No.785733

Another Cord:Nines キリヤ外伝篇

Blazさん

今回はキリヤさんたちをメインにした番外編です。

・余談・
この事象でのキリヤ・リリィコンビはなのはExの世界のミッドに移り住んでいます。
理由はまぁ色々と誤魔化せるからです(笑)

2015-06-25 12:13:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:798   閲覧ユーザー数:720

キリヤ外伝篇  「序章」

 

 

 

 

 

 

 

―――始まりは何気ない日常で起こった。

 

 

それがココまでのことになるなど、誰が思っただろう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= イティイティ島 サロン =

 

 

新西暦の世界。イティイティ島に停泊するクロガネがドッグで整備中の中、地下基地内のサロンで一人の溜息から始まった。

 

 

「「ストーカーぁ?」」

 

「はい………はぁ………」

 

声を合わせて言うのはカーラとミィナ。その二人の前にはサロンにあるロングソファに肩を落として座るリリィが居た。

深い溜息と共に肩を落として語られた悩みに、カーラとミィナは思わず無意識に声を揃えてしまい、驚きを隠せなかった。

 

「何時からなの?」

 

「もう三週間も前からです…」

 

「さ、三週間……そりゃストレスも溜まるわね」

 

三週間もストーカー行為を受けていると聞き、彼女に同情を隠せないカーラは苦笑いをし、ミィナもよくそこまで頑張ったなと賞賛をしたいほどだった。

しかし、後から後からリリィが語る事にその同情が生ぬるい事だというのが二人は知る事になるが。

 

「けど、私達じゃなくて他の皆に相談したらよかったんじゃない?朱音とかにさ」

 

「朱音さんには一度相談しました。けど……」

 

「けど?」

 

「朱音さん曰く、「向こうが上手く気配消してるし、マトモに動けるような時期じゃないから無理」って……それで、一週間前にもう一度相談しようとしたら任務だって……」

 

「で。順序すっ飛ばして私らの所に来た。と」

 

「幸い、今ネクストのオーバーホールを行ってますから。それに、ミィナさんたちなら大丈夫かなって……」

 

「大丈夫って?」

 

「………結論が有耶無耶にならないっていうか…まぁ―――」

 

「「―――ああ………」

 

ちなみに、リリィはその前にイーリスにも相談を持ちかけたようだが、本人は居なくなった竜神丸を探しに出かけたっきりで戻ってこず。他の面々も所用が重なり、残るは答えがバラバラになりそうなディアラヴァーズとBlaz一味が残ったということだ。

兎も角。リリィの悩みを聞いた二人はうねりを上げて考えたが、唐突にミィナはリリィに質問を投げる。

 

 

「………リリィ。ストーカーされるのって大体どの辺り?」

 

「家の前とか……私が頻繁に使っているところとか……ですかね。大雑把ですし、気配もまちまちですから、全部はさすがに分かりませんが………」

 

「相当下調べしたってことね」

 

「のようね。しかも、かなり念入りというかねちっこいというか……」

 

仕様がない。と呟いたミィナはリリィに対し苦渋の提案を持ちかける。

 

「リリィ。私達が調べ上げるまで……クロガネかこの島に居るってのはどう?」

 

「―――それって、ほとぼりが冷めるまでココに居ろっていうんですか」

 

「………。」

 

それは今のリリィにとっては天秤にかけるに等しい提案だ。

たかがストーカー行為だけでしばらく家を開ける。恐らくキリヤがこの場に居るなら賛成よりの意見を言っただろう。

だがリリィにとってはそれは直ぐに納得できる提案ではない。

彼女にとって、あの家は大切な場所なのだ。

 

「勿論。リリィがそれでいいって言うならだけどね。私も鬼じゃないし。いいんなら良いで私からBlazに頼んでキリヤにも言うし。嫌なら嫌で何とかできる限りの対策を講じる」

 

「………。」

 

「けど、周りの目とかもあるから正直コッチに居るよりも対策できる範囲は狭いと思う」

 

「………。」

 

「決めるのはリリィだから。無理に焦らなくてもいいの、ね?」

 

「―――私は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――よかったの、ミィナ」

 

「仕方ないよ。リリィの意思を尊重した結果なんだし…」

 

二人だけになったサロンの中、ミィナはリリィが先ほどまで座っていた場所に寝転がり、腕枕をした状態でカーラと言葉を交わしていた。

リリィはあの後、ネクストの整備がある、と言い逃げるようにその場を後にしていった。

彼女自身、ミィナたちを信頼して相談を持ちかけたのにも関わらず恐らく結果が今までと似たようなものだから内心では失望してしまったのだろう。

そんな気持ちを悟ったミィナは彼女の力になれなかったという自責を受け止め、先ほどよりも気を落としてしまっていた。

 

「………相談する側もだけど、される側も大変ね。一人で全部背負い込まないでね」

 

「うん。ごめん、カーラ」

 

 

そこへ気の抜けたような声が自動ドアの開放と共に聞こえてきて、ふらふらと紙が揺らいでいるかのようにふらつきながら入ってくる。

 

「御使い班、ただいま戻りました~~………」

 

疲れ気味の様子であるアーチャーは半目開きの目と脱力した声で二人のもとへと近づき、近くのソファーへと倒れこんだ。

荷が重かったのか、ソファーに倒れるとアーチャーは身体の中に溜まっていた疲れを深い溜息と共に吐き出したのだ。

 

「お帰り。荷物は?」

 

「荷物は第一倉庫の中に。化粧品とかも買ってきましたよ」

 

大きく口を開き欠伸をするアーチャーは眠たげな顔でカーラの問いに答える。

コンテナ一つ分という膨大な量は、華奢な彼女の身体には文字通り荷が重かったようで、欠伸をすると目に雫を溜めて今にも眠りに付きそうな様子で、ミィナは彼女に一応礼を言い寝かせようとしたのだが。

アーチャーはまだリリィの話を知らなかったのと頭が少しずつ休眠に入っていたので言葉を選ぶ事ができず適当とも思える言葉を返してしまった。

 

「お疲れ様、アーチャー……」

 

「ミィナさんも、なんか疲れてそうで……お疲れ様です」

 

「あはははは……」

 

「こっちは体力的っていうより、精神的なんだけど……」

 

「―――ふへ?」

 

 

 

ふとした事からリリィの悩みとそれを深く背負い込んでしまった事を聞いたアーチャーは、眠気を覚まし真面目な様子で話を聞き、自分が少し無神経であった事に恥じてミィナに謝罪する。

 

「……その……ごめんなさい……」

 

「いいって。私が一人で背負い込みすぎてただけだし」

 

そう言ってアーチャーの所為ではないというミィナだが、様子が変わることはなく気を落としたままの彼女にアーチャーは本当に申し訳ない、と頭を下げる。

 

「ごめんなさい……」

 

「ミィナ。アンタがそんな状態じゃ、この子だって心配するって」

 

「………ゴメン」

 

 

「でも、ストーカーってそんな器用なことするんですか普通?」

 

「まぁ……元を辿ればそこよね」

 

そう。今回のリリィの相談の主題。

ストーカーが三週間も行われ、それを解決する為に実力者(朱音)に頼んだが空回りに終わった。ということがアーチャーたちには納得が出来なかった。

ストーカーといえば彼女たち的には死角から特定人物を追跡、監視し続けるが最後には見つかってしまうという決まりごとのような結末を思っていたのだが、それがこうもアッサリと失敗してしまった事がどうしても腑に落ちなかったのだ。

 

「そもそも、ストーカーは誰かが誰かを追跡して始めて成立する行為だしね」

 

「リリィさんの話を聞けば、相手はそこそこリリィさんの行動範囲を把握しているってことなんでしょうけど、毎日でもなく視線を感じるときがまちまちっていうのもなんだか可笑しいっていうか……」

 

「ストーカーならもう少し範囲も調べて結構しつこそうだモンね」

 

「………まるで、なんだか人がずっとストーキングしているって理由じゃ無さそうっていうか―――」

 

 

「―――人、か………」

 

 

もしかして、と頭の中で仮説が浮かび上がったミィナは倒れこんでいたソファーから起き上がるとアーチャーに頼みを申し出る。

その目はリリィの悩みを聞いたときのような真剣な眼差しで、何かに気づいたという様子だった。

 

「アーチャー。少し頼まれてくれない?」

 

「―――頼み、ですか?」

 

「うん。私の勘が正しければ、恐らく―――」

 

 

 

 

 

女弓兵、捜査中………

 

 

 

 

 

 

まさか、彼女の予想が当たろうとは。

調べきったときアーチャーは冷や汗を滲ませ、その行為に戦慄した。

それはストーカー行為とは生易しい、本当に監視というべきものだったのだ。

 

 

 

「――――――ミィナさんの考えどおりでした」

 

「―――やっぱり」

 

「ストーカーっていうより、コレ………」

 

「ええ。監視(・・)、ね。ここまで広範囲で大事だとそうとしか言えない

 

 

―――まさか、街中にサーチャーを張り巡らすなんて、ねぇ………」

 

調べに出たアーチャー。相談に乗ったミィナとカーラ。そして、偶然にも話を聞き暇ということで参加した鈴羽。

彼女達四人の中心にあるテーブルには一枚の地図が置かれ、そこには赤色でマーカーのようなものが書き込まれていた。

サーチャー、魔導師たちが使用する監視用の魔力スフィア体。

そう。地図上に記されたマーカーはアーチャーたちが調べ見つけてきたサーチャーの配置場所だ。

その範囲は尋常ではなく、数も馬鹿にはならない。加えてリリィが頻繁に使用する場所などには大多数の数が設置されていたのだ。

これには誰もが驚きを通り越し呆れる他なかったようで、それぞれが苦い表情を見せていた。

 

「サーチャーはいずれもステルスタイプの魔法を付与して姿を消しているらしくって、反応もキャンセラーを使って探すってだけで苦労したかな」

 

「それに、どうにもサーチャーは一人だけではなく複数人の魔導師が張り巡らしたようで。反応を分類するのにも苦労しましたよ…」

 

「単独犯じゃなくて……複数犯?」

 

「それか、誰かリーダー的人物が居てその指示でばら撒いたか…」

 

「あるいは、リーダーも手伝ったとか…」

 

可能性は幾らでもある。情報が少ない今、答えを決め付けることは不可能だ。

それぞれの仮説に可能性を感じつつ、ミィナは口元に手を当てて考え込む。

一体誰が。何のために。

本当にタダのストーカーなのか。

色々な考えを脳裏に浮かべ、ミィナは地図とにらみ合い何かを感じ取ろうとしていた。

が、そこへ何かを思い出した鈴羽が「そういえば」と話を切り出す。

 

「前に、リリィがBlazに話していたのを偶然聞いたことがあったかな」

 

「――話?」

 

「うん。なんでも―――」

 

鈴羽の話では、リリィはストーカー行為よりも前にしつこく交際を求められた事があったという。

相手は典型的な肥満体の男で、どこで彼女を知ったのか猛烈なアプローチをしてきたのだという。

それに驚いたリリィは怯え、案の定はキリヤが割って入り男を撃退したと言う。

聞けばただの話ではあるが、問題はその後だ。

 

「でも、男は最後にこう言ったんだって。

 

 

 

 

 

 

「僕は君のことを絶対に諦めない」って」

 

「うわぁ…」

 

「悪質というか、しつこい人ですねぇ…」

 

「うん。けど、その男と会ったのはそれっきり。らしくって、本人は清々してたけど……」

 

どうにも引っかかる。言葉を飲み込んだ鈴羽にいち早く察したミィナは、物は序でと思いその男について質問を投げる。

 

「……その男ってさ。どんな奴だって言ってた?」

 

「えっと……太ってて、汗っかきで……」

 

「いや、そこはアタシ達も聞いたって」

 

「ああ、そっか……うーん……確か、ミッドじゃ有名なデバイスメーカーの息子だって言ってたかな?」

 

「………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――何故だろう。背筋が凍るような何かを感じる。

 

 

 

 

それがミィナの危機察知能力であるというのは、本人も後から知る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= ミッドチルダ 自然公園 =

 

 

大規模な事件の傷跡を隠すかのように作り上げられた人工の自然公園。

裏を知れば複雑な心境にもなるが、それでもリリィは純粋に自然公園の緑が好きだった。

そこには生物保護の名目で多くの生き物たちが生息しており、当然ながら動物たちによる生態系も形成されている。

中には野良の生き物達が公園に逃げ込むという事もあるらしいが、それはそれで生態系がバランスを取るので、人の手が入るべきではないとしている。

ありのまま。自然のままに作られた生態系。それがリリィが好むもう一つの理由だ。

 

 

「………。」

 

しかし、今の彼女にはその自然でさえも心を癒す事は出来なかった。

裏切られた訳でもないのに裏切られたような思い。善意で言った筈の言葉が、彼女には悪意に見え、優しさで掛けた筈の言葉は罵倒にも似ていた。

 

「………変な癖でちゃった………」

 

かつての職業だからか、遠まわしに皮肉を言われたり罵声を浴びせられる事は多々あった。

だが、それ以上に彼女の心に傷を残したのは、他でもない。隠す気のない罵声と見下し。そして自殺要求だ。

 

 

 

 

『―――生きておったか。じゃが直にお前さんも死ぬ

 

 

安心せい。直ぐに仲間にあわせちゃる。尤も、弾が無駄じゃがな―――』

 

 

 

 

 

「………。」

 

どんな世界なのか分かっていた。どんな現実なのか分かっていた。

なのに。自分はどれだけ―――

 

 

「―――。」

 

 

深い溜息を吐くリリィは海辺の見える高台に一人塞ぎこんでいた。

ミィナたちと別れた後、所用があると言い一人でミッドのこの公園まで戻ってきたのだが当然本人には特に用事はなく、強いてあげるなら島に置いてきたネクストの様子を見るぐらい。オーバーホールが終わるまで用事のない彼女はまるであの場から逃げるようにここに来ていた。

そこでなら落ち着いて考えられるだろう、と自分の行動に後悔しつつ。

 

「………ミィナたちは私の事を思って言ってくれたのに……何でなんだろ……」

 

目じりに涙を溜めるリリィは何故あんな事をしたのだろうと自分の行いに後悔していた。

マトモに考えられる状態じゃなかったから。――違う。

やはり冷たい言い方に感じてしまったから。――それも違う。

 

――では?

 

 

「………皆に、迷惑かけたくなかったから……?」

 

自身に問いかけたリリィは自分がYESと答えたと感じた。

拒絶も反論もない。その考えが正しいのだと自分自身が答えていた。

 

「それじゃあ…相談の意味がない……」

 

当然のことを今更考える自分に恥ずかしさを感じ頭を下げて塞ぎこむ。

あの時は確かに余裕が無かったが、だからといってそれが理由になるわけもない。

自分から言っておいて自分から払いのける。なんて図々しいんだ。

 

「はぁ………」

 

再び、深い溜息を吐くリリィ。もうずっとこの調子が続き人前に出ることすら難しいと思い逃げてしまった。

このままではまた別の理由で彼女達に迷惑をかけるだろう。

 

「……謝ろう」

 

そうと決まれば、とリリィが顔を上げて振り返ろうとした、その時だ。

 

 

「―――!」

 

後ろから毛が逆立つほどの気配を感じ、背筋を凍らせる。

感じた気配にリリィは振り返り護身用に持っていた銃を抜こうとしたが、一歩遅く相手に動きを封じられてしまう。

両腕を片腕だけで縛られ、銃はその間に落としてしまい唯一の抵抗手段を失った彼女に、間髪を入れずに口元へと布切れが当てられる。

 

「んむっ!?」

 

当てられた布切れは鼻まで覆い隠し、息をすることも叫ぶことすらも出来ないようにされて完全に動きの全てを奪われたリリィは、布切れから香る清潔感のある匂いを無理矢理嗅がされてしまう。

 

(何―――!?)

 

匂えば唯の香りのある布切れと思っていたが、嗅いでいくうちにリリィの意識は段々と薄れ始めていき、それが唯の布切れではないと薄れ始めた意識の中で気づく。

布切れには睡眠薬が塗られ、鼻からその匂いを嗅がせて眠らせる。少し考えれば分かった事なのに、リリィはそれを実際にされるまで気づく事ができなかった。

 

(しまっ……)

 

今更自分の反応が遅かった事に後悔していたが、気づいたときにはもう彼女の意識は殆ど残っておらず、目の色は虚ろになっていた。

 

 

(あ―――キリ………ヤ……さ―――)

 

 

心から思う人。その男の名を心の中で呟いたのを最後に、リリィの意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 同・某所 =

 

ミッドのどこかにある一軒のビル。

その中にあるオフィスには旅団の関係者。その更に協力者が公では行えないときに使うアジトのようなものがあった。

 

『………で、どうだった?』

 

「ミィナちゃんがリリィさんから聞いた証言から照らし合わせて……面倒な奴が浮かび上がったで」

 

とある一室。そこには一つのデスクとテーブル一式。そしてクローゼットとガラス棚が一つという殺風景なものであったが、そのオフィスの主がそれ以上は必要なしという事でそれだけしか置いていなかった。

元よりあまり使用する場でもないし、気づかれれば面倒にもなる。何より、長居するようにしてしまえばもしもの時に証拠隠滅が難しくなる。

あくまでその場を借りているだけという事、場合によっては直ぐに引き払えるように。

 

 

それがそのアジトの主、八神はやてが決めた事だった。

 

「リリィさんの話が正しければ、ソイツは大手デバイスメーカーの御曹司や」

 

『……やっぱ?』

 

「うん。けど、事業自体はそこまで芳しくなくって最近じゃシェアは段々と右肩下がり。規模縮小も考えられているっちゅー状況らしい」

 

『……それで?』

 

「その企業の御曹司。つまり跡取りは二人おってな。一人はもう既に現社長が跡取りにするって決めてるほどの優等生さんらしいねん。今じゃ企業の役人としてその能力を十二分に発揮。将来有望って言われてるエリート様やな」

 

『聞けば善人だけど、まさか……』

 

「いんや。この人は根っからの善人やから無関係。問題はその弟や」

 

目の前にある投影ディスプレイを操作し、次のディスプレイを浮かび上がらせるはやて。

そこには問題としている企業の御曹司の弟の詳細データが表示され、彼女は見るからに嫌そうな表情で眉を寄せた。

 

「コイツが性根から腐ってる奴でな。所謂、典型的なお坊ちゃま気質の奴で兄貴とは完全対照的なんや」

 

『………。』

 

「自己中心的。自分よければ全てよし。快楽主義の塊。あと脂肪のな」

 

『話と会うのはそっちか』

 

「そ。けどこの自己中が中々面倒な奴でなぁ……能力だけは確かで、周りには管理局高官始め大企業の関係者や富豪の関係者がわんさか居るねん。だから、こと金には困らず…っていうか金を持て余しているにも関わらず搾取しているっていう外道」

 

『搾取?』

 

「一部の地域を間接支配して、そこから高い税率での税収。高価な資材などの横流し。そして―――戦争による武器の密売等々など……上げればキリのない違法のオンパレード」

 

『………。』

 

「ウチ等もそこまではちゃんと掴んでるし証拠もある。けど、高官やら富豪やらが邪魔してな。政府でさえも太刀打ちできんねん………」

 

『そんなに?』

 

「どうやってそこまでのパイプを作ったんかは今も不明なところが多いけど…相手にするならBlazさんたちでも使わんと勝たれへんかもな……」

 

『………。』

 

つまり目には目をとはやては言いたいのだろう。

同じ物には同じ事を。毒を持って毒を制す。彼女の意見は尤もだ。

だが、今回はBlazたちにはこの話は伝えてはおらず仮に言ったとしても彼は一笑して済ませてしまうのだと思い、ミィナは彼に打ち明けなかった。

また彼女の本心がBlazを関わらせたくないと言ってしまい、彼を今から引き入れるのはどうしても自分が承諾しなかった。

 

「………。」

 

『………。』

 

「喧嘩でもしたん?」

 

『………ううん。なんとなく………』

 

「………。」

 

『アイツ……いま少し…余裕が無いからさ。無理に…面倒させるのは……ね』

 

途切れ途切れにつむぐ言葉に察したはやては無言になる。

事情を知っている今、彼女の考えも尤もだ。

だが、それでどちらを取るのか。彼女にとっては問題はそこに至るはずだ。

 

「……それは分かる。けど、そっちを選んでしまったら……解決は難しいで。仮にも相手は大企業の御曹司。しかもバックは沢山。もし、ミィナたちよりも強い奴等が出てきてもしたら………」

 

『………ううん。それは……多分無い』

 

「根拠は?」

 

『―――人………かな』

 

「………。」

 

なるほど、と呟くはやてだが、それでも心配であるのには変わりは無い。

まるでミィナを追い込み、止めさせるようにはやては「けど」と言葉を紡ぐ。

 

「相手は金に飽かした奴や。何をしでかすか分からんで」

 

『うん。一応対策は練ってるし、アーチャーたちも居るから、戦闘に関しては問題はない。後はシステム関係だけど……』

 

「ウチも仮にも管理局員。そこまでハッキングする度胸は無いって……」

 

『だよね…ゴメンね、はやて」

 

「ええんよ。それに。丁度良かったし」

 

『………え?』

 

「実は、ウチら(管理局)もあのデブの事を追っててな……実は―――」

 

 

その時。

はやての所に一本の通信が入り、重大な事を話そうとしていた彼女の顔は苛立ちで歪んでしまう。たかが通信が入っただけだというのにここまで苛立つことは無いだろうとモニター越しにミィナの顔が言っていたが、本人は嫌なものは嫌という顔でモニターに一度目を落とし溜息を吐くと、仕方なさげに椅子に深くもたれかかり気だるい様子で応答した。

 

「……もしもーし」

 

『あ、はやて?私だよ!!』

 

「……オレオレ詐欺は時代遅れやでー」

 

『違うって!!私!!フェイトだよ!!』

 

「………。」

 

『真面目に答えてあげなよ…』

 

嫌がらせ半分で通信相手がフェイトであると知ってながら嘘をついたはやては本当に慌て気味であるフェイトの様子に申し訳なさを感じ、黙り込んでしまっていたが別のディスプレイに映っているミィナが苦笑して言ったので、溜息をつくとまた何時ものことかと思いフェイトに尋ねる。

 

「……で。どないしたんフェイトちゃん?またシグナムが模擬戦で相手を病院送りにしたんか?」

 

『いや、それもあるんだけど………って違うってはやて!!そうじゃないの!!』

 

「………?」

 

いつもと少し様子が違うフェイトにはやては眉を寄せる。

シグナムが模擬戦で相手を病院送りにしたことなら彼女も溜息か苦笑するかの反応を見せるのだが、今回はソレとは違い一貫して焦りの色を見せていた。

その彼女の様子になにやら不穏な空気を感じたはやては少しずつ態度を改めていき、今度は真面目な態度でフェイトへと訊く。

 

「………何があったん。一旦落ち着いてでいいから」

 

『うん………』

 

画面越しに深呼吸し、気を落ち着かせるフェイト。

どうにも彼女の慌て方が尋常ではないと思い、はやてはミィナの映るディスプレイとフェイトの映るディスプレイを統合し、多元回線通信に切り替える。

作業が終わったところにフェイトが落ち着きを取り戻しつつもまだ慌て気味な表情で話しを切り出す。

 

『実は、はやてに頼まれて色々と調べてたんだけど……』

 

『調べ?』

 

「ああ。実はミィナちゃんと同じあのデブをウチ等も追っててって、さっき言ったよな」

 

『……うん。それを彼女も?』

 

「そ。で、何か分かったん?」

 

『いや、そっちはまだなんだけど……』

 

「じゃあ…何なん?」

 

『………実は、その………』

 

「―――。」

 

深く息を吸うフェイトに、はやての頬から自然と冷や汗が滲み始める。

まるで彼女の言葉を分かっているかのように全身から吹き出す汗に、はやては息を飲み小さくまさか、と呟く。

 

そう。そのまさかだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『リリィさんが…………誘拐された』

 

 

「………な―――」

 

『えっ………』

 

 

 

『―――もう一度言うね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリィさんが―――奴等に誘拐された………!』

 

 

 

告げられた事実に信じられないという表情となる二人。

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――リリィ………?」

 

 

偶然にも、それは(キリヤ)にも届いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

Blaz一味 簡易オリキャラプロフィール

 

 

ミィナ=E=星煌 (イメージCV 水樹奈々)

 

性別 : 女

年齢 : 二十代

プラチナブロンドのロングヘアの髪をもつ少女(本人談)

スタイルがよくエメラルドの瞳を持っておりことスタイルに関しては一味の中でもかなり上。

ただし戦闘スキルはからっきしで代わりに『魔術コード』なるオリジナルの魔術を使用。

相手の性質や物質の素材などを理解していれば攻守様々なものに転用できる。

また唯一Unknownを抑えられる人物だがこちらは時間制限等がついている。

ちなみに一味の中ではただ一人の家族持ちで高校生の妹が居る。

余談ではあるが一味の中でも古参メンバーで旅団とは解体戦争時からの関係。その為ナンバーズ数名は彼女とは面識がある。

 

 

 

アーチャー (イメージCV 悠木碧)

 

性別 : 女

年齢 : 推定20前後

Blaz一味の中で一番の新参メンバーで弓兵のクラスを通り名としている。

先が白銀色の銀髪ロングヘアーで瞳はサファイア色と言われているほど澄んでいる。

身の丈は歳より少し小さく顔つきもやや幼い。ちなみに服装は某正義の味方をモデルに内側が赤い蒼色の外套を着ている。

弓兵の名に恥じず、弓のスキルは高く視力も一味の中ではトップ。

ちなみに白兵戦も得意としている。

Blazが一時期独立行動を取っていた時に加わったメンバーで、詳しい事は彼しか知らないが性格が明るいなので面々とは直ぐに打ち解けられている。

 

 

 


 
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