(ミクのアパート)
フォーリナー軍政国家からの刺客を片付けたアペンド達3人は、身を隠しながらミクのアパートに戻ってきたのでした。
アペンド「ただいまー」
学歩「片付けてきたでござる」
レン「楽勝だったよ」
ミク「こっちもネットのストリーミング中継動画で見てたよ。アキバで見ていたギャラリーの中に、撮影していたヤツがいたんだね」
アペンド「一応訊くけど、その魔導映像、残っているとまずいですか?」
学歩「身を隠して帰ってきたでござるが、現場の証拠があったら、まずいでござるな」
ミク「いや、所詮こんなの、“本人を証明できる人がいない事”や“公的に報道されていない事”から、単なるコスプレショーだと判断して、2,3日で忘れ去られると思うよ。今は、ニュースが矢継ぎ早に出てくる世の中だから、思っているほどニュースがネットに残ることってないのよ」
レン「それは良かった」
そんな事を話している玄関に、奥の部屋からルカ姫が飛び込んできて、アペンドに抱きついてきたのでした。
ルカ姫「アペンドー! 無事で良かったよー! 怖かったよー!」
アペンドはルカ姫の頭をナデナデしてなだめてから、落ち着いて話を切り出しました。
アペンド「えー、ルカ姫、ここへ来てそれほど経っていないと思いますが、すぐ元の世界に帰りますよ」
学歩「フォーリナーの連中に、ルカ姫は元の世界に戻っているから、向こうの世界の魔導探知で、もう一度ルカ姫の存在を確認しろ、と言っておいたでござる」
レン「すぐに戻って、あいつらにルカ姫を“探知”させないと、またこっちに被害が及ぶかもしれないんです」
ミク「そ・れ・と! ルカを早く助けないといけないでしょ!」
ルカ姫「は…はぃ…すみません…そう致します…」
アペンド「では、まだ繋がっている、この部屋の天上の魔法陣に入って、元の世界に帰ることにします。ミクさん、本当にご迷惑おかけしました。必ず、ルカさんを助けて、この完成品の魔法陣で、連れて参ります」
ミク「ルカの無二の親友である“私”だけが、ここでルカが帰ってくるかも解らない状態で待っているなんて、とても出来ません! 私もそっちへ行きます!」
ルカ姫「え!? だって、あなた、アペンドの対応する人物とはいえ、魔法使えないし、剣術もだめそうだし…」
アペンド「失礼ながら、足を引っ張るだけだと思うのですが…」
学歩「ルカさんの救出では、戦闘は避けられないでござる」
レン「そういう事のプロである僕たちに、任せて欲しいんだけど…」
ミクは無言で部屋のタンスを開けて、フタが閉まっているダンボール箱を取り出し、ガサゴソと中を探し、1つの“アイテム”を取り出しました。
ミク「私の武器はコレよ!」
ミクが手に持って構えたのは、サバイバルゲームなどで使う、カラーペイント弾を発射することが出来る、本格的な“ゲーム用のライフル銃”でした。
ミク「私もルカも、コスプレの合間に、たまにだけど、サバイバルゲームをやっていたの。えっと、サバイバルゲームってのは、そうね、ゲーム形式の模擬演習だと思ってください。その時に使うのが、この“カラーペイント弾”で、相手に当たると割れて、中に入っている塗料が相手に付着して、相手が負けになるんです。この腕だけなら、結構な物ですよ」
アペンド「…この魔導投影機で、私たちの戦闘を部分的にでも見ていたのなら、これから遭遇する“戦闘”がゲームでないのは、よくご存じですよね?」
ミク「ええ。それを見た上で志願しているんです!」
アペンド「その演習武器は、当たっても相手は死なないようになってますよね」
ミク「そうです」
アペンド「私たちが向こうでやることは、場合によっては“相手を殺す”ことになるかもしれないんです。私がとがめているのは武器云々ではなく、『あなたの覚悟』の事なんです。こっちでもあっちでも、普通に世界で暮らしている人が、『殺人者』の名を受ける事は、そうそう無いことだと思います。あなた、もしそう言う事が身に降りかかったら、例えルカさんを救出して、こっちに戻ってきても、十字架を背負い続けて生活する事になるんですよ? そういう状態で、コレまで通り、ルカさんと接して生活していく事ができますか?」
ミク「…」
アペンド「そしてルカさんがいつか、そういう事があった上で自分が助かった事を知ったら、ルカさんは自責の念に駆られてしまうのではないですか?」
ポタン ポタン
アペンドは、ミクの真下の部屋の床に水滴が数滴落ちていくのを見てしまいました。それは、ミクの涙でした。
ミク「わ・・・・・・・私だって・・・・・・・・そんな事・・・・・・わかっているわ・・・・・・・・」
ギュッ!
ミクは両手を握りしめた。そこにはミクの強い決意が現れていました。
ミク「かけがえのない友達の命が危ないって時に、私だけここで何もしないで待っているなんて、とても出来ないのよ…」
アペンド「…」
ミク「危ない事が待っているなんて、百も承知。場合によっては殺人を犯してしまうことも覚悟の上。そうなったら、その事は一蓮托生するつもり…」
アペンド「ミクさん…」
ミクはアペンドの両肩を掴んで詰め寄りました。
ミク「だから、お願い! 私も連れていって!」
レン「…」
リン「…」
学歩「…」
アペンド「…その銃、貸して下さい」
ミク「!?…は、はい」
アペンドは銃を左手で持ち、右手を銃身にかざし、何かを呟きました。
アペンド「マジカライド…マギカント…マジカルバレット……はい!!!」
ギューーーーーン!!!!!
ミク「!!!」
ミクの銃は、銃口が大きくなり横にダイヤルが付与され、ライフルから大きめの拳銃のような姿に変身したのでした。
ミク「こ…これは…」
アペンド「ミクさん、もう後戻りは出来ませんよ。この演習銃を“魔導銃“に変えました。この銃は、横のダイヤルで、火炎弾、氷結弾、電撃弾、疾風弾の”4属の精霊の力が宿る弾“に切り替えられて、それを無限に発射することができます。射撃の腕前はあなた次第。弾には殺傷能力はなく、牽制や軽度のダメージを与えるだけの能力しかないから、あなた自身がこれを使って殺人を犯す事はないです。基本的に私たちの戦闘の後方援護に回って下さい。あの素敵なルカさんの友達の手を、血で染めたくないのです」
ミク「あ…ありがとう!」
アペンド「必ず勝ちに行くけど、この完全版魔法陣が、もし奪われてしまったら、貴方もルカさんも帰ることが出来なくなってしまう。この最悪の事態だけは、一応ココロに留めて置いて下さいね」
ミク「はい!」
学歩「そろそろ戻らないと、フォーリナーやアフスの連中の事がヤバイでござるよ?」
レン「ミクさん、そろそろ行くけど、準備はいい?」
ミク「あ、ちょっと待って!」
ミクはドアの鍵をかけ窓を閉めて、冷蔵庫から中型のタッパー、引き出しからお米をすくって袋に入れ、非常薬と共にディバッグに詰め込みました。
ミク「一応、私も非常食は持って行くわ。ネギの漬け物とご飯だけどね。それと飲み慣れた薬も」
学歩「うむ、よい心がけでござる」
アペンド「行くんだけど、この魔法陣、4人定員だから、第一陣は、レン、リン、学歩で、第二陣が、私とルカ姫とミクさんにします」
学歩「了解でござる」
アペンド「では。魔法陣! 入り口、出口固定で、まず、レン、リン、学歩を転送してください!」
バシュ! バシュ! バシュ!
レン、リン、学歩の3人は、体が光の粒子に包まれ、体が半透明になり、輝く金色の粒に変わって、足先から徐々に無くなっていき、そして、消えてなくなり、向こうの世界に転送されていきました。
アペンド「では、次は、私とルカ姫とミクさんです。ミクさんは初体験になると思うけど…しっかり意識を持っていて下さい」
ミク「はい!」
アペンド「では、魔法陣! 次は私たち3人を、先ほどと同じ場所に転送して、出口を閉じなさい!」
アペンド、ルカ姫、ミクの3人も、先ほどの3人と同じような状態になって、徐々に消えていったのでした。
ミク「う…うっ…な…なんか…変な…」
バシュ! バシュ! バシュ!
こうしてミクの部屋には誰もいなくなったのでした。
シュン…
そしてアペンドの命令の通り、完成版の魔法陣の出口だった、ミクの部屋側の文様は、消えてなくなり、不用意に入ってこられないようになりました。
(クリプトン王国 魔導研究室)
ギューーーーン!
ミクを含む全員が、こっちの世界の魔法陣入り口にたどり着いたのでした。ミクは慣れない体験に、少々息を切らせてしゃがみ込んでました。
アペンド「ミクさん、大丈夫ですか?」
ミク「げほっ・・・・だ、大丈夫。もうちょっと待って、落ち着くから…」
ルカ姫「はぁ、本当に帰ってこられた……みんなごめん!!!!」
アペンド「それはもういいから、ルカ姫はこれからの私たちの救出作戦中でも、何もなかったように振る舞って下さいね」
ルカ姫「え!? 私は参加しないの?」
学歩「姫を戦わせるなんて、できないでござるよ!」
リン「むしろ、私たちがいない間のフォローをして欲しいです」
アペンド「私たちは、私の魔導の研究のため、しばらく素材集めに出かける、ということにしますので、ルカ姫は何かあっても、そういう事を伝えていて欲しいのです。それと研究途中だから、ここは立入禁止、ということも」
ルカ姫「仕方ないよね。わかった。これも任務だと思って、頑張るよ!」
アペンド「ミクさん、大丈夫?」
ミク「は、はい、大丈夫です。これから“ブリーフィング”でしょ?」
レン「そう、作戦会議だね」
リン「今度は私も参加するからね」
アペンド「じゃあ、作戦会議にしましょう」
こうして、ルカさん救出作戦の会議が始まったのでした。
(続く)
CAST
ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
初音ミク(ミク):初音ミク
魔導師アペンド:初音ミクAppend
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
インタネ共和国の神威学歩:神威がくぽ
ギャラリー、その他:エキストラの皆さん
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☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第6話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。
☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。
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