焼ける臭いがする、今まで嗅いだことの無いような臭いだ。
思い出せない。
焼ける臭いがする、どこかで嗅いだことのあるような臭いだ。
思い出せない。
焼ける臭いがする、今度はよく嗅いだことのある臭いだ。
やっぱり・・・思い出せない。
平賀才人は燃えていた、比喩表現では無く彼の皮膚が髪が筋肉が燃えているのである。
土が燃えていた、空気が燃えていた。
平賀才人の体には苦痛を感じ取れない、体の危険信号のリミッターが壊れているから。
草が燃えていた、木々が燃えていた。
平賀才人は燃え尽きようとしていた、肉体もそして彼の意識も。
才人は誰かを思い出だそうとしている、その消えそうな意識の中で誰を想っているのか?
思い出そうとして、永遠に思い出せなくなった。
数多の世界に英雄と呼ばれる人達がいる、彼らは死線を潜り抜け決して死なずに英雄と呼ばれるまでの存在となる。
しかし、どんなに優れた英雄でも英雄になる前に力尽きたら英雄にはなれない。
もしも、伝説の使い魔と呼ばれるであろう少年が死線を潜り抜けられずに力尽きたら伝説の使い魔は存在しない。
今日もどこかで英雄が生まれ、今日もどこかで英雄が生まれない。
平賀才人はただの人間として消えて行く、今日もどこかで英雄が生まれないように・・・。
....第05話 ガンダールヴ 終
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執筆.小岩井トマト
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平賀才人は戦った自分よりも遥かに強い存在と。
少年は勇敢に生き足掻いた自分よりも遥かに大きな世界と。
ゼロの使い魔 AOS 使い魔召還編完結。