以前から噂されてましたが、遂に起こりましたね。
孫家領土の各地で傘下豪族が蜂起して内戦状態ですか。
柴桑を陥とした孫策さんは劉繇・厳白虎・王朗の連合と対峙していて身動きが取れない状態。
留守の孫権さんが鎮圧にあたっていますが、厳しいでしょうねえ。
皮肉なものですね、一刀さんを恐れた豪族達は孫家を盾にしようと傘下に入りましたのに。
姉妹で国が二派に分かれて、黄蓋さんの事もありましたし頼りにならないと思われたんですかね。
この示し合わせた状況、劉繇達と蜂起した豪族達は通じてますね。
それに孫策さんに従軍してる許貢も怪しいですよねえ。
「七乃、蓮華達は大丈夫かの?」
孫権さん達の事を美羽様や沙和さんが心配してますが、軍を動かす訳にはいきません。
あくまで寿春の守りが最優先です。
そもそも助けに行く理由がありませんよ、孫策さんに親交を拒絶されてるんですから。
・・それにしても、これだけの規模の反乱、あの周瑜さんや陸遜さんが見抜けなかったんですかね?
「真・恋姫無双 君の隣に」 第42話
星が早くも敵の将を討ち取ったとの報告が届く。
「一刀殿、星殿はこのまま遊軍として独自に動いて貰うのです。我等はこの守りやすい地形に陣を敷いて防御に専念するのです」
成程、この地形なら馬防柵を設置すれば敵の機動力は封じれる。
歩兵主体の俺達に適した戦場だ。
「ねね。そら守りには適しとるやろけど、攻めるのが難しいと分かっとったら敵さんも攻めてこんやろ?」
「向こうは武はあれど、知はお世辞にも優れてはいないのです。長安を一方的に攻め込む気だったのでしょうが、翠殿の為に戦略が崩壊しています。攻城戦は不得手もいいところで、西涼も短期間で陥とされるとは思えないのです」
「多少不利でも野戦なら勝てると踏んで、俺の首を獲る好機と考えるって訳か。でも他はともかく韓遂は駆け引きに長けてると聞くけど」
「大丈夫なのです。韓遂のじじいの言う事を素直に聞く奴は多くはないのです、大将首が見えたら一目散に向かってくるのです。」
つまり俺は餌なんだな。
でも俺が戦で役に立てるのって確かに囮くらいだよな、だったら喜んで引き受けよう。
「分かった。星と風に可能なら翠と連絡手段を構築して欲しいと伝えてくれ。真桜はねねの指示を聞いて馬防柵の設置を頼む」
「了解や、急いで仕上げんで」
「お任せくださいなのです」
アタシの頭は怒りで燃え上がってる。
くそっ、馬玩の奴、好き勝手言ってくれやがって。
アタシだけならともかく、母様や一刀の事まで侮辱するなんて、今からその首を飛ばして、
「お姉様、ま・さ・か・挑発に乗って出陣するなんて、言わないよね?」
つ、冷たい、たんぽぽの目が冬の大地より冷たい。
頭に上がってた血も一瞬で冷えた。
「そ、そんな事は無いぞ。籠城中の将が挑発に乗るなんて、そんな馬鹿な事をする訳無いだろ」
たんぽぽの笑顔が凄え怖い。
「良かった。もしそんな馬・鹿・な事をしたら出て行った瞬間に城門を閉じるつもりだったからね♪」
本気の目だ、完全に見捨てる気だよ。
「まあ、本当に結果論だけど、お姉様が此処で籠城してるから向こうも一刀様に全軍を差し向けられないし、おそらく星さんの遊撃軍が奇襲で掻き乱してるようだから戦況は有利だけどね」
「それならアタシらも」
「お姉様、囮から生贄になりたいなら止めないよ」
大人しく籠城してます。
劉繇達に背を向ける訳にもいかず、柴桑で徒に時が過ぎる。
攻めてくるのなら対処の仕様もあるが、遠巻きに陣を敷かれては有効な策もうてん。
蓮華様には亞莎達がいるので大丈夫とは思うが、一刻も早く戻らなくては。
それにしても、豪族たちの反乱、何故気付けなかった。
監視の目は光らせていた、些細な事でも報告するように指示していた筈なのに。
劉繇達との連動も明らかだ、これ程大掛かりな仕掛けを講じる軍師が奴等にいたなどと聞いた事がない。
一体、何を見落としていたんだ。
後悔と共に疑問は膨れ上がるばかりだったが、私の疑問は直ぐに判明する。
ここ長沙に攻め寄せる豪族達が、態勢を整え直す為か引いていく。
その間に私達は偵察から戻った明命を加えて軍議を開く。
「明命、敵の様子は?」
「はい。昨日から合流する兵が増えてきています。詳細を探ったところ、他県を襲っていた豪族が攻めあぐねた為に、長沙に戦力を集中させているようです」
「朗報ね。それなら安心して戦えるわ」
長沙の民は城内へ避難できてるし、他も無事なら此方に専念できる。
「蓮華様、敵が増えましても守りきる事は出来ます。ですが早期の鎮圧を為すには兵が足りません」
「そうね、思春の言う通りだわ。でも長引かせる訳にはいかない。亞莎、此方の打つ手は?」
「はい、近日中に援軍が来る事でしょう。私達は機を合わせる為に籠城中も出撃準備を整えておきます。思春さん、援軍に動揺してる敵を薙ぎ払って本陣を陥として下さい」
「分かった」
これでいいわ、後は戦後処理の準備も整えておかないといけないわね。
駆逐した豪族の土地管理に役人を派遣して、田畑を荒らされた民の救済も行なわないと。
他にも考えないといけない事があるし、休んでる暇は無いわね。
「ちょっと待ってよ!援軍って何処から来るの?雪蓮お姉ちゃんは柴桑を離れられないし、他も援軍を出せる状況じゃないよ」
シャオが大きな声で疑問をぶつけてくる。
明命も不思議に思っているようね。
でもね、来るのよ、必ず。
私も、思春も、亞莎も、確信しているわ。
私達を放っておけない人がいるから。
「おおー、すごいじょー。こんな大きな川もでっかい船も見た事無いのにゃー」
「「「すごいにゃ、すごいにゃ」」」
ききょうが面白いところに行くと言ったので、みいもミケ達と一緒に付いて行く事にしたのにゃ。
予定が変わって戦に行くから留守番してろと言われたけど、みいは南蛮大王孟獲なのにゃ、強いところを見せて驚かしてやるのにゃ。
それにしても、船の上は気持ちいいのにゃ。
ちょっと冷たい風が涼しいのにゃ。
うにゃ?ききょうが何か話してるじょ。
「黄蓋殿、お主も大胆だの、仕官に来たわしをいきなり戦場に連れてゆくか?御遣い殿の許可も取っとらんだろ」
「儂は一刀から水軍都督に任命されて人事権も貰っとる。それに御主は顔馴染みじゃし人格も実力も申し分ない、じゃったら遊ばしとくのは勿体無いわ」
「有り難い評価ではあるが、水上戦は経験が無いので勝手が分からんのだがな」
「長沙に着いての陸の戦じゃ、江陵を長く留守には出来んので速攻で片付けてくれるわ」
「穏!どういう事、許貢を配下共々、射殺したって聞いたわよ!」
「はい~。城門を開こうとしてましたから仕方ないですね~」
事実だろう、報告を受けて確認に向かったが状況は一目瞭然だった。
既に報告を受けている雪蓮とて分かっているだろうが、突然の事で口に出さずにいられなかったのだろう。
「雪蓮、許貢の罪は明らかで軍は此方に取り込める。他の者も大人しく従うだろう。むしろ状況は改善されたんだ、少し冷静になれ」
「分かるけど、何か釈然としないのよ。こう、誰かの掌で踊らされてるような感じっていうか」
判断する材料が足りなくても、そこに辿り着くか。
お前に軍師が必要なのか、つくづく考えさせられるよ。
雪蓮が兵の統率に向かい、残る私は事実確認を行う。
「穏、見事な手際だったな」
「処分は受けます、如何様にでもして下さい」
此度起こった反乱の立案者は、私以外で情報を管理できる者、敵の動きを的確に予測かつ誘導できる者だ。
穏、お前しかいない!
「蓮華様は無事なのだな」
「はい。亞莎ちゃんがお傍にいますし、要所には功臣の程普さんや韓当さん達がいます。的確に対応してくれてるでしょう」
「・・私には相談出来なかったのか」
「冥琳様は雪蓮様のお気持ちを優先されます。私はこれ以上、孫家が堕ちていく事を許容出来ません」
普段とはかけ離れた言葉遣いに表情。
お前も祭殿と同じように全てを捨てて、孫家をあるべき姿に戻そうとしたのか。
穏の行いは重罪だ、明らかになればとても庇えない。
「お前が反乱に組しているのを他に知ってる者はいるのか?」
「はい、敵勢力の何名かは」
祭殿に続いて穏まで失うのか?
馬鹿な、穏の代わりなどいるものか!
「そう、貴女の企みだったのね」
雪蓮!!
いつの間に、しかも南海覇王を抜き放っている。
「待ってくれ、雪蓮!穏の行いは全て孫家を想っての事だ、お前にも分かるだろう?」
「そんな事、分かってるわよ!・・それでも王が、自分の領地に乱を起こさせた者を無条件に許せる訳無いでしょう!策略の域を完全に超えてるわ!」
雪蓮の口元から血が流れている。
どれ程の気持ちを押し殺しているのか、そして己の不甲斐無さを噛み締めているのか。
・・お前の言うとおりだ、穏。
私は孫家の軍師ではなく、雪蓮の軍師にしかなれない。
雪蓮の心を護りたい。
「雪蓮、穏を裁くのは待ってくれないか。劉繇達を追い払い、長沙に戻って乱を鎮めるまで穏を処分するのは得策ではない。敵を喜ばせるだけだ」
「・・・・・・」
只の先送りだ、だが時間は人の心を癒し、新たな気持ちを見出させてくれる。
「穏は私が責任を持って預かる。今は領地の回復に全力を注ごう」
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孫家領土で大規模な反乱が起こる
遠く離れた涼州で報を聞いた一刀はどうするのか