~一刀視点~
「一兄(かずにい)~」
授業も終わり、帰宅する為校門へ向かう俺の後ろから聞き慣れた声で呼ばれる
振り返ると同時に
「捕まえた~」
と言いながら、声の主は抱きついてくる
声の主は北郷巴(ともえ) 俺の妹だ
「あのな~、呼ぶのは良いけど抱き付いてくるなよ」
「別に良いじゃん、兄妹なんだし」
抱き付いて来た巴を離し、注意するが聞く耳を持たない
やれやれ、と思っていたら
「知らない人が見たら、恋人にしか見えないよ」
声の方を向くと、従姉の鞘姉こと北郷鞘華がやって来た
「相変わらず、仲がいいわね
一君と巴ちゃんは」
呆れたような鞘姉に対して
「当然!」
と巴は胸を張る
「張るほどない胸を張って言う事じゃないぞ」
「五月蠅い!
セクハラよ、今の台詞は!
それに女の子の気にしてる事を言うなんて、男として、いや人としてどうなの!」
巴が一気に捲くし立てて来るが
「いきなり抱き付いてきた人の言葉など聞けません
ついでに、事実誤認も無いので問題ありません」
わざと敬語で反論すると
「う~、一兄のいじわる~!
鞘姉!
どうしたら胸が大きくなるのか教えて!
そうして大きくなったら、一兄を悩殺してやる!」
いや、なんだ その理由
「いや、私に言われてもね」
「そりゃ鞘姉はグラビアアイドル並とは云わないけど、充分大きいじゃない!
だから、ぜひその秘訣を!」
鞘姉が苦笑いをしながら、俺の方を伺って来るが
(ごめん)
アイコンタクトで答えると
(裏切り者!)
と返してくる
そんな時
「こんなとこで騒いでると目立つで~
只でさえ3人とも注目浴びるんやからな~」
と現れたのは、俺の悪友 及川だった
普段は特別会いたい理由は無いがこの場面では助かる
及川は俺と良く行動を共にするので、いつの間にか鞘姉や巴とも顔なじみになっている
「及川先輩、只でさえ注目浴びるって・・・私達が?」
巴が訝しげに訊く
「なんや、知らんの?
このフランチェスカ学園での二つ名
『性別を間違えて生まれて来た女』
『全男子生徒と多数の女生徒の恨みを一身に集める男』
『明晰な頭脳を持つ赤点予備軍』
この3人が揃えば無理ないやろ」
とんでもない事、言い出したな
「及川君、初めて聞いたよ
察するに私が『性別を間違えて生まれて来た女』みたいだけど・・・」
「そうなんですわ
鞘華先輩、美人なんやけど凛々しさがあるっちゅうて女生徒の人気が高いんですわ
『鞘華先輩が男だったら・・・』と言ってアッチの世界へ行ってる女生徒は結構居るんですわ」
及川の説明に鞘姉が少し落ち込む
でも事実そうなんだよな
何時か本人も言ってたし
「ま、一部には『鞘華先輩が男だったら?おぞましい事言わないでよ!』て言ってる娘もおるんやけど」
「なにそれ?」
鞘姉の問いに
「まあ、あそこでこっち見とる娘なんかがそうですわ」
及川が指した方向に、此方をうっとりとした表情で見ている娘がいた
小柄で少しウエーブのかかった長い髪で、少し童顔かな
「あ~、桂ちゃんはね~」
巴の知ってる娘だったのか
「黙ってれば可愛いから男子に持てそうなんだけどね
でも男子には毒舌一辺倒
筋金入りの男嫌いなんだから」
鞘姉が頭を抱えてしまった
「で、俺が『全男子生徒と多数の女生徒の恨みを一身に集める男』なのか?」
「そうや
かずピーは鞘華先輩と巴ちゃんをしょっちゅう侍らしとるからな
男子生徒の嫉妬と恨みを買うのは当然やろ
それに、鞘華先輩のファンの女生徒の恨みも当然買う
更に、気づいとらんやろうけどかずピー結構モテるんやで」
「嘘だろ~」
「それに気付かん朴念仁やから、余計に恨む男女生徒も増えるんや」
なんか、馬鹿にされた感じだな
「で私が『明晰な頭脳を持つ赤点予備軍』・・・」
言い得て妙だな
鞘姉も頷いている
巴は記憶力は抜群に良い
更に本質を理解する能力に長けている
だがそれが学校の勉強の方面には発揮されない
だから試験前は俺と鞘姉で集中講座のフルコースを毎度味わっている
フランチェスカ学園ってレベル低くないのによく合格したな
落ち込んだ巴を連れて帰路に就く
「鞘姉、今日は家に来るんだよね?」
「うん、だからこのまま同道するわ」
俺と鞘姉は古流武術の『北天一心流』を学んでいる
『北天一心流』は南北朝時代の発祥で戦国時代を経て実戦的な物となり、江戸時代に洗練された
と聞いている
その特徴は『刀と体術の融合』
俺の父が当代 つまり俺の家が宗家
鞘姉の家は分家 と言っても父さんと鞘姉の父さんが兄弟なんだけど
そんな訳で俺と鞘姉は『北天一心流』を幼い頃から学んでいる
しかし巴は学んでいない
父さん曰く
「女が強すぎるのは良くない」
これについて伯父さん(鞘姉の父さん)曰く
「義姉さん(俺の母さん)を見てると良く分かるよ」
確かにうちの母さん強いもんな~ いろんな意味で
~鞘華視点~
3人揃って帰宅し、私と一君は直ぐに着替えて道場へ
道場で稽古をし(巴ちゃんも途中から見学していた)、
「よし、今日はこれまで!」
師匠(伯父さんの事を道場ではこう呼ぶ)の声で稽古が終了する
「鞘華、今日は家で食事をしていくと良い
家には連絡しておくよ」
と伯父さんが食事をしていくように勧めてくれた
「じゃ、御馳走になります」
食事をしている時に伯父さんが
「明日は学校は休みなんだろ
何なら泊まっていくか?」
と言ってきた
「何なら部屋は一刀の部屋にするか?」
ちょっと、伯父さん!
「寝床は一刀のベッドに一緒に入ればいいからな」
いい加減にして!
いや、一君の事は嫌いじゃないけど・・・
今の私、絶対に顔赤い
が、次の瞬間血の気が引いた
巴ちゃんから黒いオーラを感じ取ったから
あ~、出たか~
巴ちゃんは黒いオーラを出しながら伯父さんを睨んでいる
伯父さん~、気づいた方が良いですよ~
もしかしたら気付いた上で言ってるのかな?
「泊まるのは遠慮しておきます
御馳走様でした
今日はこれで帰ります」
「あ、鞘姉 送って行くよ」
「私も行く」
~一刀視点~
鞘姉の家は比較的近くだが、夜遅く女の子一人で帰す訳にはいかない
3人で話しながら歩いて、学園の前に差し掛かった
校門が開いている
不用心だなと思いながら中を見ると、此方に向かって勢いよく走って来る人物がいた
その人物は何かを脇に抱えていた
銅鏡?確か学園の資料室に有ったよな
つまり、盗人か!?
「どけ!」
盗人(?)は勢いよく突っ込んでくると、俺に突きを放って来た
それを躱し、逆に肘打ちを胸板に放つが防がれた
「一君!」
「来るな!
鞘姉は巴を頼む!」
見た目は少年とも青年とも取れるが、間違いなく強い
「くっ、邪魔をするな!」
今度は蹴りを放って来た
何とか躱すが連続で出してくるので反撃が出来ない
その時、相手の抱えていた銅鏡がずれる
「ちっ」
銅鏡に気を取られて連撃が止まる
そこへ右の上段回し蹴りを叩き込む
すると相手は銅鏡を落した
銅鏡が地面に落ちた瞬間、白い光が銅鏡から放たれる
「くそっ、北郷一刀
どこまでも忌々しい奴だ
まあ外史に行くのがお前の宿命
精々、苦労するがいい」
「何を言っている?」
相手の言っている意味が理解できない
「直ぐに分かるさ
そこの二人と共にな」
そう言う相手の姿は光に飲まれて消えて行った
「一君!」
「一兄!」
鞘姉と巴の声を聞きながら、意識が遠のいて行った
~あとがき~
新作を投降します
今回は序章
三人の自己紹介みたいな物です
一刀の妹は原作でも存在している筈です
ただ、名前は知りませんので勝手につけました
年齢は一刀の一つ下です
公式で名前や年齢が決まっていたら、ご容赦下さい
出だしは無印にかなり近いですが、相手は既に一刀を認識している点が違います
鞘華と巴が居る点もですが
これがどう影響して来るかはいづれ
と言ってもかなり先ですが
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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新たな外史の序章