No.808230

とある不死鳥一家の四男坊 4

ネメシスさん

みなさん、お金の使いすぎには気を付けましょう(迫真
書きあがってたものもほぼ投稿したので、今日はここまでにしときます。
……え、フェニックス家である必要性がないんじゃないか?
……フェニックス家であってはいけない理由もないですし(目逸らし
まぁ、とりあえず、見ていただいた方はありがとうございました。

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2015-10-15 21:21:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1645   閲覧ユーザー数:1616

 

 

 

「……金が……ない」

 

通帳を開いてみると残り少ない残金に、思わず意識が遠のきそうになった。

元々今生ではバイトもしておらず、小遣いによって賄われている。

貴族だからかかなり小遣いの額が大きいため、いい気になって使いすぎたのが悪かった。

しかし、Mショップで面白そうな商品が並んでたら、そりゃ買っちまうだろ!

ネット仲間の剣さんもかなり面白そうな魔法道具を色々作ってるから、つい買っちまうし。

この間買った“ポーチ型空間収納バック”がいい例だ。これは10m四方の空間がバックの中に広がっており、その中に好きなものを出し入れできるという某未来猫のポケットを彷彿とさせる一品だ。

ポーチ型というのも個人的にナイスだと思うところで、中々気に入っている。

流石にポケット状だと、気兼ねなく装備できなさそうだし。

外に持ち出して、腹にくっつけられたポケットからアイテムを出す姿を想像すると、少し滑稽に思える。

更に、限定100個というところも「これは買わなければ!」と思わせるうまいアピールだと思う。

現代日本人としての感覚からか、そういう限定商品というものにはそこはかとなく魅力を感じてしまうものだ。

……まぁ、そんな感じでいろいろと買ってたら残金が底をつきそうになってるという有り様だ。

次の小遣いの納入までまだかなり時間がある。その間にまた何か俺の心をくすぐるような品が出たらどうしようと、不安になっている俺はもはやMショップの魅力に取りつかれた一人の亡者のようだ。

まぁ、冗談はさておき。

流石にこれだけの残金というのは心もとないのも事実。

引き篭もり状態な俺に大金をくれる家族に金の無心など、流石にもってのほか。

ならば、前世同様に何かしらの割のいいバイトを探すしかないか。

 

「こんな時に便利なのが、ネット環境だよなぁ」

 

ネットを用いて何か割のいいバイトはないか探していると、気になる単語を見つけた。

 

「……魔導協会?」

 

その内容はいわゆるゲームとかに出てくるギルドのようなものらしい。

はぐれ悪魔の討伐依頼、鍛練相手の募集依頼、ペットの捜索依頼、護衛依頼等々、様々な依頼が出されている。

一般の依頼だけではなく、冥界の企業が業者から取り寄せできないものが出た際に、協会に依頼を出して所属している会員に現地からとってきてもらうこともあるようだ。

素材や魔法道具の買い取り、人間界、冥界の通貨の両替も行っている。

 

「いいな、これ」

 

ただでさえファンタジーな世界なのに、さらにはギルドのようなところまであるという。

これは一ファンタジー好きとしては、ぜひとも所属してみたいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、言うわけでやってきました魔導協会フェニックス領支部」

 

思い立ったら何とやら。

皆が寝静まっただろう深夜0時過ぎ。俺はフェニックス領にある魔導協会の支部にやってきていた。

夜に抜け出すというのは今までにも何度か経験がある。見張りもそこそこいたが、気配を隠して虚空瞬動を上空を高速で駆けることで見張りの目をかいくぐって抜け出している。

……なんというか、毎度のことながら結構あっさりと抜け出しに成功しているから、気付かれているけど見逃されているのではと思う時もあるが。

まぁ、それはさておき。

ネットで見た所、魔導協会は24時間営業しているらしいが、流石にこの時間になると人の数も少ない。

待合所みたいなところで数人たむろしているくらいで、あとは受付に数人の職員がいる程度。

昼位だと、もう少し人も多いのだろうか。

 

「魔導協会フェニックス領支部へようこそ。どのような用件でしょうか?」

 

「夜遅くにすみません。協会に所属しに来たんですけど」

 

「協会の会員登録ですね、承知しました。今書類を準備しますので少々お待ちください」

 

こんな夜遅くに来たというのに、受付の人は怪しそうな訝しがる様子も見せずてきぱきと書類の準備を行う。

ネットで見た通り、いろんな種族の人やいろんな事情を抱えた人も所属しているためか、こうやって夜遅くに会員登録をしに来るのも日常的なことなのかもしれない。

渡された書類に必要事項を記入していく。

 

「……」

 

手が止まったのは、名前欄の所だった。

オルトという名前は別にどこにでもいそうな名前だし気にしなくていいだろうけど、家名のフェニックスは流石にまずいのではないだろうか。

小さい頃から引き篭もっていたから顔は知られてないだろうけど、家名を出したら流石に家に確認の連絡が行く可能性がある。

そうなれば、もしかしたら止められる可能性だってあるため、そういう事態は御免こうむりたい。

 

「……よし」

 

そこで、俺はある意味なじみ深いものを偽名として名乗ることにした。

 

「記入が終わりましたか? それでは確認させていただきますので、失礼します」

 

職員の人に手渡すと、手慣れたように項目一つ一つを確認していく。

その時、多分名前の所を見たのだろうか、一瞬顔が引きつっているように見えた。

そして、その表情のまま俺に顔を向けてくる。

 

「えぇと、別段偽名を使うことも当協会としては許可されておりますので問題はないのですが、本当にこれでよろしいのでしょうか? ここに記載されたものは会員証に登録されて周知されることにもなりますが?」

 

「……」

 

俺が名前欄の所に書いたのは、名前は普通にオルト。

ミドルネームとしてH(半生(はんなま))、性としては焼鳥(やきとり)

全体を表すと、“オルト・H・焼鳥”という明らかに変な名前だった。

しかし、半生焼鳥というのは、ある意味俺のもう一つの名前ともいえるものだ。

この世界に来てから、ほぼネット生活が主となっていた俺にとって、ネットでのハンドルネームは新しく母からもらった“オルト・フェニックス”という名前と同等に親しみ深いものとなっていた。

まぁ、一般的にみてどう考えても変な名前だろうけど。

この職員はその変な名前に反応したのか、焼鳥がフェニックス家を揶揄したものと思ったのか。

反応的には前者だろうか。

 

「はい、構いませんよ?」

 

「そ、そうですか。承知しました」

 

特に悩む様子も見せずに即答する。

引きつった顔のままパソコンに情報を入力した職員は、どこか前世で使っていたようなスマホの様な機械を渡してきた。

 

「これが当協会に所属した証となります会員証です。これには会員同士の通話の機能や依頼の詳細についての情報、また協会のサイトに繋いで賞金首となっているはぐれ達の情報を見ることもできます。

こちらのカメラ機能をはぐれと思しき存在に使用しますと自動でサイト内の情報と照合され、登録されているはぐれならばすぐさまその情報を引き出すこともできるという優れものです。機会がありましたら是非ご利用ください」

 

……ようするに、中々に便利な機能のついている携帯をもらってしまったようだ。

 

「あと、もし紛失されてしまった場合はすぐに報告を入れてください。再発行の際には5000魔貨と、そこそこの値段がかかりますので可能な限り紛失されませんように」

 

「……そこそこ高いっすね」

 

「えぇ、そこそこ。流石に無料で再発行できるほど安価ではありませんので」

 

「デスよねー」

 

とりあず、登録も滞りなく終わらせることができたということで、さっそく依頼を探すことにした。

形式としては掲示板に張り出されているというものではなく、タッチパネル式の端末がいくつか配置されていてそこから依頼を受ける形式らしい。

……近代化されたギルドってイメージだな。

なんというか、どんどん俺の中にあるギルドのイメージが崩れていくような思いだ。

まぁ、確かに掲示板に紙とかで張り出されるよりは、こちらの方が便利ではある、のか?

とりあえず、今からでもできそうで、そこそこ実入りのいい仕事はないか探すことにする。

 

「……となると、やっぱりこういう系な依頼になるわな」

 

見つけたそこそこ実入りのいい依頼は、思っていた通りに討伐系の依頼だった。

依頼者は地方の領主。少し厄介な魔獣が現われて近辺を荒らしているらしい。

依頼料金は5万魔貨という、結構なお値段。

その魔獣とやらは、どうやら炎の魔法を主に使っているらしく、炎に対して耐性の高い俺とは相性もいい。

まともな戦闘は初めてではあるが、相性がいい相手であることもあるし、この依頼を受けることにした。

この情報をさっきの会員証に登録して受付の所まで持っていく。

 

「すみません、さっそくなんですがこの依頼を受けてみようかと」

 

「はい、依頼の受諾ですね。会員証をお預かりします」

 

俺から会員証を受け取ると、パソコンからコードを繋いで入力していく。

 

「はい、これで登録が完了しました。依頼料の清算に関しましては各協会支部でも行うことができますので、お近くの支部をご利用ください。

……それと、初の依頼で討伐とは大変ですが、頑張ってください」

 

「……どもです」

 

会員証を受け取ると支部から出る。

なんというか、応援されることにあまりなれていないから少し気恥ずかしくなってしまった。

だけど、中々悪くない気持ちだ。

 

「……執事の爺さんが朝食を持ってくるまでには帰りたいな」

 

会員証の時計機能で時間を確認すると、大体1時を少し過ぎたころ。

この地方の場所まで行って依頼を完了するのにどれだけ時間がかかるかはわからないけど、ばれないようにできるだけ早く帰りたいところだ。

 

「少し急ぐとするか」

 

家を出る時には意識して抑えていた魔力を十分に体に巡らせて、先ほど以上のスピードで空を駆ける。

この依頼は、俺がこの世界に生まれて初めての仕事。

できるならば成功して終わらせたいところだ。

会員証を片手に、魔獣の情報を再確認しながら目的地へ向かった。

 

 

 

 


 
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