさい!』と準備を強制的に始めさせた。
桂花の護衛兼運搬役で付いて来た季衣と流琉は、桂花の言葉を聞いて、一刀の身を心配すると共に……普段の桂花とは思えない荒々しさを感じた。
ーー
季衣「流琉、兄ちゃん………大丈夫かな?」
流琉「大丈夫……絶対、大丈夫。 あの……強い人達が……守ってくれているんだもの。 そうですよね………桂花さん?」
桂花「───二人とも、私語なんて厳禁! 無駄話なんかしてるなら、策の準備を優先させて頂戴……!」
「「────!?」」
ーー
季衣が一刀の身を案じ、流琉が心配する事は無いと慰め、桂花に同意を求めた。 しかし、桂花から返ってきた言葉は──冷たい言葉。
季衣「に、兄ちゃんの心配してるのに───っ!!」
流琉「桂花さん! 策を完成させるのは重要ですが……今の言い方は……!?」
桂花「………っ! ご、ごめんなさい………少し苛ついていたわ……」
流琉「桂花さん………?」
季衣「ボクは良いけど………どうかしたの、桂花ちゃん?」
ーー
二人の剣幕に、失言だったと謝罪する桂花。
何時もの自信溢れる桂花と違い……落ち着きが無い。 謝罪を快く受けとめて、更に桂花を心配して声を掛けると、桂花は、兵士に材木を積む作業の継続を命じ、二人に理由を話した。
ーー
桂花「……………私が華琳様に献策した策は………ね。 昔、一刀から聞いた天の国で使われた策なの。 一刀の祖にあたる家の御家芸で、寡兵で大軍を撃破する……戦術だって聞いたわ………」
季衣「それなら、何も心配する事なんかないよ! 兄ちゃんの居たとこで有名だったんなら、間違いないじゃないか!!」
桂花「………………そう、それを初めて聞いた時、私は戦慄したわ。 華琳様の軍なら間違いなく実行できる。 これを使えば、大陸統一も可能……そう考えたけど、結局機会が無くて………終わったの。 まさか、華琳様が………ね」
流琉「……………じゃあ……何で心配を………?」
桂花「この戦術は………一刀達を助ける目的で献策したのに………一刀を『囮』として利用しないければならなくなったの。 負けて傷付き……逃走している一刀達に……追い掛けて来る白波賊達を……包囲殲滅する戦術なのよ!!」
季衣「だけど……兄ちゃん達、あんなに強いじゃないか! 賊が今の人数より、もっと沢山増えたって大丈夫だよ!!」
流琉「私達は、目の前で……天の戦を拝見したんです! それなのに──負けるなんて考えられません!」
桂花「私だって……信じたくないわ! だけど………先程、思春の配下より連絡を貰ったのよ! ここより少し離れた後方に『深海棲艦』が居るって事を! 一刀達の力を上回る敵が、虎視眈々と潜んでいるらしいの!!」
「「───────!?」」
ーー
桂花は、冥琳より深海棲艦の事を聞いていたが、左慈も華琳達に話をしている。 どれだけ恐ろしい敵であり……普通の人の身では、かなり難しい対応を迫られる物だと語った。
ーーー
ーーー
桂花『本当に……一刀……いえ、天の御遣い達を、遥かに凌駕する実力を持つの? 深海棲艦って呼ばれる者達は!?』
左慈『一対一なら……北郷側が負ける! 勝てる見込みなど……無にも等しい! 奴らの攻撃力は、一撃で遥か遠くの山を崩す! その防御力は……お前達の武器を使用した攻撃さえ、多分……傷が付くのかさえ不明だ!』
春蘭『───馬鹿を言うな! 私と同じよな者達が対抗しているのに、私達が勝てないなど!!』
左慈『そういうがな。 相手は、貴様の戦った《天龍》の数倍の力があるんだぞ? 《天龍》にも負けそうになった貴様が、勝てると思うなど思い上がりだ! それでは、曹孟徳に勝利を捧げる事など──到底出来んと知れ!』
春蘭『────!』
ーーー
ーーー
艦娘達の活躍を、実際見聞した者にしか信じられない話だが、華琳達は一応……納得をしていたのだ。
そのため、桂花は策の運用方法を……苦渋の決断で変更する。
桂花の献策した『釣り野伏』は、一刀達と呼応して内外より挟撃して壊滅させる方法。 だが……深海棲艦の情報が入ったのなら、違う方法の『釣り野伏』を行うしかない。
前の世界で、一刀より聞いた『釣り野伏』には、幾つかの形態がある。
まずは、桂花の最初の予定だった……『囮』役に襲いかかる敵を包囲殲滅する基本形態。
応用には、仕掛けた『野伏』をワザと破らせ……敵が油断した時に再度『野伏』が現れて、包囲殲滅する『二重野伏』形態。
そして………囮役に囮である事を知らせず奮戦させて、敵が勝利を確信した頃合いに挟撃するという、完全な『餌』と利用し敵を釣り上げる『捨て駒』形態。
この形態は、囮役の奮戦で敵が傷付き弱り……後の伏兵に損害が減少する得がある。 しかし、囮役は………全滅する可能性が大。
つまり──『最強を誇る御遣い達が破られ、敵が隙を見せた時……全軍が力を合わせ攻め寄せなければ、深海棲艦なる強者に勝てないのではないか』と。
桂花の決めた戦術が、最後に語る『捨て駒』の形態だと──話を聞いて覚った季衣と流琉は、顔を見合わせ青ざめる!
ーー
季衣「に、兄ちゃん達を!? それじゃ……その策が成功しても、兄ちゃんが……死んじゃうかも───!!」
流琉「……………う、嘘…………」
桂花「私だって……他の手を考えたかった! 一刀を傷付けず救える策を……準備したかった! だけど、私は……軍師として……最善の策を編み出すのみ!」
季衣「だけど、兄ちゃんが死んじゃうかも知れないんだよ!? やっと──やっと逢えてたのに! あの頃より逞しくて格好良くなった兄ちゃんが……また居なくなるって!! どういう事なの、桂花ちゃん!! 」
流琉「…………私も納得できません。 兄様に対する私や季衣、春蘭様、そして皆さんの想い! 知らない桂花さんの筈、無いじゃないですか!!」
桂花「──そんな事……百も千も万も承知してるわ!! アンタ達より遥かに長く……最後まで……一刀の帰りを待ったのは、この私よ!」
「「─────!?」」
桂花「──皆と死に別れる時、何度……泣きながら頼まれた事か! 起き上がれる力も無いのに、握った手を痕が付く程……何度も握り返されたか! 全員が全員……一刀の帰る日を待っていたんだから!!!」
ーー
桂花は………グッと手を握り締める! 無念の余りに、歯を力強く噛み締めた為、口からも……僅かに血が流れ出た!
ーー
桂花「───だけどね! ……敵の戦力も分からず……一刀自身が臨んで戦地を向かったのよ! それに深海棲艦なんて厄介な者まで来てぇ、これじゃ……他に取れる策なんて──無いっ! 無かったんだからぁあああっ!!」
ーー
そう叫び………桂花の目から泪が溢れた。
桂花の口調が荒々しいのは………自分の無力さに苛立ちを感じていた事。
華琳や仲間の将に、その軍師としての才を賞賛されるが……その戦術は、一刀より伝えられた物ばかり。 自分の策など……ただの模倣に過ぎないと感じていたから。
それと、同時に──自分が華琳に進言した策が、やむを得ないとは言え………一刀達を犠牲とするしか出来ない、己の未熟さに………深い後悔を抱いていた為。
ーー
季衣「………………だ、だけど………兄ちゃんが、兄ちゃんが!」
流琉「───兄様ぁあああっ!!」
ーー
季衣も流琉も──前の世より、同じ男性を愛したネコミミ軍師の非情なる決断に、片言の言葉しか口から出てこない。
まだ、姿を見ただけで……語った事も、抱き締めた事も、『お帰りなさい!』と挨拶を言えていない二人なのに───!
『もしかしたら───これで永遠の別れ───?』
そんな事が頭に過り、双眸より泪が零れ落ちそうになる!
三人の後方より、一人の将が近付いた!
ーー
??「───ふざけた事を考えるな! アイツを倒すのは、この俺だ! あんな屑共に北郷を殺らせん! 」
ーー
後ろから聞き覚えがある声が──聞こえてきた。
◆◇◆
【 左慈よりの助言 の件 】
〖 洛陽 郊外の原野 にて 〗
そこには、腕を組み仁王立ちで、桂花達を睨む………左慈が居た。
ーー
左慈「貴様ら……北郷が……そんな柔い奴だと思っているのか? 前の世界のアイツはな、この俺と対等に戦い、尚且つ陰険で搦め手を好む于吉の計略を何回も破ったんだぞ! そんな奴の記憶を継承する男が、たかだか深海棲艦の一隻、二隻で殺られるものか!」
桂花「ア、アンタねぇ──自分で言っておいて、何をほざいてんの!? 深海棲艦が出れば……一刀達でさえ勝てない!! アンタが、そう、言ったのよ! まさか──『昨日? そんな昔の事など忘れたよ……』なんて言うんじゃ!?」
左慈「別に忘れてなど……」
桂花「これだから、管理者は何かと信用できないのよ! 貂蝉や卑弥呼みたいな外見から丸分かりの者、于吉みたいに性格が危ない奴とか……アンタも、どっか違う……ああっ! そう言えば……一刀を執拗に狙って!?」
左慈「───だ、黙って聞いて居ればぁぁぁ!! 貴様など──っ!!」
季衣「桂花ちゃん、抑えてぇ!!」
流琉「左慈さんも──どうか、止めて下さいっ!!」
ーー
二人が、左慈と桂花を抑えて引き離す!
普段でも、何かと桂花と左慈が衝突する事が多く、華琳も些かだが手を焼いていた。 似た者同士という者もいたが……面と向かって言うと叱られる故、黙っているようであるが。
ーー
左慈「これだから女って奴は──良いか、よおぉく聞いておけ! 俺は確かに北郷は勝てないと言った! だがな……一対一だ、一対一! 力が足りなければ援軍を呼べばいい! それで充分、勝算はあるだろうがぁっ!!」
桂花「…………………………!? ま、紛らわしい言い方しないでよっ! 私が──どれだけ、一刀の事を心配したのかぁ!!」
左慈「俺は、ただ単に……解りやすく伝えただけだ!」
季衣「…………にゃっ?」
流琉「季衣──大丈夫だって! 兄様は大丈夫なんだって!! 良かったぁ、良かったよぉおおおっ!!!」
ーー
喜ぶ三人に……左慈は『後ろに居る兵共が、気不味そうに待っている! 何とかしろっ!』と伝えた。
将軍と軍師と言われる者達が、好む男の生死を心配する事は……別段悪い事ではない。 だけど……八つ当たり気味に仕事を命じられ、終了してみれば、嬉し泣きに泣いてる最中……下の者としては、非常に声を掛けづらいのだ。
慌てて季衣と流琉が兵に、次の準備を命じに走り、桂花は急いで涙を拭う。
ーー
左慈「ふん! それに──面白い情報が于吉より入った。 あの集団に白波賊の頭目が三人居るらしい。 この策に、よほど自信があったようだが……それが命取りだ。 良かったな……貴様の鏡の策が、敵の術中を破る要になる!」
桂花「………良いわよ。 白波賊には、華琳様達との因縁もあるわ。 私の怒りも合わせて、白波賊にぶつけてやるんだからっ! 季衣、流琉──直ぐに用意して! 一刀達の行動を確認しながら、策を実効するわよ!?」
季衣「うんっ! 頑張るよ!!」
流琉「はいっ! 直ぐに準備しますっ!!」
ーー
三人は、其々の準備を兵士に命じて行う。
材木にも火が入るように油を準備、慎重に締まった銅鏡を取り出す。
桂花達に迷いは……既に無い!
自分達の力が、確実に一刀達を救う事が出来ると理解した。 桂花の説明で、あの陣営に白波賊の頭目が存在すると聞き及び、兵士達の士気も上がる。
左慈は、その様子を横目で見ながら、他の者達に聞こえないように呟く。
ーー
左慈「…………さて、俺も準備に入るか。 しかし、于吉め──この俺に、こんな事を言わすとは。 今度出会った時は………ぶっ殺してやるっ!!」
◆◇◆
【 撃破! の件 】
〖 洛陽 郊外の原野 にて 〗
ーー
中間棲姫「………………グッ! 詰マラヌ手ヲ………」
山城「こう言う事を『不幸中の幸い』って……言うのよぉ!!」
ーー
中間棲姫の貫手は、確かに山城に接触して………貫いた!
───しかし、貫いた所は『飛行甲板』!
山城が……戦艦から航空戦艦に改造されていたので、飛行甲板を楯代りに使用して、中間棲姫の攻撃から逃れた。 ただ、飛行甲板に大穴が空いたから、瑞雲や偵察機の発艦は、とうぜん………無理。
ーー
山城「扶桑姉さまを、御守りした甲斐がありました! もう……私、轟沈してもいいっ!!」
扶桑「山城、まだ敵艦の攻撃は続いているのよ! しっかり前を見てぇ!!」
中間棲姫「───忌マ忌マシイ……艦娘ドモ………!! ナラバ……当タルマデ追イ詰メテ───!?」
ーー
中間棲姫が、再度の攻撃を山城に加えようと……飛行甲板より手を引抜き、今度は両手で、貫手を敢行しようと試みた。
ーー
赤城「───第二次攻撃隊、全機発艦!」
加賀「新しく入った子達の力、存分に味わいなさい!」
ーー
一航戦の二隻が、中間棲姫より距離を開け、艤装である大弓の弦に……何時もと違う矢をあてがう!
漢中鎮守府で、艤装を研究する『工作艦 明石』が、『こんなこともあろうかと……用意してたんですよぉ!! さすがぁ私ですぅ!!!』と、この戦いの後の報告で、そう勢い良く叫んだ程の逸品。
今度の矢の羽根は──銀一色。
赤城と加賀は、この劣勢を覆す為、明石が準備してくれた『艦載機』を発艦させた!!
赤城「行きなさい───『月光』!!」
加賀「期待して……戦果を待ちます──『銀河』!!」
赤城から月光の小隊(三機編隊)が、加賀より銀河の小隊(二機編隊)が、暗闇の中でも中間棲姫を認識、しっかり捕捉して向かった!
どちらも、夜間戦闘機で名の知れた名機であるが……『銀河の調整は、少し複雑だったので、二機だけで……』との事で、加賀の方が少ない。 だけど、銀河は月光より性能が高いゆえ、加賀も納得済みである。
中間棲姫「バ……馬鹿ナ………!?」
中間棲姫は、この空母達の行動に驚愕し、自分の活躍する意義が無くなった事を覚る。 空母達から、夜間の艦載機発艦、攻撃は無いものだと認識し、飛び込んで来たのが──どういう訳か艦載機が発艦しているのだ!?
ーー
中間棲姫「前ノ世界トハ……違ウ!! コレデハ……轟沈サレテ………!!」
瑞穂「は、初めての敵艦に……初めての攻撃! み、瑞穂、参ります! ──お覚悟をっ!!」
中間棲姫「────貴様ハッ!!」
ーー
中間棲姫が慌てて逃走を図ろうとすると、瑞穂が後ろから声を掛かる!
瑞穂が震えながら……12.7cm連装高角砲を載せた三宝を向ける! その一見厳かに思えるが、拙い攻撃体勢! 中間棲姫の顔が焦りから怒りに変わる!
ーー
中間棲姫「貴様ノヨウナ……オ嬢ニ……我ラノ……哀シミ、苦シミ……何ガ解ル──!? 貴様ダケハ……ナンドデモ……シズンデイケ………!?」
瑞穂「────きゃああああっ!!」
ーー
瑞穂の物言い……その攻撃体勢……何もかも癇に障る!! 中間棲姫は、一つだけ装着していた、8inch三連装砲を瑞穂に向けて、攻撃を開始しようとした!
ーー
扶桑「……貴女の事は解らないけど──『苦しみ』『哀しみ』は理解できる」
中間棲姫「────ナニッ!!」
ーー
攻撃開始しようとする中間棲姫の横から──別の声がして、思わず顔を向けた中間棲姫。 そこには、自慢の火力……35.6cm連装砲を向けて、暗い微笑みを浮かべながら語る扶桑の姿!
ーー
扶桑「妹を奪われそうになった苦しみ、傷付けられた哀しみ。 だから………私は、貴女を赦さない! ────西村艦隊の本当の力………見せてあげる!」
中間棲姫「─────ウグッ!?」
ーー
中間棲姫の顔が、再び驚きの顔に変わり──扶桑の攻撃は開始した!
ーー
扶桑「主砲、副砲、撃てぇ!! 山城、瑞穂──続いてぇえええっ!!」
山城「姉さまに続くわ! 主砲、よく狙って、てぇーっ!!」
瑞穂「こ、攻撃開始──撃ち方、始め!」
中間棲姫「────! ガッーーーー!? 」
ーー
中間棲姫は、火力を自慢とする戦艦達(一部例外)に捕捉されて、被害を拡大させる! 普段の中間棲姫なら、艤装による驚異の守備力で、何十発も撃ち込まないと轟沈できないのだが……今は艤装を外していた!
今回の行動は、速さによる攪乱。 だから、行動に邪魔にならない浮遊要塞だけを連れて来たが、それが……己の首を絞める結果になる。
浮遊要塞は、赤城達の艦載機により既に撃ち落とされ、中間棲姫の身には、守備する鎧も、攻撃する武器も無い! 逃げれる最後の選択さえ……自分の感情を抑えることが出来ず、無様に攻撃を受け続けるままになった!
ーー
赤城「私達も攻撃に加わります! 敵艦の破損箇所を狙ってっ!!」
加賀「この世界の空母を……前の世界の空母と同じと考えたのが敗因! 慢心した──貴女の負けよ!!」
ーー
ーー
中間棲姫「ソ………ソンナ……! ワタシ……ガ………!?」ガクッ
砲撃を受け続け、耐えれなくなった中間棲姫は、膝を付いて倒れる!
山城「私達を侮った……それが貴女の不幸よ!」
瑞穂「あ、あの……そこは『敗因』では……………い、いえ! 意味は通じますので……はいっ!!」
中間棲姫「ソンナ…………ワタシガ……オチルト……いうの……? おちて……どこへ………?」
扶桑「貴女の哀しみ、苦しみ………どんな物か解らないけど、私が背負って生きて行くわ! だから、貴女は──何も心配せずに還りなさい! 皆が待つ……別の世界に!!」
中間棲姫「………………そう…………じゃ……お願……い………」
ーー
中間棲姫は、一言……そう言い残すと………光の粒となって消える。
深海棲艦の一隻、中間棲姫が──こうして轟沈して、その存在を早くも消した。 己の言っていた『慢心』の為に…………
そして──中間棲姫の居た場所に……一隻の艦娘が倒れていた。
彼女の名は、『巡潜乙型 3番艦 潜水艦 伊19(い19)』である。
ーーーーーーー
ーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
前に『原作キャラの死亡は無し』と明言していましたが……敵艦ばかりは、一部を除きになりますので、お伝えします。
後、『月光とか地上基地から飛び立つ物が、艦載機になるってどうよ?』と思われている方もいらっしゃると思いますが……話を面白くするための特別使用ですので、御容赦のほどを…………
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桂花の葛藤と原作キャラ死亡有り……です。
11/23左慈の台詞を物語り上違う為修正します。申し訳ありません。