「興、早く来いよー!」
「興、早く~」
「劉永様、馬承姉上、待ってください~」
三ヶ月ごと、その月の末に行われる三国間の定期会談が行われている白帝城の裏門の前で栗毛の少年と蒲公英の娘・馬承が、懸命に走ってくる黒髪の少年に向かって大きく手を振って、しかしこっそりと急がせる。
「遅いよ~興。何してたの?」
頬を膨らませて文句を言う馬承に、黒髪の少年―――関興は済まなそうに頭をかいて謝する。
「姉上に見つかりそうになっちゃいまして・・・」
「げっ、平姉さんにか!?」
口うるさい異母姉の名にぎょっとした表情を見せた栗毛の少年の名は劉永。蜀の王・桃香の息子である。
「で、劉永様。数え役萬姉妹(シスターズ)の舞台ってこっちで合ってるんですよね?」
「ああ、なにせ人和様から直接地図を頂いたからな!」
馬承の質問に、劉永は場所を記した紙の地図をひらひらさせて見せつける。
「なるほど、それなら間違いはないですね」
関興も納得したようにうなずく。
「しかもええっと・・・ぶいあいぴぃ・・・専用のチケットだから一番前で見れるぞ!」
満面の笑顔ではしゃぐ3人だが、目の前に立ちふさがった人物を確認してその足がピタリと止まった。
「劉永様・・・馬承・・・興・・・何をしている?」
「へ、平姉さん・・・!」
関興たちの姉・関平が青龍偃月刀を手に憤怒の形相で立ちふさがっていたのだ。
「劉永様」
「は、はいっ」
ひどく冷静な声で、彼女は異母弟を見つめる。
「蜀の皇子として振舞うよう普段からお願いしていたはずですが・・・これは何事でしょうか?」
「い、いやー、でもお父さんは若いころはよく街に出かけて立っていってたし・・・そう!これは視察だよ!」
「一昨日も私にそうおっしゃっていたように記憶しているのですが?」
「うっ」
関平に冷たい目で指摘され、黙り込むしかない劉永。彼女の眼は2人の弟妹にも向けられた。
「馬承」
「ひっ」
「お前は翠様や蒲公英様と一緒に明日のパレードの準備をしなければならないとお2人から伺っているが?」
「え、えーと・・・」
目線を逸らして必死に言い訳を考える馬承。そして最後に同腹の弟に視線をやる。
「関興」
「・・・はい」
「言い残すことはあるか?」
「・・・姉上はいずれ母上のような『ないすばでぃ』になるのですから、胸パッドはいらないと思います」
阿修羅と化した関平と3人が命がけの鬼ごっこを開始するのに時間は5秒とかからなかった。
劉永たちは生きて成都城に帰れるのか!?後編に続く!
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だいぶシナリオ構成に悩んだ末にお話を半分に分けることにしました。
今回は初の一刀の息子登場です!