No.768302

真・恋姫無双 ~今度こそ君と共に~ 第10話

今回は炎蓮との対談である程度、呉の様子が分かります。

では第10話どうぞ。

2015-04-01 22:04:45 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9804   閲覧ユーザー数:7153

一方、黄巾党の乱は今だ治まらず各地で官軍の苦戦が続いている状態であった。

 

一刀がいる揚州の官軍は現在刺史が不在で1番勢力が強い寿春太守の袁術が指揮取るところであったが、まだ幼少で前線に出ることができず、そして側近の張勲から一刀に命令書の様な手紙が送られていた。

 

その内容とは、自分たちは黄巾党の別動隊を討伐するので、揚州の黄巾党本隊を孫堅軍と連携して討伐しろという様な内容であったが、

 

「(この世界でもあの蜂蜜娘に関わるとはね…)まったくふざけているわね。私たちはあの子の家臣じゃないわよ」

 

これを見た雪蓮は最初の部分を誰にも聞こえない様にぼやき、そしてこの場に居ない袁術たちに向って文句を言うが、これを一刀が宥める。

 

「雪蓮の気持ちは分かるが、ここは袁術と喧嘩している場合じゃないよ」

 

「一刀の言う通り私たちの勢力はまだまだ微弱、袁術どころかこのままじゃ黄巾党の本隊と戦う事は難しいだろう。ここは袁術の言葉通り、孫堅殿と連携するしかないだろうな」

 

冥琳も宥めるが、流石に腹に据えかねているのか、孫堅には殿を付けるものの、袁術には敬称すら付けていなかった。

 

他の者も袁術の頭ごなしの命令に腹を立てているのか冥琳の言葉には誰も咎める者はおらず、一刀もこれには敢えて触れずに

 

「取り敢えず冥琳の言う通り、このままじゃ黄巾党本隊と戦うのは無理がある。包(魯粛)、君は孫堅さんと面識があると雪蓮から聞いた事がある。すまないが使者となって連携の為打ち合わせがしたいと申し出てくれ」

 

「了解したわ」

 

包が承諾すると、後は再度の出兵に備え準備に入ったのだが、一刀は雪蓮と冥琳を部屋に残し、一応予備知識として雪蓮を育てた孫堅の性格を聞いてみた。

 

「そうね…私が言うのも何だけど、私より戦馬鹿で強くて、それで何時も戦になると先陣切って戦っているし、そして性格はスパッと竹が割った様な感じね」

 

「それと雪蓮同様、自分の勘を信じて動いているから、正に軍師泣かせのお方だったな」

 

「なるほど…それでどうする雪蓮、お母さんと会う?もし否であったら…」

 

「心配しなくていいわよ、一刀。確かに姿こそはお母様からしれないけど、私のお母様は私を産んでくれた“孫文台”よ。ここの孫文台ではないわ。それに戦う訳じゃないでしょう、普通に接するわよ」

 

一刀は、雪蓮がこの外史では母親でない孫堅と会うのは心情的に辛いのではないかと思い留守居役でも考えたが、雪蓮は敢えてこれを断り一刀と同行する事を決断、そして包が交渉した結果、行軍途中での孫堅との会談が決まり出陣したのであった。

そして一刀は会談の間の軍を梨妟と包に任せ、雪蓮、冥琳それと一刀の護衛役として流琉が同行したが、会談前に孫堅の陣に向っていた一刀たちであったが陣に靡いている『孫』の旗を見て自然と一刀、雪蓮と冥琳は一旦足を止め、それを見つめていた。

 

この世界では三人とも、既に呉とは関係ない者となっているが、曾てはその旗の元、己の命を賭けて戦い、それは歴史が変わろうともその想いは残っている。

 

その想いからか三人は何も言わず、しばらく立ち止まっていた。

 

「どうかされましたか?兄様たち」

 

しばらく立ち止まっていた一刀たちを見て事情をしらない流琉は一刀に声を掛けると漸く一刀も我に返り

 

「ああ、ごめん。改めて孫堅さんの旗を見たら緊張してね。それじゃ行こうか」

 

一刀たちは流琉に促され、孫堅との会談に臨んだのであった。

 

本陣に案内されると各将が並んでおり、その中にかつて呉の為に共に戦った祭がいたが、雪蓮たちの顔を見ても何か見定める様な目であった。

 

一刀や雪蓮、冥琳は既に別の外史に来ているとは分かっていたが、祭の反応を見て寂しさを感じずにいた。

 

だが雪蓮はある事に気付いた。

 

(「ねぇ一刀、冥琳、祭の反応は分かるけど、私や冥琳を見て無反応というのはおかしくない?」)

 

(「考えてみれば確かに…」)

 

(「お前の記憶が無いだけではないのか」)

 

(「それだったら、もしこの世界の私がいた場合、私を見たらそっくりさんとして驚くけど、それが無いのよ」)

 

(「まさか…」)

 

(「シィ、一刀、冥琳、話はここまでよ」)

 

一刀、冥琳は雪蓮の勘とも言える予想を聞いて、驚きを隠せなかったが、孫堅が現れたので話を打ち切った。

「よく来たな、『天の御遣い』とやら。俺は孫堅、字は文台だ」

 

「初めまして孫堅様、私は北郷一刀、字とかが無いので好きに呼んで下さい。ただ…『天の御遣い』というのはちょっと…」

 

(「この者見た目は軟弱そうだが、率いている将はなかなかの逸材と見たが、特に後ろにいる将は私の若い時の雰囲気を出しているわ……まずは『天の御遣い』とやらの実力が、どの程度か試してみる必要はあるわね。もし大した事なければ、この者たちを私が奪い取って見せるわ」)

 

「(流石、江東の虎と呼ばれていた事はある。顔は笑っているけど、目が笑ってないな)」

 

炎蓮と一刀がお互いに挨拶を終え、特に炎蓮は一刀の後ろに立っている雪蓮の姿を見てに若い時の自分を重ね合わせた。更に冥琳や流琉を見て配下として欲しいと思い、まずは一刀の実力を見極め、もし一刀の実力が低ければ一刀から雪蓮らを奪い取り自分の配下に置こうと思い、炎蓮から仕掛ける。

 

「へぇ…『天の御遣い』と言われ腰が引けているのかい。それじゃ戦場に出ても怪しいものだね。このような将に連れられている部下も大した事なさそうだな」

 

この言葉に一刀も頭に来たようで

 

「自分を侮辱するのは構わないけど、仲間を侮辱する事は幾ら孫堅さんでも許せませんよ」

 

「へぇ、許せないね…それで私をどうするつもりだい」

 

「その言葉取り消して下さい。もし取り消さなかったら、貴女に敵うかどうか分かりませんが、俺は貴女に挑みます!」

 

一刀は炎蓮を睨みつける。

 

「面白いね…私に挑もうというのかい」

 

炎蓮も負けずに睨み返す。

 

一刀とこの世界のお母様がにらみ合っている。

 

お母様は、本気だ。この世界で繋がりが無くてもその殺気が、長年叩き込まれた私の身体が覚えている。だけど一刀はそれに負けない位気迫を出しているわ。

 

だから負けないでよ…一刀

 

雪蓮は手出しできない二人の勝負を見守っていた。

(「チィ…軽い遊びのつもりだったけど、挑発し過ぎたな。少々この者を侮っていたようね……『天の御遣い』の名は伊達じゃないわね。ここで敵にするよりは味方にした方が利ありそうね」)

 

(「流石、雪蓮のお母さんだけはある。気迫が半端じゃないよな」)

 

お互い睨みあっていたが、炎蓮は一刀の実力をある程度見極めたので、これ以上の騒ぎは無用と判断して殺気を収めた。

 

「……すまなかったな。一言で言うと実力を試してみた。それと仲間を侮辱して申し訳ないわ」

 

「試したとはどういう事ですか?」

 

「理由は簡単よ。貴方が使えるかどうか、もし貴方が使えなかったら後ろにいる将を私が取り込んで配下にしたわよ。でも貴方の実力は、私と同等若しくはそれ以上の可能性を秘めているわ。だからここは喧嘩するよりも手を結んだ方が得策と判断したのよ」

 

「だからお詫びと今後の信頼関係を結ぶ為に私の真名『炎蓮』を貴方に預けるわ」

 

「……分かりました。謝罪と真名受け取らせていただきます」

 

流石に挑発を受け文句の一つでも言いかったが、向こうから謝罪と真名を預けると言われると、一刀もこれ以上事を荒立てるつもりも無く、そして真名についても断る理由も無かったのでこれを受け取った。

 

そして祭など他の将とも真名を交し、黄巾党討伐の打ち合わせ等を進めていたが、途中から炎蓮は一刀と雪蓮を注目していた。

 

(「あの男も良いけど、この子も気になるのよね……まるで姿形が私の若い時に似ているわ」)

 

会議中、暇を持てあましながら遊んでいる雪蓮を見て、炎蓮は嘗ての自分と重ね合わせていた。

 

そして会議が終り、炎蓮は雪蓮に声を掛ける。

 

「ねえ、貴女、私の若い時によく似ているわ。それで名前を教えて欲しいの」

 

「えっ!私の名前は…孫伯符、孫策伯符よ」

 

突然、この世界の母親から声を掛けられた雪蓮は驚きを隠せず、そのまま自分の名前を答えてしまった。

 

だが炎蓮は

 

「そう孫伯符……もし最初の子が生まれていたら、貴女くらいの年になっているわね…」

 

「それどういう事?」

 

雪蓮は嫌な予感をしながら炎蓮に尋ねる。

 

「ああ、私の最初の子は不注意にも水に流れてしまったんだ」

 

「えっ…」

 

炎蓮からの言葉を聞いて雪蓮は驚きを隠せずにいた。この世界にやはり自分の分身がいない事に。

 

「それはどういう事ですか?」

 

横にいた一刀が炎蓮に聞く。

 

「ああ…誤って階段で躓いて転倒してな、その時に腹を打っちまって流してしまったんだ」

 

「そうですか…」

 

「そんな湿っぽい顔をしなくていいよ。確かに形としてはいないけど、私の心の中で一緒に生きている。だから次に生まれてきた蓮華にも、ああ……孫権の事だが、あれには長女であるが、お前には姉か兄がいたんだぞということで名を仲謀としている」

 

一刀は更なる情報を得る為に質問した。

 

「因みに他にご子息は、孫権殿以外に誰かいるのですか?」

 

「ああ、先に上げた孫権以外に孫尚香がいるが、でもね二人ともヒヨコで、まだまだ後は任せられんわ」

 

「だから貴女の名を聞いて、何処かで遠い祖先で血は繋がっていると思うの。もし良ければウチに来ない」

 

炎蓮は自軍の強化もあるが、遠い血縁関係かもしれない雪蓮を勧誘する。

 

「……その言葉、大変ありがたいですが、我が身は一刀…北郷一刀に捧げております。その儀はご容赦下さい」

 

炎蓮から勧誘を受けた雪蓮であるが、今の自分は一刀を愛し、そして一刀の為に生きると思っている今、未練を断ち切る様に勧誘を断ったのであった。

 

「そう残念ね…また次の機会にするわ」

 

炎蓮も雪蓮の心情を憚ったのかこれ以上の勧誘を行わず、この場はお開きとなった。

 

そして陣に戻る時に少し元気がなかった雪蓮に声を掛ける。

 

「いいのか雪蓮?」

 

「あら、一刀は私にそんなに向こうに行って欲しいの?」

 

「そんな訳ないだろう!雪蓮と冥琳、それに皆、一緒に居たいに決まっているだろう!!」

 

「じ、冗談よ。一刀、そんな熱くならないでよ」

 

「う、うむ。その言葉嬉しいが、もう少し声を下げて貰えないか」

 

「(ポッ)……」

 

一刀の熱い発言に恥ずかしくなる三人であるが、雪蓮は一刀に近付き冥琳や流琉に聞こえない様に

 

「もう私たちもこれで後戻りはできなくなったわ。さっきの熱い言葉の通りこれからよろしく頼むわね一刀♪」

 

チュッ

 

頬っぺたにキスをして、悪戯っ子の様に笑う雪蓮に苦笑いする一刀であった。

 

 

~後書き~

 

因みにこの世界の炎蓮とこの世界に送り込んだ炎蓮とはまったく別人で関連はありません。

 

そして雪蓮と蓮華の後継者の整合性を合わせる為にこういう形にさせて貰いました。

 

色々とご意見あると思いますが、ご了承ください。

 

 


 
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