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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第六十六回 第四章:潼関攻防編⑨・敗けずの徐晃

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

今回は敗けずの徐晃。すでに撤退を開始している曹操軍なわけですが、その異名の真意やいかに、、、

あと、あとがきで前回のアンケートの結果も発表しますのでそちらも是非!

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2015-06-07 00:00:19 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4416   閲覧ユーザー数:3776

張遼「待たんかいコラァッ!まだ勝負はついとらんやろ!逃げんなアホ!」

 

 

馬岱「そーだよそーだよっ!防戦一方だったと思ったら無茶苦茶手強くなったりっ!かと思ったら結局逃げ出しちゃうしっ!ホント意味

 

わかんないよっ!」

 

 

 

潼関の北に位置する蒲阪津では、黄河を渡りきり、馬で撤退を開始している徐晃隊を、張遼隊と馬岱隊が猛追していた。

 

 

 

徐晃「すいません、先ほども言いましたが、戦況とは常に変化するものです。今は私の使命を果たすために、逃げ切らせてもらいます、

 

すいません」

 

 

 

徐晃は必死に張遼たちから逃げながらも丁寧に受け答えしている。

 

加えて、徐晃は一団の最後尾を走り、仲間の兵たちを先に行かせる気配りすらも見せている。

 

 

 

馬岱「フンだ、大将のくせして真っ先に逃げずに隊の最後尾にいるとか、それで仲間を守ってます宣言でもしたいわけ!?やな感じっ!」

 

徐晃「すいませんすいません」

 

 

 

馬岱の罵倒に、徐晃は馬上で器用にペコペコしながら普段通りか細い声で謝るだけである。

 

 

 

張遼「ハッ!何が使命や!何が『敗けずの徐晃』や!何が『不敗将軍』や!ふざけよってからに!拍子抜けもえーところやで!御大層な

 

二つ名はハッタリか!?それとも「ふはい」は腐っとるっちゅー意味かいな!?」

 

 

徐晃「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

しかし、張遼の罵倒に対しては、いつものような消え入りそうな謝罪の言葉はなかった。

 

ただ俯くばかりである。

 

真っ直ぐに切りそろえられた前髪で目元が隠れていることもあり、その表情は見て取れない。

 

 

 

張遼「なんやなんや!今度はだんまりかいな!?図星とかつくづくしょーもないやっちゃなァ!!」

 

 

 

しかし、わずかな沈黙の後に発せられた徐晃のか細い言葉は、意外なものであった。

 

 

 

徐晃「・・・・・・・・・すいません風さん、ありがとうございます」

 

張遼「は?いったい何言って―――」

 

 

 

徐晃の口から突然出てきた聞きなれない人物の名に、理解が及ばない張遼であったが、しかしその時、

 

 

 

馬岱「あっ!張遼さんあそこ―――」

 

曹兵士「放てぇ!!」

 

 

 

馬岱が異変に気付き叫ぶのと同時に、岩陰に隠れていた複数の曹操軍兵士が突然矢を射かけてきたのであった。

 

 

 

張遼「チッ、ここに来て伏兵かいな!」

 

 

 

しかし、馬岱の声に瞬時に反応した張遼は、伏兵の放った矢を飛龍偃月刀で弾くと、

 

そのまま進路をずらし、矢の軌道上から外れながら徐晃を追いかけ続けた。

 

そして、ちょうど高い岩壁に覆われた、やや細めの一本道となっている所に差し掛かったその時、

 

 

 

馬岱「ちょ、張遼さんこっちにも―――」

 

曹兵士「放てぃ!!」

 

 

 

張遼が矢の軌道上から外れた矢先に、別の伏兵が現れ、同様に矢を放ってきたのであった。

 

 

 

張遼「くっ、こらアカン、これあれや、この伏兵の出方は何や嫌な感じがするで・・・。道も細い一本道やし・・・。しゃーない、悔しい

 

けど深追いはここまでや!」

 

 

馬岱「うん、その方がよさそうだね」

 

 

 

すると張遼は、伏兵の配置に嫌な感覚を覚え、これ以上の深追いはしないことにした。

 

 

 

徐晃「・・・・・・・・・すいません、張遼さん、先ほどあなたは言いましたよね。御大層な二つ名はハッタリか、と」

 

 

 

そこへ、徐晃が張遼に対して距離が結構あるにもかかわらず、

 

なぜ耳に届くのかというほどの、蚊の鳴くような小さな声で語りかけてきた。

 

 

 

張遼「あァ!?」

 

 

徐晃「すいません、『不敗将軍』。誰が呼び始めたものなのかは知りませんが、確かに御大層な二つ名です。ですが、私はハッタリなどと

 

思ったことは一度もありません」

 

 

 

その声量はごくごく小さいものの、そこには徐晃の強い意志が感じられた。

 

目元を隠すきれいに切り揃えられた前髪の隙間から、一瞬徐晃の強い意志の籠った鋭い瞳が張遼をとらえ、瞬時に張遼は肝を冷やす。

 

 

 

徐晃「すいません、張遼さん、あなたにとって勝ち敗けとは何ですか?」

 

張遼「はァ!?何言ってんねん。そんなん決まっとるやろ!戦いに勝った方が勝ち。敗けた方が敗けや。それ以上でもそれ以下でもない!」

 

 

 

徐晃の質問の意図が見えず、イライラしながら、それでも張遼は一瞬徐晃の瞳に肝を冷やしたことを表に出さず、

 

気丈に思う通りをそのまま吐き捨てるように答えた。

 

 

 

徐晃「・・・すいません、確かにそうですね。では、聞き方を変えます。・・・・・・敗けることと勝たないことは同じことですか?」

 

張遼「な、何を―――」

 

馬岱「―――ッ!!」

 

 

 

徐晃の質問の意味を、今度こそ理解できなかった張遼は聞き返そうとするが、

 

その前に、馬岱がその意味するところを理解したようで、驚きの表情で息を飲んでいた。

 

 

 

徐晃「すいません、そちらの方はお分かりいただいたようですね。では、具体的に言ってみましょう。例えば、10万人対10万人の戦いが

 

あったとしましょう。その結果、一方は2万ほどの兵を残し辛くも相手を退けました。そして、一方は8万というほとんどの兵を残した

 

状態で撤退してしまいました。さぁ、果たしてこの時敗けたと言えるのはどちらだと思いますか?」

 

 

張遼「そ、そんなん撤退した方が敗けに決まっとる・・・けど――――――っ!!」

 

 

 

自分で答えたところで何か引っかかるものがあったのか、張遼は一瞬言葉に詰まるが、しかしその刹那、張遼に電流走る。

 

その閃きと同時に張遼の全身の血流が一気に冷え込み、こめかみ辺りから嫌な汗が垂れる。

 

 

 

徐晃「兵は仲間。また、一人の人間でもあります。そして、人間はそれ即ち国力そのもの。一人でも多くの仲間を生かし、帰すことこそ、

 

敗けない戦いだと私は考えています。私に言わせれば、先ほどの例はどちらも敗けではない、或は、痛み分けの引き分けといったところ

 

でしょうか、すいません」

 

 

馬岱「『常勝将軍』じゃなくて、あくまで『不敗将軍』。敗けずの徐晃っていうのはそういうことだったんだね・・・!」

 

 

 

敗けと勝ちはイコールでない。

 

徐晃の真骨頂は敗けない戦。

 

ただし、この敗けないとは徐晃の解釈で言うところでは、自軍の被害を最小限に抑えた戦をすることにあるのであった。

 

そして、今回の戦いにおいても、実質徐晃隊だけを見てみれば、最初馬岱隊と交戦していたときは目立った被害はなく、

 

唯一張遼隊登場により一部負傷兵が出た程度のものであり、その被害はほぼ無に等しいものであった。

 

 

 

徐晃「すいません、では、長話が過ぎましたね。そろそろ行かせてもらいます。殿の役目は何もここでだけの話ではないので」

 

 

 

すると、徐晃が張遼たちに対して背を向けて完全に撤退の構えに入ったその瞬間、

 

徐晃と張遼たちのその間のあたりに、複数の巨岩が転がり落ちてきた。

 

 

 

馬岱「ちょっ!?岩っ!?」

 

張遼「こらアカン!全員はよ下がりッ!!」

 

 

 

張遼の号令と共に、全隊が急いで後ろに下がった。

 

そしてそれとほぼ同時に、大量に転がり落ちてきた巨岩は、瞬く間に狭い道を埋め尽くし、徐晃追撃の道を断った。

 

 

 

馬岱「あのまま深追いしてたら閉じ込められてたね・・・」

 

張遼「敗けずの徐晃・・・やっぱ噂通りの曲者やわ・・・!」

 

 

 

 

 

 

【司隷、潼関】

 

 

北郷兵「伝令!曹操軍が撤退を開始しました!」

 

陳宮「ふぅ、やはり曹操軍は長期戦を避けるですか。おかげでなんとか退けられましたな」

 

 

 

物見から戻ってきた伝令の報告に、北郷に背を預ける格好で馬に乗りながら、陳宮は安堵の声を漏らした。

 

 

 

韓遂「本当に感謝するぞ。お主たちは我ら涼州勢の救世主ぞ」

 

 

 

すでに北郷たちと合流を果たしていた韓遂は、曹操軍が撤退したことに胸をなでおろすと、拱手して感謝の辞を述べた。

 

 

 

北郷「そんな、とんでもないです!むしろ韓遂さんが氐族の人たちを引き連れてきたのが決め手だと思いますよ!?」

 

 

 

と、北郷が領主らしからぬ平身低頭で慌てていると、その輪に呂布が合流した。

 

 

 

陳宮「恋殿、お疲れ様なのです!」

 

高順「恋様、お疲れ様です」

 

北郷「おかえり、恋。無事で何よりだよ」

 

呂布「・・・逃げられた」

 

 

 

北郷たちの出迎えに、しかし呂布はしょんぼりとした様子で一言つぶやいた。

 

 

 

北郷「けど、あの夏候惇夏侯淵相手に無傷なんて、さすがだよな」

 

 

 

そのような気を落とし気味の呂布に対して、北郷は穏やかな笑顔で呂布の武をたたえた。

 

 

 

呂布「・・・余裕」

 

 

 

呂布は顔をほんのり朱に染めた後、少し照れくさそうに俯きながら、しかし今度はどこか嬉しそうな様子で一言つぶやいた。

 

さらに、蒲阪津方面から南下して潼関に向かっていた張遼と馬岱が、落石による道の封鎖の影響で遅れて北郷の元にやってきた。

 

 

 

馬岱「韓遂様!!」

 

韓遂「おぉ馬岱殿!無事で何よりぞ!」

 

 

 

合流早々真っ先に駆け寄ってきたのは馬岱である。韓遂も、馬岱の無事な姿を確認すると喜びをあらわにした。

 

 

 

張遼「くっそー、アカン、勝ち逃げされた!」

 

 

 

対して張遼は、少しふてくされているようで、かなり悔しがっているようであった。

 

 

 

北郷「何言ってんだよ霞、オレ達勝ったじゃないか?」

 

 

張遼「ちゃうちゃう、確かに曹操軍は撤退したし、ウチらの勝ちかもしれん。けどそーいうことちゃうんや。結局ウチは徐晃に勝てへん

 

かった。いろんな意味でな」

 

 

 

北郷の問いかけに、張遼はいつもの軽い調子で返していたが、最後には何か苦いものでも思い出すかのような厳しい表情になっていた。

 

 

 

高順「徐晃って、もしやあの不敗将軍のことですか?」

 

 

張遼「せや、アイツただの弱腰の腐った将かと思っとったら全然や。あら恋とは別の意味で鬼やで。よー考えたらアイツウチと戦っとる

 

最中も常に仲間の雑兵達の事気にかけとったんや。そのせいか知らんけど、結果2万くらいおった徐晃隊はほぼ無傷やねん。死傷者とか

 

たぶん数百人もおらんのちゃうか?しかも撤退も追撃を許さん完璧な手際や。ホンマありえへんわ」

 

 

馬岱「うー、ごめんなさい・・・」

 

 

 

張遼が徐晃との戦闘を振り返っているのを聞いていると、

 

自身が本当に役に立っていないことが思い起こされ、馬岱は気を落としながら謝罪した。

 

 

 

北郷「ところで、君は?」

 

 

馬岱「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね。わたしは涼州同盟盟主・馬騰の姪にして、この百鬼夜行の乱世に咲いた一輪の可憐な

 

花、馬岱でーす!助けてくれてありがとう♪あなたが噂の天の御遣いさんなの?」

 

 

北郷「う、うん・・・北郷一刀っていいます」

 

 

 

しかし、先ほどの気落ちぶりから一転、馬岱は急にハイテンションで自己紹介を始めたため、北郷は若干引き気味な戸惑いを見せる。

 

 

 

陳宮「・・・ゲフン、とにかく、今後の動きについてですが、まずはすぐに追撃隊を組織しないといけないと思うです。そのことについて

 

涼州側として何か考えはあるのですか?」

 

 

馬岱「うーん、たんぽぽ、難しい話はちょっと・・・お姉様、馬超に聞かないと」

 

韓遂「むむむ、私でよければ行くのだが、やはり涼州軍の総大将は馬超殿。私の独断で決めるわけにはいかないぞ・・・」

 

 

 

陳宮の質問に、馬岱と韓遂は共に難しい表情を作り、総大将たる馬超の判断を仰ぐべき旨を伝える。

 

 

 

韓遂「ところで、馬超殿の戻りが遅いようだが、もしや・・・」

 

馬岱「そ、そんなことないよ!お姉様に限って・・・!」

 

 

 

戦闘終了から時間も徐々に経過しており、本来ならば本陣のある潼関に帰還するためこの辺りを通るはずなので、

 

必然北郷たちとの合流を果たすはずなのだが、未だ馬超は現れない。

 

そのため、韓遂は最悪の場合を思わず口にしようとするが、馬岱がそれを全力で阻止する。

 

しかし、その馬岱ですら、その発言は希望によるところが大きいのが現実である。

 

 

 

北郷「・・・・・・・・・・・・おい、ねね・・・・・・まさか・・・・・・」

 

陳宮「・・・・・・・・・・・・いやいや、さすがにそんな出来過ぎた話が・・・・・・・・・」

 

高順「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

そんな中、馬岱や韓遂とは別の意味で心穏やかでないのは北郷陳宮高順の三人である。

 

その理由は陳宮が仕掛けた火計に馬超が巻き込まれた可能性が高いからであるのは言うまでもない。

 

 

 

馬超「韓遂さん・・・」

 

 

 

そして、そのように静かな混乱状態が生まれつつある北郷たちの間に、

 

馬超が銀閃を杖代わりに体を支え、弱弱しく韓遂の名を呼びながら入って――――――

 

 

 

韓遂「馬超殿!!」

馬岱「お姉様っ!!」

高順「馬超様!!」

呂布「―――ッ!!」

 

 

 

突然の話題の渦中たる馬超本人の登場により、馬超と面識のある面々は、

 

普段あまり反応を表に出さない呂布も含め、各々驚きの反応を見せた。

 

 

 

北郷「え!?じゃ、じゃあこの人が馬超さん!?」

 

陳宮「無事だったのですな!!」

 

北郷・高順「「・・・・・・・・・」」

 

 

 

陳宮の後ろめたさを払拭した喜びの声に、北郷と高順がジーッと陳宮を冷めた目で見るが、

 

陳宮は口笛と共に明後日の方向を見て華麗にスルーした。

 

 

 

馬岱「お姉様!ボロボロのところ悪いけど、まず韓遂様に謝らないとダメだよっ!韓遂様が援軍を呼んでくれたから曹操軍を追い返せた

 

ようなものなんだよっ!あの手紙はやっぱり曹操軍の策だったんだからっ!」

 

 

 

馬岱は従姉である馬超の安否を確認して喜ぶのもつかの間、

 

馬超が韓遂にした仕打ちを咎め、曹操に嵌められたという意実を告げると共に謝罪を要求した。

 

すると、馬超は覚束ない足取りでゆっくりと韓遂のもとに歩いていくと、そのまま倒れこむような形で土下座した。

 

 

 

馬超「韓遂さん、本当にごめん!あたしは馬鹿だから、曹操の策にまんまと引っかかって、韓遂さんの言うことに一切耳を貸さないで、

 

韓遂さんにとんでもなくひどいことを―――!」

 

 

韓遂「頭を上げるぞ馬超殿。私も不用意に書状の封を切らず、馬超殿に相談すればよかったぞ。それに・・・」

 

 

 

しかし、韓遂は馬超に対して怒ることや罵詈雑言を浴びせることはおろか、一つの愚痴や諌めの言葉を浴びせることなく、

 

馬超の両肩に手を当て、自身にも落ち度があったと頭を上げるよう促した。

 

 

 

韓遂「馬超殿のその純粋さ、まっすぐさは、危ういものだが、良いところでもあるぞ。馬超殿のその人柄に惹かれ、ついて来る者も多い。

 

危ういのであれは他の者が助けに入れば良いぞ。私が駄目でも馬岱殿や鳳徳、もちろん馬騰殿も含めてぞ。今回は失敗したがこの失敗を

 

次に活かせばそれで良いぞ。だから、これからも共に、涼州の為に戦おうぞ」

 

 

 

馬超「韓遂さん」

 

 

 

韓遂の言葉を受け取った馬超は、土下座をやめると、ゆっくりと立ち上がり、

 

やや緩みかけていた目元をゴシゴシと擦ると、そのまま韓遂が差し出した手を握りお互い握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

馬超「それじゃ、改めて礼を言わせて―――ぁ・・・」

 

 

 

異変は本当に何の前振りも、何の脈略も、何の伏線もなく、突然起こった。

 

韓遂とのいざこざに決着をつけた馬超が、改めて今回の戦いの立役者たる北郷に礼を述べようと向き直ったその時、

 

具体的には馬超の瞳に北郷の姿が映ったその刹那、馬超は北郷を凝視したまま固まってしまったのだ。

 

心なしか顔が赤いような気もする。

 

そしてその瞬間、その場にいた女性陣が瞬時にその変化に反応した。

 

当然、北郷は全然気づいていない。

 

 

 

馬岱「あれー、どうしたの、お姉様?顔赤いよっ?」

 

馬超「へ?な、何でもない!」

 

 

 

馬岱が悪戯っぽくニヤニヤしながら尋ねてきたのに対して、馬超は全力でブンブンと左右に顔をシェイクしている。

 

 

 

馬超「あ、あたしは涼州連合盟主馬騰の娘、馬超、字は孟起。助けてくれて本当にありがとう」

 

北郷「いえ、無事曹操軍を追い払うことができて良かったです」

 

 

 

気を取り直して礼を述べた馬超に対して、北郷は呂布陣営からの刺すような視線を不思議に思いながら答えた。

 

 

 

馬超「でも、まさか天の御遣い自らがあたしらを助けに来てくれるなんて思ってもみなかったよ」

 

 

 

気を取り直してはいるものの、まだ若干頬を朱に染めたまま、

 

馬超は北郷を視界に入れたり外したりを繰り返すという挙動不審な状態で当然の疑問を口にした。

 

 

 

陳宮「それは一刀殿が命知らずな馬鹿だからなのです」

 

高順「ねね、それは違います。『馬鹿』ではなく『大馬鹿』ですよ」

 

張遼「ホンマ、いっつも前線出張って来よってからに、アホちゃう?」

 

呂布「・・・無謀」

 

 

 

対して北郷陣営の答えは、主たる北郷に対する遠慮や配慮といった類のものが一切ない、

 

ありのままの理由とそれに付随する感想という名の罵倒であった。

 

 

 

北郷「ははは、言いたい放題だな・・・」

 

 

 

そんな北郷陣営の酷評に涙目になる天の御遣い北郷一刀。

 

 

 

馬超「何だか・・・」

 

韓遂「想像していた方と随分違うぞ・・・」

 

馬岱(なるほどなるほど♪)

 

 

 

そのような北郷たちの通常運転を目の当たりにして、馬超と韓遂は自身が思い描いていた崇高な天の御遣い像を改め、

 

馬岱はそのさらに奥深くにある北郷陣営の腹の内を読み取り、悪戯っぽいニヤニヤを一層強めるのであった。

 

 

 

北郷(あぁ・・・オレの御遣いとしての評判が右肩下がりに・・・)

 

 

 

そして馬超たちに不本意な御遣い像が植え付けられてしまったことで、北郷は大粒の涙を流すのであった。

 

 

 

 

 

 

馬超「それじゃあ、追撃隊は韓遂さんと千万・阿貴、頼んだよ。玲衣(レイ)・・・まで連れて行かなくても大丈夫だよな。まぁそんなに深追いは

 

しなくていいからさ。それと休・鉄、お前たちも一緒に行って少しは度胸を身につけてこい」

 

 

 

本陣に戻り一通り北郷軍と涼州勢が互いに挨拶を済ませた後、馬超は追撃部隊として韓遂と氐族の面々、

 

そして、今回の戦いで張郃に速攻敗走させられた馬休、馬鉄を指名した。

 

 

 

韓遂「承知したぞ」

 

阿貴「あたいは別にいィけどさァ、深追いしないなんて生ぬるいねェ!」

 

千万「ケッ、どっちでもいいぜアキ嬢!ワシャ後ろから曹操の子娘の弐穴にぶち込んでやるだけよォ!」

 

鳳徳「留守っ!」

 

馬休・馬鉄「お任せあれっ!」

 

 

 

馬超の指名に、韓遂は腕を組みながらうなずき、阿貴は真っ赤な花槍を手元でくるくる回しながらやれやれといった表情で従い、

 

千万は手にした一対の細長い投槍で突き刺すそぶりを見せながら下品なセリフを吐いた。

 

そして、玲衣と呼ばれた鳳徳はいつも通り表情を変えず、しかし力強く短く返事し、

 

馬休、馬鉄兄弟はついさきほどの張郃に対する恐慌状態などどこ行く風か、

 

二人同時に胸を叩きながら同時に自信満々に答えるのであった。

 

 

 

馬岱「もー、二人とも、威勢だけは立派なんだから」

 

 

 

そのような調子の良い二人の従兄の様子に、馬岱はあきれ顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

北郷「あのー、馬超さん、ちょっといいかな?」

 

馬超「な、なんだ急に改まって!?」

 

 

 

韓遂たちを見送ってしばらくした後、北郷に突然声をかけられ、馬超はなぜか若干頬を朱に染めながら裏返った声で反応した。

 

 

 

北郷「実はオレたち、馬騰さんにこの戦いが終わったら涼州に来てほしいって言われてるんですけど」

 

馬岱「おば様が?」

 

北郷「うん、なんか、話したいことがあるとか、それでもしよかったら道案内とかしてもらえないかなーって思いまして」

 

馬超「な、なんだそんなことか、いいよ別に。あたしたちが案内するよ」

 

 

 

北郷が話してきた内容が期待していたものと違っていたのか、馬超は少し肩を落としながらも、快く了承した。

 

 

 

北郷「本当ですか?ありがとうございます、馬超さん」

 

馬超「なんだよ堅苦しいな、馬超でいいよ。あと敬語も」

 

馬岱「わたしも馬岱でいいよっ!」

 

北郷「そっか、それじゃ、改めてありがとう、馬超、馬岱」

 

馬超「へへ、いいってことよ!」

 

馬岱「むしろたんぽぽたちはお礼をしないといけないくらいなんだから♪」

 

 

 

北郷のよそよそしい対応に、馬超がもっと砕けろと注文を付け、馬岱もそこに乗っかり、結果、ものの数分でお互い打ち解けてしまった。

 

 

 

陳宮(な、なんですとーーー!)

 

張遼(さりげなく敬語を拒否して距離を縮める・・・やと・・・!?)

 

高順(できますね・・・!)

 

呂布(・・・・・・・・・)

 

 

 

そのように出会って間もなく敬語という壁を取っ払ってしまった馬姉妹のやり取りに、呂布たちは動揺を隠せないでいた。

 

 

 

 

 

 

しばらくした後、涼州に向かう支度のできた両陣営は、馬超らを先頭に、馬騰のいる涼州連合の本拠であり、

 

韓遂の治める金城を目指して動き出そうとしたのだが、しかしその時、慌てた様子で一人の騎兵が駈け込んで来た。

 

 

 

陳宮「むむむ?あの碧緑色を基調にした衣装はウチの兵ですぞ・・・?」

 

 

 

陳宮の言うように、その騎兵は北郷軍の兵士のようで、北郷の目の前で馬から降りると跪きながら拱手した。

 

 

 

北郷兵「伝令!鳳統様より、益州南部の国境付近で大規模な南蛮族の一団が暴走、その数は少なく見積もっても数万は降らず、厳顔様と

 

魏延様と共に東州兵を率いて現場へ急行するも抑えきれないため、至急何人か隊を援軍に回してほしいとのこと!」

 

 

 

慌てた様子の兵士は、それ相応の内容を告げてきた。

 

その瞬間、北郷軍に緊張が走る。

 

 

 

北郷「何だって!?今は夏だぞ!?南蛮族が暴れるのは食料不足になる冬じゃなかったのか!?いや、今ここで考えても仕方ないか・・・

 

とにかく、すぐに戻らな――――――!」

 

 

陳宮「だぁ~かぁ~らぁ~!どうして一刀殿はいつもいつも渦中に自ら飛び込もうとするですか!わざとですか、わざとなのですか!?

 

一刀殿はこのまま金城に向かって問題ありませんぞ!」

 

 

北郷「あ、ああ、そうだな、悪い・・・」

 

 

 

自領の窮地を聞いてすぐに駆けつけようと奮え立つ北郷であったが、途中で陳宮にしっかりと釘を刺された。

 

さすがの北郷も今までの自身の身勝手な行動から学んでいるようで、今回ばかりは大人しく引き下がった。

 

 

 

陳宮「取り敢えず、ななには一刀殿の護衛についてもらうとして、恋殿と霞に援軍に向かってもらうです」

 

 

 

呂布「・・・(コクッ)」

張遼「了解や!」

 

 

 

常時であれば、この辺りで張遼が「何でウチが一刀の護衛ちゃんねん!」と文句を言ったり、

 

呂布が無言のプレッシャーを放ってきたりしそうなものだが、さすがに緊急事態であるためか、素直に陳宮の指示に従った。

 

このあたりのメリハリははっきりしている娘達なのである。

 

が、しかし・・・

 

 

 

張遼「(一刀のこと、しっかり見張っときーや、特にあの涼州っ娘たち、とくに馬超は要注意や)」

 

呂布「・・・(コクッコクッ)」

 

陳宮「(言われるまでもありませんぞ。ななに終始見張らせるのです)」

 

高順「(抜かりはありません)」

 

 

 

押さえるところはしっかりと押さえておく北郷配下の娘達なのであった。

 

 

 

北郷「・・・ん??じゃ、じゃあ、二人とも気をつけてな」

 

 

 

そのような陳宮たちのひそひそ話に首を傾げた北郷であったが、特段気に留めることはなく、そのまま二人を送り出した。

 

 

 

呂布「・・・(コクッ)・・・一刀も気をつけて」

 

張遼「任しときっ!一刀も長居せんと、ちゃっちゃと帰って来ーや!」

 

 

 

北郷の言葉に、呂布は普段通り表情を変えずうなずき、張遼はバシバシと北郷の方を叩きながらニカッとした良い笑顔で答えた。

 

 

 

北郷「おう、話だけだし、すぐ戻るよ」

 

 

 

北郷もまた、張遼に対してサムズアップで応え、そのまま北郷陳宮高順は馬超らと共に涼州金城へ、

 

呂布張遼は益州成都へそれぞれ向かった。

 

 

 

【第六十六回 第四章:潼関攻防編⑨・敗けずの徐晃 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

第六十六回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

今回の潼関の戦いは、一応涼州連合の勝利に終わったわけですが、

 

徐晃ちゃんが主張するような考えもあるということなのです。

 

さて、翠と韓遂も案外あっさり和解し、次回で第四章も終了なわけですが、

 

前回も申しました通り、本章から次章にかけては話の流れ上拠点を挟めない状況にあります。

 

もう次回で終わりって言ってるのにまた猫耳軍団が暴れだしてますしね 笑

 

 

では、最後に前回のアンケートの結果発表をいたします。

 

6月6日23時50分現在、結果は以下の通りとなりました、

 

 

① 本編さくさく進んでほしいし予定通りこのまま第五章に入ってOK・・・・・1

② 本編ゆっくりペースでもいいから拠点とか緩い息抜き回欲しい・・・・・・・5

③ どっちでもいいしそんなことで悩む暇があったら投稿ペース早めてくれ・・・0

④ その他(例:ちんきゅーもっと書け)・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

 

 

総投票数9票。結果は②が5票で一番多かったです。

 

その他では恋にもっとスポット当ててともっと種馬無双にとかがありました。

 

特に恋についてはside呂布軍なだけにもう少しどうかならないかと思うところです 汗

 

あと、意外と拠点でななの名前が挙がっていたことには正直驚きました。本当に嬉しい限りです。

 

 

というわけで、次章までにいくつか(前後編2話計4回分の予定)息抜き回を入れることにします。

 

本編派の方には申し訳ありませんが、平常ダラダラ進行をどうかご容赦いただきたく、よろしくお願いします。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

・・・おや、馬姉妹の様子が・・・?ついに何もせずともの領域にまで達してしまったか一刀君よ、、、

 


 
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