No.793269 九番目の熾天使・外伝 ~短編⑲~竜神丸さん 2015-07-31 16:19:55 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2349 閲覧ユーザー数:1086 |
「なるほど、これが“森羅の宝玉”か。確かに妙な力を発揮しておるわ…」
アスガルズの神殿に到着したブルゼルクは、地下階段を降りた先で見つけた“森羅の宝玉”をその目でじっくりと眺めていた。今も“森羅の宝玉”は緑色の輝きに満ちており、手にしただけで伝わって来る不思議な感覚にブルゼルクも一定の興味を示していた。
(権力者がコレクションに欲しがる訳じゃ……上手く使えば、あの最高評議会を支配下に置けるだけの力を手にする事も可能やも知れん。今のご時世、もはや最高評議会やマウザーなどに任せられん。そもそも人間なんぞに竜族である儂が従わされるなぞ我慢ならんわ)
人間は当てにならない。竜族である自分こそが支配者となり、世界に平穏を齎す事が出来る。かつて人間から虐げられて来た竜族である彼の思想は、もはやその虐げて来た人間と同等にまで成り下がってしまっていた。否、成り下がってしまった事にすら、彼は竜族のプライドが災いして自覚も出来ていなかったのだろう。
ブルゼルクは宝玉を台座から手に取り、神殿を立ち去ろうとする。
「さて、ミッドに戻るとするかのう……っと」
「ッ!!」
-ガキィ!!-
ブルゼルクが見上げた瞬間、天井に待ち構えていた二百式の太刀が思いきり振り下ろされた。しかしブルゼルクの左手に白刃取りされ、不意討ちは失敗に終わる。
「隠れるのなら、もう少し上手く隠れてみたらどうじゃ?」
「…やはり、okakaのように上手くは行かんか」
「邪魔するならば容赦はせん……ヌゥオォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
「!? チィッ!!」
二百式は素早く下がり、それと同時にブルゼルクも竜石を使い再び魔竜に変身。魔竜となったブルゼルクが巨体な所為で神殿の天井は崩れて崩壊し、二百式は崩れ行く瓦礫の中を掻い潜って神殿から脱出。彼が地上へと出て来た瞬間、ブルゼルクは瓦礫の中から飛び出し毒のブレスを放射する。
(竜人か、面倒な…!!)
『グガァァァァァァァァァァッ!!』
「飛べ、地走り!!」
ブルゼルクが放つ毒のブレスを跳躍して回避し、毒のブレスが行き渡っていない場所まで避難した二百式は太刀を鞘に納め、居合い斬りを繰り出し巨大な斬撃を飛ばす。飛ばされた斬撃はブルゼルクの身体に命中するも、それでもまともなダメージを与えたとは言い難かった。
「…やはり簡単には倒せんか。面倒な」
『それはこちらの台詞よ。貴様も大人しく、この毒の息吹きの前に葬られるが良い…』
「させっかよゴラァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
『!?』
≪Slide shooter≫
「んでもって…そぉい!!」
『ヌ、チィ…!!』
再び毒のブレスを繰り出そうとしたブルゼルクの顔面に、上空から急降下して来たmiriのマチェットによる斬撃が命中。それと同時に駆けつけた蒼崎が無数の魔力弾を生成した後、それらをハンマーで纏めて打ち放ち、ブルゼルクの首や胴体に次々と叩きつける。
「miri、蒼崎…」
「流石にこういうのは、複数で挑んだ方が良いだろう?」
「! okakaか…」
『おのれ、下等な人間が猪口才な…!!』
『『『『『フッ!!』』』』』
ブルゼルクの前に並び立つ二百式、miri、蒼崎、okaka。一体どのようにして、目の前にいる四人を屠ってやろうか。慌てず冷静に、思考を張り巡らせるブルゼルクだったが…
ツ カ マ エ タ ゾ
『―――ッ!!!』
「「「「…ッ!?」」」」
強大な殺気が、その場を一瞬にして支配した。
ブルゼルクだけでなく二百式達もそれを感じ取り、その場にいる全員が周囲を見渡す。しかしどれだけ周囲を見回しても、その殺気を放っているであろう人物の姿は何処にも見当たらない。
(な、何じゃ今の殺気は…!? 一体何処から…ッ!!)
ブルゼルクは思い出した。数十分前、自分が吹き飛ばした人物の事を。そして彼はようやく殺気が放たれている方向にバッと振り返る。
『ま、まさか…!!』
「……」
巨大樹の前にいたその人物―――東風谷裕也は、ただ構えていた。ブルゼルク達がいるであろう方角に、構えた二丁のビームライフルの銃口を向け、その銃口に大気中に存在するエネルギーを収集していく。
そして何より…
「……コロス……コロシテヤル……」
今の裕也に、理性という物は存在していなかった。
それらの感情が複雑に絡み合った結果、今の彼は遥か遠い先にいるであろう
「「裕也さん…」」
早苗とリッカの心配そうな声も、今の裕也には全く聞こえていなかった。二人の声すら聞こえないほど、裕也はとにかくビームライフルのエネルギーを集中させ続ける。
「コロス……コロス……コロス……コロス……」
「…おいおい、こりゃマジでヤバそうだぞ!?」
「ッ……全員、この場から撤退しろ!!」
「撤退賛成!!」
「くそ、何だってんだ…!?」
okakaは鷹の目で感知した膨大過ぎるエネルギーに青ざめながら離脱し、二百式や蒼崎、miriも同じようにその場から離脱。そんな中、裕也の殺気を当てられているブルゼルクは、全身の震えが全く止まらずにいた。自分よりも圧倒的に強大な覇気に、彼は完全に気圧されてしまっていた。
(恐怖…? この儂が、人間に恐怖しているというのか…? …否、あり得ん……そんな事が、そんな事があって良い筈が無い…!!)
『図に乗ってくれる……若僧めがぁっ!!!』
ブルゼルクは羽を展開して上空に飛び立ち、口の中に毒のブレスを溜め始める。
(やろうと思えば、森ごと毒の息吹きで滅ぼす事など容易な事……今度こそ確実に滅ぼしてくれようぞ!!)
『滅び行け、下等な俗物ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』
そして、最大威力のブレスを放射しようとした瞬間―――
「終焉『
―――世界を揺るがす一撃は、上空へと放たれた。
『―――ハ?』
ブルゼルクは、その一撃を感知する事が出来なかった。
というより、感知しようが無かった。
何故なら…
巨大過ぎる光線が、ブルゼルクの身体を丸ごと呑み込んでしまっていたのだから。
『バ、馬鹿、ナ―――』
いくら魔竜族と言えども、世界すらも揺るがすくらいの破壊力に耐え切れるほど万能ではない。
裕也の実力を侮っていたブルゼルクの存在は、彼が殺した
「…うっそぉん」
その光景は、一足先に離脱した四人の目にもしっかりと映っていた。巨大樹の下から上空の遥か先にまで続いている巨大な光線を前に、二百式は流れる汗が止まらなかった。
「馬鹿な……たったの一撃で、あの威力か…!?」
「お、おいおい、いくら何でも凄過ぎねぇか? 戦闘服を着てる俺まで、衝撃でまだ手が痺れてるぜ…」
「素であの破壊力だとしたら……もはや相当な戦力って、呼べるようなレベルじゃないな」
戦闘服で身を守っているmiriでさえ、その一撃が放たれる際の衝撃で身体に痺れが生じていた。それは他の三人も同じであり、okakaはもはや苦笑いしか出来ない。
そこで、蒼崎は重要な事に気付いた。
「…あれ、そういえばあのロストロギアは!?」
「「「…あ!?」」」
完全に頭の中から消え去っていた“森羅の宝玉”の存在。
もしや、ブルゼルクと共に消えてしまったのか?
そんな考えがよぎる四人だったが……その考えは、ある人物の言葉で否定される事になった。
「心配はいらない」
「「「「団長!」」」」
現れた人物―――クライシスは、少しずつ消えていく巨大な光線を見ながら告げる。
「“森羅の宝玉”は、あの一撃で消滅するほど脆い代物ではないさ」
「…これから、如何なさいますか?」
「“彼”の事は、後は私が引き受けよう。二百式、miri、蒼崎は先に
「「「了解」」」
「うへぇ、まだ仕事残ってるんですか…」
「安心したまえ、今回よりは簡単な任務の筈だ。それに今は、彼女が例の任務を実行してくれている」
「「「「?」」」」
ミッドチルダ、とある屋敷…
「グフ、グフフフフフ……今日も綺麗に輝いてるねぇ、僕のコレクションは」
太った体型をしている男性―――リムロ・ダズールは資産家だった。管理局の魔導師部隊を動かせるほどの権力を有している彼は、その権力で魔導師部隊を動かして様々な悪事を働いた。時には自分とって邪魔な人間を魔導師に暗殺させ、時には魔導師に誘拐させた女性を自分専用の性奴隷として調教し、時には今回のように貴重なロストロギアをコレクションとして集める。彼はこの日もまた、屋敷の一室にコレクションとして並べられた数々のロストロギアを眺めていた。
「マウザーに頼んだロストロギアが届けば、僕のコレクションはまた更に素晴らしい物となる。これから楽しみだなぁ……よし。そこの君」
「はい…」
「確か、名前はミレイシャだったかな」
上機嫌なダズールは、部屋に連れて来ていたミレイシャという名前のメイドを抱き寄せてから、ソファの上へと強引に押し倒す。
「さぁ、今日は僕と一緒に気持ち良い夜を過ごそうね…グフフフフフ♪」
「あん♪」
ダズールは舌舐めずりしながらミレイシャのメイド服に手をかけ、その胸元を左右に引き裂く。黒いブラジャーが露わになったミレイシャは妖艶な微笑みを見せながら、ダズールの頬にその綺麗な右手を伸ばす。
「あぁ、ダズール様……一つ、お願いをしてもよろしいでしょうか…?」
「グフフフ、何かな? 何でも聞いてあげるよ~?」
「ありがとうございます…♪ では…」
「とっとと死んでくれないかしら?」
「―――へ?」
それがダズールの最期の言葉だった。ダズールの首が胴体から斬り飛ばされ、ミレイシャはその手に持っていた刀の血を払い、死体となったダズールをソファから蹴り落とす。
「…ふぅ、任務完了ね」
ミレイシャ……否、OTAKU旅団No.04―――“朱音”は刀を鞘にしまった後、胸元の破かれたメイド服を脱ぎ捨てて下着姿になる。暗殺任務を引き受けていた彼女は、屋敷に仕えるメイドのフリをして潜入していたのだ。
「あらあら、こんなに集めるなんて大したものね」
部屋中に並べられているロストロギアのコレクションを見て、朱音は呆れながらも仕事服に着替え終える。そして通信を繋げ、
「こちら朱音、任務完了よ」
≪了解しました。後は我々、回収班にお任せ下さい≫
「よろしくね。私はこのまま
通信を切り、朱音はうーんと伸びてから魔法陣を展開する。
(このデブ、息が臭いったらありゃしなかったわ……この分はアン娘から搾り取って発散しましょうか♪)
今頃
彼女が立ち去った後…
『…なるほど、先客がいたか』
部屋にかけられてあった鏡に、黒い仮面の戦士が映っていた。
『
その黒い戦士は溜め息をつき、すぐに鏡から姿を消す。それから数分後に旅団の回収班が到着し、ダズールの屋敷に置かれていたロストロギアは全て
場所は戻り、アスガルズの森…
「……」
構えていたビームライフルが二丁共に地面に落ち、裕也はその場に膝をつく形で座り込んだ。ブルゼルクが消え去るのを確認した時点で、既に裕也の中に怒りの感情は消え去っていた。しかし、悲しみの感情までは完全に消えていない。それは当然の事だろう。倒すべき敵を倒したところで、失われた命が戻る訳ではないのだから。
「…最初から、こうすれば良かったんだ」
既に充血していた裕也の目から、再び一筋の涙が零れ落ちる。彼は今、自分の中に存在している冷静さを不思議に感じていた。
「何でだろうな……倒すべき敵は倒したのに……仇は討てたのに……俺、まだ悲しく感じるや…」
-キィィィン…キィィィン…-
「ははは」と乾いた笑みを浮かべながら、裕也は上空を見上げる。そんな彼の前に、消えずに残っていた“森羅の宝玉”がゆっくりと降下して来た。
「…“森羅の宝玉”…」
-キィィィィィィン-
「…!?」
緑色の光を放ち続ける“森羅の宝玉”が、裕也の両手の上にゆっくり収まる。すると“森羅の宝玉”がこれまで以上に輝きを増し、裕也を眩い光の中へと包み込んでいく。
(何故だ? この光……暖、かい―――)
真っ白な空間が、裕也の視界に映る。
彼の前には、見覚えのある後ろ姿があった。
一人の少女と、少女に懐く一匹の熊。
裕也は駆け出し、一人と一匹に向かって手を伸ばす。しかし、その手はまるで届かない。
少女と熊は、どんどん遠ざかっていく。
待って。行かないでくれ。
必死に走る裕也に、振り返った少女は微笑みながら口を開いた。
ありがとう、裕也
「―――ッ…待ってくれ!!」
「わひゃあ!? ゆ、裕也さん、起きたんですか!?」
「…あ」
早苗の驚く声が聞こえて来た。意識が完全に覚醒した裕也は、必死に伸ばしていた右手をゆっくり降ろし、その掌を見つめる。
「ここ、は…」
「裕也さん、神殿の中ですよ。半分近くは崩れてますけど」
「! リッカ…」
裕也と早苗の下に、食料の乗せられた籠を持ったリッカが歩み寄って来た。
「状況説明、いりますか?」
「…あぁ、頼む」
「…あの竜に化ける男が滅んだ後、裕也さんが倒れて一日が過ぎました。燃えていた森は鎮火しましたが……今でもまだ、森は荒れ果てたままの状態です」
「そっか…」
「森を元通りにするには、“森羅の宝玉”を元あった台座に戻すのが一番だと思います。しかし…」
「しかし……何だ?」
「“森羅の宝玉”はもう、台座には戻せません」
「? どういう事だ」
「それは恐らく……裕也さん、自分がよく分かっている筈です」
「何…?」
リッカに言われて、裕也は気付いた。疲れが全く無い。それどころか、ヤケに力が漲って身体が軽い。そこで裕也は一つの可能性に辿り着いた。
「宝玉が……俺と融合した?」
「正解よ」
その時、三人の前にスキマが開き、中から紫が素顔を見せた。
「紫…」
「話は二人から聞いたわ……残念だったわね。
「……」
「…説明するわね。今のあなたの中には“森羅の宝玉”が埋め込まれているわ。宝玉その物が、あなたを宿主として選んだのよ」
「! 俺を選んだ…?」
「そう。あなた達が戦った、あの時空管理局という組織が呼ぶロストロギアという代物……その中には自らの意志を持ち、宿主を選ぼうとする物も存在するの。その“森羅の宝玉”だって例外じゃないわ」
紫は人差し指で、裕也の胸を触れながら告げる。
「“森羅の宝玉”が求めるは、森に平穏を齎してくれる存在……さぁ、願いなさい裕也。今のあなたになら、“森羅の宝玉”は力を貸してくれる筈よ」
「願い…」
裕也は目を閉じる。
(俺が未熟だった所為で、アイツは死んだ……アイツはこれまでも、この森の為に戦い続けた…)
裕也達と出会う前から、森を守る為に様々な悪党と戦い続けて来た
(なら、アイツが守ろうとしていた物を、今度は俺が守り通す!! だから…)
「“森羅の宝玉”よ……俺に、力を貸してくれ」
その瞬間だった。
裕也の身体が緑色に輝き出し、そして緑色の衝撃波が放たれる。そしてその衝撃波は、荒れ果てたアスガルズの森全体に渡り…
「!? な、何ですか、この地響きは!?」
「これは……ッ!? 早苗さん、外を見て下さい!!」
「え……んなぁ!?」
神殿の外を見て、早苗とリッカは驚愕する。
「森が、再生していってる…!?」
黒く焼き焦げていた筈の木々が光に包まれ、急速に本来の姿へと再生し始めたのだ。それは他の木々も同じで、荒れ果てた筈の森はあっという間に再生されていく。
そして、数分後…
「す、凄い…」
アスガルズの森は、この短い時間で元通りに復活した。緑豊かな森の中には光が戻り、消滅した筈の妖精達も楽しそうに森の中を飛び回っている。
「これが……“森羅の宝玉”の力…」
「驚いたかしら? 言っておくけど、宝玉の持つ力はまだまだこんな物じゃないわよ」
「……」
そんな中、力を使い終わった裕也も神殿の外に出て、何処かに向かおうとしていた。
「早苗、リッカ……頼みたい事がある」
再生したアスガルズの森、巨大樹の前…
「…ここか」
早苗とリッカの案内で、裕也は巨大樹の前へと辿り着いた。そんな裕也の前には…………盛り上がった地面の上に立てられた、二つの墓石が存在していた。
「…アイツ等、ここに眠ってるんだな」
「はい」
早苗が頷き、裕也は二つの墓の前に座ってから両手を合わせ、静かに黙祷する。
「…紫」
「…何かしら?」
黙祷を済ませた裕也は立ち上がり、振り返らずに紫に告げる。
「俺は強くなりたい。自分の力に二度と慢心しないように……もう二度と、大事な人を失わないように」
「…そうね、今のあなたはまだまだ未熟。それ故に、まだまだ伸びる事が出来るわ」
紫は何かに気付き、そちらに目配せをする。
「だからこそ、あなたは対面しなければならない。この広い多次元世界における……一人のとんでもない“怪物”に」
「?」
「怪物呼ばわりとは酷いじゃないか、八雲紫」
「「「!?」」」
その声と共に、裕也達の前にクライシスが姿を現した。気配を感じ取れなかった事から、三人は一斉にクライシスを警戒する。
「…アンタ、一体何者だ」
「私かね?」
「私の名はクライシス、OTAKU旅団を率いる者だ」
そして東風谷裕也は、一人のサポートメンバーとしてOTAKU旅団に関わる事になった。
彼はコードネームとしてFALKENと名乗り、様々な任務に出てはその圧倒的な戦闘力で敵を蹂躙し、戦果を挙げていってみせた……最も、彼個人が発動するスペルカードはあまりに強力過ぎる事から「この多次元世界にそう何度も影響が出ては困る」という理由から、クライシスによる封印処理を施されてしまった訳なのだが。
しかし今の裕也には、やりたい事があった。
ただ強くなる事だけじゃない。
彼がやりたかった事は、彼が正式なナンバーズメンバーに加入する際に実行された。
「ではFALKEN、君を正式なナンバーズメンバーに加えようと思う」
団長のクライシスを始めUnknown、デルタ、朱音、二百式、ロキ、miri、蒼崎、okakaそしてFALKENの十人がこの部屋に集まっていた。理由は一つ、FALKENの正式なナンバーズメンバー加入を称える為だ。
「はっはっは、やったじゃねぇかFALKEN!」
「まぁ、あんだけ戦果を挙げればそりゃナンバーズ入りもするわな」
「はん……ま、精々旅団の為に役立ってくれや」
okaka、miri、デルタがそれぞれ語る中、FALKENは閉じていた目を開いてから口を開く。
「団長……一つ、よろしいでしょうか」
「む、何かね?」
「このナンバーズメンバー加入を機に……俺は、自分のコードネームを変えようと思います」
「!」
その言葉に、FALKEN以外の全員が一斉にFALKENの方を見据えた。
「え、コードネーム変えるの?」
「別に良いとは思うが……じゃあ俺達はこれから、お前を何て呼べば良いんだ?」
Unknownとロキが問いかけ、数秒が経過してからFALKENは告げた。
「初めて団長に勧誘された時から、ずっと決めていた事があります。もし俺が、今後ナンバーズメンバーに加入する事になるとしたら……その時は、俺の新しいコードネームとして、
「「!!」」
その言葉を聞いて察したのか、okakaと蒼崎が顔を見合わせる。FALKENは語り続ける。
「
その名前を忘れる訳にはいかなかった。
だからこそ彼は、その名前を名乗ろうと決めたのだ。
かつて自分と出会った少女が名乗っていた、あの“番犬”の名前を。
「ガルム……それが俺の、新しいコードネームです」
それこそが、自分がやろうと決めた事なのだから。
END
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幻想郷の番犬 後編