No.770548

艦これ・特別篇 「蒼空の剣」

Blazさん

二日遅れですが叢雲改二祝いという事で。
まさか杖型電探が排除されるとは・・・
ちなみに話は後半グダグダです。

2015-04-12 15:33:57 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:783   閲覧ユーザー数:756

 

 

= ブイン第二基地 提督執務室 =

 

 

 

 

それは、唐突な話からだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・叢雲の改二艤装資料が届いた?」

 

「ああ。・・・っとすまんな、先に宛てを見てしまったんでな」

 

何時もの様に職務をこなす提督は、報告書を提出しに来た長月の言葉に日常では珍しく驚いた表情を見せていた。

しかし、それをどうして彼女が先に知っているのだと長月を見るが、本人も悪気があった訳ではなかったのだろう。面目ないと、頬を掻き謝罪の意を見せていた。

 

「中はまだ見てない。資料の開封には整備長と提督の許可が必要らしいからな」

 

「整備長のことだ。既に開けてるんだろ?」

 

「・・・だろうな」

 

長月が苦笑して答えるほど、基地の整備長はこのような堅苦しい事は苦手な性格なのだ。

豪傑と言っていいだろう。細かい事は気にせず、真っ直ぐに。ただ自分の信じたことをと。

だが、仕事はそれとは真逆だ。器用に細かく行うその整備で艦娘たちは安心して戦場へと出られているのだ。

 

 

「・・・仕方ない。小言ついでに行くぞ」

 

「ん。ああ、了解した」

 

呆れ気味の提督が溜息を吐くと、長月も笑って了解する。

整備長には困ったものだと呆れているのだろう。椅子から立ち上がるその腰は長月にはとても重そうに見える。

クセのように帽子の位置を直した提督は長月に行くぞ、と一言声を掛けて執務室を後にする。

その彼の後ろを、長月は一本の松葉杖を突きながら歩いてついていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 同基地 工廠 =

 

 

 

「・・・!」

 

「あらあら。新郎さまが遅れて登場だなんて・・・しまらないわよ、提督?」

 

 

 

「・・・・・・なんでお前等まで居るんだ」

 

 

鎮守府とはほぼ真反対に位置する工廠についた提督と長月。

しかし工廠には整備員たちだけでなく、天龍と龍田、扶桑、そして瑞鶴の四人が彼らよりも先に工廠に居たのだ。しかも、彼女達の向こうには艦娘が改造と呼ばれる能力強化の近代化改修とは違う全体強化の時に使う部屋の前に集まっていた。

 

 

「アタシはバイクの点検。龍田はついで」

 

「・・・扶桑と瑞鶴は」

 

「あははは・・・」

 

「すみません、提督。ですが・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「分かってるでしょ提督。私達がどうしてココに居るのか」

 

 

ココに居る理由。いや、ココに居るメンバーの共通する理由。

それは単純と子供過ぎるともいえる理由だ。

 

嬉しいから。ただそのひとつが彼女たちがココに集まった理由なのだ。

 

だが、それなら他のメンバーもそうなのではないかと思えるがそうではない。

彼女達にはまた別の共通点がある。

 

アイツ(叢雲)との付き合いが長いからさ、ホラ・・・なんていうか・・・」

 

「みーんな人事には思えないんですよ。ココに居るみんな」

 

「・・・まさか、長月」

 

「・・・すまん。だが言い出しっぺは私ではなく整備長だ。言うなら筋違いだ」

 

「・・・・・・。」

 

彼女達に共通するのは、いずれもこの鎮守府の古株とも言えるメンバー、つまり創設初期から所属するメンバーなのだ。

瑞鶴が入り、天龍が入る。そして扶桑がやって来て、龍田がココに流れ着いた。

そして長月もこの地に飛ばされた。

経緯様々な彼女達だが、いずれもこの鎮守府での生活を不満に感じた事は無く、共に喜び共に戦った古参者たちだ。

 

その彼女達がココに留まれた理由。

提督が居たから。そして、その彼を良く知る理解者が居てくれたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、来ていたんですね」

 

「高雄。お前もか」

 

「ええ。最初は所用だったんですけどね」

 

そこにまた一人、彼にとって見慣れた顔が姿を現した。

同じく古参である重巡の高雄。彼女もまた創設初期からのメンバーの一人で、今は非常時を除き訓練教官の一人として所属しており主に駆逐艦や軽巡の艦娘たちの面倒を見ている。あの木曾も高雄からすれば生徒の一人なのだ。

 

「生徒たちの訓練用の艤装の調整を手伝っていたんです。そろそろ訓練期間も満了ですから」

 

「・・・新人と言っても、片手で数える程度だがな。問題なかったか」

 

「提督が前に見学に来ていた時の通り、とだけ仰っておきます」

 

「・・・・・・。」

 

「あ、あと良いタイミングに提督は来れましたね。みんなは少し急ぎ気味だったから間が空いちゃいましたけど」

 

「・・・まさか」

 

「ええ。今し方、叢雲ちゃんの第二次改造が完了したようです」

 

「・・・!」

 

 

 

改造完了を知らせるかのように、彼女達の向こうに重く閉ざされていた鉄の扉がゆっくりと開き始めた。

高雄の声に反応したかのように開く扉は所々に錆びがあり、横に開かれる扉は震えるように錆の欠片を振り落としていく。堅くなってしまった外の殻を中で暴れて壊すかのように、堅く巨大な殻はゆっくりと開かれていったのだ。

 

提督は不思議だった。自分の事でもないのに、どうしても緊張してしまう。

なぜ、彼女が出てくるというだけなのにここまで緊張してしまうのだろう、と。

強く締め付けられるような感覚に胸を掴む彼は、まるでその先に何か危険なものがあるかのように目を細める。

睨みの目を見せた彼の前に、遂に叢雲が姿を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん?なんでアンタ達が集まってるのよ」

 

 

 

 

「「「「「・・・・・・誰?」」」」」

 

「イッペンあんた達の口と鼻に酸素魚雷ぶち込みましょうか!!!!?」

 

 

誰もが驚いていた。目の前に居るのが本当に誰なのかと疑いたくなるような姿をした人物だったから。

無理も無いのだろう。あの背伸びをしていた叢雲が、本当に背を伸ばして戻ってきたのだ。

 

前は子供が少し大人を気取ったというような感じだったのだが、新たに着ている服装は胴の辺りで止めているという物に変化していた。

黒のインナーというのは以前と同様。グローブは黒一色ではなく白と黒になっている。

そして、これも以前と同様に黒いタイツを着用しており、足の突起物が排除されたことによりノーマルのハイヒールとなった。

纏めで言えばより見た目が大人っぽくなったという事だ。

 

 

「まー肝心な所が未開発って、ごっ!?」

 

しかし矢張りそれでも覆せなかった場所もある。

そこを天龍に言われた刹那、叢雲は天龍の顔面目掛けて新造された酸素魚雷を高速のスピードでぶつける。

幸い、火薬が入ってなかったのか爆発はしなかったが酸素魚雷の外装が鉄なので当たっただけでもかなり激痛だ。

 

「そりゃ言いすぎでしょ、天龍・・・」

 

「女の子には気にする所がいっぱいあるのよ~」

 

「だ、だからって信管抜いてるからって酸素魚雷ぶつけるか・・・・・・」

 

「まぁ・・・信管を抜いてるだけでも慈悲なんじゃないかしら?」

 

「扶桑は平気そうだな」

 

「・・・・・・。」

 

「扶桑さんに防御の話はNGだっちゅーの」

 

 

 

 

「んじゃ。雑談はここまでにして、そろそろご対面としましょうか♪」

 

「は?ご対面って・・・ッ!?」

 

龍田の言葉に叢雲はようやく気がついた。今まで彼女達との会話で気が逸れていたのか、自分の数歩先に提督が立っていると言う事に気づいていなかったのだろう。

彼の顔を見るや彼女の顔は一瞬で真っ赤に染まった。

 

「あ・・・アンタ、何時から・・・」

 

「つい今し方。お前が出てくる少し前だ」

 

「あ・・・あ・・・その、えっと・・・」

 

頬と耳に熱が帯びた叢雲の顔は赤く、沸騰して湯気でも立っているのではないかとも思えるほどだ。

上手く言葉をいう事が出来ない叢雲は慌てた様子で提督との会話を続けさせようとしている。だが緊張しているのか言葉が上手く言い表せず、それよりもまず先に何を言えばいいのかと頭の中は混乱状態になっていた。

しかし、先に話を切り出したのは彼女ではなく提督の方からだった。

 

 

「・・・まさか、あの背伸びしていた小娘がここまで大人になったとはな」

 

「ッ・・・せ、背伸びですって!?」

 

「違うか?出会ってしばらくはお前はそんな感じだったぞ。無理に背伸びをして、他の連中に遅れを取りたくない。人一番負けず嫌いである・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「そうだろ。そうやって、お前はここまで成長したんだ。背伸びをして現実を知らされて。それでも負けじと前に進んできた。それが今のお前だ。叢雲」

 

「・・・・・・。」

 

駆逐艦と蔑まれ、自分の力を照明したいと思い、我武者羅になっていた日々。

周りの事を見ようとせず、自分の事を優先し、気に入らないとなれば当り散らす。

 

思えば始めはそんな日々だった。

 

「だがもう背伸びをする必要は無い。背は十分に届いている」

 

「・・・!」

 

無理に背を伸ばし身内であるというのに対立し合っていた日々はもう無い。

地を這い蹲り、負けじと自分は登ってきた。

性能差があれば技術で、技術差があれば戦略で。

全てに差があれば、負けんと言い聞かせ。

 

暗く冷たい地の底から、一歩一歩確実に上ってきた。

だから。

 

 

 

 

 

 

「良く頑張ったな。叢雲。お前と出会えてよかったよ」

 

「ッ・・・・・・!!!」

 

 

震えが止まらなかった。歓喜と緊張で身体の奥底から震えが湧き上がり、目の後ろから熱い涙が吹き出てきた。

言葉にも出来ないその感情は、激情とも取れる。だが、激情の時とは違う。

言葉にも表せず、動きでも表現できない。

注ぎ場所から溢れ出る水のように、彼女の感情は爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・落としたな」

 

「落としたわねぇ」

 

「不幸だわ・・・」

 

「それ関係ないと思うけど」

 

 

「・・・先越されたな、瑞鶴よ」

 

「越されたって言うか・・・元から越す事も無理だと思う。ありゃ入れない空気よ」

 

 

苦笑して答える瑞鶴だが、その気分は思った以上に清々しい。

まるでこれでいいのだと本心が認めているようだからだ。

 

 

 

「悔しくないと言えば嘘になる。けど、正直あんなの見せられたらね・・・」

 

「・・・・・・ま。確かにな」

 

 

 

勝てっこないわな。と声を揃えて言う二人。

あんなものを見せられては彼女たちは割り込むことも出来ないし割り込もうとする気も起きないだろう。

何故なら、これでいいんだ。と誰もが納得した結果だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

叢雲改二(Blaz.ver)について。

 

今回の改造で無事に改二になった叢雲。

装備はマジックアーム部の10cm連装高角砲は12.7cm連装高角砲(後期型)に変更。

魚雷は以前の物を元に新造し三連装酸素魚雷を装備している。

そして、以前使用していた杖(薙刀)型電探は一旦解体されてその電探システムのみを背部に背負う艤装本体に搭載。廃材となった杖型電探は整備長が面白半分に改修し打ち直しして長刀になった。

 

尚、叢雲の改二艤装はその前に完成した吹雪改二(ブイン基地未所属)の艤装の設計を元に

改修されたもので、この実戦データを元に残る初期艦の改二計画も進むと言われている。

 

 

 

という事で、基本叢雲の目だった変化というのはゲームとは違ってポン刀を持っているぐらいという事ですね。

理由はシンプルに杖型電探の未練と言っておきます(笑)


 
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