【 事前準備 の件 】
───時は少し戻り、皇帝選択の儀式に入る前。
〖 洛陽 都城内 とある部屋 にて 〗
一刀「アリゾナ……話があるんだ……」
アリゾナ「えッ!? 何、何ぃ!?」
一刀より二人で話したいと言われ、顔を赤らめて付いて行くアリゾナ。
部屋の中で誰も居ない事を確認すると……開口一番に話したのは……符丁の事だった。 急に『あの言葉』を言われたら……艦娘の中で直接の被害艦『アリゾナ』が、動揺するのは見えていたから。
その為、この符丁を使用する事を説明するために呼び寄せたのだ!
ーーー
アリゾナ「───そ、その符丁でぇ攻撃合図ッ!? どうして……変更しなかったの!? 私に対してTerribly rude(とても失礼)で、私や亡き乗組員たちに対して侮辱じゃない!? 幾ら提督の考えでも……酷い、酷いよ!!」
一刀「……アリゾナも大変だったけど……その苦しみ、痛みは、大空襲等で本土に倍返しで返された。 戦後の道程も……生半可では復興できないほど。 だから、この言葉には……辛い後悔と戒めの意味も込められている!」
アリゾナ「…………じゃあ、何で……双方忌み嫌う符丁を使うの……?」
一刀「これは、国や亡くなった者や遺族にとっては、重い……悔恨の言葉だと思う。 出来れば……二度と使って欲しくない言葉だと………!」
アリゾナ「……うん」
一刀「だが、俺は、この言葉を敢えて使用したい!」
アリゾナ「────!」
一刀「双方に忌まわしい言葉である『新高山登れ』を、ただ封印しても忘却されてしまう! だから、この世界で……敵国同士だった艦が、手を取り合い開戦した……意義深い言葉へ変換して……この世界に残したいと思うんだ!」
アリゾナ「…………」
一刀「これが……俺の考えなんだよ。 しかし、アリゾナが反対するなら、別の符丁に変える! これは、俺の我が儘に過ぎ『了解したわ!』──!?」
アリゾナ「はぁ~! 全く……提督は人が良すぎるわよ? サラが聞けば喜びそうだけど……ビッグEやスチュワートがなんて言い出すか……。 本当に困った事……考える提督よね? でもね……私は賛成……ふふふっ!」
一刀「……良いのか? 本当に……?」
アリゾナ「提督……ぅ? 私の事を甘く見てない? 私だって……軍艦だし乗組員の皆も軍人だから、こうなる結果も覚悟していたわ。 ただ、その『言葉』を面白がって使われるのが嫌なの! それだから……ね?」
一刀「───しっかり、肝に銘じる! 忘れない事を!!」
アリゾナ「………だけど……悔しいわね……。 あぁあああ───ッ! ものすごくぅぅ……悔しいぃいいいッッ!!」
一刀「な、何がだぁ……?」
アリゾナ「私や提督の国に……当時、提督のような人が……上に居てくれたら、互いの国が戦じゃなくて、別の何かで……競えたかも知れないのに!」
一刀「そう……なのか?」
アリゾナ「そうよ! そうなっていればね? 私も……亡くなった皆も。 冷たい海の中で眠る事なんて……なかったのかも知れない。 多くの者たちを犠牲にしなくて……良かったのかも。 そう思わずには……居られないのよ!」
一刀「……………」
アリゾナ「スチュワートたちには、私から話しておくわ! 提督が話すより、被害艦の私が話した方……が納得すると思うの!」
一刀「あぁ……何から何まで……すまないな」
アリゾナ「心配しないで……提督。 私は大丈夫だから。 (うふっ……提督に負い目を負わせれば……必ず私へと意識が行く! そこを上手くattackすれば……!)」
★☆☆
雷「………響、ちょっといい? これって……私の聞き間違い?」
響「いや……間違いない! これが司令官より渡された『物』だ……」
暁「だ、だけど……本当に? これが暁たちの艤装……というか武器!?」
電「《手拭い》と《竹筒に入った水》……なのです………」
雪風「まさか、素手で攻撃した後のアフターケア用なんですか? 血で汚れたら手を洗いなさいって意味とかぁ?」
スチュワート「こんな物で、どうやって戦えばいいのよ!?」
響「投擲、打撃、射撃、防御、格闘兵器代わりと色々と………」
「「「「 ─────!? 」」」」
★★☆
天龍「今回は……皇帝の前だから艤装を外せと言うのは分かる。 オレの刀だって武器だから当然だ。 だけどよ……この《棒きれ》ってなんだ?」
龍田「それは~棒じゃなくて~《杖》なのよ?」
天龍「ハァ!? ぶっちゃけありえねぇ! ガキの戦争ゴッコじゃあるまいし、なんで棒きれ振り回して戦わなきゃいけねぇんだよ!?」
木曾「俺は構わない! どちらにしても、艤装に頼ってばかりじゃ腕が鈍るぜ! 戦いってモンは、敵の懐に飛び込んでやるもんさ。 ………なあ?」
天龍「くうぅぅぅ! 分かったような口いいやがって! しょうがねぇ! 一丁やってやるっ!!」
龍田「ふふふ……っ」
◆◇◆
【 艦娘たちの意気込み の件 】
〖 洛陽 都城内 別室 にて 〗
霧島「…………『ニイタカヤマノボレ』の符丁が入り次第! 全艦隊──作戦を開始します! 皆さん、準備は大丈夫ですか!?」
ーーー
金剛《HEY、霧島ぁ! 第一艦隊、何時でも命じられてもOKデース!》
ーー
天龍《第二艦隊だ! 既に準備は出来てるぜぇ! 早くオレを攻撃に参加させろよ!》
ーー
瑞鶴《第三艦隊! 大丈夫、何時でも抜錨できるわ! 一航戦が居ない今、私たち『新五航戦』の力を見せ付けるチャンスだからね!!》
ーー
暁《第四艦隊! え~と……ハンカチ……チリガミと、うん! 準備万端! 何時でも命じてもらって大丈夫よ!!》
ーー
霧島「それでは、司令からの命令があれば……作戦通りに動いて下さい! 但し……今回も《不殺を貫くよう》にと! 如何に敵兵といえど、皇帝陛下の膝元での殺害は、民から私たちの支持を下げる結果になりますので!」
ーー
天龍《ちっ! またかよ! いい加減に全力でヤりてぇんだがな!?》
龍田《全力で私たちが当てれば~ものの数分で壊滅よ~? だけど~それじゃ駄目! 並み外れた力を~如何に注目させるかで……私たちに信頼を寄せて貰うようにしなくちゃいけないの! 分かった~天龍ちゃん?》
ーー
サラ《私たちが普通に使う『艦娘の力』……ここでは、異神の力を操る怪しい者としか映りません! ですから、迫害を受ける前に予防策をしておく。 これが、一刀提督のお考えではないかと……思われるのですが?》
ーー
天龍《………わかってるよ! ただ……アイツら! オレの耳にも入ったが……胸糞が悪くて反吐が出るぜぇ!》
ーー
雷《その意見は賛成! だけど殺すのは………》
電《………なのです………》
ーー
霧島「言いたい事は分かりますが……この一戦で私たちは……大陸の要である洛陽で、『天の御遣い』として認められるかの瀬戸際! 後に後悔するような行動は慎んで下さい!」
「「「 ───────! 」」」
霧島「では、司令の命令あり次第、行動に移って下さい! ──以上!!」
───プッ!
ーーー
霧島「…………ふぅ~!」
霧島は、そう言って口からインカムを離す。
霧島「あのような常識的発言をしましたが。 ……今回……いくら温厚な私でも……!」──ボキッ!
霧島は、都城内の別室で……一刀の命令を受信していた。
具体的には、一刀の軍服に集音マイクがセットしてあり、全ての会話を艦娘たちで傍受。 指揮権だけを霧島に任せて、突撃の準備を整えていたのだ!
無論、一刀からの命令が無ければ……準備だけで済ます筈だったのだが。
しかし……この備えは無駄にならず……実行に移す事に!
霧島は、時刻を確認する。
多少のイザコザがあったが、時間的には問題はない。 寧ろ、これくらいの間を開けたかった。 敵が油断する間を作り出すため………
霧島「───私も急ぎ準備して……あ、あれっ? 手に持っていたマイクが折れているわ。 もぅ、近頃のマイクは直ぐに故障し易くて困っちゃう! 早く替えのマイクも用意しなきゃ………」
霧島は、そう言って……《真っ二つにへし折れたマイク》を置いて、部屋を出ていたのだ。
◆◇◆
【 第一次攻撃 開始 の件 】
〖 洛陽 都城内 大広場 にて 〗
────ガチャガチャ!
───ドカッドカッドカッドカッ!
───『こっちだ! 周りを囲めッ!!』
───『包囲完了! 何時でも攻撃できます!』
────『抜剣の許可も下りている! 全員、剣を抜けッ!!』
──バッ! バッ! バッ!
ーーー ーーーー
大広場に向かう出入り口は、東西南北四カ所ある。 どちらも、隊列を整えた軍勢が通行できるぐらい広がっている。
そして……『四方向より各六百の兵士』が、雪崩れ込んで来た! しかも、長剣を帯び鎧を着用した完全な戦闘態勢!
恋姫たちも円陣を組んで対抗するが……数と得物の有無の差を、埋める事が出きなくて……ジリジリと包囲網を縮められて行く!!
ーーー
春蘭「華琳さまだけは、何としても護れ! 私や秋蘭が前に出る! 季衣たちは、私たちの後ろに居ろ!」
季衣「春蘭さま! ボクも前に!」
流琉「秋蘭さま!!」
春蘭「馬鹿者! 季衣たちのような年端の行かない者を前に出せるかぁ! もし……先にでも死なれては、私は自分を許せんッ!」
秋蘭「ここは、私たちが優先だ! お前たちは、お前たちの役目を果たしてくれ! 華琳さまや桂花を……頼むぞ!!」
ーーー
思春「蓮華さま……申し訳ありません! 私は、蓮華さまを守る事に専念します! 後は……アイツ……北郷が何とかしてくれる筈です!」
蓮華「思春──!」
明命「───私も孫呉の将です! 主君を護らず……誰を護れましょう!」
小蓮「………明命!」
ーー
華雄「得意の得物が無くてもな……音に聞こえし、この華雄! 最後の一戦に華麗な徒花を咲かしてやるッ!!」
ーーー
恋姫たちの徹底抗戦の意志は強い!
しかし……多勢に無勢! 何時まで耐えれるか分からない状態だった!
★☆☆
楊奉「………準備は……整ったな!」
諸侯を完全に包囲網で取り囲み、楊奉は満足そうに頷く!
楊奉「(これで……御遣いの付加不思議な技は封じた! もし……それでも、何かしてくれば……此方には人質が居るんだ! 何も心配する事は──無い!!)」
ーーー
楊奉は、今でこそは何皇后に仕えし執金吾であるが、元は……大陸を荒らし廻っていた『白波賊』の首領。
盗人は、盗み目的地に入る前に下調べが欠かさない。 孫子の兵法では無いが、自分を知り相手を知れば……失敗はかなり減る。
だから……天の御遣いの戦い方も……事前に調べ上げていた。
具体的には、益州に人を派遣して……艦娘たちの攻撃手順を調査したのだ。
ーーー
すると……特に浮かび上がったのは……二つ。
『黒い筒より放たれる破裂する弾』
『空を自由に飛び回る鳥のような物』
他にも策略や戦闘能力も恐怖を覚える物があったが、それぐらいなら人数や人質を取れば対処もできると判断。
これは、益州の戦いで、敵味方両方を殺害しなかった事を考慮。 命が失われる事を、極端に恐れている傾向があるからだった。
問題は……未知なる兵器の対処。
熟慮断行の末………この『広場』を利用する事を思い付いた。
敵味方が動く事が制限されるこの場所を!
『破裂する弾』に対しては、かなり広範囲で殺傷能力が確認された。
だから、敵味方が乱闘し、尚且つ楊奉と何皇后、そして皇女たちが近くに居るように計算。 もし、放たれれば巻き沿いを食らうようにと───!
さすれば……味方を巻き込む事を嫌い、その兵器の使用は封じられる。
『空を飛ぶ鳥のような物』は、もっと簡単!
この広場の付近は、広場を見渡す事が出来る高さの建物がある。
調査した者の報告には、『空を飛ぶ鳥のような物』を操る者を見かけたという。 ならば、空を飛ばす物を操る者が、必ず近くに居るから、そいつを見つけだし射殺なりすればいいと考えた!
その為の兵も六百……別に伏兵として配置!
ーーー
楊奉(どう足掻こうと……お前たちの反撃できる余地は無い!)
楊奉は、再度……一刀たちの攻撃に対する準備を……反芻したのだ。
これだけの兵力と策を持ってすれば……防げると。
ーーー
余談だが……『百人近い化け物に襲われた』という情報もあったが、洛陽に来ている天の御遣いたちと、容貌が余りに違い過ぎるので捨て置かれた。
★★☆
何皇后「どないした……天の御遣いよ? 先程、なんやらワケん分からん事を叫んでおったんやが……? あら天ん国で叫ぶ『絶叫』どす?」
一刀「………………」
楊奉「ふん! 言っておくが帯剣及び武具の装着は、全て何皇后から許可を得ている! 摂政ゆえ当然だからな! だから……貴様らが武器を持ち込みのは禁止だ! これは、天の御遣いと言えども同様!」
自信満々にして、自分たちの行為を棚に上げ……一刀に近付く。
楊奉「そんなに悔しければ……阻止してみろよ! 眼下の殺戮を! 人質たちの恨みを! お前の力で阻止して見せろ!! 天の御遣い──ッ!!」
しかし、一刀は………何皇后、楊奉を睨みつけ、静かに言い放つ!
一刀「……………命令は終わった! 俺たちは、何皇后……貴女の野望を砕く! 皆の力を───思い知れぇ!!」
楊奉「何をほざいていやが────」
━━━━━━━━!!
急に………一発の轟音が鳴り響いた───!!
◆◇◆
【 護衛戦艦 の件 】
〖 大広場周辺 城壁上 にて 〗
雷鳴にも似たるその音は、その場に居た者たちの……耳目を集めるには充分。
その場所とは、広場を囲み城壁に立つ───数人の艦娘!
ーーー
金剛「Wow! 全員に注目されてマース! 提督にもネッ!!」
金剛の艤装『35.6cm連装砲』から……白煙が棚引き、眼下の兵士や恋姫たちが驚愕の顔で、金剛たちの方に顔を向けていた!!
比叡「さぁ~すが、金剛お姉さまです!!」
榛名「金剛姉さま! 次の『空砲』の準備を!!」
ーーー
勿論の事だが、砲撃する砲には───実弾を込めていない!
本当に放てば、着弾点はネギトロめいた大惨事になる事は確実だ! しかも、一刀たちも巻き添えになる可能性は……大いに高い!
だから……空砲で砲撃したのだ。
空砲と言っても、弾を飛ばすわけでは無いが、砲の中で火薬を破裂させる物。
だから──当然、発射音も実際大きい!
すると、どうなるか?
読まれている提督諸氏も、よく御存知かと思われるが……人智を超える物を感じた時、身体の信号が止まる。 つまり……身体が硬直化を起こす。
それが……隙になる!
しかも、第一艦隊は……火力が大きい『戦艦』の集まり。 空砲を撃てるのは金剛だけではないのだ! 比叡、榛名……そしてアリゾナ!
ーーー
アリゾナ「じゃあ……私がやるわ! 行くわよ!」
アリゾナが叫び、自分の艤装『45口径35.6cm砲』を上に向ける!
そして、操作の手順を早口にまくし立て……砲口を向けた!!
アリゾナ「───エネルギー弁閉鎖! エネルギー充填開始! 電影クロスゲージ明度20! セイフティーロック、解除! ターゲットスコープ、オープン!」
『 ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン… 』
金剛「Oh!? ナンデスカァッッ! その近未来的な砲撃操作はァ!!?」
比叡「ひえぇ───ッ!!」
榛名「う、宇宙………戦艦……」
金剛姉妹三人が、顔をひきつらせて……アリゾナを注視する! アリゾナは、その様子を見ながら……軽く説明して狙いを定める!!
アリゾナ「気分的によ、気分的に! そんな装備が、実際にあるわけないじゃないッ!! さて……エネルギー充填120%! 仰角10度! 拡散波動砲───放てぇえええッ!!!!」
「「「 ーーーーーー!!! 」」」
━━━━━━━━!!
…………
…………
………?
金剛「……………ア、アレッ!?」
比叡「……ふ、普通の空砲……?」
榛名「………えぇ…」
思わず目を瞑り、強烈な炸裂音が響き渡ると思い、耳を押さえて縮こまる三人だが……聞こえてきたのは、金剛と同じ砲撃音!
アリゾナ「~~ふぅ。 やっぱり──気分が高揚するわね! 『なりきり』でやるとストレス解消って……どうしたの?」
やりきった顔で笑うアリゾナに、金剛たちは口々に文句を言う。
金剛「うぅぅ………とんでもないNewfaceデース!」
比叡「ち、力が……抜けました~!」
榛名「はぁ~~~~!」
アリゾナ「ちょっと………普通に言ったでしょう! そんな装備持ってるワケないって!! まさか……信じてなかったの!?!? それで、文句なんて言われても知らないわよッ!!!」
アリゾナはお冠だが、本気で怒ってはいなそうだ。 口元がニヤついているのが……その証拠。 余程、三人の状態が面白かったようだ。
そんなアリゾナに、榛名が声を掛ける。
一つ、頭に浮かんだ疑問を問い質したい……と思った故にだ。
榛名「どうして……宇宙戦艦アリ○ナを知っているんてすか!?」
アリゾナ「うん……提督が教えてくれたよ? 私を模した宇宙を飛ぶ戦艦が登場する漫画があるって!」
金剛「提督ぅぅぅぅ──! 何を教えているのデスカァアアアッ!!? それにィ~浮気なんてェ……私がPermission(許可)しないデェース!!」
金剛が横で嫉妬混じりの絶叫をするが、素知らぬ顔でアリゾナが呟いた。
アリゾナ「あはっ……戦艦がね……宇宙にだよ? いつも……いつ敵機が飛来するのか恐れて眺めていた……あの大空を。 もし、飛べれば……私も轟沈せずに……済んだのかな? 怯えなくても……済んだのかな……ねぇ?」
アリゾナの顔が……泣き出しそうに歪んでいく。
アリゾナ「……本当……アレから幾十年も過ぎたんだ……ね。 アノ日……私が海に沈んだ……時から……」
比叡「………………」
アリゾナを眺める比叡は、当時を思い出す。
かの──戦いの時を。
アリゾナに向かう加賀や赤城の艦載機を……昨日の事のように。
★☆☆
兵「な、何だぁ!?」
兵「雷鳴!? しかも───続けてかぁ?」
楊奉の兵たちが……ざわめき、攻撃の手が止まる!
ーーー
冥琳「………蓮華さま! あの者たちを!!」
蓮華「───金剛! 比叡……榛名も………!」
ーー
星「───! この声は!? 稟、風! どうやら風向きが変わったぞ!」
風「………でもでも、まだですよー! もっと大きく変える『流れの起点』が必要なんですー!」
稟「今はまだ……何皇后の勢力が優勢! ですが……必ず流れが逆転する時が来ます! その時まで耐えなければ……!!」
ーーー
敵兵は騒ぎたてるが……人質もあり、劣勢は変わらず!
『連合艦隊』の攻撃は……まだまだ続いた!
◆◇◆
【 第二次攻撃 開始! の件 】
〖 大広場周辺 城壁上 にて 〗
金剛たち第一艦隊とは別の城壁に、翔鶴たちが準備していた。
翔鶴「全航空隊、発艦始め!」
瑞鶴「第一次攻撃隊! 発艦始め!」
二人が、弓に矢を番え(つがえ)前方を射る!
矢は、少し飛翔した後に『零式艦戦21型』に数機に変化し、上空を飛び交う!
これが……代表的な日本海軍空母の発艦方法である。
だが、某国空母の発艦は……やはり違う。
外史だからという名分もあるが、あくまで……ここ限定の話。 いいね?
ーー
サラ「我が新しき提督『北郷一刀』の御名において……汝らに命ず!」
瑞鶴「───えっ? 何を……!?」
サラが普段持ち歩く、少し厚めの本を開き、ページを捲りながら詠唱をし出す。 その度に本は、光輝きながら……一筋の道を前方に作りだした。
ビッグE「……心配しなくて大丈夫だ。 あれは、艦載機発進の命令詠唱だ。 サラの発艦は少し特殊でな。 持ち歩いている本の中から飛び出すんだよ!」
翔鶴「そういう貴女は、他の方より自分の発艦を……完了させるのが先決ではないですか──ビッグE?」
ビッグE「………了解だ! あたしは、腰に付けた愛銃『コルト・パイソン』を撃てば、それで仕舞いだよ!! ─────Shot!!」
翔鶴に促され、左右の二丁拳銃を両手で操作して、前方に数発撃ち込む!
サラ「───動けぬ汝らに空を翔る翼を与えたもう! その恩に報い……敵の攻撃を阻み、味方を勇気付け───救出せよ!!!」
サラの詠唱も丁度終わった。
ビッグEの弾丸は、数機の艦上戦闘機に別れ、サラの本より発し出された光のロードからも、別の艦上戦闘機が数機発進した!
──────バッ!
───────バッ!!
瑞鶴「あれは! ───F6F (ヘルキャット)!!」
翔鶴「F4F( ワイルドキャット)まで……あの時の悪夢を見ている気分だわ!」
瑞鶴は目を見開き、翔鶴は溜め息を吐く。
前の戦いにおいて……自分たちと交戦してきた仇なす敵!
ビッグE「それを言うなら……あたしだってそうさ……。 あの零戦を眺めると……特攻された事を思いだし……寒気がする。 だがな……今は別だ!」
ビッグEの顔も青ざめている。 柳眉を顰め(しかめ)ながら……あの『神風』を受けた恐怖を思い起こしているようだ。
しかし、それでも……視線を外さず翔鶴たちに語り掛ける。 己の心情より任務達成を憂うのは、さすが歴戦の武勲艦と言えよう。
サラ「ビッグE……無理をしなくてもいいわ。 私にも説明させて」
ビッグE「…………頼む!」
サラが、ビッグEの心情を察して……変わりに言葉を紡いだ。
サラ「互いが強敵として認めつつ、矛を交わるしかなかった私たちが……。 北郷一刀という提督の下に、こうして着任して手を取り合い戦える! こんな奇跡は………他には無い筈です!」
「「 ───────! 」」
考えて見れば……その通り!
双国間で、お互い手強い敵と認めてきた相手が、新たな指揮官を迎え、一つの目標に向かう。 これほど心強い事は無いだろう!!
瑞鶴「そうだね! よぉくー考えてみれば……そうなんだ! 翔鶴姉、私たちは味方なんだよ! 味方ぁ! だ・か・ら……怖がらなくても、嫌がらなくても平気! 私たちと同じ提督さんを慕う仲間なんだから!」
翔鶴「ず、瑞鶴───/////////」
ビッグE「まっ……そ、そうだな……」
サラ「───はいッ!」
対象的な態度を見せる二人だが……提督を嫌っていないのは明白。
しかし、翔鶴の心の内は……半分晴れで半分曇り。
瑞鶴の言葉で励まされ、自分の恐怖は薄れた。 だが、それと引き換えに……うやむやになっていた恋敵関係が、明確になってしまったのだから。
翔鶴「(やはり………私って不幸艦なのかしら………)」
そんな事を考えていると……瑞鶴の呼び掛けで我に返る!
瑞鶴「──翔鶴姉、翔鶴姉ぇ! ほらっ! 艦載機に命令を!」
翔鶴「わ、私──!?」
ビッグE「おいおい! 旗艦は貴女だろ?」
翔鶴「だけど……私は……運が無い艦だから……」
ビッグE「それは問題ないだろう! 『偉大なる』と言われるあたしこと『ビッグE』、空母着艦記録を誇る『サラトガ』が貴女の指揮下に付く! しかも、二隻とも先の大戦を生き抜いた『幸運艦』だ!」
瑞鶴「翔鶴姉ぇ……私も私も!」ニッ!
サラ「あらあらっ? これなら……不幸なんて吹き飛んでしまいますね?」
三隻の『幸運艦』対一隻の『不幸艦』……どちらが有利か?
翔鶴「…………分かりました! この『第三艦隊 旗艦 翔鶴』が命じます! 各隊で編隊を組み──第三艦隊、第四艦隊が到着するまで、時間を稼ぎなさい!! あくまで、私たちは陽動ですので……攻撃は無用!」
翔鶴は、そう号令を発し──まだ響く空砲に……恐怖で動けぬ敵兵や困惑する恋姫たちに見せつける!
第二次世界大戦……
かの広大な太平洋の大空で、互いの制空権を掛けて争った艦上戦闘機たちが……
異界の空の上で協力して戦う瞬間であった───!
ーーーーーーーー
ーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
『皇帝が劉辯に変わったよ』……その事を説明するのに、何故か長文の小説を書いている作者です。
二話続けても終わらず……あと一話作るはめになるとは。
それでも宜しければ……どうぞお楽しみ下さい!
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結局、今回で収まりきれず……次回へ。