No.765368

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第584話

2015-03-18 15:37:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1416   閲覧ユーザー数:1239

~エルベ離宮~

 

「―――話を戻すが、メンフィルが情状酌量を求めて領地の一部を返還してやってもよい理由は他にもあってな。その理由は他国のメンフィルの印象を少しでも変える為じゃ。」

「他国のメンフィルの印象を少しでも変える……一体どういう意味でしょうか?」

リフィアの説明を聞いて考え込んだクレア大尉だったが答えがわからず、リフィアに尋ねた。

「メンフィルは今回の戦争でゼムリア大陸の者達が恐怖を感じる程の出来事を起こしてしまった。それによって仕方ないことだがメンフィルの印象も変わってしまっただろう。」

「ゼムリア大陸の人々が恐怖を感じる出来事……?」

「アルバレア公爵夫妻の公開処刑と帝城であるバルヘイム宮の爆撃……この二つの件は特にゼムリア大陸の人々にメンフィル帝国が血も涙もない国家だと印象付けてもおかしくありません。」

リフィアの説明を聞いて不思議そうな表情で首を傾げているゲルドの疑問にエリゼが静かな表情で答えてリフィアの説明を捕捉した。

 

「無論その行為に余達に後悔はない上ディル・リフィーナでは公開処刑や戦争をしている国家の本拠地である城の破壊等一般的によく聞く話で恐怖するような出来事ではないが、ゼムリア大陸は違う。そしてゼムリア大陸の観点からすれば残虐な出来事を起こしたメンフィル帝国は残虐な国家と見られてしまい、その事によってメンフィル帝国が掲げている理想―――『全ての種族との共存』の弊害にもなる。」

「……つまりメンフィル帝国は本来滅亡させるはずだった国家―――エレボニア帝国の嘆願に答えてエレボニア帝国が国として存続でき、その事によってゼムリア大陸の人々にメンフィル帝国は寛大な心を持っている事も印象付けたく、更にメンフィル帝国も納得できる”理由”が欲しいという事でしょうか?」

リフィアの話を聞いて考えを纏めたリィンは真剣な表情で尋ねた。

「うむ。だからこそ返還しても構わない領地の中に帝都であるヘイムダルや貿易に盛んな為多くの税収入が見込めるジュライ特区が入っているのじゃ。」

(……話を聞く限り、メンフィルはリィンとアルフィン殿下達の重婚の件だけでも情状酌量を認めてくれるかもしれんな。)

(ええ。クロスベルが情状酌量を認めなくてもメンフィルが認めた場合、帝都とサザーランド州、ジュライ特区を返還するつもりである事がわかったのは朗報です。)

リィンの問いかけに頷いたリフィアを見たユーシスとクレア大尉はそれぞれ小声で相談していた。

 

「他に何か聞きたい事はあるか?」

「あの……先程サンドロッド卿達と出会った時に”神速”がレグラムはリベール領になるかもしれない事を漏らしていたのですが……それは真(まこと)なのでしょうか?」

「なぬ?”神速”がじゃと?……まあいい。レグラムに関する問いだが答えは”是”じゃ。」

ラウラの問いかけを聞いたリフィアは眉を顰めたがすぐに気を取り直して答えた。

 

「!!」

「答えが”是”という事はラウラの祖国はメンフィルではなく、リベールになるかもしれないの?」

リフィアの答えにラウラが目を見開いて息を呑んでいる中、ゲルドは静かな表情で尋ね

「”なるかもしれない”ではなく、”なる事が既に決定しています”。」

「なっ!?じゃあレグラムはリベール領に……!」

「もしかして以前レン姫達が説明の際にオレ達にも教えてくれたリベールとの取引が関係しているのでしょうか?」

「リベールとの取引……二大国侵攻を黙認する代わりに制圧した領地の一部をリベールに譲渡する話ですか……」

ゲルドの問いかけに対して答えたエリゼの話を聞いたリィンは驚き、ガイウスの質問を聞いたクレア大尉はカレイジャスに現れたレン達の説明を思い出していた。

 

「その……何故レグラムを?辺境であるレグラムが自国の領土となっても、リベールにとってそれ程利益にならないと思うのですが……」

「何を言っておる。利益はあるではないか。例えばお主の父親やお主―――”アルゼイド家”が有事の際の戦力となれば、リベールにとって心強いと思うが?」

「子爵閣下―――”光の剣匠”ですか。確かに老師とも互角の戦いを繰り広げた”光の剣匠”や子爵閣下の跡継ぎになるであろうラウラやその子孫――――帝国で武の双璧を誇っていた”アルゼイド流”の伝承者が味方になれば、心強いですね……」

「ラウラのお父さんって、そんなに凄いの?」

「ああ……帝国で5本の指に入ると謳われている程の強さを持つ凄まじい剣士だ。」

複雑そうな表情をしているラウラの問いかけに答えたリフィアの話を聞いたリィンは真剣な表情をした後複雑そうな表情をし、アルゼイド子爵の強さがわからない為不思議そうな表情をしているゲルドの質問にガイウスは静かな表情で答えた。

 

「加えてエレボニア帝国で双璧を誇っていた武門―――”アルゼイド流”に武術教練をして貰える事や”アルゼイド流”の門下生達が自国の軍に入隊する可能性がある事はリベール軍にとっても利益になるだろう?」

「それは…………リフィア殿下。できればレグラムがリベール領となる前にレグラムの領主である”アルゼイド家”に説明をして欲しかったのですが……」

リフィアに問いかけられたラウラは複雑そうな表情で問い返した。

「その件についてはクロイツェン州全土制圧から二日後くらいに内戦終結に向けて帝国西部で活動していたオリヴァルト皇子を通して子爵に伝えている。」

「なっ!?では父上はレグラムがリベール領となる事を反論する事なく受け入れたのでしょうか?」

そしてリフィアの口から語られた予想外の答えに驚いたラウラはすぐに気を取り直して静かな表情で尋ねた。

 

「うむ。先程の説明を含めたリベールにレグラムを贈与する説明をし、子爵はそれに納得してレグラムがリベール領となる事を受け入れたと聞いている。」

「”先程の説明を含めた”と仰いましたが他にも理由があるのですか?」

リフィアの話を聞いてある事が気になったクレア大尉は質問した。

「そうじゃ。一つはレグラムの民達の事を考え、リベールにレグラムを贈与する事にしたのじゃ。」

「え……レグラムの民達の為、ですか?一体どういう事でしょうか?」

リフィアの答えを聞いたラウラは戸惑いの表情で尋ねた。

 

「逆に聞くが戦争でレグラムを得た余達メンフィルと”不戦条約”を提唱し、慈悲深い性格で有名なアリシア女王陛下やアリシア女王の跡継ぎであるクローディア姫がいるリベール……民達からすれば普通ならどちらの国に所属したいと思う?」

「!それは…………他にもまだ理由があるような言い方をされていましたが、他の理由は何なのでしょうか?」

リフィアの説明を聞いて目を見開いた後複雑そうな表情で答えを濁していたラウラは続きを促した。

「もう一つの理由はメンフィルとリベールの友好の絆は固く結ばれている事を改めてリベールもそうだが他国に知らしめる為じゃ。」

「メンフィルとリベールの友好の絆は固く結ばれている事を改めて他国に知らしめる為……?」

「一体どういう意味なの?」

リフィアの話の意味がわからなかったガイウスと共に不思議そうな表情をしたゲルドは尋ねた。

 

「レグラムはクロイツェン州の首都であるバリアハートと隣接している地域です。広大なクロイツェン州の首都と隣接している地域を贈与する……言いかえれば万が一レグラムを獲た国が我が国と戦争になった際真っ先にクロイツェン州の首都であるバリアハートを制圧できる機会を手に入れられるという事です。」

「なっ!?」

「……確かに広大なクロイツェン州の首都が隣接している地域の領有権を持つ他国との関係が悪化し、最悪戦争になる事を考えると普通は首都と接している地域は贈与しませんね。」

「……そしてその地域であるレグラムを贈与する程リベールとは友好な関係である事を内外共に知らしめることができるという訳ですか……」

「…………」

「ラウラ……」

エリゼの話を聞いたリィンが驚いている中クレア大尉とユーシスの推測を聞き複雑そうな表情をしているラウラをガイウスは心配そうな表情で見つめていた。

 

「リベールには二大国侵攻の件でメンフィルに対する不信感を残してしまったからな。リベールへの”詫び”の意味も込めてレグラムを贈与する事となった。今説明した理由がレグラムをリベールに贈与する全ての理由じゃ。」

「……わざわざ私のような未熟者に教えて頂き、ありがとうございました。レグラムの領主である父上がリベール領となる事を受け入れたのならば父上の娘である私も従う所存です。」

「うむ。それにリベール領となった事でカシウスやエステル達、そしてカシウスの教え子達とも手合わせができる機会があるかもしれぬのだから、”アルゼイド流”にとっても悪い話ではないだろう。」

「フフ、言われてみればそうですね。」

リフィアの指摘にラウラは苦笑しながら答えた。

 

「リィンさん、聞きたい事は聞けましたし、まだクロスベルが残っているのですからそろそろ失礼した方が……」

「そうですね……―――リフィア殿下。貴重なお時間を取って頂き、ありがとうございました。俺達はこれで失礼します。」

「そうか。……そうじゃ、一つ伝え忘れていた。今回の会議で決まるエレボニアの存亡の結果がどのような結果になっても、休校していたトールズ士官学院が学院として再開するのならば休学させていたプリネ達を復学させる予定じゃ。」

「え――――それは本当ですか!?」

リフィアの口から出た驚きの答えに仲間達と共に驚いたリィンは血相を変えて尋ねた。

 

「プリネ達を休学させていた理由はエレボニアの内戦に巻き込まれない為だったからな。その理由がなくなれば復学させるのが”筋”というものだ。まあ、復学すると言ってもお主達も知っての通り士官学院に通える時期は今年度まで―――今年の3月31日にてトールズ士官学院を退学する為、僅かな復学期間となるがな。」

「例えその短い期間でもプリネ達が戻ってくることはオレ達にとっては朗報だな。」

「フッ、俺達の目標――――”かけがえのない毎日を取り戻す”という目標の達成に大きく近づけたな。」

「ああ……!」

「後は今回の会議を何とか乗り越えればようやく皆さんも元の学生生活に戻れますね……」

「………………(いいな……私もリィン達と一緒に”かけがえのない毎日”を過ごしたかったな……)」

リフィアの答えを聞き明るい表情をしているⅦ組の面々をクレア大尉が微笑ましそうに見守っている中、ゲルドは羨望の眼差しでリィン達を見つめていた。

 

その後リフィア達がいる客室から退出したリィン達はヴァイス達がいる客室に向かった。

 

 

 


 
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