No.783577

Another Cord:Nines 夏の特別篇

Blazさん

もうすぐ夏……という事で夏の特別篇です

2015-06-14 14:11:00 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:655   閲覧ユーザー数:553

Extra STORY 「Summer Day!! 少し早目の海開きッ!!」

 

 

 

 

 

 

文月こと七月中旬。

夏の暑さが本格化し、冷たいものを本能が欲してしまう。

冷水。氷。冷風。

それらで身体を冷やし、熱い日々を乗り越える。

その為、熱い日の下を汗を掻く事も重要な事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

= 無人世界『フィオナ』 =

 

 

人工の手が一切入らず、自然のままに変化する世界。

大自然の無人世界ことフィオナ。

ここには誰も知らないある場所がある。

それは―――

 

 

 

「うっはぁ!!凄く綺麗な海ですよー!!」

 

「ついたー!」

 

「ここが・・・」

 

「そ。私が見つけた秘密のビーチだよ♪」

 

 

燦燦と照りつける太陽。その光に当てられ反射する青海。その後ろには白く入道雲が夏の味を引き立たせる。そして白く綺麗な砂浜の上。

 

 

そんな絶好ともいえる場所に、旅団メンバーこと新たにアーチャーを加えたBlaz一味と本郷夫婦。キリヤとパートナーのリリィ。そして、暇ということで荷物持ちついでに付き合った刃がほぼ横一列に並んで目の前に見える絶景の景色に魅了されていた。

 

 

「ミィナ、お前何時こんな場所みつけたんだよ?」

 

「Blazと分かれた後かな。異世界渡ってたらココを見つけてさ。いやぁ・・・一人で見つけたときは最っ高だったわ!思わずはっちゃけすぎて爆発しそうだったよ!」

 

「一人でって・・・ミィナさん、一体なにをしてたんですか?」

 

「ん?ああ・・・色々と探し物をしたり修行したり・・・まぁいろいろかな」

 

最初に見つけたミィナは自分の手柄とばかりに胸を張り、その姿にBlazと刃はそれぞれ呆れた表情で溜息と苦笑をしていた。

ちなみに、Blazはビーチ用の傘などを持ち、刃はドリンクを満載したクーラーボックスを両脇に抱えており、二人の肩の負担はかなりキツイものだ。

 

 

その傍ら、げんぶとキリヤは共に連れて来た妻とパートナーとで海に入る前にと景色を眺め続けている。

 

「こんなにいい景色・・・蓮ならよろこんでくれただろうな」

 

「ああ。今回は連れて来られなかったが・・・また家族で来ればいい」

 

「そうだな。その時は、荷物持ちを頼むぞ耕也」

 

「・・・ああ。わかってる」

 

ちなみに、今回彼ら二人の娘である蓮は別件の為に来られず本人はこの事を本当に残念がっていたようで、しばらくいじけて二人と話したくなかったという。

しかしその変わりとしてか、現在サマーキャンプの真っ最中でBlazが保険として助っ人(正義の味方)を呼んでいるらしい。

 

 

「綺麗・・・」

 

「ああ。言葉がそれだけしか出ないっていうか、それで十分っつーか」

 

「人が手を加えなかったら、自然ってこんなにも綺麗なんですね」

 

「・・・そうだな。俺たちの世界は、自然があるだけでもマシだったが・・・」

 

そう言って辛い過去を呼び覚ましたキリヤは遠くを見るような目で白くそびえる雲を見つめていた。

あの世界がここまで美しい物が残っていたら。

そんな考えにふけようとしていた時だ。

 

「・・・・・・。」

 

「ひぃひぃ・・・ひふぁい・・・」(リリィ・・・痛い・・・)

 

足首をあげて背伸びするリリィがキリヤの頬をつねる。

突然の痛みに現実に戻ったキリヤは頬の肉を引っ張られながら、それを必死に行う彼女と目を合わせた。

 

「キリヤさん。何時までも過去を引きずっていては駄目だって言っているでしょ?」

 

「・・・そりゃそうだけど・・・」

 

「Blazさんだって私達と同じリンクス。けど、過去を気にしないっていって前をちゃんと向いているんです。先輩であるキリヤさんがそんな事でウジウジしてたら情けなくって、私泣いちゃいますよ?」

 

「・・・・・・それは・・・まぁ・・・」

 

 

 

 

「困らないわな。お前は」

 

「ってアルト、何時の間に!?」

 

「いやぁお熱い二人の邪魔をするってのも野暮だと思ったけどよ。ここは後ろから生暖かくニヤけるのが定石だと思って・・・」

 

「はぁ?お前な――――」

 

と、気づけば彼らの事を微笑ましそうに見つめる他の面々。

それに気づいた二人は恥ずかしそうに頬を赤らめ、リリィにいたっては何か言い訳しようと必死に考えるが名案が思い浮かばなかったのか、最終的にフリーズしてしまうのだった。

 

「・・・・・・。」

 

「ふえっ・・・あっ・・・その・・・これは・・・///」

 

「大丈夫。気にしなくていいよ、リリィ」

 

「あ・・・ミィナさ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「録画はキッチリとしといたから♪」(清清しいほどのサムズアップ)

 

「この悪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!////」(恥ずかしさ倍増)

 

 

 

「ミィナさん何時になくハッスルしてますね、鈴羽さん・・・」

 

「うん・・・私達で出来るだけディフェンスしようか・・・」

 

 

「「あははははははははは・・・はぁ・・・」」

 

 

 

 

 

 

気温三十度。湿度は海沿いだからかそこそこのもので、鼻からは海から香る潮風が舞い込んでくる。

そんな日差し照りつける日の下で、Blazたちは用意を始め、更には男が彼らだけと言うことで一応ながら着替えを始めていた。

 

「刃とげんぶ、終わったら変わってくれよ。後は俺たちだからな」

 

「分かっている。だが殆どBlaz一人で終わるんじゃないか?」

 

「甘ぇなお前は」

 

「・・・?」

 

 

「あいつ等に頼まれてビーチボールだの浮き輪だのを膨らませなきゃいけねぇんだよ」

 

「・・・ああ」

 

そのBlazの手元には大量のしぼんだ浮き袋やビーチボールが散らばっており、それを見るやげんぶは同情した目で彼を見つめた。

野郎一人で女に囲まれるというのは傍から見ればハーレムかもしれないが、実際その女の性格を知ればハーレムどころか地獄にもなるのだ。

 

・・・約一名を除き。

 

 

「刃も着替え終わったら手伝えよ。これ膨らますの、一人じゃぜってー間に合わんからな」

 

「あ、大丈夫。終わりましたんで」

 

そう言って着替えの終えた刃は、黒いボクサーの水着と水色のかかった白い上着を羽織った姿で現れBlazたちの手伝いを始める。

 

「っと・・・俺も着替えるとするか。白蓮が少し五月蝿いと思うからな」

 

「着替えって奥さんの所望かよ」

 

「泳ぐつもりはなかったんだが・・・彼女と娘がねだってな。仕方なしにだ」

 

「何処も女に敷かれて引っ張られてかよ・・・」

 

 

「「「お前と一緒にすんなBlaz」」」

 

「はっ・・・現実は非常ダッゼ・・・(泣)」

 

 

 

 

 

 

- 数分後 -

 

 

「Blaz~♪」

 

「Blazさんたちも着替え、終わりましたかー?」

 

「ん、どうやら女性チームも終わったようだな」

 

「らしいな。こっちも今し方だ」

 

水着へと着替え終えた女性チーム。その中でBlazの元へと白と水色のセパレート水着を着たニューが元気よく彼の元へと走りこんでくる。

頭には日射防止の為にハイビスカスの付いた麦わら帽子を被っており、Blazたちは彼女のその元気の良い姿に微笑ましく感じた。

 

「にゅ~♪」

 

「ハハッ随分と可愛らしくなったな、ニューは」

 

「にゅ♪」

 

「とーぜん!私が選んだ水着だからね!」

 

「お前の事だからスリングショットを選んでくると―――」

 

「あ。見たい?」

 

「は?」

 

「今ね、リリィが着てるよ。スリング」

 

 

と言って指差す方向を見つめる男四人。そこには、しゃがみこんで泣いているリリィと慰めている白蓮と鈴羽の姿がある。

それを見た彼らは「まさか・・・」と思い、彼女が顔を上げるのを逃さず捉えた。

すると・・・

 

 

 

「き・・・キリヤさぁん・・・・・・//////」

 

「こ、耕也・・・少し待ってくれ。頼む」

 

「リリィさん無理矢理着せられたからね・・・」

 

 

なんということでしょう。

きわどい露出度の水着を着たリリィが肌の見える部分を手で覆い隠し、今にも泣き出して死んでしまいそうなほどの顔で彼らを見ていたのだ。

これには眼福と思う者は一人もおらず、唯々絶句するしかなかった。

 

「「「「・・・・・・・・・・。」」」」

 

「いやぁ、流石はやて。よくあんなきわどい水着を隠していたものよ!それも四着」

 

「なんでアイツが四着も持ってんだよ!?」

 

 

ちなみに。本人が不在ではあるが、元々その水着は身内(シグナムとシャマル)友人(フェイト)使い魔(アーマ)に着せる為に用意したもので、実際四人中三人は成功したという。

 

「今すぐ着替えさせろミィナ!!」

 

「ぶーどうしてさー?」

 

「どうしてもこうしてもねぇっての!!本人恥ずかしがってるし、見てる俺たちも恥ずかしいわ!!」

 

「えー?キリヤの事だから鼻血だして出血多量になるかと思ってたのにー」

 

「ならんわ!!寧ろ、頭の痛さで出血多量になるわ!!!」

 

「・・・仕方ないなぁ・・・んじゃあ次はきわどいビキニ「こんのマッドサイエンティストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

 

その後。リリィは腰に布を巻かせた青のセパレートの水着に着替えて無事に事なきを得たという。

しかし本人がまだスリングのショックが残っているのでキリヤが自分の着ていた上着を着させることにしたのだった。

 

 

 

「・・・予想通りっつーか、なんつーか・・・」

 

「そういえば、Blazさんは水着は蒼色じゃないんですね」

 

「ん?ああ・・・これか」

 

Blazの水着は蒼ではなく、逆に赤い色の上着とボクサー水着で上着にはBlazやラグナが使う「デットスパイク」のマークが入っている。

彼曰く、「デットスパイクパーカー」との事だ。

 

「貰いモンだ。水着なんて着る意味なかったからしまい込んでたけどな」

 

「一度も着なかったんですか?」

 

「着る機会がなかったんだよ。海っつってもロクな思い出もなかったからな」

 

「・・・ちなみに、そのロクな思い出とは・・・」

 

 

 

 

 

 

「・・・地平線の向こうからやってくるウゼェ(連邦軍)の大軍」

 

「・・・・・・。」

 

あまりに軍人よりな思考に、尋ねたアーチャーは苦笑するほかなく、「そういえば、彼は元軍人だったな」と今更ながらな事を思い出しつつ遠い目で彼を見ていた。

 

「あー・・・思い出しただけで腹が立ってくる・・・ったく・・・地平線の彼方から戦艦やら空母やらの大軍で押し寄せてよー・・・対艦砲と俺たち(MS部隊)がどれだけ苦労したことだか・・・中には足撃たれて機体の中で溺れ死んだ奴だって・・・」

 

「ぶ、Blazさーん・・・どうか戻ってきてくださーい」(棒読み)

 

 

「むぅ・・・そういわれると俺もロクな思い出がないな・・・」

 

「お前も耽るなよ、耕也」

 

「・・・そうする」

 

ちなみに。げんぶの水着はスポーツ水着で、いわばビキニタイプ。

強面の男がビキニ一丁という凄まじい光景には他の面々は近寄りがたいもので、他の男たちでさえも「上着着ろよ・・・」とぼやいた。

それに反し白蓮は白いビキニタイプの水着で、腰にはハイビスカスの柄がついた布を巻き、大人の風味を醸し出している。

 

 

「大丈夫かリリィ?」

 

「はい・・・ちょっと落ち着きました・・・」

 

その近くではキリヤが未だに怯えるリリィを気遣っており、自分の着ていた上着を彼女に着せさせて慰めている。キリヤの水着はリリィと同じく青いろのボクサーで、リンクス時代に使用したエンブレムをあしらったものがついているのが特徴だ。

 

「もしまだ恥ずかしいなら、別に上着を着たままでもいいから遊びに行って来い。そいつは濡れても平気だからな」

 

「・・・はい」

 

涙の後が残る目で見つめるリリィに、キリヤは小さく微笑みかける。

本人も堪える事だったのかまだすすり声が聞こえるが、それは時間が経てば直るだろう。

 

 

「りりぃ~あそぼー♪」

 

「ホラ。チビッ子がご指名だぞ?」

 

「・・・・・・ええ。今いきまーす!」

 

再び明るさを取り戻したリリィはキリヤと共に呼びかけたニューたちのところへと向かう。

元気良く手を振り、ニューに答えるリリィの姿にキリヤは小さく「よしっ」と呟き、彼女が再び明るい表情を取り戻したことに心から喜んでいた。

 

「・・・よかったですね、二人共」

 

「ああ。そうかもな」

 

 

 

 

 

「・・・あのさーBlazー」

 

「・・・。」

 

 

 

 

 

「お願いだから、出して?」

 

「「だが断る」」

 

ちなみに。リリィを泣かせたミィナは現在、頭だけをだして砂の中に埋められているという罰ゲームを受けており、彼女の力では抜け切らないほどに深く突き刺されていた。

 

「ひーん!!ごめんってばー!!録画データは消すし、写真はバックアップして消すからー!!」

 

「さりげに諦めてねぇから駄目だ」

 

「ちなみに謝る気がないのなら更に頭から砂を被せます」

 

「いやー!!それだけは勘弁しておくんなましー!!!」

 

「ならさっさとデータと写真を全部消せ。んなモン集めて何する気なんだよ」

 

「り、旅団の活動資金の足しに・・・」

 

「何処で売る気だっちゅーの!」

 

「色々とだよ!!ミッドとか地球とかアン姉さんの艦隊とかokakaの企業(グランダーI.G)とか・・・」

 

「身に覚えのねぇ苦情の原因はテメェかミィナ!!!」

 

これが原因でBlazは過去に何度もokakaやUnknownらに誤解の制裁を入れられており、更には蒼崎に感謝されるなどという事が何度もあったが、今回のこの言葉で全てを知った彼はその後十分ほど彼女の頬をつねり、説教を行っていた。

 

「Blazさんも色々と大変ですね・・・」

 

「好意感情を持っているのは少ないからな」

 

「・・・それって露骨にディアーリーズへのあてつけだよな?」

 

「・・・否定はせん」

 

 

 

 

その間。少女達は蒼く澄んだ浅瀬で塩っけのある海水を掛け合い、水辺での遊楽を楽しんでいた。

照りつける太陽の光が飛び散る海水に反射し、彼女たちの気分が明るいというのを証明している。飛び散っては戻り、また飛び散っては誰かの肌にかかる。

 

ただの水のかけ合いだというのに、これほど楽しいとは誰が思っただろう。

 

「そぉれっ!」

 

「ひゃっ!?もぉっ!」

 

「にゅぅ!」

 

 

「いやぁ・・・快適快適」

 

「年寄り臭いぞ、アルト」

 

「いいじゃねぇか・・・こちとら最近までずっと船ごもりで身体を思い切り伸ばすって機会がなかったからなぁ・・・」

 

「・・・ま。仕方のない事か」

 

浜ではパラソルの下で白蓮が椅子に腰かけて若者たちの戯れを眺めており、その近くでは浮き輪にはまった状態でアルトが波に揺られて日光浴を行っていた。

殆ど外に出る機会もなく出たとしても安らぐ時間もなかったので、本人は本人なりにこの時間を有意義に活用していたようだ。

 

 

「・・・いやぁ・・・若いっていいですなぁ」

 

「若者は元気ですねぇ」

 

「なに二人ともジジイ臭いことを言ってるんですか」

 

その彼女達の光景をまた別のパラソルの下から眺めるBlazとげんぶに刃は呆れた顔で突っ込みを入れる。完全に目と雰囲気が年寄り臭くなっていたのだ。

 

「仕方ねぇだろ。俺たちは最近色々とあったんだし、ここはのんびりと休暇モードになろうって思ったら、結果ジジイ臭くなっただけだ」

 

「そうだ。誰だって疲れたときにはジジイに成長するんだ」

 

「嫌ですよ、そんなの」

 

「心配すんな。もうちっとナイスな女がいれば俺の浦島太郎はそれだけで若返るんだからな」

 

「はい!ナイスな女です!!だからいい加減だしてBlaz!!!」

 

「だが断る」

 

 

「・・・あれ、そういえばキリヤさんは?」

 

「キリヤか。アイツは確かシュノーケル持って潜りに行ったぞ」

 

 

げんぶの言葉通り、キリヤはシュノーケルを持ち少し深い海面へと潜っている

なんでも海の中が綺麗だったというリリィの感想を聞いてか、彼は直ぐ様シュノーケルを取って二人で行ったらしい。

が。それを聞くや、未だ頭以外は埋まっているミィナが「あー・・・」と声を漏らした。

 

「・・・何かあるのか、ミィナ」

 

「なにか・・・って程じゃないけど、あんまり深く潜ったりするのはお勧めしないよ。あと、沖に出るのも」

 

「・・・?どういう事ですか」

 

「実は、この世界の海は他の世界。それも地球の海よりも全く違う、完全に異なった生態系を築き上げているの」

 

「独自の生態系をか?」

 

「そ。食物連鎖のピラミッドは変わらないけど、そのピラミッドの一段一段が特異的なものに変化しているっていうのがこの世界の生態系なんだけど―――」

 

「・・・たとえばどんなだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・サメが平然とカジキの群れに捕食される」

 

 

 

「「「――――――!?」」」

 

 

つまる所、弱肉強食の世界なのは変わりないが、その弱者と強者の種類が地球とは全く異なっているのだ。

強者だったものが、場合によっては弱者となり、弱者であるものは強者となる。

生き物が持つ運と力。そして僅かな知性。

これが理由で強弱の関係が逆転してしまう事がザラだという。

 

「・・・く、食われる心配は・・・」

 

「ないと思う。浅瀬だとそこから逃れた魚たちが生息しているから、問題はないけど、一応危険ゾーンがあるから、そこから先は行かないようにしてって―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。沖の辺りでキリヤの叫びが聞こえたが、彼らは唯一言を呟き、見ようとは思わなかった。

 

 

「「「「・・・・・・遅かったか」」」」

 

 

「Blaz~」

 

 

「ん?どうした、ニュー・・・う?」

 

そして、その近くでは何故かニューがマグロを釣り上げていたという意味不明なことになっていた。

 

「・・・なんでそうなってんだ?」

 

「ええっと・・・ニューちゃんが浮き輪に乗って沖のほうに向かっていたら・・・」

 

「なんか、マグロが近づいてきたらしくって」

 

「で。それユニット(ムラクモユニット)が反応して反撃した結果・・・」

 

「獲れたよー♪」

 

 

「「「となった次第です」」」

 

 

「わーすごいなにゅー」

 

「Blazさん、メッチャ棒読みですけど大丈夫ですか」

 

あまりの衝撃事実と有様に取りあえずBlazは感想を言ったのだが、その目は白く遠い目をしていたという・・・

その様子に刃はなにもいう事が出来ずげんぶは思わず白蓮のほうに目を向ける。

どうやら彼女も驚きはしていたようで、かけていたサングラスがずれていた。

 

「・・・流石はムラクモユニットの一つというか・・・」

 

「まぁ、ニュー(あいつ)の場合は厳密にゃムラクモユニットじゃねぇんだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らと行動を共にするニューと、もう一人、完成品(・・・)であるν-13とは様々な相違がある。

自我の違い。精神の違い。力の違い。生と、行く末()の違い。

 

元は廃棄されるはずであった彼女を偶然イカルガの次元素体の墓地で見つけたBlazはまだ稼動可能な状態であった彼女を保護。ココノエに見せに行ったところ、彼女とBlazとの間でひと悶着あったがBlazが預かり、最期まで世話をするというのを条件に《ラムダ》と呼ばれる次元素体に使用した模倣事象兵器の改良版を埋め込み、彼女に再び生を与えた。

 

現在彼女の中にはムラクモユニットを模した模倣事象兵器が埋め込まれており、それが彼女の核であり命でもあり、力でもあるのだ。

 

 

 

「・・・・・・思えば、俺の周りって死に掛けどものオンパレードだな」

 

「―――そうだな」

 

 

 

死人であるはずだった。死ぬ筈であった者達。

それが何の縁か、彼のもとに寄り集まり、今こうして第二の生を受けている。

傲慢といえばそれまでなのだろう。誰だって死にたくもないし第二の生なども人によっては欲する者もいるだろう。

正直、救った本人も内心はそれを純粋に受け止めることは難しかった。

素直に死を与えるべきであったか。それとも正義の味方のように救うべきだったのか。

 

時折、後悔のような念に押し潰されそうになるBlazはどこか遠い目で彼女達を見ていた。

 

これが正しかったのかと。これでよかったのかと。そんな自問自答を繰り返しそうになった時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――Blaz」

 

「・・・あ?」

 

「彼女達は生きている。それは確かなんだ。それだけを思っておけばいい」

 

「・・・・・・げんぶ」

 

げんぶがBlazの肩を叩き、心に直接訴えかけるように言う。

その言葉はかつて一度は死を覚悟したが、こうして再び生きている。

一度は死んだが、再び生を受けた。

その確かな事を疑うな。信じろ。

彼の言葉はそんな今のBlazに対する言葉でもあった。

 

 

「・・・・・・さて。あのマグロ。旨いのか?」

 

「さぁ?私も食べた事はないし・・・」

 

「―――取りあえず、サバくかあのままだと不味くなっちまうし」

 

「・・・Blaz?」

 

「急げよミィナ。先に食っちまうぞ」

 

「えっ・・・ちょっ・・・私抜けないんですが!?」

 

その後、穴から抜けることができなかったミィナは刃に助けてもらい、無事に抜け出せたのだが。矢張りまだ信用されていなかったのか、彼に笑いながら疑いの目で見られていたのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

= 昼時 =

 

「・・・で。結局全部さばいたのか・・・」

 

「まぁ残すのも勿体ねぇし、ここはバッサリとっつーことで」

 

昼時になり、丁度空腹となってきた面々はニューが釣り上げた(?)マグロを中心に集まっている。

その中でBlazと刃の二人はマグロをさばき、各ブロックに分けて調理を始めている。

また調理というわけで白蓮も参加し、簡素ではあるが色々なものを完成させていた。

 

「とはいうが、流石にこういうのは想定外だったからな。今回はたたきと軽く炙ったものぐらいで勘弁してくれ」

 

「えっ・・・たたきって、この短時間でどうやって―――」

 

「アーチャー。世の中知らなくていい事はあるんだぞ」

 

「・・・・・・。」

 

 

(要は・・・)

 

(暗黙の了解っつーことだな)

 

白蓮の恐ろしさを身にしみて知っていた鈴羽とアルトは無言のままアイコンタクトで頷いた。彼女達も白蓮には頭が上がらず、絶対に反抗できないと経験上わかっていたのだ。

その為、彼女のプレッシャーに圧されていたアーチャーを見て、懐かしむような遠い目で見つめていたという。

 

 

「キリヤさーん、ゴハンですよー」

 

「・・・・・・。」←未だにダメージが残ってのびている

 

「リリィ、あんまり怪我人(笑)を動かさないほうが良いよ」

 

「ま・・・待てや鈴羽・・・(笑)ってなんだよ(笑)って・・・ぐふっ」

 

ちなみにその近くではサルベージされたキリヤが傷ついたまま伸びており、リリィは彼を揺さぶりながら声を掛けていた。無論、本人には聞こえているが揺さぶられて余計にダメージが浸透してしまい、声を出す事も難しい状態だ。

 

 

「にしても、流石にこのデカさは予想外だな。こりゃ俺たちだけじゃ食べ切れんぞ」

 

「なら、ウチの亭主に任せとけ」

 

「え、げんぶさんにですか?」

 

「ああ。アレをみろ」

 

「「アレ・・・?」」

 

 

白蓮がそういって指差す方をBlazと刃が見ると、そこには白い煙を口から放出して白目を向いてしまっているげんぶが倒れていた。

 

「「・・・・・・・・・。」」

 

「さっきそこの馬鹿(キリヤ)を助けにいって体力を使いすぎてな。現在進行形で空腹状態だ」

 

「・・・げんぶさんって大食いキャラでしたっけ?」

 

「そのポジションって俺の覚えが確かならZEROのはずだ」

 

「誰もあんなバケモンと比べる気はない。普通の人よりも少し大食いになるというだけだ」

 

「・・・だそうですが、げんぶさん」

 

 

 

「そこまではいかん・・・だが今、本当に何故か腹が・・・」

 

「・・・ま。兎も角食えよ。腹の足しにはなるはずだ」

 

そう言い、Blazが炙ったマグロの塊(一口サイズ)を渡すと、げんぶは息を吹き返したかのように黙々と食べ始める。

 

「・・・ふうっ何故か急に腹が痛くなってな。そのせいでさっき一旦便所に行ってたんだ」

 

「便所?便所ってどこに・・・」

 

「決まってる。デ○ライ○ーだ」

 

「おい、昭和代表」

 

「堂々と平成のライダーのですよねそれ・・・」

 

 

 

「あと言い忘れていたが、普通の握り飯やから揚げも持ってきたものに入っている。味に嫌気がさしたならそいつも食べてくれ」

 

「にゅ~」(もっもっ)

 

「あ、ニュー何時の間に・・・」

 

「すいません、タッパーに入れているって白蓮さんがいってたのを思い出して・・・」

 

「ナイスアーチャー・・・あ、私このから揚げ好きかも」

 

小さな両手で握り飯を食べるニューと、彼女を膝の上にのせてから揚げを食べるミィナ。どうやら彼女は白蓮手製のから揚げが気に入ったようで、食べるスピードを徐々に上げていた。

作った本人も自信作のようで、それをニューも食べたと見て微笑ましく見ていた。

 

「やわらかーい♪」

 

「あ、ホントだ。これ柔らかいですね」

 

「料理酒で柔らかくしているからな。市販のものよりかは食べやすいはずだ」

 

「へー・・・料理酒だけでこんなにもねぇ」

 

「蓮も好物でな。こだわっていたらこうなったのさ」

 

「・・・市販のはそんなに硬いのか」

 

「げんぶさんは市販食べてないんですか?」

 

「いや、歯ごたえを覚えてなくてな」

 

 

 

 

「・・・へえ・・・料理酒でかぁ・・・」

 

「・・・ははん。さてはリリィ―――」

 

「ふえっ!?」

 

「キリヤに食べさせようって腹積もりだね?」

 

「えっ・・・だ、だってこんなに美味しいしやり方が分かるなら普通じゃないてんですか!?」

 

わたわたと慌てた様子で答えるリリィにミィナは「ふふふ♪」と小悪魔のような笑みを見せて、彼女をからかい始める。

それには見ていたほかの面々もまたやっているのか、と呆れ、苦笑した顔で見てみぬフリをしていた。

どうやら彼女のつぼに入るような状態だったところを付け込まれたらしい。

 

「まぁ確かにそうだね。好きな男のコに「美味しいぞ」って言われたいもんね~」

 

「うっ・・・そ、そうですよ!!美味しいっていわれるのは作った人からすれば当然の報酬ですよ!?」

 

「そうだねーうんうん。特に好きな男の人なら尚更だもんねぇ~(ゲス顔)」

 

「な、何が言いたいんですか、ミィナさんは・・・!」

 

「べつにぃ?ただ、キリヤの事が本当に好きなんだなぁ・・・って」

 

言いたげな顔で勿体ぶるミィナに、リリィは頬を膨らませ剥れた顔のまま涙目で睨みつける。が、その反応が想定内だったのかミィナは悪魔の尻尾を揺らしているかのように口元に指を当てて色気のある仕草で挑発する。

 

「ミィナさん、本当にイジるの好きだね・・・」

 

「アイツ女相手ならはやてとタメ張れるからなぁ・・・」

 

「それで前に金髪の姉さん(フェイト)に雷落とされたんだっけ文字通り」

 

ちなみに、それを前科にミィナは以後彼女の部下や知り合いから警戒される事が多くなったと言う。特に彼女の騎士一名は威嚇するほどとか・・・

 

「お陰で隊舎の一角が燃やされて・・・ってアレ、思えば俺が悪いワケじゃ・・・」

 

「あー・・・そういえば・・・」

 

「Blazあん時に罪、擦り付けられたんだっけか・・・」

 

まだBlaz一味が四人(ニュー・鈴羽・アルト)だけの頃。ミィナが戻ってきたという事で彼女の部隊の隊舎に迎えにいった彼らだったのだが、その時には既に遅く、弱肉強食のやり取りが会戦していたのだ。

そこに最悪のタイミングで巻き込まれたBlazは苦節色々とあって、結局雷に巻き込まれ、更には修理費を負担されるという事になってしまった(当然ミィナとの割り勘ではるあが)

 

「アイツは俺の疫病神かよ・・・」

 

「まぁそんだけやられてたら思うわな」

 

「明るく自由ですけど、他人を巻き込みやすいというか何というか・・・」

 

 

「イベント神と呼びなさいBlaz!!!」

 

「一生おめぇを厄病神の化身って呼んでやってもいいんだぞ」

 

「よし。次からはイベント神―――」

 

「・・・聞いちゃいねぇな」

 

「お、横暴・・・」

 

「―――?」←マグロをほお張っているニュー

 

 

「・・・。」

 

「あれ、白蓮さん、どうかしたんですか?」

 

「ん・・・ああ。少し連絡をな」

 

一頻りの調理を済ませ、手を洗い終えた白蓮はあまり冷えないようにと上着の中に入れていたタブレット端末を取り出し、画面に釘付けになったかと思いきや、何が書かれていたのか小さく微笑んだ。

それを偶然見かけた刃と鈴羽の二人はなにがあったのかと聞いてみる。

どうやら娘のサマーキャンプの状況を逐一確認しているようだ。

 

「連絡?誰から・・・」

 

「Blazの知り合いらしい。なんでも、正義の味方だとか・・・」

 

「・・・アーチャーは居るけど?」

 

「別の誰かだろ?なんでも、嫌に面倒見がいい奴らしくてな。地味だが」

 

 

(あ。あの人か・・・)

 

余談だが、その本人はどうやら渋々やらされたようで、Blazに報酬をチラつかされた所為か泣く泣くその条件を飲んで助っ人に行ったらしい。

 

「食費が大変だそうだ」

 

「まぁ・・・」

 

「そう・・・ですね・・・」

 

 

 

「――さて。食事についてはこれで良いだろう。だが・・・」

 

「・・・?」

 

「まだ何か?」

 

「・・・ああ。鈴羽、あの棍。貸してくれるか」

 

「え・・・いいケド・・・?」

 

鈴羽の持つ棍は彼女がココノエに頼み製作してもらった自衛用の武器で、約20の機能を備える万能装備品だ。

ココノエ曰く「コレ一つでサバイバルは余裕」と豪語するほど。

その中の機能の一つとして、先端部を交換することで即席の釣竿にもなる。

 

「確か、コレをこうして・・・」

 

「え゛・・・」

 

「なんで・・・それの使い方を知ってるの・・・?」

 

「・・・まぁ偶然な」

 

それを何処で知ったのか白蓮は釣竿の状態にすると、海ではなくあらぬ方向である茂みのへと投げ込んだのだ。

 

「ていっ」

 

「あ・・・」

 

 

そして。なにか確かな感触を感じたのか、間髪入れずに釣竿を引いた。すると。

 

「ほっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃー」

 

 

 

なんということでしょう。

直後、先端の針の部分には蒼崎夜深が食い付いていたのです。

 

 

 

「「・・・・・・!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っていだだだだだだだだだだ!!??!?!?」

 

「うわぁ・・・」

 

「アレ・・・髪の毛に食い込んでますね・・・」

 

「も、もげる!?俺の頭と髪の毛がもげるぅ!?」

 

釣られてしまった魚のようにもだえる蒼崎を、白蓮は文字通り魚を見るような目で見ていた。どうやら既に彼に情けは持っていないようだ。

しかしせめて弁明をと言いたいのか、釣られて白蓮の前に引きずられた蒼崎は砂塗れの顔で顔を見上げた。

 

「酷い!せめて言い訳する機会ぐらい下さい!!」

 

「だが断る。そんな下心丸見えの奴に慈悲も言い訳もクソもない」

 

「ひ、酷い・・・」

 

冷徹すぎる物言いで見下す白蓮に蒼崎はうるうると涙を流す。傍から見る二人にはさながら神に慈悲を請う信仰者のような有様だ。

尤も、白蓮を神とするのかどうかは二人には疑問なのだが。

 

「――で。蒼崎さんはどうしてここに?」

 

「・・・いや、実はBlazの世界のはやてに情報を・・・」

 

「・・・・・・・はぁ。あの馬鹿狸・・・」

 

「このままいけば、多分彼女に情報リークされた人が来ますよ・・・」

 

あり得る話だ。と溜息を吐いた白蓮は、名残惜しそうな様子でBlazに帰り支度の用意をするように進言する。

 

「やむえん・・・Blaz。撤収の用意を・・・」

 

「――別にリークされても平気だろ」

 

「・・・何?」

 

しかし帰って来た答えに白蓮は静かに驚き、彼の後ろにマグロを食べながら立つミィナが割って入る。

 

「言ってませんでしたっけ?この世界への道のりを知っているのは私だけではやてには一言も喋ってませんよ」

 

「・・・なら、蒼崎は・・・」

 

「大方、俺たちがココに来る時に使った船に乗り込んでたんだろ?」

 

「・・・はい」

 

Blazの予想に何も言い返せない蒼崎はあからさまにしょげた様子で答える。

それなら話に筋が通ると納得していた白蓮だが、それでも気になることが一つだけあったのだ。

 

「・・・なら、一つ聞く。まさかお前、はやてにこの場所を言ったのか」

 

「・・・いんや。今はまだ」

 

「なんでんな事聞くんだよ、白蓮」

 

「・・・いや、こいつとはやての事だ。リークしてロクでもないことを考えてそうでな」

 

「・・・あー」

 

「ありえますね・・・」

 

だが、刃たちの言葉に蒼崎は間髪入れずに断言して言い返した。

 

「ふっ・・・甘いなお前等。俺がそんなに易々とリークすると思うか?」

 

「何・・・?」

 

「なにか理由があるの、蒼崎夜深?」

 

「当然。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなパラダイスを独り占めしなきゃなぁ!!!ぐははははははははは!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャッ

 

 

ガゴン

 

 

ガチャッ

 

 

ギッ・・・

 

 

チャッ・・・

 

 

 

 

 

「・・・・・・ん?」

 

 

 

 

 

「・・・はぁ―――殺れ」

 

 

 

 

 

 

「Black Onslaught = Zweiッ!!!」

 

 

「ゴルディオンハンマァァァァァァァァ!!!」

 

 

「ワイバーン。ウェルダンで」

 

 

偽・螺旋剣=肆(よんしきカラドボルグ)ッ!!!」

 

 

「5.beat”フル・ドライブ”ッ!!」

 

 

 

 

 

「えっちょっまっ・・・アーンアシクビヲクジキ――ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!??!?!?!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・はぁ・・・慈悲もなにもないんだよね」

 

「そりゃ彼だし・・・ねぇ?」

 

「・・・?」←黙々とゴハンを食べるニュー

 

 

 

 

 

 

 

青い空はすっかりと赤くなり、夕暮れ時になる。

夕焼けの光が海を照らし、一日の終わりを寂しく感じさせる。

 

気絶していたキリヤが目が目覚めたのはそれから一時間程後のことだ。

少しずつ戻ってくる感覚を感じとり、重くなっていた目蓋を開ける。

すると、そこには少し違った光景が彼の前に広がっていた。

 

 

 

「んっ・・・あれっ―――」

 

「あ、キリヤさん起きたんですね」

 

「―――リリィ?」

 

「はい」

 

目蓋の先には自分を見下ろすリリィの姿があった。暖かな笑みと声で呟く彼女に、キリヤはまだ頭が呆けていたのか言葉が出ない。

水着の上には、やや大きい上着を着て風邪を引かないようにしている。

彼からすれば先ほど渡した自身の上着だ。

 

「・・・あれっ、何か周りが変っていうか・・・今何時だ?」

 

「えっと・・・六時ですね。キリヤさんが気絶して二時間ってところでしょうか」

 

「・・・俺、そんなに気絶してたのか?」

 

「途中起きかけたんですけど、ニューちゃんが誤ってダイブして・・・」

 

「・・・感覚だけ覚えてる」

 

「あはははは・・・・・・」

 

苦笑して笑うリリィの顔を見て、キリヤは何を思ったのかほっとした様子で見つめる。

どうやら自分が気絶している間、なにも無く楽しんでいたようだ。証拠として、彼女の頬や自分の頭が置かれている(・・・・・・・・・・・)ももの上には砂がついていたのだ。

浜辺で遊んでいた時かなにかで無意識についていたのだろう。

本人も気づいてない様子だ。

 

「――――――ん?」

 

「・・・?」

 

ほのかな温かみを感じる頭部。

見下ろすリリィ。その上にはパラソルが立っている。

 

「・・・リリィその・・・今、俺・・・どうなってる?」

 

「・・・?どうって・・・どうですか?」

 

「いや・・・その・・・」

 

状況と状態に気づいたキリヤは歯切れの悪い喋り方で説明しようとするが、恥ずかしさと戸惑いに言葉は上手く繋がらず頭も混乱していた。

しかし目の前にいるリリィは気にしていないのか首をかしげており、それよりも嬉しそうな様子で笑っていたのだ。

何がどうなっているのか。

分かりやすく言えば、現在リリィが膝枕をしていたということだ。

 

(やっべ・・・いつもこういうのやってるのに、今回ばっかしは・・・その・・・ってか、他の連中は!?)

 

 

 

この光景を読んでいたのか、Blazたちは少し離れた場所にて彼らの様子を見ていた。

ちなみに言い出しっぺは勿論ミィナ。今回ばかりは面々も賛成したようであえて言い訳を作って彼ら二人の邪魔をしないように離れたのだ。

 

当然。一名はあまり納得してないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

「俺も膝枕してもらいたいなぁ・・・」

 

「ならしてもらうか?」

 

「マジで!?」

 

「吸魂鬼だけどな」

 

「嘘ぉ!?」

 

「あ。必要なら言ってね。捕獲したヤツがあるから」

 

「えっちょっアレを捕まえたの!?」

 

「別に人じゃなきゃ大丈夫でしょ?」

 

「ミィナさん、どうやってあれを捕まえたんですか・・・」

 

「んー?」

 

無意識にミィナに尋ねたアーチャー。しかし、彼女の「知りたい?」の顔が妙に恐ろしく不敵だったので怖気づいてしまった彼女は、青ざめた顔で断った。

Blazもどうやら手伝わされたくちでもう思い出したくも無かったのかそっぽを向いて汗を垂らしていた。

 

「二度としたくはねぇ」

 

「ぶ、Blazさん・・・」

 

「やらされたのか・・・」

 

「げんぶもするか?生きてるって実感すげぇぞ?」

 

「絶対にやらん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

そんな他愛の無い雑談でにぎわいつつ、Blazたちはキリヤとリリィの様子を戻ってくるまで見ていたのだという・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで。何故私を呼ばなかったのかしら?」

 

「ヴァルケンハインの爺さんが行かせんって喧しかったからだよ」

 

「・・・・・・。」

 

(あ、行きたかったんだ・・・)

 

 

 

 

 

 

尚、事件首謀者であるはやてにはげんぶのもっこりが進呈された模様

 

 

「いらんわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!」

 

(自業自得です・・・)

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

女キャラたちの水着

 

Blaz一味(ただし全員上着着用)

 

ニュー : 白と青の子供用(フリル付き)+麦藁帽子(ハイビスカス付き)

 

鈴羽 : 紺色のセパレート

 

アルト : 橙のビキニ

 

ミィナ : 白とシルバーのビキニ

 

アーチャー : 白と青。腰に布を巻いている

 

 

参加者

 

白蓮 : 白のビキニ。腰にはハイビスカスのガラがついた布を巻いている

 

リリィ : スリリング(途中で強制変更) → 青のセパレート

 

 


 
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