No.772259

魔法少女リリカルなのは -The Destiny Nomad- RE:

Blazさん

なのはEXの設定リファインを考えてマサキの苗字を再度変更しました。
まぁそれでもマサキが変わるって事はないのですがね(笑)

2015-04-19 18:42:38 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1498   閲覧ユーザー数:1442

Trace.02 「異変の街」

 

 

 

 

魔法、魔術について語ろう。

 

魔法と魔術というのは単語とイメージからして力の強弱で判断される事が多いが、実際中身は完全に似て非なるものだ。

 

魔法は無から有を作る。言えば何も無い場所から火や雷を出す奇跡を言う。

 

だが魔術は違う。魔術は有から有を作ることを斥す。

つまり、空気中の水分を集め水を作るなど、有る物からしか有る物を作り出せない。

いわば等価交換のシステムだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 海鳴 八神家 = 

 

 

「ふあっ・・・」

 

月夜の光が窓から差し込み、殆どの人が寝静まった時間。

一人の少女が洗面所からドアを開けて出てくる。

少女の赤い髪は解いてロングヘアになっており、先ほどまで寝ていたのか片方だけの髪の毛が寝癖となって飛んでいた。

 

「・・・・・・。」

 

眠たげな顔のまま開いているのか分からないほどの目で、ドアをきっちりと閉めて電気も消す。身体に染み付いているのか、眠たそうな割には動きには無駄が無い。

間違えて壁を触る事もドアを閉め忘れることも無いほど、起きているのかと思えてしまうが、少女の頭はほぼ完全に眠った状態。

僅かに頭を動かす程度で周りの景色はぼやけて見えていた。

 

「くあぁぁっ・・・・・・」

 

大きな欠伸をした少女は早くあの暖かい布団に入りたいと、無意識に近い状態のままゆらりくらりとふら付きながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

この時、まさか自分の友人たちが謎の敵に襲撃されていたと家の人間ほぼ全員が知らなかったのだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 上空 =

 

 

 

一方、謎の白馬からの突然の奇襲を受けた零人たち。

一直線に降下した白馬に驚いた三人と一匹だが、士郎の警告と零人、なのはの咄嗟の判断で三人は散開。クシャルも小さい姿に姿を変え、間一髪ながら奇襲を回避した。

 

 

「クシャル!?」

 

「問題ない」

 

「よかったぁ・・・」

 

胸を撫で下ろすなのはだが、安心するのにはまだ早いと奇襲を仕掛けた白馬が降下しただろう場所に目を落とす。

だが、そこには白馬の姿は見当たらない。辺り一帯を探しても魔力を探索しても反応は無いと完全に姿を消してしまった事にただ驚く事しかできなかった。

 

「居ない!?」

 

『周囲一帯をサーチしていますが、反応は無し・・・完全にロストしました』

 

「嘘でしょ・・・転移じゃ・・・」

 

「転移魔法でも痕跡は残る。となれば・・・」

 

 

「あの一瞬で魔力痕跡も残さずに姿を消したってか?」

 

『信じられない事ですが、それが正しいでしょうね』

 

「くそっ・・・一体なにがどうなってんだよ・・・」

 

 

 

「・・・・・・。」

 

姿を消した白馬に頭を抱える零人となのは。しかし、その彼らとは少し離れた場所を浮かぶ士郎は白馬が降下した辺りを見ながら考え込んでいた。

 

(今のは・・・いや、だとしてもどうやって痕跡も残さずに消えた?何か別の方法が・・・?)

 

彼には先ほどの白馬が一体何なのかは検討がついていたが、それでも痕跡も残さずに姿を消してしまった事には彼も頭を悩ませる。彼の方でも魔力の痕跡すら残さず姿を消す事には思い当たる物はない。

何より魔法でも魔術でもあり得ない事なので、他の何かというのも考えられるが士郎はそこ等辺の知識が乏しいので更に頭を悩ませる原因となってしまった。

 

 

 

 

「・・・今のでシマイ・・・って訳ないと思いてぇが・・・」

 

『実際はシマイ(・・・)でしょうね。痕跡の一切を残さずに消えたとなれば』

 

「・・・・・・。」

 

 

「挨拶にしては随分と・・・遅くも大掛かり、且つ大胆だな」

 

「馬に乗って突進するのが挨拶なんて絶対に嫌だよ・・・」

 

『・・・衛宮氏』

 

「・・・あ、なんだ?」

 

『・・・先ほどの白馬に心当たりは?』

 

レイジングハートとイクスの二機が士郎へと尋ねる。

それには零人となのは、そしてクシャルも彼へと目を向け、「何か知っているのか」と目で訴える。

士郎はうーん、と頷き頭を掻くと話しにくそうな声で重い口を開かせた。

 

「・・・無い・・・って言えば嘘になる。ただ確証が無い」

 

「心当たりはあるって事だな」

 

「まぁそうなる。だけど、それが本当に正しいのかって言う保障もない」

 

「それでも今は有益だよ」

 

そうだな、と零人も続き彼に詳しく話させようと睨むような目で彼を見る。

見られている方である士郎は深く長い溜息を吐くと、一旦頭の中を整理させる。そして、先ほどの奇襲攻撃の件を今は後回しにして、先に零人たちに話すべきかと心の中で決めたのだ。

 

「・・・わかった。話すよ、俺が知っている可能性の話を」

 

「・・・。」

 

 

 

 

 

 

「・・・あれは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それについては私から話した方が早いでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 同・大型ショッピングモール フードコート =

 

 

 

 

 

 

可笑しいとは思わなかったのか。それが最初に二人の脳裏に過ぎった言葉だ。

 

 

 

途中の階から人気という人気が無く、気配すらも感じない。

何より人間という反応が自分たちだけという事に今まで気づけなかった事を。

違和感は感じていた。ただ、その場に居なかっただけなのではないかと言う軽はずみな考えで片付けてしまったからだ。

 

 

そして今。その事についての後悔を身をもって二人は知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・小さなカップル手を繋ぎ・・・お熱いねぇ、お二人さん」

 

 

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

「そう怖い顔とビビッた顔すんなよ。今は何もしねぇよ今は(・・)な」

 

 

 

「り、リョウ・・・」

 

『迂闊だったな・・・薄い認識阻害の結界を徐々に濃くしていたんだ・・・』

 

「けど、ゼクスココは・・・」

 

『ああ・・・結界は張られていない(・・・・・・・・・・)

 

 

つまり。本当にこの場に居るのは霊太とフェイト、そして

 

 

 

 

 

彼らの前に後ろ向きで座っている男の三人だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その他に生きとし生けるものは誰一人として居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ナニモンだアンタ・・・人丸々消すなんて芸当。並みの魔導師でも、凄腕の奴でも出来やしねぇ・・・一体・・・何をしたんだ・・・!」

 

「・・・さぁな。俺もついた時にゃあ人っ子一人すら居なかったさ。折角、ここの店のお姉ちゃんたちと話せると思ってたのによ」

 

「・・・。」

 

お姉ちゃん。それはこのフードコートに居る定員の事だろう。

店の接客の為に大抵この手の店のレジ担当は女が基本だ。

笑顔による魅力と明るさ、そして暖かさ。これを経営戦略の一つとして店側は組み込む事もある。

そして霊太も先ほどフェイトと一緒にそれを確認していた。

若い女定員が横一列に並ぶ店に絶対一人。見れば男達の目の保養になるという体格の人ばかりだ。

 

「・・・情報分析かい。ガキのクセに頭は回るようだな」

 

「ガキで悪かったな。こちとら、頭の悪い野郎との付き合いもあるしな。その手の分析は俺の領分だ」

 

「ほう・・・ガキにゃあまだお姉ちゃんたちの色気は早いと思うぜ?」

 

「残念。見た目は子供。中身は青年よ」

 

小声でフェイトに構えろ、と呟く。先ほどバルディッシュも回収したのでいつでも戦える用意は出来ている。

小さく頷いたフェイトはポケットの中にしまったバルディッシュを持ち、臨戦態勢に入る。

それを気配で感じたのか、男は軽く鼻で笑うと見抜いたかのように口を開いた。

 

「・・・俺と殺り合おうってか?」

 

「そうだろ?誰も居ないこの場所にアンタ一人なんて異様にもほどがある。これをアンタが起こした似ないでしろ、関係があるのは確かだろうからな」

 

「・・・頭の回る坊主だな。失敗したなぁ」

 

椅子を引き、立ち上がった男はゆらりと顔を振り向かせる。

そして、それと同時に今まで着ていた服装がガラリと変化していった。

 

 

 

「素直に真正面からやっとくべきだったな」

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

青いタイツを身に付け、それと相反する色である赤い色の一本の槍を持つ。

整った顔には目は行かず、文字通り目にいく。

鋭い目。永い間戦いを経験した戦士の目だ。

 

 

「おー・・・声から大体の見た目想像してたけど・・・声通り嫌味な顔だな」

 

「悪かったな。無駄に嫌味で」

 

「お前にゃ後ろで隠れてる嬢ちゃんが勿体ねぇな。後十年したら良い女になるってヤツだ」

 

「奇遇だな。俺もだよ、コイツは後十年で色々とデカくなる」

 

「スケベ紛いも大概にしとけ。ダチ無くすぞ」

 

「残念。もう一杯だよ、このナンパ野郎」

 

 

 

 

そして一笑。同時のタイミングで笑った二人は小さく笑い、それを間近で見ていたフェイトは二人がどうなってしまったのかと心配と警戒で声も掛けられなかった。

やがて二人は笑い終え、再び互いに目を見合った。

 

「コイツぁ驚いたなぁ・・・」

 

「ああ・・・俺もだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「俺はお前みたいな奴が大っ嫌いだ」」

 

 

声を揃えて同じ台詞を吐いた二人は、歪んだ笑みを見せて互いを睨む。

二人の表情は笑顔というよりも殺人衝動に駆られ興奮する獣のようなもの。

この衝動に駆られた二人はの理性はもう半分以上途切れている。

身体を動かすのは本能と僅かな理性。

言葉など要らない。互いの目で理解した。

 

 

「構えろ、フェイト。この野郎に串刺しにされたくないなら・・・な」

 

「串刺しにゃあしねぇよ。そこの嬢ちゃんはな」

 

「・・・バルディッシュ」

 

『了解』

 

 

 

刹那。霊太とフェイトの姿は変わり、バリアジャケットと呼ばれる戦闘服となる。

黒を基調とした服装は二人とも同じだが、フェイトの場合動きやすさも考慮されるのか、肌の露出が多い。

逆に霊太はバリアジャケットでの防御等も入れられているのか、黒いコートに黒一色の上下と完全に真っ黒な服装だ。

 

「黒々としているなぁお前等。中身ブラックなのか?」

 

「まぁな。テメェみたいな奴を徹底的にいたぶるっていうのは好みだぜ?」

 

(私もカウントしないで欲しいな・・・)

 

 

「ハッ・・・おもしれぇ。最近の魔導師ってのはガキばっかの見掛け倒しかって思ったが・・・どうにも、全員そうでも無さそうだな」

 

「・・・・・・。」

 

「んじゃ、そろそろ始めようや」

 

 

どちらが先に狩られるか、をな。

それが、その場で交わした言葉の最後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻。その頃、市内にある公園には深夜帯というのにも関わらず、霊太たちとは違う二人の少年少女が居た。

少年の方は(ある神に)ブラウンに染め直された髪を小さく後ろで纏め、一桁の年齢のわりに目は鋭く雰囲気は大人びている。

その隣には眠たげな表情で少年の服の裾を引っ張る少女が居る。薄紫のロングヘアを腰辺りまで伸ばし、カチューシャをつけるその髪の色は月光に反射し輝いている。

 

少年の名は龍御(たつみ)マサキ。少女は月村すずかと言う。

 

「・・・あ、あのさマサキ君・・・」

 

「・・・。」

 

コレ(・・)って・・・」

 

月の明かりと所々にある電灯により照らされた光で、電灯の一帯や日向であった場所は日陰などよりも明るく。照らされた場所は目を細めずとも見えるほどだ。

しかし、それが原因ですずかの表情は戦慄に満ちていた。

 

月明かりに照らされなければまだマシだったろう。優しく照らす月の光が今回ばかりは仇となり、彼女にとって見たくないものが見えてしまったのだ。

 

「・・・死んで(・・・)いるな」

 

「っ・・・!」

 

俯き口元を押さえるすずかは、胃の奥からこみ上げる吐き気を抑えるのに必死だった。

彼女たちの前には一人の少年の死体が一つ。うつ伏せのまま倒れこんでいたのだ。

グロテスクの典型である人の死体にすずかは耐えることで必死で、他のことなど考える事も、ましてや口を開く事も出来ない。

それだけ衝撃的なことが彼女の前に起こっていたのだ。

 

倒れる死体はまだ新しいのか、身体の中から赤黒い血が今も流れている。

その血は身体という縛られた場所から解き放たれた反動のように止まる事も無く流れ続けている。

滑りのある赤は生い茂る緑を塗りつぶし、清い風に生暖かさを残した。

 

 

「・・・っ・・・・・・」

 

「無理なら見るな。見ても良い物ではない」

 

「・・・・・・。」

 

 

転がっている死体はマサキの記憶の中には存在しない人間だ。

だが、青黒く染まった髪と整った顔。目の色がオッドアイと言う典型例。手には壊されたデバイスらしきもの。

間違いは無い。

 

 

 

(転生者・・・か)

 

 

新たな転生者。それが謎の敵にこうもアッサリとヤられたとなれば、恐らく彼も例題的人間だったのだろう。

力に溺れ、自己心酔しか出来ないという過去の自分と同じ。

 

「・・・・・・デバイスは・・・無事か」

 

歯を軋ませたマサキはそれでも冷静さを保たせ、血の水溜りの中からデバイスを拾い上げる。

まだ滑りのある地がついているが、辛うじて形状は保たれているようで損傷もそこまで酷いものではない。ロウに頼めば修復は可能だろう。

クリスタル状のペンダントで、中身には何やら刺青かなにかのマークが入っているものだ。どうやら転生前の世界のアニメか何かのマークだろう。この手の転生者なら絶対に考えそうな事だ。

 

「・・・死後数分・・・死因は数箇所に及ぶ切り傷・・・だが決定打は喉元か。一撃で血管二つを同時に切り裂いたとは・・・」

 

暗殺の手練か。次の言葉を口にせず頭の隅で呟くマサキ。

ナイフ持ちと言うだけで暗殺の専門家という考えは浅いのではないかと思えるが、それだけで決め付けるほど彼も馬鹿ではない。

血管二つを同時に切り裂いたスキル。それは一撃必殺を基本とする暗殺者だからこそ出来ることだ。

通常のナイフ使いでも同じような事をするとも思えるが、その場合だとややズレがあったら大雑把だったりする。

しかし暗殺のの場合ならどうだろうか。

一撃で相手を殺す事を基本とする暗殺者なら、ピンポイントで相手の急所に入れる事を要求される。それこそ大雑把だったりズレがあったりすれば何かの手違いで一命を取り留めたり辛うじてその場僅かな時間生きていたりとアクシデントも考えられる。

 

だからこそ、暗殺の場合は一撃で、且つ確実に殺さなければならない。

 

「暗殺か・・・面倒な・・・」

 

「・・・・・・。」

 

ブツブツと独り言で分析を呟くマサキだが、その後ろで狼狽するすずかが耐え切れなくなったのか彼に聞こえる程度の声で呟いた。

 

「・・・冷静・・・なんだね・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「死体・・・見るの、慣れているの?」

 

「・・・嫌と言う程な」

 

「・・・!」

 

振り向かずただ一言そういったマサキの脳裏には、その言葉の証明となる過去の記憶が流れるように思い出されていく。

本来なら見るべきだっただろう現実を。

理性で逃避した、封印した昔のトラウマ(・・・・・・)を。

 

「・・・だが慣れても良いものではない。死を慣れるというのは・・・特にな」

 

マサキの言葉は重く低い、何かに絶望したかのような声だった。

まるで思い出したくも無い黒い何か(・・・・)を、開けてはいけないパンドラの箱の中身をもう一度見てしまったかのように。

 

 

 

 

黒い念を出す彼の周りは今も尚、無垢な風と共に暗くなっていくのだった。

 


 
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