No.787174

艦隊 真・恋姫無双 65話目

いたさん

恋姫達ばかりです。 7/3 文章修正と追加。 翠や七乃たちの台詞です。

2015-07-03 00:56:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1594   閲覧ユーザー数:1359

【 一刀と姉妹の絆 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 大広場 高台 にて 〗

 

一刀「………………」

 

二人の皇女は、一刀の服を見て息を呑む!

 

今まで見た……煌びやかな衣装と一線を画す『白一色の上下』の軍服。

 

両肩には誇りある海軍の階級を示す『肩章』の装具。 

 

そして、上着の中心を通る『五つの金ボタン』には、『桜花と錨』の彫刻が浮かび上がる! 

 

それらが……日の光を受けて輝き、一刀の周囲を一変させる! 

 

ーーー

 

劉辯「あ……ッ!」

 

劉協「わあ……ッ!」

 

ーーー

 

正に……大陸内で織られる衣服、彫金される飾り物を……遥かに上回る見事さに唖然とするしかなかった。

 

一刀「……!」ニコッ 

 

────ザッ!

 

そんな二人の様子を見た一刀は、軽く微笑した後……海軍式礼式を取る。

 

具体的には、右手を額に持っていき、手の平を見せず相手に隠す。 そして上げた脇を締めて、右肘を前に軽く突き出した。

 

「「 ────ビクッ! 」」

 

一刀「あっ……驚かせて失礼。 これは……天の国に居る軍人が、相手を敬い行う礼式『敬礼』と申します。 貴女方の国とは違う礼式のため、かなり戸惑うでしょうが、私は皇女さま方に……最大の敬意を表させて頂きます!」

 

劉辯「何、何故? 天之御者……貴君比較……対己幼童如! 貴、貴君不明発言!!(な、何故ですか? 天の御遣いたる……貴方に比べれば、私たちなど頑是無い童のような者! あ、貴方の仰る意味が分かりません!!)」

 

劉辯は、戸惑いながら……一刀に訴える!

 

『天の御遣いと出会った時は、十常侍の企みで人質とされた』 

 

『諸侯の論功行賞の儀においては、ただ黙って見ていただけ』

 

『そんな私たちを……こうも敬うの?』 

 

『天の御遣いさまを……こんな窮地に招いてしまった私たちに……何故……そのような優しい笑顔を?』

 

『こんな、こんな最悪の事態なのに……どうして────自信に満ち溢れた瞳を、私たちに向けるのですか───ッ!?』

 

劉協「…………………!」

 

劉協は、ただただ……驚いていた。

 

大好きな姉が……泣きながら天の御遣いに叫ぶ姿に───!

 

自分も思っていた事柄を……姉が全部代弁して伝えてしまった事を!!

 

だから……劉協は改めて……劉辯の手を握り直す!

 

────ギュッ!!

 

劉辯「……………えっ!?」

 

劉協「───────!」コクリ!

 

今の劉辯の傍には………

 

……頼りないかも知れない!

 

……力不足かも知れない! 

 

───でもっ!

 

絶対に姉を守り通すと誓った───自分が居る事を!!

 

忘れてほしくなかった────!

 

 

◆◇◆

 

【 怒れる恋姫たち の件 】

 

〖 都城内 大広場 高台 にて 〗

 

「…………私は………」

 

「「 ───ハッ!? 」」

 

急な呼び掛けに顔を向き直す……皇女たち!

 

一刀は……周囲を見渡しながら……静かに語る。

 

ーーー

 

一刀「私は……亡き劉宏陛下より……後事を託されました!」

 

 

何皇后「────!?」

 

何進「…………」

 

ーー

 

一刀「この国を救う事を……!」

 

 

楊奉「─────!」

 

ーー

 

一刀「……大陸の中に住まう人々を! そして、皇女さまの事も! だから……どうか御安心を。 私が必ず救い出してみせましょう!」

 

劉辯「─────!」

 

劉協「御遣い様…………」

 

ーー

 

何皇后「ホーッホッホッホッホッ! 御託やらなんやらよろし! サッサと陛下を選択しい! 時間を稼ごうやらなんやらとしいやも──無駄ほな!!」

 

ーーー

 

一刀が語り終えると、何皇后は口に手を当て……勝ち誇ったように高笑いを上げた! さも……一刀の話が面白かったと言わんばかりに!!

 

★☆☆

 

桃香たちの傍には、執金吾の『楊奉』が佇んでいる。

 

年齢は三十代と思える若い顔。 端正な顔付き、背の高い細身の身体で何皇后お気に入りの美青年である。 

 

その容姿と……類い希なる手腕を持って執金吾に上がった男であり、何皇后と

中が悪い何進とは、反りが合わないのも当然であろう!

 

黒き革鎧を身につけて、桃香たちを威圧的に接する!

 

楊奉「へへっ! こいつらの事を忘れて無いだろうな? アンタの言葉一つで、首と身体が十常侍と同じように『永遠にサヨナラ』しちまうんだぜぇ! まぁ……生き残ったとしても、どうなるか分からんがなぁ~~?」

 

楊奉が示す先には、桃香と愛紗、鈴々が、互いに顔を見せ合うように、上半身を縛られられたまま、正坐で座らされている。

 

それはまさしく……少し前に十常侍が処刑された……同じ方法。 

 

一人に二人ずつ楊奉の兵が付き……一人が上半身を抑え、首を前に出させる。

 

もう一人は、5尺(約1㍍)ほどの長さがある剣を持ち、命令あれば……首を落とそうと準備している! 

 

何皇后の命令が伝えられれば……桃香たちの命は────!

 

ーーー

 

桃香「…………愛紗ちゃん! 鈴々ちゃん! ………ごめんね……! 私のせいで、こんな事に巻き込んじゃてぇ…………!!」

 

愛紗「桃香さま! まだです! まだ……諦めてはなりません!」

 

鈴々「お兄ちゃんがね! お兄ちゃんが……ぜったい助けてくれるもん!!」

 

ーーー

 

無論……この状況は、広場に集まる恋姫たちにも───確認できるため、何とかしたいと動きだそうとするのだが───!! 

 

ーーー

 

春蘭「流琉! 季衣! 離せぇ!! 離せぇえええ──ッ!」

 

季衣「春蘭さま、落ちついて!!」

 

流琉「私たちは、武器を何一つ持ってないんです! そんな身で突っ込んで行ったら!!」

 

春蘭「そんな軟弱な事で、曹操軍の先陣が切れるかぁあああッ!! えぇい! 秋蘭や真桜、沙和も離せぇええええッッッ!!!」

 

真桜「くぅううう────な、何てぇ力やぁあああッ!!!」

 

沙和「もぉう……限界なのぉおおおッ!!!」

 

秋蘭「姉者、落ち付けぇ───!!」

 

春蘭「ほ、北郷はぁ……何をしているんだぁ!! あのままだと愛紗たちがッ!!! 早くどけぇ『待ちなさいッ!』────桂花!?」

 

桂花「────この脳筋直情猪!! アンタは、わざわざ皇后たちを挑発に行って自殺する気なの!?」

 

春蘭「────はっ!?!?」

 

桂花「しかも、愛紗たちを殺してくれと頼んで、最後に……華琳さまや私たちを道連れにして、死出の旅に連れてくつもり!?」

 

春蘭「な、なんでぇ! そうなるんだぁあああ───ッ!!」

 

華琳「春蘭! 桂花の言う通りよ! 私は帯刀の許可が下りていない! まともに行けば、幾ら春蘭といえども包囲されて殺される! それに、あの娘たちは人質よ? 私たちが行動を起こせば………同じく処刑されるわ!」

 

春蘭「──────ッッ!?」

 

桂花「それでも良いんなら、早く突っ込みなさいよッ! そうなれば、華琳さまに反逆者の汚名を着せられ、私たちも死罪を賜るわ!」

 

春蘭「ぐぅ………ぐぅおおおおお────ッ!!」

 

ーー

 

思春「冥琳さま! やはり、この周辺は包囲されています! 兵の数も姿が見えないため、ハッキリと言えませんが……凡そ数千!」

 

冥琳「………………」

 

蓮華「冥琳! 何とかならないの!? このままでは、一刀や桃香たちも!」

 

小蓮「そうだよ! 冥琳の知恵で一発大逆転☆的な策は出来ないの!?」

 

冥琳「私としても……手の打ちようがありません! 私が……前の世界と同じ大国の者であれば、まだ考えようがありますが、今はまだ袁術の配下! しかも相手は、権力、武力、人質まで巧みに混ぜた『罠』を準備しています!」

 

蓮華「そ、それじゃ!?」

 

冥琳「今の私では……破れません! アレは、天の龍を捕らえるため、周到に準備されし牢獄! 龍が刃向かう事を封じ、自分たちの野望の玩具にしようと構築された強大な術策! それ程まで……強固な罠なのです!!」

 

小蓮「そんな、そんなぁ…………」

 

蓮華「か、一刀…………」

 

明命「───か、一刀さま!」

 

冥琳「天よ! 願わくば……一陣の神風を求めるのみ………!」

 

ーーー

 

翠「どうすればいい? どうすれば良いんだよ!? 蒲公英ッ!!」

 

蒲公英「お、お姉さぁ──まぁ! ぐ、苦しいぃいいいッ!!」

 

翠「す、すまんッ!! 大丈夫かぁ! 蒲公英ッ!?」

 

蒲公英「ゲ、ゲホッ!! ひ、酷いよ! お姉様!! タンポポが先に死んじゃうよッ!!!」

 

翠「だ、だぁてよぉ!? このままじゃ……このままじゃぁ!!」

 

蒲公英「タンポポだって……何とかぁしたいんだけど……! 悪戯考えるより厄介だよ! こんなのぉーッ!!!」

 

ーーー

 

月「詠ちゃん! ねねちゃん! 何か策は───」

 

詠「~~~~~~~~」ブツブツ

 

ねね「うぐぐぐぐぐ…………」

 

月「……………ごめんね………」

 

ーー

 

華雄「………霞、気を付けろよ? 辺りをかなりの人数で囲まれている。 得物を持っていな私たちに取っては、かなり不利だ!」

 

霞「あぁ……分かっとる! 何とか月や詠だけでも……逃がさなぁなるまいな? 気ぃ付けろや、華雄!!」

 

華雄「………お前もな……」

 

恋「………………………」

 

ーー

 

美羽「七乃……主様が! 主様が!」

 

七乃「美羽さま……」

 

ーーー

 

武が得意な者は策に抑え込まれ、智を操る者は、権力と武により封じ込まれ……対処する事ができなかった。

 

 

◆◇◆

 

【 皇帝は誰に…… の件 】

 

〖 都城内 大広場 高台 にて 〗

 

一刀「………私は、確かに天の御遣いと名乗っています。 しかし、皇女さまより上位の者だとは、決して思いません! 私は、この大陸を救う手助けをする者。 後の治世は──貴女方の双肩に掛かっています!」

 

劉辯「─────否!」

 

劉協「御遣いさま! 貴方こそ、本来は皇帝になってもおかしくない方! そのような戯れ言を申しても……誰も信用しません! どうか、御遣いさま! 私たち姉妹も……他の者たちと同じように……お導き下さい!!」

 

一刀「……………」

 

何進「一刀よ! 悩んでいる時は無いぞ! ハッキリと決めるのだ! 誰を皇帝にと────選ぶのか!!」

 

何進が一刀に問う。 

 

『お前が決めねば……慕う将を三人失う事になるのだぞ?』と言う意味を含めてだ。 

 

何進としては、桃香たちの命が無くなろうとも……何ら痛くもない。 寧ろ、邪魔者が減って好都合。

 

しかし、しかしだ。 

 

心を寄せる、北郷一刀の悲しむ顔も……見たくないのも本音。

 

同じく劉姓を持つ皇女たちが哀しみ様を眺めたくない………これも同じ。 

 

前の世界で、あれほど恐れられた深海棲艦『空母水鬼』が、何と複雑な心境を見せるのだろうか?

 

これも……彼女の中に残る恋姫の思念か?

 

それとも……『空母水鬼』となって……人と多く接したためか?

 

こちらも、恋姫や艦娘並みの複雑な心境を見せるのであった。

 

★☆☆

 

何進より、己の責務を改めて指摘された一刀は、周りの者たちを見据えながら叫んだ!

 

一刀「私が、此処に上がった限り──もちろん、役目を果たしましょう! だが、私は皇女さま方より下の身。 だから……こう示します!」

 

一刀は、懐より折り畳んだ『紙』を取り出し、周りに内容が見えるように上げる! 掲げられた紙には、何か四文字が書いてある!

 

一刀「………俺からの意見としては……これだけです!」

 

────バッ!

 

 

劉辯「───五常!」

 

劉協「これはッ! あ、姉上ぇ……良かった!」

 

 

 

紙に記載してある言葉は……

 

『長幼之序』の四文字!

 

 

 

★★『長幼之(の)序』……儒教の根本的な教えの一つ。 年長者と年少者にある秩序を示す言葉。 年長者が年少者を慈しみ、年少者が年長者を敬う。 他にも『父子の親』『夫婦の別』などの五つの徳目があり、五倫、五常と呼ぶ★★

 

この場合は……『姉を優先するように!』と言う意味になるため……何皇后が歓喜すると思われた……が!

 

ーー

 

何皇后「儒教の……五倫やと!?」

 

何進「だが……これにて決まった! 次の皇帝は姉である劉辯陛下だ! これで、何皇后も納得されるであろう!!」

 

何皇后「なして……そないな面倒な言い方を! キッパリと劉辯と言えば!!

 

何進が、一刀の行動により採決を決めるが……何皇后は非常に不機嫌!

 

綺麗な顔を醜く歪ませて、一刀を睨んだ!

 

ーーー

 

春蘭「な、何でだぁ……? 劉辯様が……皇帝に即位されれば、何皇后にとって都合が良いのだろう!? 何であんなに不機嫌なんだ??」

 

桂花「………凄い、凄いじゃない! あんな事やるなんて!!」

 

華琳「天の御遣いの才覚……ね」

 

ーー

 

小蓮「ど、どう言う事なの? お姉ちゃん……分かる?」

 

蓮華「………………?」

 

冥琳「よくぞ、あのようなやり方を! 蓮華さま、小蓮さま! あれは……北郷の意趣返しですよ! 何皇后の企てに対する北郷からの!!」

 

ーーー

 

詠「あれはね……ワザと名前を言わなかったのよ!」

 

月「わ、ワザ……と?」

 

詠「そう……ワザと。 それも、文字で書いて示すなんて……あの変態の頭から本当に出てきたのかしらね?」

 

ねね「ふ、ふん! アイツにしては……なかなかやるのですよ!」

 

ーーー

 

星「ふむ……稟や風も分かるのか?」

 

稟「………素晴らしい考えで……興奮がぁ……ああぁっ!!」

 

風「はぁい! 稟ちゃん、トントンしますね~? トントン~!」

 

ーーー

 

劉協「姉上! 天の御遣い様は……凄いですね! 皇帝との直接的な関わりを好まず、敢えて国教の教えを書いて人としての道を示すなんて! その奥ゆかしさ、謙虚な態度……やはり、あの方こそ!」

 

劉辯「………劉協!」

 

劉協「あ、姉上……泣いているのですか? やはり、嬉し『ブンブンッ!』──えっ!? 悲しんでいるんですか!?!? な、なぜぇ?」

 

ーーー

 

何皇后「────おのれぇ! おのれぇっ!!」

 

何進「どうした……何皇后よ? 先程の余裕は……」

 

何皇后「うぅ、五月蠅いわぁ! な、名前で呼ばれてこそ、そん親密さが浮かび上がるとしゃべるに、それを敢えて儒教の教えを使うやらなんやら! これほな、遠回しに命じらた事により、別に勘違いしはるほなおまへんか!?」

 

何進「ふふふ……そうか。 名前を言い合えれば……互いの距離は蜜月の如しと思われるだろう。 だが、一刀が儒教の教えを利用して示し、尚且つ高価な紙に記載すれば、劉辯皇女との関係を邪推したとしても……不思議はない!」

 

何皇后「──────」ギリッ!

 

何進「人の口は、良い話より悪い話の方を語りたがる。 今、この洛陽もたくさんの過客が出入りしているからな。 話に挙がっても……劉辯皇女との仲を良からぬ風に語る者も出よう。 そうなれば……!」 

 

此処で……まさかの事態が起こる!

 

何皇后の野望が……崩れた! 

 

北郷一刀の無言の策が……何皇后の野望の根底を覆したのだ!

 

 

◆◇◆

 

【 窮地に光射す の件 】

 

〖 都城内 大広場 にて 〗

 

何皇后「ああぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

何皇后が、両手を覆い隠して嘆き崩れる! 甲高い声が辺りに響き、皆の注目の的を集めた! 

 

何時も自己中心的な何皇后が……地に伏せて泣いている! かような光景など見たことが無い諸侯は、唖然として眺める。

 

劉辯もこのような母を見るのは初めてであり、黙って見ているしかなかったが劉協が寄り添い、劉辯を支える。

 

何進「……………」クイッ!

 

麗羽「ーーーーーー」コクッ!

 

何皇后と楊奉は放っておくと何をし出すか分からないため、捕縛するようにと……麗羽に指揮を下す!

 

楊奉ぐらいなら自殺しても、揉み消す事は可能だが、何皇后ほどになると影響力が大きい。 その予防策の為でもある。

 

そんな中、一刀だけは……桃香たちが人質として捕らえられているため、何皇后に近付き、解放を要求した!!

 

ーー

 

一刀「何皇后……貴女との約束は守りました。 これで……劉辯皇女は皇帝に即位されます。 桃香たち三人の……解放を!」

 

何皇后「解放─────やと?」ピタッ!

 

ーーー

 

────だが!

 

一刀の呼びかけに───何皇后の嘆きが止まり、急に笑い始めた!

 

何皇后「…………ふ、ふふ、ふふふふふっ!」バッ!

 

「「「 ──────!? 」」」

 

何皇后が……笑い出したまま立ち上がる! 

 

何時も優雅に笑う貴婦人が、大きく口を開き……さも愉快そうに!! 

 

ーーー

 

何皇后「アーッハハハハハッ!! わらわの……ささやかいな願い事を潰どした低俗な者たちよ! ようええ、ええわ! お主等の命やらなんやら……芥と同じに過ぎぬ! 楊奉! 合図を送れ! この者共を皆殺しにしはるために!」

 

ーー

 

楊奉「───外の者共に連絡を送れ!」

 

衛兵「───はっ!」ダッ!

 

ーー

 

何進「何をする気だ、何皇后よ!! 気で狂ったか!?!?」

 

何皇后「気狂いと申すんか……? なんぞ、これしきん事で狂おうか! わらわの為に動かず駒は駒であらじ! たやん余計なモンでしかいない! なん進、劉協、ほんで天の御遣い! 更に事情を知る諸侯共も……な!!!」

 

何進「─────何だと!?」

 

何皇后が、顔に満面の笑みを浮かべ、楊奉に視線を向けた。

 

楊奉「さて……何皇后さまより御指名を頂いたからには、説明をさせて貰うかねぇ? 哀れな道化師の諸君! ぎゃははははははッ!!!」

 

楊奉が……あざ笑いながら……丁寧に説明する。 

 

如何に自分たちは賢く、罠に嵌まった諸侯や大将軍、そして……天の御遣いは愚かだったと言うことを……!!

 

楊奉「気が付かなかったかい!? ここに居る奴らは、後の障りになる有能な奴らばかりなのさ! 十常侍共を最後に洛陽外に逃走させたのも、反十常侍勢力を探るため! そんな罠に掛かったのが……お前らなんだよ!!!」

 

ーーー

 

桂花「そんな──ッ!」

 

ーー

 

冥琳「────!」

 

ーー

 

詠「此処まで……頭が切れる奴が……!?」

 

ーーー

 

楊奉「だからな……何進は皇帝選択の儀と言っているが、選択されているのは皇帝だけじゃない! ここに雁首(がんくび)揃えた諸侯……お前ら自身の選択も含んでいたんだよ!!」

 

『ーーーーーーーー!?』

 

楊奉「十常侍らの働きが思いのほか良かったせいか、こんな簡単な罠へ引っかかりやがって! だから……皇帝陛下選択で様子を見て、何皇后さま側に引き入れようと思えば……お前ら全然駄目じゃねぇか! 使えねぇwwww!!」

 

白蓮「な、何がだぁ! 皆、漢王朝に忠を尽くす立派な臣! 貴様らこそ、漢王朝を食い物にする不忠者ではないかぁ!!」

 

楊奉「そうそう……その態度! お前らの一喜一憂は、何皇后さまの為じゃねえ! 漢王朝……いや! 天の御遣い寄りなのが、ハッキリしているんだ! だからぁ──助けるなんて面倒な事……止めたよ! 馬鹿馬鹿しいからな!」

 

何皇后「やから、主たちが同意せぬ場合、こん広場を包囲しはる楊奉ん兵に襲わせる手配が出おこしやすおる! 事情まやて知った主たちを、そんまま放っておくような……わらわやと思ったかえ!?」

 

ーーー

 

桃香「あ、貴方たちの考えは……間違ってるよ! そんなんじゃ! この大陸の民の皆は、笑顔で暮らせない!!」

 

楊奉「あ~ん? 何を寝ぼけた事をほざいてやがる! 何皇后さまに無礼だろう!! この女はぁ───ッ!!?」

 

────ガッ!  

 

桃香「きゃああああッ!!」ドンッ!

 

愛紗「桃香さまぁ!」

 

鈴々「お姉ちゃん───ッ!!」

 

ーーー

 

楊奉は、桃香の非難の声を聞きつけ、腹立ち紛れに身体を蹴り付けた! 

 

桃香の叫びを聞いて、縛られている事を忘れて、近付こうとする愛紗と鈴々!

 

楊奉「────チッ!」

 

楊奉が愛紗と鈴々を蹴ろうとした時、急に立ち止まる!

 

ーーー

 

楊奉「───おっと! 俺の後ろで……フラフラ動くオバサンは黙っていな! アンタの無駄に大きい髪が、左右に揺れて居場所を教えてくれるんだよ! 下手に動けば、自慢のクルクル髪ごと斬り捨てるぜ!?」

 

麗羽「─────くぅ!」

 

楊奉「誰も動くなよ!? 動くと……この女共の首が、どっかに飛んじゃうぜぇ! お前らの中には、コイツらの知り合いが多いらしいからな!」

 

麗羽「も、申し訳ありません!」

 

何進「───待機していろ! もしもの場合、私が出る!」

 

麗羽「…………………!」

 

ーーー

 

桃香「皆、私の事は良いから───早くぅぅぅ!!」

 

愛紗「───捕らわれたのは、此方の落ち度! 我等に構うなぁー!!」

 

鈴々「鈴々、死ねは嫌だけど………皆が死ぬのはもっと嫌なのだあ!!!」

 

ーーー

 

桃香たちが、そう叫び………被害を自分たちだけで抑えようと試みるが……!

 

ーーー

 

春蘭「ふん! 私が従うのは華琳さまの命令だけだ! 敵が何百、何千と来ようが、捻り潰してやる!」

 

秋蘭「姉者は……恥ずかしがりやだな。 素直に『助けに向かうから待っていろ!』と言えないのか?」

 

春蘭「お、おいッ!!」

 

秋蘭「それに……我が軍には『天の御遣い』と顔見知りの者が多いようだ! 執金吾の首を取るぐらい……大目に見て貰えるだろうよ!」

 

ーー

 

季衣「誰がぁちびっこの言う事なんて聞くもんかぁあああッ!! そこで、大人しく待ってろぉぉぉぉッ!!」

 

流琉「華琳さまを最後まで守り抜き、皆さんもお救いします!!」

 

ーーー

 

桂花「華琳さま……申し訳ありません! みすみす敵の策謀に誘い込まれるなんて!」

 

華琳「悔いる事など後よ! 死んでしまえば、それで終わり! 今は目の前の敵に対処し、生き残る事を最優先しなさい!」

 

ーーー

 

蓮華「………最後まで挫けないわ! 思春、明命! 隙があれば……桃香たちの命を助けてあげて! 私たちの事は、省みなくていいから!」

 

思春「蓮華さま!」

 

明命「────!」

 

冥琳「蓮華さま、小蓮さまは、私が最後まで守り抜く! だから……頼む!」

 

小蓮「シャオだって、孫家の姫なんだからね! これっくらい頑張っちゃうんだから!!」

 

ーーー

 

星「……桃香さま……不甲斐ない臣をお許し下さい! 風、稟! お前たちは脱出しろ! 私が道を開く!!」

 

風「風も残りますよ~! こういう窮地での大逆転こそ~軍師としての腕の見せどころじゃないですか~!!」

 

稟「策も無いのに……フッ、仕方ありません! 私も残り考えますよ。 一人より二人の方が、早く良い案が浮かぶでしょうから!」

 

星「───わかった! 槍が無くとも、この趙子龍! 最後まで守り通して見せよう!!」

 

ーー

 

詠「恋、霞、華雄! 月とねねを連れて引きなさい! ボクが囮になって、時間を稼ぐから………」

 

月「え、詠ちゃん! 詠ちゃんッ!!」

 

ねね「詠殿だけの責ではないのですぞ! ねねだって────」

 

華雄「詠! お前も来い! 1人2人増えようが変わらん! この窮地──必ず抜けてやる!!」

 

ーーー

 

霞「恋! ──早よう逃げへんと!」

 

恋「………大丈夫。 ご主人さまが……助けてくれる!」

 

ーーー

 

美羽「七乃! 早よう! 早ようっ!」

 

七乃「美羽さまは、孫権さんのところへ! 私は此処に居ます!」

 

美羽「な、何故じゃ!? 何故いっしょに来ぬのじゃ!」

 

七乃「決まっていますよ。 私のような嫌われ者と居ますと、美羽さまを庇って貰えませんので!」

 

美羽「い、嫌じゃ嫌じゃ!!」

 

七乃「………………………」

 

翠「──んじゃあ、あたし達が庇ってやるよ!」

 

七乃「………えっ!?」

 

美羽「…………お、おぬしはっ!?」

 

蒲公英「知り合いを見捨て行くなんて……目覚めが悪いもんね! ほらっ! とっとと動く!」

 

七乃「えっ? えぇぇぇ────っ!?」

 

ーーー

 

楊奉は、眼下で気勢を上げる諸侯を見て……愉快そうに笑う。

 

ーーー

 

楊奉「良かったな……心配する奴らが大勢いてくれて………。 てめぇらも後で追う事になるのにな………くくくくくくくッ!!」

 

桃香「お願いぃ! 皆……逃げてぇえええッ!!!」

 

楊奉「無駄ぁ無駄ぁ無駄ぁぁぁ──ッ! 中には気付いている奴らがいるが、この広場の外には、俺の配下の兵三千ほどが控えているんだ! 如何に逃げようとしても、包囲されて逃げ道は無し! 誰も助かりゃしねえょ!!」

 

桃香「あ、あぁぁぁぁ……………」

 

愛紗「────ご主人さま! 申し訳ありません………!!」 

 

鈴々「にゃあああああああッ!!」

 

楊奉「おいおい……目を伏せちゃ困るぜぇ! これからが見物だぜ? 血染めの衣装で死の舞踊を踊る舞姫たちを、こぉんな一等席で拝見できるんだ! 大いに感謝して貰いたいねぇ!!」

 

何皇后「此処でなぁ? 一網打尽にすれば、わらわに反逆しはる者もばんばん減るやろうに! さすれば……わらわの漢王朝支配も……早う収束しはるやろぉ! オーッホッホッホッホッホッ!!!」

 

ーーー

 

数々の理不尽さが……広場を覆い尽くさんと牙を向いた。

 

武器を持てば……一騎当千の恋姫たちも武器は取り上げられ、素手で対抗するのみ。 対する楊奉配下の兵は、甲冑と剣を標準装備。

 

しかも……数十名に三千人が襲い掛かる不利この上なし状況!

 

それに、桃香たちが人質で捕らわれている。

 

例え優勢になっても、桃香たちで脅せば───すぐに劣勢!

 

この勝負は───見えた!

 

一刀「…………………」ブツブツ

 

だが…………『天の御遣い 北郷一刀』が静かに呟く。 

 

ーーー

 

一刀「………漢中鎮守府……司令官……北郷一刀が……命じる!」

 

ーー

 

何皇后「───ホッホッ!?」

 

楊奉「───なんだ?」

 

ーーー

 

劉辯「─────!」

 

劉協「な、何を…………」

 

ーーー

 

北郷一刀の顔は、怒りの形相を表し……『呪文のような物』を詠唱した!

 

この時代の者には分からない……とある『符丁』を!!

 

 

 

一刀『─────ニイタカヤマノボレェ!!!!!』

 

 

 

 

ーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

次回から黄巾賊討伐戦だったんですが、簡単に済ます予定だった皇帝継承を長々やる事になりました。 成り行きもありますが、話が分かりやすいんじゃないかな……と思いまして。

 

後、次回で終わらせて──黄巾賊討伐戦に入ろうと思います。

 

 


 
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