No.788053

艦隊 真・恋姫無双 66話目

いたさん

結局、今回で収まりきれず……次回へ。

2015-07-07 15:49:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1413   閲覧ユーザー数:1223

【 事前準備 の件 】

 

 

───時は少し戻り、皇帝選択の儀式に入る前。

 

 

〖 洛陽 都城内 とある部屋 にて 〗

 

一刀「アリゾナ……話があるんだ……」

 

アリゾナ「えッ!? 何、何ぃ!?」

 

一刀より二人で話したいと言われ、顔を赤らめて付いて行くアリゾナ。

 

部屋の中で誰も居ない事を確認すると……開口一番に話したのは……符丁の事だった。 急に『あの言葉』を言われたら……艦娘の中で直接の被害艦『アリゾナ』が、動揺するのは見えていたから。 

 

その為、この符丁を使用する事を説明するために呼び寄せたのだ! 

 

ーーー

 

アリゾナ「───そ、その符丁でぇ攻撃合図ッ!? どうして……変更しなかったの!? 私に対してTerribly rude(とても失礼)で、私や亡き乗組員たちに対して侮辱じゃない!? 幾ら提督の考えでも……酷い、酷いよ!!」

 

一刀「……アリゾナも大変だったけど……その苦しみ、痛みは、大空襲等で本土に倍返しで返された。 戦後の道程も……生半可では復興できないほど。 だから、この言葉には……辛い後悔と戒めの意味も込められている!」

 

アリゾナ「…………じゃあ、何で……双方忌み嫌う符丁を使うの……?」

 

一刀「これは、国や亡くなった者や遺族にとっては、重い……悔恨の言葉だと思う。 出来れば……二度と使って欲しくない言葉だと………!」

 

アリゾナ「……うん」

 

一刀「だが、俺は、この言葉を敢えて使用したい!」

 

アリゾナ「────!」

 

一刀「双方に忌まわしい言葉である『新高山登れ』を、ただ封印しても忘却されてしまう! だから、この世界で……敵国同士だった艦が、手を取り合い開戦した……意義深い言葉へ変換して……この世界に残したいと思うんだ!」

 

アリゾナ「…………」

 

一刀「これが……俺の考えなんだよ。 しかし、アリゾナが反対するなら、別の符丁に変える! これは、俺の我が儘に過ぎ『了解したわ!』──!?」

 

アリゾナ「はぁ~! 全く……提督は人が良すぎるわよ? サラが聞けば喜びそうだけど……ビッグEやスチュワートがなんて言い出すか……。 本当に困った事……考える提督よね? でもね……私は賛成……ふふふっ!」

 

一刀「……良いのか? 本当に……?」

 

アリゾナ「提督……ぅ? 私の事を甘く見てない? 私だって……軍艦だし乗組員の皆も軍人だから、こうなる結果も覚悟していたわ。 ただ、その『言葉』を面白がって使われるのが嫌なの! それだから……ね?」

 

一刀「───しっかり、肝に銘じる! 忘れない事を!!」

 

アリゾナ「………だけど……悔しいわね……。 あぁあああ───ッ! ものすごくぅぅ……悔しいぃいいいッッ!!」

 

一刀「な、何がだぁ……?」

 

アリゾナ「私や提督の国に……当時、提督のような人が……上に居てくれたら、互いの国が戦じゃなくて、別の何かで……競えたかも知れないのに!」

 

一刀「そう……なのか?」

 

アリゾナ「そうよ! そうなっていればね? 私も……亡くなった皆も。 冷たい海の中で眠る事なんて……なかったのかも知れない。 多くの者たちを犠牲にしなくて……良かったのかも。 そう思わずには……居られないのよ!」

 

一刀「……………」

 

アリゾナ「スチュワートたちには、私から話しておくわ! 提督が話すより、被害艦の私が話した方……が納得すると思うの!」

 

一刀「あぁ……何から何まで……すまないな」

 

アリゾナ「心配しないで……提督。 私は大丈夫だから。 (うふっ……提督に負い目を負わせれば……必ず私へと意識が行く! そこを上手くattackすれば……!)」

 

★☆☆

 

雷「………響、ちょっといい? これって……私の聞き間違い?」

 

響「いや……間違いない! これが司令官より渡された『物』だ……」

 

暁「だ、だけど……本当に? これが暁たちの艤装……というか武器!?」

 

電「《手拭い》と《竹筒に入った水》……なのです………」

 

雪風「まさか、素手で攻撃した後のアフターケア用なんですか? 血で汚れたら手を洗いなさいって意味とかぁ?」

 

スチュワート「こんな物で、どうやって戦えばいいのよ!?」

 

響「投擲、打撃、射撃、防御、格闘兵器代わりと色々と………」

 

「「「「 ─────!? 」」」」

 

★★☆

 

天龍「今回は……皇帝の前だから艤装を外せと言うのは分かる。 オレの刀だって武器だから当然だ。 だけどよ……この《棒きれ》ってなんだ?」

 

龍田「それは~棒じゃなくて~《杖》なのよ?」

 

天龍「ハァ!? ぶっちゃけありえねぇ! ガキの戦争ゴッコじゃあるまいし、なんで棒きれ振り回して戦わなきゃいけねぇんだよ!?」

 

木曾「俺は構わない! どちらにしても、艤装に頼ってばかりじゃ腕が鈍るぜ! 戦いってモンは、敵の懐に飛び込んでやるもんさ。 ………なあ?」

 

天龍「くうぅぅぅ! 分かったような口いいやがって! しょうがねぇ! 一丁やってやるっ!!」

 

龍田「ふふふ……っ」

 

 

◆◇◆

 

 

【 艦娘たちの意気込み の件 】

 

〖 洛陽 都城内 別室 にて 〗

 

 

霧島「…………『ニイタカヤマノボレ』の符丁が入り次第! 全艦隊──作戦を開始します! 皆さん、準備は大丈夫ですか!?」

 

ーーー

 

金剛《HEY、霧島ぁ! 第一艦隊、何時でも命じられてもOKデース!》

 

ーー

 

天龍《第二艦隊だ! 既に準備は出来てるぜぇ! 早くオレを攻撃に参加させろよ!》

 

ーー

 

瑞鶴《第三艦隊! 大丈夫、何時でも抜錨できるわ! 一航戦が居ない今、私たち『新五航戦』の力を見せ付けるチャンスだからね!!》

 

ーー

 

暁《第四艦隊! え~と……ハンカチ……チリガミと、うん! 準備万端! 何時でも命じてもらって大丈夫よ!!》

 

ーー

 

霧島「それでは、司令からの命令があれば……作戦通りに動いて下さい! 但し……今回も《不殺を貫くよう》にと! 如何に敵兵といえど、皇帝陛下の膝元での殺害は、民から私たちの支持を下げる結果になりますので!」

 

ーー

 

天龍《ちっ! またかよ! いい加減に全力でヤりてぇんだがな!?》

 

龍田《全力で私たちが当てれば~ものの数分で壊滅よ~? だけど~それじゃ駄目! 並み外れた力を~如何に注目させるかで……私たちに信頼を寄せて貰うようにしなくちゃいけないの! 分かった~天龍ちゃん?》

 

ーー

 

サラ《私たちが普通に使う『艦娘の力』……ここでは、異神の力を操る怪しい者としか映りません! ですから、迫害を受ける前に予防策をしておく。 これが、一刀提督のお考えではないかと……思われるのですが?》

 

ーー

 

天龍《………わかってるよ! ただ……アイツら! オレの耳にも入ったが……胸糞が悪くて反吐が出るぜぇ!》

 

ーー

 

雷《その意見は賛成! だけど殺すのは………》

 

電《………なのです………》

 

ーー

 

霧島「言いたい事は分かりますが……この一戦で私たちは……大陸の要である洛陽で、『天の御遣い』として認められるかの瀬戸際! 後に後悔するような行動は慎んで下さい!」

 

「「「 ───────! 」」」 

 

霧島「では、司令の命令あり次第、行動に移って下さい! ──以上!!」

 

───プッ!

 

ーーー

 

霧島「…………ふぅ~!」

 

霧島は、そう言って口からインカムを離す。

 

霧島「あのような常識的発言をしましたが。 ……今回……いくら温厚な私でも……!」──ボキッ!

 

霧島は、都城内の別室で……一刀の命令を受信していた。

 

具体的には、一刀の軍服に集音マイクがセットしてあり、全ての会話を艦娘たちで傍受。 指揮権だけを霧島に任せて、突撃の準備を整えていたのだ!

 

無論、一刀からの命令が無ければ……準備だけで済ます筈だったのだが。

 

しかし……この備えは無駄にならず……実行に移す事に!

 

霧島は、時刻を確認する。

 

多少のイザコザがあったが、時間的には問題はない。 寧ろ、これくらいの間を開けたかった。 敵が油断する間を作り出すため………

 

霧島「───私も急ぎ準備して……あ、あれっ? 手に持っていたマイクが折れているわ。 もぅ、近頃のマイクは直ぐに故障し易くて困っちゃう! 早く替えのマイクも用意しなきゃ………」

 

霧島は、そう言って……《真っ二つにへし折れたマイク》を置いて、部屋を出ていたのだ。

 

 

◆◇◆

 

【 第一次攻撃 開始 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 大広場 にて 〗

 

────ガチャガチャ!

 

───ドカッドカッドカッドカッ!

 

───『こっちだ! 周りを囲めッ!!』

 

───『包囲完了! 何時でも攻撃できます!』

 

────『抜剣の許可も下りている! 全員、剣を抜けッ!!』

 

──バッ! バッ! バッ!

 

ーーー  ーーーー

 

大広場に向かう出入り口は、東西南北四カ所ある。 どちらも、隊列を整えた軍勢が通行できるぐらい広がっている。

 

そして……『四方向より各六百の兵士』が、雪崩れ込んで来た! しかも、長剣を帯び鎧を着用した完全な戦闘態勢!

 

恋姫たちも円陣を組んで対抗するが……数と得物の有無の差を、埋める事が出きなくて……ジリジリと包囲網を縮められて行く!!

 

ーーー

 

春蘭「華琳さまだけは、何としても護れ! 私や秋蘭が前に出る! 季衣たちは、私たちの後ろに居ろ!」

 

季衣「春蘭さま! ボクも前に!」

 

流琉「秋蘭さま!!」

 

春蘭「馬鹿者! 季衣たちのような年端の行かない者を前に出せるかぁ! もし……先にでも死なれては、私は自分を許せんッ!」 

 

秋蘭「ここは、私たちが優先だ! お前たちは、お前たちの役目を果たしてくれ! 華琳さまや桂花を……頼むぞ!!」

 

ーーー

 

思春「蓮華さま……申し訳ありません! 私は、蓮華さまを守る事に専念します! 後は……アイツ……北郷が何とかしてくれる筈です!」

 

蓮華「思春──!」

 

明命「───私も孫呉の将です! 主君を護らず……誰を護れましょう!」

 

小蓮「………明命!」

 

ーー

 

華雄「得意の得物が無くてもな……音に聞こえし、この華雄! 最後の一戦に華麗な徒花を咲かしてやるッ!!」

 

ーーー

 

恋姫たちの徹底抗戦の意志は強い! 

 

しかし……多勢に無勢! 何時まで耐えれるか分からない状態だった!

 

★☆☆

 

楊奉「………準備は……整ったな!」

 

諸侯を完全に包囲網で取り囲み、楊奉は満足そうに頷く!

 

楊奉「(これで……御遣いの付加不思議な技は封じた! もし……それでも、何かしてくれば……此方には人質が居るんだ! 何も心配する事は──無い!!)」

 

ーーー

 

楊奉は、今でこそは何皇后に仕えし執金吾であるが、元は……大陸を荒らし廻っていた『白波賊』の首領。

 

盗人は、盗み目的地に入る前に下調べが欠かさない。 孫子の兵法では無いが、自分を知り相手を知れば……失敗はかなり減る。

 

だから……天の御遣いの戦い方も……事前に調べ上げていた。

 

具体的には、益州に人を派遣して……艦娘たちの攻撃手順を調査したのだ。

 

ーーー

 

すると……特に浮かび上がったのは……二つ。

 

 

『黒い筒より放たれる破裂する弾』

 

『空を自由に飛び回る鳥のような物』

 

 

他にも策略や戦闘能力も恐怖を覚える物があったが、それぐらいなら人数や人質を取れば対処もできると判断。 

 

これは、益州の戦いで、敵味方両方を殺害しなかった事を考慮。 命が失われる事を、極端に恐れている傾向があるからだった。 

 

 

問題は……未知なる兵器の対処。

 

 

熟慮断行の末………この『広場』を利用する事を思い付いた。 

 

敵味方が動く事が制限されるこの場所を!

 

 

 

『破裂する弾』に対しては、かなり広範囲で殺傷能力が確認された。 

 

だから、敵味方が乱闘し、尚且つ楊奉と何皇后、そして皇女たちが近くに居るように計算。 もし、放たれれば巻き沿いを食らうようにと───!

 

さすれば……味方を巻き込む事を嫌い、その兵器の使用は封じられる。

 

『空を飛ぶ鳥のような物』は、もっと簡単! 

 

この広場の付近は、広場を見渡す事が出来る高さの建物がある。 

 

調査した者の報告には、『空を飛ぶ鳥のような物』を操る者を見かけたという。 ならば、空を飛ばす物を操る者が、必ず近くに居るから、そいつを見つけだし射殺なりすればいいと考えた! 

 

その為の兵も六百……別に伏兵として配置!

 

ーーー

 

楊奉(どう足掻こうと……お前たちの反撃できる余地は無い!)

 

楊奉は、再度……一刀たちの攻撃に対する準備を……反芻したのだ。

 

これだけの兵力と策を持ってすれば……防げると。

 

ーーー

 

余談だが……『百人近い化け物に襲われた』という情報もあったが、洛陽に来ている天の御遣いたちと、容貌が余りに違い過ぎるので捨て置かれた。

 

 

★★☆

 

 

何皇后「どないした……天の御遣いよ? 先程、なんやらワケん分からん事を叫んでおったんやが……? あら天ん国で叫ぶ『絶叫』どす?」

 

一刀「………………」

 

楊奉「ふん! 言っておくが帯剣及び武具の装着は、全て何皇后から許可を得ている! 摂政ゆえ当然だからな! だから……貴様らが武器を持ち込みのは禁止だ! これは、天の御遣いと言えども同様!」

 

自信満々にして、自分たちの行為を棚に上げ……一刀に近付く。

 

楊奉「そんなに悔しければ……阻止してみろよ! 眼下の殺戮を! 人質たちの恨みを! お前の力で阻止して見せろ!! 天の御遣い──ッ!!」

 

しかし、一刀は………何皇后、楊奉を睨みつけ、静かに言い放つ!

 

一刀「……………命令は終わった! 俺たちは、何皇后……貴女の野望を砕く! 皆の力を───思い知れぇ!!」

 

楊奉「何をほざいていやが────」

 

 

━━━━━━━━!!

 

急に………一発の轟音が鳴り響いた───!!

 

 

◆◇◆

 

【 護衛戦艦 の件 】

 

〖 大広場周辺 城壁上 にて 〗

 

雷鳴にも似たるその音は、その場に居た者たちの……耳目を集めるには充分。

 

その場所とは、広場を囲み城壁に立つ───数人の艦娘!

 

ーーー

 

金剛「Wow! 全員に注目されてマース! 提督にもネッ!!」

 

金剛の艤装『35.6cm連装砲』から……白煙が棚引き、眼下の兵士や恋姫たちが驚愕の顔で、金剛たちの方に顔を向けていた!! 

 

比叡「さぁ~すが、金剛お姉さまです!!」

 

榛名「金剛姉さま! 次の『空砲』の準備を!!」

 

ーーー

 

勿論の事だが、砲撃する砲には───実弾を込めていない! 

 

本当に放てば、着弾点はネギトロめいた大惨事になる事は確実だ! しかも、一刀たちも巻き添えになる可能性は……大いに高い! 

 

だから……空砲で砲撃したのだ。 

 

空砲と言っても、弾を飛ばすわけでは無いが、砲の中で火薬を破裂させる物。 

だから──当然、発射音も実際大きい! 

 

すると、どうなるか? 

 

読まれている提督諸氏も、よく御存知かと思われるが……人智を超える物を感じた時、身体の信号が止まる。 つまり……身体が硬直化を起こす。

 

それが……隙になる! 

 

しかも、第一艦隊は……火力が大きい『戦艦』の集まり。 空砲を撃てるのは金剛だけではないのだ! 比叡、榛名……そしてアリゾナ!

 

ーーー

 

アリゾナ「じゃあ……私がやるわ! 行くわよ!」

 

アリゾナが叫び、自分の艤装『45口径35.6cm砲』を上に向ける!

 

そして、操作の手順を早口にまくし立て……砲口を向けた!! 

 

アリゾナ「───エネルギー弁閉鎖!  エネルギー充填開始! 電影クロスゲージ明度20! セイフティーロック、解除! ターゲットスコープ、オープン!」

 

 

『 ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン… 』 

 

 

金剛「Oh!? ナンデスカァッッ! その近未来的な砲撃操作はァ!!?」

 

比叡「ひえぇ───ッ!!」

 

榛名「う、宇宙………戦艦……」

 

金剛姉妹三人が、顔をひきつらせて……アリゾナを注視する! アリゾナは、その様子を見ながら……軽く説明して狙いを定める!!

 

アリゾナ「気分的によ、気分的に! そんな装備が、実際にあるわけないじゃないッ!! さて……エネルギー充填120%! 仰角10度! 拡散波動砲───放てぇえええッ!!!!」

 

 

「「「 ーーーーーー!!! 」」」

 

 

 

━━━━━━━━!!

 

…………

…………

………?

 

金剛「……………ア、アレッ!?」

 

比叡「……ふ、普通の空砲……?」

 

榛名「………えぇ…」

 

思わず目を瞑り、強烈な炸裂音が響き渡ると思い、耳を押さえて縮こまる三人だが……聞こえてきたのは、金剛と同じ砲撃音!

 

アリゾナ「~~ふぅ。 やっぱり──気分が高揚するわね! 『なりきり』でやるとストレス解消って……どうしたの?」

 

やりきった顔で笑うアリゾナに、金剛たちは口々に文句を言う。

 

金剛「うぅぅ………とんでもないNewfaceデース!」

 

比叡「ち、力が……抜けました~!」

 

榛名「はぁ~~~~!」

 

アリゾナ「ちょっと………普通に言ったでしょう! そんな装備持ってるワケないって!! まさか……信じてなかったの!?!? それで、文句なんて言われても知らないわよッ!!!」

 

アリゾナはお冠だが、本気で怒ってはいなそうだ。 口元がニヤついているのが……その証拠。 余程、三人の状態が面白かったようだ。

 

そんなアリゾナに、榛名が声を掛ける。 

 

一つ、頭に浮かんだ疑問を問い質したい……と思った故にだ。

 

榛名「どうして……宇宙戦艦アリ○ナを知っているんてすか!?」

 

アリゾナ「うん……提督が教えてくれたよ? 私を模した宇宙を飛ぶ戦艦が登場する漫画があるって!」

 

金剛「提督ぅぅぅぅ──! 何を教えているのデスカァアアアッ!!? それにィ~浮気なんてェ……私がPermission(許可)しないデェース!!」

 

金剛が横で嫉妬混じりの絶叫をするが、素知らぬ顔でアリゾナが呟いた。

 

アリゾナ「あはっ……戦艦がね……宇宙にだよ? いつも……いつ敵機が飛来するのか恐れて眺めていた……あの大空を。 もし、飛べれば……私も轟沈せずに……済んだのかな? 怯えなくても……済んだのかな……ねぇ?」

 

アリゾナの顔が……泣き出しそうに歪んでいく。

 

アリゾナ「……本当……アレから幾十年も過ぎたんだ……ね。 アノ日……私が海に沈んだ……時から……」

 

比叡「………………」

 

アリゾナを眺める比叡は、当時を思い出す。

 

かの──戦いの時を。

 

アリゾナに向かう加賀や赤城の艦載機を……昨日の事のように。

 

★☆☆

 

兵「な、何だぁ!?」

 

兵「雷鳴!? しかも───続けてかぁ?」

 

楊奉の兵たちが……ざわめき、攻撃の手が止まる!

 

ーーー

 

冥琳「………蓮華さま! あの者たちを!!」

 

蓮華「───金剛! 比叡……榛名も………!」

 

ーー

 

星「───! この声は!? 稟、風! どうやら風向きが変わったぞ!」

 

風「………でもでも、まだですよー! もっと大きく変える『流れの起点』が必要なんですー!」

 

稟「今はまだ……何皇后の勢力が優勢! ですが……必ず流れが逆転する時が来ます! その時まで耐えなければ……!!」

 

ーーー

 

敵兵は騒ぎたてるが……人質もあり、劣勢は変わらず! 

 

『連合艦隊』の攻撃は……まだまだ続いた!

 

 

◆◇◆

 

【 第二次攻撃 開始! の件 】

 

〖 大広場周辺 城壁上 にて 〗

 

金剛たち第一艦隊とは別の城壁に、翔鶴たちが準備していた。

 

 

翔鶴「全航空隊、発艦始め!」

 

瑞鶴「第一次攻撃隊! 発艦始め!」

 

 

二人が、弓に矢を番え(つがえ)前方を射る! 

 

矢は、少し飛翔した後に『零式艦戦21型』に数機に変化し、上空を飛び交う!

 

これが……代表的な日本海軍空母の発艦方法である。

 

だが、某国空母の発艦は……やはり違う。 

 

外史だからという名分もあるが、あくまで……ここ限定の話。 いいね?

 

ーー

 

サラ「我が新しき提督『北郷一刀』の御名において……汝らに命ず!」

 

瑞鶴「───えっ? 何を……!?」

 

サラが普段持ち歩く、少し厚めの本を開き、ページを捲りながら詠唱をし出す。 その度に本は、光輝きながら……一筋の道を前方に作りだした。

 

ビッグE「……心配しなくて大丈夫だ。 あれは、艦載機発進の命令詠唱だ。 サラの発艦は少し特殊でな。 持ち歩いている本の中から飛び出すんだよ!」

 

翔鶴「そういう貴女は、他の方より自分の発艦を……完了させるのが先決ではないですか──ビッグE?」

 

ビッグE「………了解だ! あたしは、腰に付けた愛銃『コルト・パイソン』を撃てば、それで仕舞いだよ!! ─────Shot!!」

 

翔鶴に促され、左右の二丁拳銃を両手で操作して、前方に数発撃ち込む!

 

サラ「───動けぬ汝らに空を翔る翼を与えたもう! その恩に報い……敵の攻撃を阻み、味方を勇気付け───救出せよ!!!」

 

サラの詠唱も丁度終わった。

 

ビッグEの弾丸は、数機の艦上戦闘機に別れ、サラの本より発し出された光のロードからも、別の艦上戦闘機が数機発進した!

 

 

──────バッ!

 

───────バッ!!

 

 

瑞鶴「あれは! ───F6F (ヘルキャット)!!」

 

翔鶴「F4F( ワイルドキャット)まで……あの時の悪夢を見ている気分だわ!」

 

瑞鶴は目を見開き、翔鶴は溜め息を吐く。 

 

前の戦いにおいて……自分たちと交戦してきた仇なす敵!

 

ビッグE「それを言うなら……あたしだってそうさ……。 あの零戦を眺めると……特攻された事を思いだし……寒気がする。 だがな……今は別だ!」

 

ビッグEの顔も青ざめている。 柳眉を顰め(しかめ)ながら……あの『神風』を受けた恐怖を思い起こしているようだ。 

 

しかし、それでも……視線を外さず翔鶴たちに語り掛ける。 己の心情より任務達成を憂うのは、さすが歴戦の武勲艦と言えよう。

 

サラ「ビッグE……無理をしなくてもいいわ。 私にも説明させて」

 

ビッグE「…………頼む!」

 

サラが、ビッグEの心情を察して……変わりに言葉を紡いだ。

 

サラ「互いが強敵として認めつつ、矛を交わるしかなかった私たちが……。 北郷一刀という提督の下に、こうして着任して手を取り合い戦える! こんな奇跡は………他には無い筈です!」

 

「「 ───────! 」」

 

考えて見れば……その通り!

 

双国間で、お互い手強い敵と認めてきた相手が、新たな指揮官を迎え、一つの目標に向かう。 これほど心強い事は無いだろう!!

 

瑞鶴「そうだね! よぉくー考えてみれば……そうなんだ! 翔鶴姉、私たちは味方なんだよ! 味方ぁ! だ・か・ら……怖がらなくても、嫌がらなくても平気! 私たちと同じ提督さんを慕う仲間なんだから!」

 

翔鶴「ず、瑞鶴───/////////」

 

ビッグE「まっ……そ、そうだな……」

 

サラ「───はいッ!」

 

対象的な態度を見せる二人だが……提督を嫌っていないのは明白。

 

しかし、翔鶴の心の内は……半分晴れで半分曇り。

 

瑞鶴の言葉で励まされ、自分の恐怖は薄れた。 だが、それと引き換えに……うやむやになっていた恋敵関係が、明確になってしまったのだから。

 

翔鶴「(やはり………私って不幸艦なのかしら………)」

 

そんな事を考えていると……瑞鶴の呼び掛けで我に返る!

 

瑞鶴「──翔鶴姉、翔鶴姉ぇ! ほらっ! 艦載機に命令を!」

 

翔鶴「わ、私──!?」

 

ビッグE「おいおい! 旗艦は貴女だろ?」

 

翔鶴「だけど……私は……運が無い艦だから……」 

 

ビッグE「それは問題ないだろう! 『偉大なる』と言われるあたしこと『ビッグE』、空母着艦記録を誇る『サラトガ』が貴女の指揮下に付く! しかも、二隻とも先の大戦を生き抜いた『幸運艦』だ!」

 

瑞鶴「翔鶴姉ぇ……私も私も!」ニッ!

 

サラ「あらあらっ? これなら……不幸なんて吹き飛んでしまいますね?」

 

三隻の『幸運艦』対一隻の『不幸艦』……どちらが有利か? 

 

翔鶴「…………分かりました! この『第三艦隊 旗艦 翔鶴』が命じます! 各隊で編隊を組み──第三艦隊、第四艦隊が到着するまで、時間を稼ぎなさい!! あくまで、私たちは陽動ですので……攻撃は無用!」

 

翔鶴は、そう号令を発し──まだ響く空砲に……恐怖で動けぬ敵兵や困惑する恋姫たちに見せつける! 

 

第二次世界大戦……

 

かの広大な太平洋の大空で、互いの制空権を掛けて争った艦上戦闘機たちが……

 

異界の空の上で協力して戦う瞬間であった───!

 

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

『皇帝が劉辯に変わったよ』……その事を説明するのに、何故か長文の小説を書いている作者です。 

 

二話続けても終わらず……あと一話作るはめになるとは。

 

それでも宜しければ……どうぞお楽しみ下さい!

 

 

 


 
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