No.76859

真・恋姫無双after~蜀の日常・その4~

今回のメインは蜀を代表するツンデレヒロインとその娘です!
なんかパパッとできちゃいましたね・・

2009-06-02 10:00:37 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:11995   閲覧ユーザー数:8986

真夏を直前に控えたこの日、成都城の玉座の間に戦乱を生き抜いた英傑達は玉座に蜀王たる桃香を頂き、朝議を行っていた。この朝議はあまり重要なものではないため、出席している人の数は少ないが、なぜか一刀との間に子供がいる将たちはすべて揃っていた。

「―――それでは、ほかに報告する者がいなければ朝議を終了とするが、誰か報告することがある者はいるか?」

司会進行を務める愛紗が皆を見渡し確認をとると、朱里が「はいっ」と手を挙げた。

「朱里、どうした?」

「はい。先週行われた『てすと』の採点が終わりましたので、その結果のご報告をしたいと思います」

劉禅たちが生まれてからというもの、教育パパであることが判明した一刀は自分の子はもちろん、市井の子供たちの成長のために様々な政策を展開していった。

その筆頭に掲げられたのは『学校』であった。いままでは朱里や雛里が学んだような個人が営む私塾しかなかったが、この学習するための施設を国営化。誰もが少しの金額・もしくは無料で学ぶ事を出来るようにし、さらに私塾を経営する先生を教師に招聘して私塾の経営者からの不満が出ないようにした。すでに学校を卒業して優秀な生徒は、文官として蜀の王宮に就職、もしくは蜀の地方都市に新たに建設された分校の教師として活躍している。当初は一刀も自分の子供たちを市井の学校に入学させようとしたのだが、魏王・曹操―――華琳の『将来の王たるものは、民と親しんでも慣れ合うことがあってはならない』即ち、王と民は仲良くするのはいいことだが、上下関係は持っておかねばならない・・・という忠告を貰ったため、主に一刀や朱里・雛里、たまに白蓮や詠が教師として教えている。

「前回は贍ちゃんが一番だったんだよねぇ~・・・禅ちゃん、お勉強得意じゃないからなぁ」

桃香は自分同様勉強が苦手な娘に苦笑を禁じ得ない。一刀が考案したテスト制度であるが、子供たちの士気をあげるために一番の子には『ご褒美』をあげることにしているのだ。

「じゃ、発表しますよ。今回のてすとで一番だったのは――――」

朝議を欠席していた一刀は、大欠伸をしながら廊下をてくてくと歩いていた。

(眠い・・・昨日、月と詠と一緒に頑張りすぎたかなぁ)

ボーっとしながらテクテクと歩いていると後ろから小走りで駆けてくる足音、そして――

「パパッ、おはよー!」

ピョンッと、急に一刀の背に体重がかかり、首に後ろから手が回される。

「穆(ぼく)、おはよ~」

ナデナデ

「えへへ~、パパ~♪」

一刀の背に抱きついたのは賈穆。月とともにメイドを務める詠――賈駆の娘で緑色の髪と母と同じ意匠のメガネが特徴の子である。

「パパッ、ボクこの前のテスト一位だったんだよ!」

「そうか!やったな、穆!」

「だからさ、パパ」

「ご褒美だよね?穆は何がしたい?」

娘を背中から降ろして、座り込んで目線を合わせる。

「うんとねー」

その翌日―――

「まったく、なんでボクが一刀なんかと遠乗りに・・・」

「違うよ、ママ。これはピニクックだよ」

「穆、『ピクニック』だ」

一刀は穆と詠と一緒に河原に遊びに来ていた。この河原は蜀の武将たちとその子供達とのお気に入りの場所でもある。

「詠、ありがとな。いつも忙しいのに付き合ってくれて」

一刀が礼を言うと、詠は真っ赤になって抗弁する。

「ば、馬鹿じゃないの!穆がてすとで一番とってその褒美で行くって言うからボクも付いて来てるだけで、あんたなんかと一緒に行きたかったなんてこれっぽっちも思ってないんだからね!」

一刀大好きな賈穆と違い、蜀最強のツンデレパワーを発揮する詠。素直でない母に、娘はニヤニヤしながら父に告げ口する。

「ママねー、昨日の夜、ボクが寝台に入って寝てるふりしてる時に『明日はどれを着て行こうかしら・・・』って衣装棚の前でかなり長い間迷ってたんだよー♪」

「げ!穆!あんたあの時起きてたの!?」

「あ~、道理で今日の詠は可愛いわけだ・・・」

本日の彼女はいつものメイド服でも、軍師として政務や軍務に采配を振るう時の服でもなく、明るい感じの緑色のワンピースを纏った令嬢風の姿だった。

「う、うるさいわね!別にあんたを喜ばせるために一番お気に入りの服を着てきたわけじゃないんだからね!」

本心だだ漏れの妻と母に、夫と娘はニヤニヤ笑いが止まらない。

「素直じゃないよね~、ママは~♪」

「素直じゃないな~詠は~♪」

「ああもう、うるさぁーい!」

こうして、一刀と賈親子の楽しい時間は更けていく・・・

(楽しい時間ってのはあっという間に過ぎるんだなぁ・・・)

懐に遊び疲れて眠ってしまった賈穆を抱えた一刀は、馬に揺られながら居城への帰路を進んでいた。隣には詠が同じように馬に揺られていた。

「穆ったらあんなにはしゃいじゃって・・・よっぽどあんたと遊ぶのが楽しかったのね」

「俺だけじゃないよ。穆は三人一緒に遊べたから楽しかったんだよ」

一刀は懐の娘の頭に視線をやれば、そこには野の花で編みこまれた作られた花の髪飾りが鎮座していた。もちろん詠の手造りである。

「そうね・・・こんな我が子と過ごす楽しい時間が長続きするよう、この賈文和の知を奮ってやろうじゃないの」

「ああ、期待してるよ。俺の軍師殿」

「誰があんたの軍師か!」

言い合いながらも二つの影はぴったりと隣り合わせとなって、その様はとても幸せそうなものだった。

 


 
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