(5:48)
天空電鉄の朝は早い。まだ夜もあけきらない頃から一日が始まる。
市民の足である電鉄は、この頃からすでに動き始める。
「車輌番号
詰所から出てきたヒューマンの女性…運転士・油木佑が、電車の前に立ち各部の点検を始める。
外観の点検が終われば、次は扉を扱い客室内の点検、そして運転機器類の点検だ。
パンタグラフが上がり、室内灯がともる。コンプレッサーが始動しはじめ、冷たい鉄の塊が使命を帯びて目覚める。
構内をゆっくり動いたところで3803A-C-Bは動きを止めた。
車掌台にやってきたのはサウリアンスロゥピィの女性・溝之口千夏だ。
「おはようございます佑さん!」
「おはようございます千夏さん!」
元気に挨拶を交わす二人。
(8:25)
朝のラッシュアワー真っ只中である。
佑の運転する3803A-C-Bは全長およそ28m、そんな3連接車、天空電鉄でもかなり大型の電車であるにもかかわらず、
この時間帯ともなると乗客が押し寄せ、すし詰めの状態になる。乗客を捌くのに必死の千夏。
「ご乗車になりましたら中ほどまでお進みくださーい!扉閉まりまーす!」
扉が閉まり、電車は天空駅前を発車。ほどなく森野中線へと入る。
都心から離れる方向であるのにこれほどの乗客がいる理由。それは途中通過する雨天区が工業地帯であることによる。
工場勤務の労働者が多いのに加えて、沿線の学校への通学時間帯も重なる。だから余計に混雑するのだ。
「はい、次止まります」
乗客がブザーを押したのに反応し、アナウンスを入れる佑。
やがて電車は産業団地前駅に停車する。このあたりは新設軌道であり、法規上も鉄道となる区間ゆえ、市内線とはまた違った趣だ。
反対方向のホームからはちょうど、もと札幌市電A820形を譲り受けた2301A-Bが走り出していた。あちらも20mクラスの車内が超満員だった。
(13:10)
風天車庫前・某ラーメン店にて。
「ふぃーっ、今日も激混みだわね千夏さん」
「もうクタクタだよ。こういうときのラーメンってまた美味いんだよね!」
午前の乗務を終えてほっと一息の佑と千夏。このあと16時までは乗務がないため、夕方に備えてがっつりラーメンを食べる。
電車の運転士や車掌の業務は、他の人たちが想像する以上にハードでシビアなのだ。
もちろん体力も神経も人並み以上に使う。
だからひとしきり乗務を終えた後は、しばらく休んでおく必要があるのだ。
途中での乗務員交代も決して珍しくない。
「さてこれからどうする?」
「そりゃもうこのあとは昼寝でしょうw」
「賛成。…あ、ごちそうさまでした!お代置いていきますねー」
「したー。贔屓にしてるよ大将っ!お代置いとくね!」
二人はラーメン屋を後にした。これが路面電車・天空電鉄の乗務員の日常…そのほんの一部である。
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■出演
佑:http://www.tinami.com/view/748897
千夏:http://www.tinami.com/view/787556