No.75406

真・恋姫†無双 ~私とあの人の愛した世界~ 第一章

セインさん

再び投稿。

これが・・・本当のプロローグだ・・・。

2009-05-24 23:33:53 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:7978   閲覧ユーザー数:5727

「さよなら、偉大なる覇王・・・。」

 

それは、一つの別れ。

 

「さよなら、寂しがり屋の女の子・・・。」

 

出会いがあれば、別れもいつかはやってくる。

 

それは必然。

 

「さよなら・・・愛していたよ、華琳。」

 

 

 

 

 

 

・・・こうして、一つの恋の物語が幕を閉じた・・・。

 

 

ガンッ!キンッ!ガキィッ!

 

静寂なはずの森の中に、鉄同士が激しくぶつかり合う音だけが響く。

 

ガキッ!ギンッ!チギィッ!

 

その音は、まるでBGMの如く旋律を奏でる。

 

森の中には、刀を構えた一人の青年がいた。

 

身体つきは20代前半くらいだろうが、顔つきが童顔でやや幼く見える。

 

ヒュッ!フォッ!ヒュン!

 

青年は、何も無いはずの空間に刀を振る。

 

ガンッ!ガキッ!ギィンッ!

 

その瞬間、何も無いはずの空間から『火花が散った』。

 

青年「・・・クッ!埒が明かない・・・!」

 

青年はそう呟くと、刀を構えなおす。

 

青年(・・・なら、これで!)

 

青年がそう決意した瞬間、青年の背後で『ガサッ!』という音が響く。

 

青年「そこかっ!」

 

青年は振り向きざまに刀を『一振り』した。

 

ヒュッ!フィッ!ヒュオッ!フェンッ!ヒュンッ!フォッ!ヒュアッ!

 

しかし、風を切る音は『7つ』。

 

青年は、目にもとまらぬ速さで刀を振っていたのだ。

 

??「やるわね。」

 

その呟きが聞こえた瞬間、青年からやや離れた『誰も居なかったはずの場所』に一人の少女が現れた。

 

顔つきは、青年によく似ている。身体つきは、ごく普通の10代後半ぐらいだ。

 

ただ、少女の身に纏っている衣服は所々少し裂けていた。

 

おそらく、青年の剣が掠めたのだろう。

 

少女は左右それぞれの手に短刀を握っている。

 

・・・青年は、この少女と戦っていたのだ。

 

少女「・・・次で決めるわ。」

 

青年「・・・望むところだ。」

 

二人がそれぞれの得物を構えなおし、斬りかかろうと互いに身を屈める。

 

互いに高まる緊張。静寂が辺りを包みこむ。

 

そして、間合いを詰めようと二人が動こうとした瞬間・・・。

 

 

 

 

 

??「一夜~~?一刀君~~?もうそろそろ、晩ご飯の支度手伝って~。」

 

・・・と、間の抜けた女性の声が響き渡り、青年『北郷一刀』と少女『北郷一夜』は盛大にコケた。

 

 

~一夜side~

 

あの後、私たちは家に帰り食卓を囲んでいた。

 

一夜「・・・と言う訳なのよ!」

 

私は、先ほどの『手合せ』の一部始終を祖父『北郷 源一郎(ほんごう げんいちろう)』に話して聞かせていた。

 

源一郎「ファッファッファッ!それは惜しかったのう!」

 

お祖父ちゃんが豪快に笑う横で、先程の手合せを止めた母『北郷 一江(ほんごう かずえ)』が口を開く。

 

一江「けど、あの辺で止めないと晩御飯が遅れるでしょ?それに、あそこで止めなかったら、どちらかがケガをしていただろうし。」

 

一夜「優先順位、逆だよね!?」

 

思わず、ツッコミを入れる私。

 

源一郎「しかし、一夜もそうだが、一刀も腕をあげたのう。」

 

一江「そうですね。4年前の夏休みにやってきたと思ったら『祖父ちゃん!俺に剣を教えてくれ!』ですものね。」

 

祖父ちゃんと母さんのそんな話を聞きながら、私は横目で兄さん(従兄)『北郷 一刀』を見る。

 

兄さんは何か小説のような物を読みながら、黙々と料理を食べている。

 

4年前までは、兄さんはあんまり強くなかった。どちらかと言うと、頭がいい方だった。

 

しかし、兄さんが4年前から本格的に剣を学び始めた。

 

もともと素質があったのと、叔母『一葉(かずは)』に鍛えられていたこともあり、すぐに実力をつけていった。

 

長期休暇になると必ず、東京から九州にあるこの『北郷の宗家』までやってきて修業をしていく。

 

向こうの学校(聖フランチェスカ学園)を卒業してからは九州の大学に入学し、宗家から大学へ通っている。

 

もちろん、家にいる時はほとんど修業をしている。

 

私には、何が兄さんを変えたのか分からない。

 

けれど『強くなりたい』という気持ちだけは、痛いほど感じる事が出来た。

 

 

一夜「兄さん、何を読んでいるの?」

 

私はさりげなく聞いてみた。

 

いつもなら『お行儀が悪い!』と言ってしまいそうだったが、今日は何か『悲しそうな』顔をしてたので気になってしまったのだ。

 

一刀「・・・ああ、これだよ。」

 

と、兄さんはそれまで読んでいた本を私に渡した。

 

その本のタイトルには『新説・三国志』と書かれていた。

 

 

 

この本は、ごく最近になって出回っている本だ。

 

この本の出現により、今までの『三国志』が正しい出来事であったかどうか疑われている。

 

さて内容はと言うと・・・、

 

『後の覇王【曹操】(女)がある日【天の御使い】(男)と言われる人物と出会い、様々な出来事や戦いを乗り越えながら愛し合って、天下統一を目指していく。』

 

というラブロマンスであった。

 

この本を見た歴史学者は、皆口をそろえて「待て!これは孔明の罠だ!」と叫んだとか叫ばなかったとか。

(横○先生は偉大だ。)

 

しかし、これを裏付けする証拠品も発見されている。

(例えば、三国志の時代に作られたと言われる『メイド服』や『カメラ』がその一例だ。)

 

この本の結末は『【曹操】は見事三国に平和をもたらすが、最愛の男性【天の御使い】との悲しい別れを迎えてしまう。』と言う悲劇であった。

 

 

 

一夜「ふ~ん、兄さんが『三国志』好きなのは知ってたけど、こんなのも見るんだね。」

 

一刀「あぁ・・・、まぁな。・・・一夜はこの本の事、信じていないのか?」

 

一夜「うん。なんか、胡散臭いって言うか・・・。」

 

一刀「・・・そうか。」

 

呟いた兄さんの顔は、どこか寂しげだった。

 

兄さんは立ち上がり「ごちそうさまでした。」と言うと、食べ終わった食器を持って台所に向かっていった。

 

そして、兄さんが部屋を出る瞬間

 

一刀「・・・・・・カリン。」

 

と呟くのを、私は聞き逃さなかった。

 

 

一夜「・・・『カリン』さんって、どんな人なのかなぁ・・・。」

 

私は自室でそんな事を呟いていた。

 

兄さんが時折『カリン』と呟くのは知っている。

 

一夜「・・・兄さんの何なのかなぁ・・・。やっぱり、恋人なのかなぁ・・・。」

 

その時、兄さんが決まってどこか遠くを見つめている事も、やはり知っている。

 

一夜(・・・遠距離恋愛とかかなぁ?でも、兄さんが女の人と連絡を取ってるところなんて、見たこと無いしなぁ。)

 

窓の縁に肘を乗せ、頬杖を付きながらそんな事を考えていた。

 

一夜(・・・やっぱり、キスの一つくらいしたのかなぁ?それとも『あんなこと』や『こんなこと』もしたのかなぁ?)

 

・・・私だって、年頃の女の子です。こんな事も考えたりします。

 

夜空に見える月は奇麗な満月だった。

 

ふと、森(家の私有地)の方に目を向けると、そこに一人の人影が見えた。

 

一夜(・・・?まさか兄さん?)

 

兄さんと思しき人影は、ふらふらと森の中へ入っていく。

 

私は、即座に後を付けることを決めた・・・。

 

 

~一刀side~

 

俺は、刀を持って森の中に入っていく。

 

しばらく歩いていくと、少し開けた場所に出る。

 

先程、一夜と手合せをしていた場所だ。

 

俺は適当な場所に腰かけると、持ってきていた本『新説・三国志』を月にかざす。

 

一夜は信じていないようだったが、この本に書かれているのはある意味事実である。

 

俺は、『あの世界』から帰ってきてすぐに剣の修業を始めた。

 

再びあの世界に戻った時に、皆の役に立てるように。

 

戻れないにしても、胸を張って生きていけるように。

 

しかし、いくら剣をふるっても『あの世界』の思い出がちらついていた。

 

有り体に言ってしまえば、俺はあの世界に未練タラタラだったのだ。

 

??「・・・浮かない顔をしているな。」

 

不意に、そんな言葉をかけられる。

 

一刀「!?」

 

俺は刀に手をかけ、辺りを見回す。

 

森の中から一人の人間が出てきた。

 

その人物を一言で表すと『謎の黒ずくめ』である。

 

黒いブーツに黒い服、更に黒いフード付きの外套を羽織っていた。

 

声の感じからして男なのだろうが、仮面を被っている為に正確な事は解らない。

 

一刀「・・・誰だお前は?」

 

??「俺のことなどどうでもいい。これからする質問に正直に答えろ。」

 

黒ずくめはそう言った後、一拍置いて『質問』してきた。

 

 

??「『あの世界』に戻りたくはないか?」

 

一刀「!!」

 

俺はその言葉を聞いて驚愕した。

 

そして、俺は震える声で聞き返した。

 

一刀「・・・戻れるのか?」

 

??「俺の力を使えばな。しかし、一度行ったら二度とこの世界には戻って来れない。それと、今この時にしか力を使う事が出来ない。」

 

一刀「そうか・・・。」

 

俺は、衝撃を受けたままの頭で考え始めた。

 

 

このチャンスは俺が望んでいたことだ。

 

だが、この世界には家族や友人もいる。

 

しかし、向こうには華琳たちがいる。

 

 

そこまで考えて、黒ずくめが言葉を発した。

 

??「迷うな。自分の信じる道を行けばいい。」

 

それを聞いた時、俺には迷いがなくなった。

 

俺は皆に・・・華琳たちに会いたい!

 

一刀「・・・戻りたい。『あの世界』に戻りたい!」

 

俺がそう叫ぶと、黒ずくめはゆっくりとこちらに向けて手のひらをかざした。

 

その刹那、何も無い空間に巨大な穴が出来た。

 

??「そいつに飛び込んで、『あの世界』を思い描け。そうすれば、戻れるはずだ。・・・お前の想いがあればな。」

 

一刀「わかった。」

 

そう言って俺は、空間に空いた穴の前に立った。

 

 

~一夜side~

 

兄さんが穴の前に立つ。

 

一夜(・・・嫌。)

 

私は震えていた。

 

兄さんとあの黒ずくめが、何の事を話していたかは解らない。

 

ただ解ったのは、あの穴に飛び込んだら兄さんは二度と戻ってこない。

 

一夜(・・・そんなの嫌!)

 

そして、兄さんはその穴に飛び込もうとしている事。

 

一夜(・・・絶対に嫌!)

 

兄さんと一緒に過ごせなくなるのは嫌だ!

兄さんのあの笑顔が見られなくなるのは嫌だ!

兄さんの無防備な寝顔を見れなくなるのは嫌だ!

兄さんの入浴シーンを覗き見する事が出来なくなるのは嫌だ!

 

気付けば私は、走り出していた。

 

兄さんを止めるために。

 

一夜「ダメェェェェェェェ!」

 

一刀「一夜!?」

 

??「!?」

 

その声に二人がこちらに気づく。

 

だが、あと少しと言うところで・・・

 

私は地面から出ている石につまずいた。

 

一夜「・・・え?」

 

傾く重心。転ぶねこれは。

 

私は受け身を取ろうと、両腕を前に伸ばし・・・。

 

ドンッ!

 

一刀「・・・は?」

 

目の前にいた兄さんを、穴に押し込んでしまった。

 

一夜「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

私は瞬時に体勢を立て直すと、

 

一夜「兄さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

兄さんの入っていった穴へ飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

穴が閉じ、残されるは黒ずくめが一人。

 

??「・・・え~っと・・・、どうしよ?」

 

予想外だった。あんな展開は、だれも予想もつかないだろう。

 

??「放っておくって言うのは・・・、ダメだよな。」

 

黒ずくめは肩をすくめると、音も無くその場から姿を消した・・・。

 

 

あとがき

 

 

セインです。

 

 

 

前回の序章に引き続き見てくださった方々、ありがとうございます。

 

序章を見てない人は、序章もヨロシク。

 

 

 

と言うことで『愛した世界』第一話です。

サブタイを付けるとしたら『不本意な出発』とか『望まなかった旅立ち』、そんな感じですね。

 

 

・・・え?『序章とどう関係があるの?』って?

・・・やってみたかったんですよ、『初めにクライマックスをやって、そこから物語を逆行させる』って奴。

 

 

と言う訳で、次回は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・やっぱ言うのやめた。

 

 

あ、痛いっ!石を投げないで!

 

 

次ページから、キャラの解説しますから!

 

 

北郷 一夜(ほんごう かずよ)

 

使用武器:短刀(2本)

 

一刀の従妹で一刀を敬愛している。

(しかし、それがたまに変な方向へ暴走する。)

 

戦闘スタイルは、自身の素早さを生かした攻撃。

その素早さは、目にもとまらぬ速さ。

(しかし、攻撃する瞬間は少し速度が落ちる。冒頭で一刀が一夜の攻撃を防いでいたのは、この弱点を知っていたため。)

 

三国志の知識はちょっとかじった程度。

 

 

 

 

北郷 一江(ほんごう かずえ)

 

使用武器:鉤爪(本編未使用)

 

一夜の母親で、一刀の母親の姉。

 

九州にある、北郷の宗家で暮らしている。

 

外見は20代前半、しかし中身は40代後は・・・『ズシュアァァァ!!』

 

 

 

 

北郷 源一郎(ほんごう げんいちろう)

 

使用武器:斬馬刀(本編未使用)

 

一刀と一夜の祖父で一江の父。

 

豪快な爺さんで、いつも笑っている。

 

今の日本で、この人物に勝てるものは無いと言われるほど強い。

 

九州にある、北郷の宗家で暮らしている。

 

 

 

 

北郷 一葉(ほんごう かずは)

(本編未登場)

 

使用武器:仕込み刀

 

一刀の母親。

 

今はただそれだけ。

 

いつか日の目を見る事を願って・・・。

 

何気に北郷家で一番最初に考案した人物だが、今回は出番なし。

 

 

 

 

・・・こんなもんで・・・。


 
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