No.741072

リリカル東方恋姫外伝 ネギま編 第三話 『似たもの同士はなにかと、不幸なことが共通する』


今回はようやくのメインヒロインが登場するぞ。

あと、ちょい役であるキャラを基にしたオリキャラも出てきます。
お楽しみに。

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2014-12-02 03:12:26 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1740   閲覧ユーザー数:1573

紅い翼が北郷一刀――もとい、ブレイド・H・フェイクドールと対面し、戦ってから早一週間が過ぎた。

現在、紅い翼は連合軍の領地にある、基地の近くのホテルに滞在していた。

基地には多くの軍人や傭兵が滞在しており、この人の多さを狙って、基地の外では多くの露店が並んでおり、まるで祭りの出店の歩道であった。

 

「まったく、ナギたちはどこにいったのですかね?」

「一緒に飯を食うっていってくせに、どこにいきやがったアイツら」

「ワシ、腹が減ったのぉ」

「ナギやラカンやキョウスケならともかく、いつもまじめなお嬢ちゃんと弟子のタカミチまでいねーし。なにかあったのか?」

 

露店が両側に立ち並ぶ歩道で、永春と紗那、ゼクト、ガトウがナギたちを探していた。

昼飯を食べようとしたのに、30分たっても一向に来ないので、探していたらしい。なんとも集団行動に律儀なことか。

 

「ん?なんじゃあの店は?」

 

ゼクトが見つけたのは、木の板で立てられた掘っ立て小屋の店で、屋根には『レベリング食堂』という看板があった。

 

「レベリング食堂?露店かこれ?」

「いったい、なんの店なんだのぉ?」

「文字通り、レベルアップさせる店じゃないのか?」

「なにをレベルアップさせるんですか!?食堂って書いていますし、ただの食べ物屋でしょう」

 

 そういう永春。すると、なにやら店内のほうで聞き覚えの声が聞こえた。

 

「この、ハジケてリアクションしたりする声はまさか…」

 

永春が店の引きのドアを開けると、そこには・・・・、

 

「よっ!はっ!」

 

ナギに向かって飛んで攻撃してくる、サバ定食やハンバーグ定食、さらにカツ丼などの料理を、ナギは徒手空拳と魔法で打ち落として撃退していた。

さらに、

 

 

 

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

【ナギはめちゃくちゃレベルアップした】

 

 

 

 

「定食のメニューの品と戦ってレべルをあげていたぁぁああああああ!?!?しかも、めちゃくちゃパワーアップしているぅぅうううううううううう!?!?」

 

驚愕的な光景に永春は驚いてツッコむ。うしろの仲間もこれには唖然になる。

 

「食物繊維ごとしが、俺に勝てるかってーの!」

『あまいわー!昇竜拳!』

 

飛び上がった天丼がナギの顎にアッパーで殴り飛ばし、ナギはそのまま永春のとなりの扉の窓へとぶち当たり、外に飛ばされた。

 

「ぶっほ!?」

「天丼に負けたぁーーっ!?!?」

 

 永春はまた驚いてツッコム。

 

『勝利のときこそ、最大の敗因じゃ。日々、鍛錬しとけよ、こあっぱ』

 

天丼はそう言うと、勝手に店の扉を閉まった。

 

「くっそー!やっぱりエビが入ってるやつはつえーなー!!」

 

外に放り飛ばされたナギが起き上がり、唖然としたまま立ち尽くす仲間たちに気づく。

 

「おっ、おまえらいったんか?なにしてんだこんな場所で?」

「いたんかじゃないだろうオメェー。昼飯食おうって言った本人がこねーか探してたんだよ」

「そしたら、この店でレべリングしている貴方を見つけたんですよ!_」

「おーすますまん。ちょうど手軽な修行場所をみつけたから腹ごなしにレべリングをしてたんだ」

「腹ごなし以前に、料理と格闘しておったがなぁ」

「粉モンは粘りがあって、結構経験がけっこう稼げたし。これで、あいつと勝負がつくことができるぜ…!」

「あー、それはよかったなー」

「お好み焼きはメタルス○イムなんですね…」

 

 燃え上がるナギに紗那は、無気力に返事をして、永春はメタ発言をする。

どうやら、一刀との戦いのための修行のようだ。ナギの中ではあの勝負にまだ納得していないらしい。

 

「さてっ、馬鹿鳥は見つけたから、あとは筋肉達磨とホモとオタクとチビとデカ乳だな」

「だれが馬鹿鳥だって!あぁ?」

「無視無視」

「おい待ってよ、紗那!」

 

ナギのアホらしさについていけず、先に進む紗那。

その頃、アルとキョウスケはというと・・・・、

 

「お兄さんたちって紅い翼のメンバーなんだよね!」

「すごいーよ。そんな有名人がウチの店にくるなんて夢みたーい♪」

 

少女の格好をした美少年たちに囲まれながら、ウハウハ状態になっていた。

 

「私もあなたたちみたいなかわいいこと出会える店に来られ、夢見たいですよ」

「これほどのコスプレをしてくれう店はそうそうないからな。今日はいい気分だ」

 

二人がいる場所は『ボーイズ・マイ・カフェ』という男の娘専門の喫茶店で、ソファーに座り、男の娘にジュースなどを飲ませてもらったり、オムレツをアーンと食べさせてたりと、ハーレム感覚の幸福な時間を過ごしていた。

従業員はそれぞれ、アルとキョウスケのオーダーで、セーラー服でメガネ、猫耳、スクール水着と古典的な萌え装備に着替えてられていた。

 

「どう、今晩俺が泊まるホテルに来ないか?もちろんセーラー服でだが」

「えぇーでも夜の接待が…」

「いいじゃないですか。どうせ、相手は変色親父ですし、私たちとあそんだほうがたのしいですよ」

「でもでも、いいの?僕たち皆、男の子なんだよ」

「かまわないさ。こんなかわいい子なら、楽しい夜をすごすのもわるくわない」

 

二人は接待している少年たちの頬に手を添えて、さわやかに微笑む。

顔だけはイケメンな、アルとキョウスケのスマイルに、男の娘は顔を赤くして、モジモジする。

二人は追撃に、さらにとどめをさそうとする。

 

「今日は君たちと出会えたことに乾杯しましょう」

「フィーバータイムだ。マイ・リトルバーイ…」

 

そう言って、キョウスケは男の娘の顔を近づかせ、震えている男の娘の唇に・・・・・・・

 

「フィーバぁぁぁああああああああっ!!」

 

と、触れる前に、壁をぶち破った詠春が、二人の頭目がかけて、ドロップキックした。

 

「「アレーーーーっ!?ぶっへ!?」」

 

蹴られたアルとキョウスケは吹き飛び、床下にキスをする。

二人に接待していた従業員は退避し、その場には青すぎを浮かべた詠春が仁王立ちつくしていた。

 

「痛たたたた、なにするんですかいきなり。暴力は反対ですよ」

「やかましい!昼飯を食いにいくっていってたのに、昼から破廉恥な店で楽しんでいるんですかあなた方は!」

「いや~、いろいろな露店に目移りしていたら、俺の好物がある店があったからついな」

「ついじゃないでしょう!この、色欲魔ども!!」

 

と、遊んでいた二人に怒鳴る詠春。

隣には、あほらしいと呆ける仲間たちもいるのだが・・・・・・、

 

「うわーお肌すべすべだねー♪」

「髪も黒くてツヤツヤだー♪」

「ねぇ、あなた、もしかして男の子?」

「だったら、僕たちと一緒に働かない?君ならナンバーワンになれるよ♪」

「うふふふ、かわいいい~♪」

「だぁー俺に近寄よんなー!?俺は女装の趣味もオカマに興味がねー!つーか、ベタベタ肌に触れるなって!髪の毛もいじるなー!」

 

紗那だけが、従業員の男の娘に絡まられていた。むしろ、おもちゃにされている。

紗那は相手が子供だったので手も足が出せなかった。

 

「おー、あの紗那が追い詰められてる」

「さすがの鬼も、小さい子には勝てねーらしいな」

 

その様子をナギとガトウが傍観、ゼクトは被害に遭いそうなので店の外に非難していた。

 

「かわいい男の娘とたわむられてうらやましいですよ遮那!…しかし、こうしてみると、少女のお化粧ごっことしてほほえましいですねー」

「くっ、もう我慢できん!オーイ!」

 

立ち上がったキョウスケは、男の娘たちにもみくちゃにされている紗那へと走っていく。

 

「俺もまぜてくれー!俺も紗那にお化粧させたいーー!おにいちゃんとよばれたーい!」

 

 煩悩丸出しにエロい顔になりながら両腕を広げていた。

 その両手には、右にはメイクキット、左にはセーラー服やメイド服やスク水があった。

 危険を感じた紗那は、群がる男の娘をどかし、無言無表情で天狼を鞘に収めたまま、棍棒のように縦に振り、キョウスケの頭を地面へと叩き落した。

 

「あっべし!?」

「はぁはぁ、気分がわりー、さっさと退場するぞ」

「もうすこしあそんでいきたかったのですが、しかたありませんね」

 

そう言って、アルは退避していた男の娘たちに「お勘定をおねがいします」と言い、詠春は煙りあがったタンコブを作って床下に横たわるキョウスケの足を掴んで引きずる。

 

「お帰りですか?では、お代とお店の修理代を含めて日本円で、六十八万六千円になりますね♪」

「「「「「高級クラブ並に高いっ!」」」」」

 

アルとキョウスケ以外はその値段に驚く。

結局、店の修理代は詠春が、せービスと料理の代金をアルとキョウスケが払うことになった。

これにより、アルとキョウスケの財布が軽くなった。

ちなみに、店に立ち去る際、

 

 

またのおかえりをおまちしてま~す!

今度はおねいさまってよばせてー!

紗那ちゃ~ん♪

 

 

と、なぜか紗那が人気者になり、紗那は顔を青くして身震いをした。

 

 

 

 

 

「あとはラカンとリーファとタカミチだけだな」

「リーファとタカミチは一緒にいることが多いから、今回も一緒にいるかも知れんな」

 

紗那を先頭に紅い翼は残りの三人を探す。

ガトウの言うとおり、リーファに時折、ガトウの弟子であるタカミチ・T・高畑に武術の手ほどきを教えているところを仲間たちは知っていた。

もともと、リーファは転生する前までは、武術家の一人娘であり、努力家のタカミチをほっとけないらしく、時間のあるときには、タカミチに武術を教えたり、甘やかさず厳しく鍛えさせた。タカミチも、剣術使いであるが多くの武術を学んでいるリーファが自分のために訓練のレシピを考えてくれることに感謝して、彼女にご期待できるように、リーファの訓練レシピを耐えてるようになった。そのためか二人は師弟の関係であるのだ。タカミチの師匠であるガトウを除け者に。

もっとも、そのせいで、ナギたちがリーファをショコタント、タカミチをむっちりスケベとからかうようになった。もちろん本人たちは否定する。タカミチのばあいは少し顔を赤くしていたが。

 

「時間のあるときに武術の修行をつけたりしてるしなアイツ」

「その内、リーファに鞍替えするんじゃねーのあのガキ」

「たしかに、放任主義のタバコ臭い師匠より、かまってくれうやさしい女性のほうを選ぶのは当然でしょう」

「このままだと、師匠としての面目がねーぞガトウ」

「ほっとけ」

 

と、タバコを口に加えるが、それはボールペンで、顔から汗が流れていた。内心、焦りと不安があるらしい。

 

「うんではラカンは…ほっといていいよな?」

「「「「「「そうだな」」」」」」

 

溜め無しの全一致。

まぁ、巨漢に人権なんて無いから、こんなあつかいでいいか。

そんなとき、

 

『サアッー!マンガ肉の大食い大会もぞくとくぞと脱落者がでるなか、いよいよ終盤戦!このワイバーンの肉で調理された骨付き肉通称マンガ肉を誰が一番多く食べるのは誰かっ!そして優勝者はいったい誰だーっ!!なお、実況はこの私、流浪のアイドル、ナカちゃんがお送りしマース!』

 

マイク音で元気な声を聞こえてくる方には、バラエティーなどの巨大なセットと、多くの人だかりがあった。

大型テレビも設置され、巨大な肉の塊にかぶりつく、お腹を膨らます多くの大食いたちが映し出されていた。

そして、多くのものがギブアップ、または、倒れていき、タンカーに運ばれ続けていた。

 

「おやおや、どうやら大食い大会も開催してたみたいですね」

「にぎわっておるのぉ。まるで祭りだな」

「うまそうだな~。俺もマンガ肉食いて~!」

 

よだれを垂らすナギ。もしも、途中参加できるなら是非、参加するだろう。

 

「…おい。あそこにいるのってタカミチとラカンじゃねぇ?」

「「えっ?」」

 

紗那が大型テレビに指をさして、詠春とガトウが際したほうへ見ると、そこには・・・・

 

「もう…無理。限界…です」

「俺がこんなところでー終わるかよ!」

 

ギブアップするタカミチとお腹を膨らまして汚く食べ続けるラカンが映し出されていた。

 

『有名な集団、紅い翼の一員のタカミチ選手!最年少ながらがんばってここでリタイヤ!となりでは同じく所属するラカン選手はまだまだいけそうです!このまま、一位になりそうなほど食べまくります!しかし…!』

 

司会が注目している選手がいた。その者はなんと・・・・・、

 

「うまいうまい♪」

 

リーファであった。

自身の顔以上あるマンガ肉を両手で二本ずつ、むしゃむしゃとおいしく食べている。

彼女のうしろには食べ終えた皿と骨が、家一軒がたつほどに積まれていた。ラカンでさえ、食べ終えた皿と骨は巨漢くらいの多さしかなかった。

 

『常にダントツトップのリーファには追いつけない!リーファ選手、ものすごい生きよいでおいしくたべてます!?すごい!すごい!あのスタイルのどんどん巨大なお肉が入っていくー!!開始時、優勝はラカン選手と思いきや、まさかの大穴がいましたーーっ!おっと!?ここでリーファ選手、なにやら何かをしています。これは…?』

 

リーファは両刀使いだったのに、こんどは片方づつ、三本のマンガ肉を持ち・・・・、

 

「うふふふ、夢の六本食い!あーん、もぐもぐもぐ。うん!うまい!」

 

『六爪流ぅぅううだぁぁあああ!三刀流で有名なリーファ選手が、骨の部分をうまく使い指の隙間に挟んでの六爪流を披露したぁああああ!この人は伊達政宗なのか!いや、伊達正胸かぁーっ!つううか、そんだけ食べて体型が変わらない貴女がうらやましいーぞ、こんちくしょうめーっ!」

 

リーファのたべっぷりに観客たちも驚き、応援する。実況者も同様だが、後半は本音が出ていた。

 

 

 

 

「…リーファさん。あなただけはまともだと思っていたのに・・・・」

「すげー量…どんだけ食ってんだあのアマー」

「さきほど、大会の関係者に聞いたところ、軽く、巨大種のワイバーンをまるまる二頭をたべてるらいいですよ」

「いったい、あの細い体にどこに入るんじゃ?」

「たぶん、胸だな。むしろ胸。脂肪のほとんどが胸にいくから腰はいつも細いんだろう」

「世界中の女が恨まれる体質だな…、ってか、なんで弟子のタカミチまで出てんだ?」

「大方、リーファにつれらて参加したんじゃねーの?…あっ、ラカンが倒れた」

 

リーファの質量の保存の法則を無視した大食いにアルとゼクトを疑問に思い、キョウスケが説明しガトウは感想を述べ、ナギは食いすぎで気絶したラカンを傍観していた。

とくに、詠春にいたっては裏切られたような感じで涙目になり、胃がいたくなった。

とそのき、

 

「紅い翼ってやつは、うわさ道理お祭り騒ぎの集団なんだな」

 

どこからか男の声が聞こえると同時に、タバコの煙がまわりに充満してきた。

 

「げほげほ、煙い!」

「煙で前がみえねー」

「たばこくさいぞぉ」

「そうか?」

「どうやら、あの店かららしいです」

 

喫煙者による、タバコ喫煙所っという喫煙するためのハウスから、中が見えないほど煙があふれ出していた。

 

「ここの露店にはまとものはないんですか…っ!?」

「隣に迷のぉ」

 

そして、周りから数十人の軍人が集まりナギたちを囲むと、煙が充満しているハウスで、煙の中から一人の男が出てきた。

その男をガトウは知っていた。

 

「貴様はスモーキー!?」

「フン、ひさしぶりだなガトウ」

 

その男はワンピースに登場するスモーカー大佐と容姿が瓜二つの、極悪顔の巨漢であった。

これには、キョウスケも内心驚いた。

 

(オイオイ、なんでスモーカーがいるんだ?いや、艦娘のオリキャラがいたからな。艦隊つがなりで登場したのか?)

 

前回で一刀とであったとき、艦これのキャラに似た者たちがいたので、この男もオリキャラなのだと考える。

ナギはガトウにスモーキーと呼ばれる男が誰か聞いた。

 

「知り合いか、ガトウ?」

「やつはメガロメセンブリア国軍に所属するスモーキー准将。おまえらと会う前、メガロメセンブリア軍の訓練所でバディーだった男だ。同じヘビースモッカー同士で仲良くなれてな。一緒に軍の訓練をし、任務を乗り越えた戦友だ。いやむしろ親友だ」

「なるほど、ヤクザとマフィアみたいな関係なんだな」

「どういう風に結論したのかわかりませんが、その表現はマジ冗談にきこえませんね~」

 

ナギの言うとおり、二人が共通するところは中年で、顔が堅気の人にみえないこと。アルもそれには納得する。

 

「懐かしいもんだ…。あのころは一緒に訓練を励み、悪人どもをぶっころして、仕事のおわりに一服していたあのころがァ・・・」

「部隊が解散した後、おまえとの最後の勝負が一昨日のように思えるよ」

 

二人の世界に入ったガトウとスモーキーは回想を振り返る・タバコをどんだけ吸えて、どれほど華麗に吸えるかなどあほらしい勝負が繰り広げた記憶。その足元には億を超えるほどのタバコから葉巻のはいがらなどが大量に落ちており、空気が灰色になっていた、あのころを二人は懐かしんだ。

 

「おまえ、ほんとにまじで病院行け。もしくは禁煙しろ」

「どんだけ、ニコチン吸ってるんだこいつらは」

「アホらし。もう帰っていいか?」

「もうすこし待ちましょう紗那」

 

この回想シーンに紅い翼と紅い翼を包囲していたスモーキーの部下たちも呆れ果て、紗那は帰りそうになったが、アルが止めた。

 

「軍医にドクターストップで止められなけらば、勝負が引き分けにならなかったがな」

「よかったな。まわりがマトモで」

「おしい勝負だったなあれは…」

「ガトウ!あなたまでボケにまわらないでください!」

 

過去に慕っている二人に、ナギが気軽に、詠春は真剣にツッコミをいれた。

 

「そんなオメーが、連合のタンコブの集団とつるんでいたのはお笑いだぜ」

「…恨んでいるのか?俺が弟子と一緒にメガロメセンブリアをぬけて、こちら側についたことに?」

「たしか、ガトウとタカミチはもともと、連合のエージェントでありましたね」

「薄い設定でしたが、彼はメガロメセンブリア捜査官でしたよ」

「そんな設定ってあったけ?」

「リーダーのお前も忘れてのかよ…」

「詳しくはウキベディアでっ調べてくれ」

「どこを見ておるのだ、キョウスケ?」

 

ナギたちを無視して、スモーキーとガトウの会話が続く。

 

「フン。別にぃ恨んでもなければ興味はねー。おまえはおまえの道を進んだだけだ。それを口答えする権利ははなっからない…。ただ、元気でなによりだ」

「それは言うために、俺たちに会いに来たのか?」

「いいや、俺はただ連合のおえらいさんたちから、テメェーらに通告しにきただけだ」

 

スモーキーは部下から二枚の紙を受け取とると、紅い翼に見せるように腕を突き出して文章が書かれた二枚の紙を見せた。

 

「紅い翼はこれより、連合の指揮下に入りヘラス軍大将『ブレイド・H・フェイクドール』の討伐に同行せよ。なお、連合はこれより、ブレイド・H・フェイクドールを反人道主義の実験と殺戮兵器の発明をした罪、ならびに、核兵器の使用によって悪の魔法使いと認定し、500万ドルの賞金首とする。討伐に成功すればその賞金に二倍を払う。だとよ」

 

一枚は連合の上層部からの令状で、もう一枚は賞金首の手配書であった。

手配書には一刀こと、シルバースキンで顔を隠したブレイドの写真と、賞金の額があった。

 

「討伐!?それに、賞金首だと!?」

「ばかな!?あの仲間想いそうな彼が悪の魔法使い!?しかもあの闇の福音の額と近い賞金に!?」

 

と、ガトウと詠春は驚く。

 

「…どうやら連合は本格的にブレイド大将を殺る気のようですね…。しかし、戦争中に兵器開発や実験などがあたりまえなのに、それを反道徳として、連合に正義があるように思わせるために、彼を悪にしたてるとは、なんとも都合のいいことで」

「はっ、汚ねーことするじゃねーか。連合ってやつは」

 

アルは連合がなにを考えているか理解し、紗那は鼻で笑った。

 

「テメェーらが連合がどうだの、ソイツを弁権したって、組織の決定事項だ。ただ、連合に従えばそれでいいんだよ」

「スモーキー。おまえは相手がどんなやつなのか知らないまま、上の命令に従うのか?」

「そんなもん俺には関係ねー。軍人はただ、命令に従い、目の前の悪を捕まえる。それだけだ」

 

スモーキーが背を向けると、部下たちは列を作り、道を作る。

 

「とにかく、通告がしといたぞ。参加するなら返事は早めにしてくれ。さもねーと、オメェーらが気に入ってるソイツの首、俺がいただくことになるからな」

 

そう言って、立ち去ろうとする。その際、彼の目が狩人の眼になっていた。どうやら彼は絶対にブレイドを狩る気らしい。

紅い翼はそう確信する。

スモーキーと紅い翼との間に緊張がはしるも、そのとき、

 

「別にいいぞ」

 

ナギの軽い返事、緊張の糸が切れて、ナギと紗那とアル以外は全員ずっこけた。

この場合は、スモーキーが威圧をだしながら立ち去る空気だったのに、KY(空気読まない)ナギによってシリアスが崩れてしまった。

 

「なにいってんですかナギ!空気を呼んでください!」

「だって、たかが三下があいつの首が取れるわけねーし。心配するだけ無駄じゃん」

「クククっ、たしかにな…。こんな悪顔の軍隊にあいつが殺されるイメージがつかねーよな」

 

ツッコミを入れえる詠春だが、ナギはふてぶてしく、断言する。紗那も同感だとスモーキーの部下たちのまえで笑いをこぼした。

 

「なんとこのガキ!」

「紅い翼でも、しばくぞコラー!」

「メガロメセンブリア軍を舐めるなよ!」

 

部下たちは怒り出し一発即発の勢いであったが、スモーキーが「やめとけ」とドスの効いた声で止めた。

 

「フン。どうやら相当信用してるようだな、おまえの獲物は…。だがな、俺が手に入れた力の前では無力だ」

「スモーキー!?おまえ、まさか、あの実験に参加をしたのか!?」

 

力という単語にガトウが驚いた声をあげた。どうやら、なにか知っていらしい。

 

「ただ、正義のため。それが俺たち軍の信念。この背中の正義の二文字が背負っている限り、俺たちはつえーんだよ。おまえら愚連隊の輩と違ってな」

 

スモーキーは白いジャケットの背中に大きく書かれた『正義』の文字を見せた。

 

「奴の玉(命)は俺がいただく」

 

と、葉巻を咥えながら威圧感をだしていた。

・・・・・・もっとも、紅い翼は聞いてはいなかったが。

 

「よろしいんですかナギ。彼らをほっといて」

「そうですよっ。このままではー、ブレイドとの再戦ができなくなっちゃんですよ」

「あんな極道見たいなやくざ大佐が、あの大将に勝てると思うか?」

「伊達に、俺たちを一人で相手したんだ。そう簡単にやられる玉じゃねーよ。…ただ、簡単に倒せる相手じゃねーぞ。あのヤクザ。マフィアと修羅場をくぐっただけはあるな」

「おい、マフィアって俺のことか!」

「おまえのほかに誰がいる?」

「極道顔はあなたしかいませんよ」

「よーし。おまえら一列に並べ。腹一発ずつ、無音拳をいれてやる」

 

アルたちのおふざけに、コブシを鳴らすガトウ。

頭を抱えてハァー息を吐く。

 

「おまえらといると調子が狂っちまう…。帰るぞおまえら…」

『ハイ!』

 

部下たちは返事をしてスモーキーたちが立ち去ろうとしたとき、スモーキーは思い出しことに気づき、足を止めてまだコントしていた紅い翼に振り返る。

 

「あっ、そういえばおまえら一度だけ戦場で黄昏の姫御子と一度会ったことあるよな?」

「ん、それって、アスナのことか…!」

「あの姫様がどうしたんだ?」

 

黄昏の姫御子の単語に反応したナギと紗那。紅い翼も、とくにキョウスケもスモーキーの言葉に耳を傾けた。

 

「久しぶりに友人とあった縁だ。良いことを教えてやるよ。黄昏の姫御子はブレイド大将の討伐対策のためにこの基地にいるらしいぞ」

「なっ!それはほんとうか!?」

「准将!?それは秘密事項ですよ!」

 

ナギは乗り出すと、部下の一人がスモーキーにその事にいつて止めようとする。どうやら、軍部では相当な秘密だったようだ。

 

「別にかまわねーだろう。たかが、愚連隊に話しても問題ねーよ」

「なぁ!アスナはここにいるんだっ!!」

 

 ナギが強く聞くと、スモーキーは答える。

 

「この基地のどこかで厳重に監視されている。どこかはいえねーが、会いたかったら、自分たちで探すんだな」

「…なぜ、俺たちにそのことを…?」

 

ガトウがスモーキーに聞く。キョウスケもまた、そんな大事なことを連合のタンコブとまで見くびられた連合の手先である彼の言葉を疑っていた。

スモーキーは、目を閉じて、葉巻の煙を空へと吹いた。

 

「さぁーな。ただ、馬鹿な知り合いと再会すれば、あのガキもすこしは――…いや、ただの気まぐれだ。忘れてろぉ」

 

バツが悪そうな顔だが、その顔には嘘をつく顔ではなかった。

 

「良い情報をありがとうな。相撲取り」

「相撲取りじゃない。スモーキーだ。今度こそ、あばよ」

 

ナギはボケながらもお礼をいい、スモーキーは訂正してツッコミをいれ、今度こそ、立ち去る。

彼の背中をキョウスケはただ、見つめていた

 

(あいつはいったいなにを考えているんだ…?)

 

いつもの破天荒なテンションではなく、シリアスの顔で思いつめるキョウスケ。もっとも背後で優勝カップとマンガ肉を掲げて観客に祝いされている金髪巨乳少女がいなければ、シリアス空間になっていただろうけど。

 

 

 

 

 

キョウスケたちがいる地上から下には、基地の地下空間施設があった。

その施設の廊下にはなぜか・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・迷った」

 

シルバースキンを着た一刀がいた。

 

「連合が俺を殺すための兵器をここの地下に隠している情報をつかんだのに、肝心の兵器が見つからない…。変わりに質量兵器が大量にあったけど…戦争でもするのか?戦争中だったけど…」

 

部屋や倉庫を調べている目的の兵器を探索しているうちにに迷子になっていた。

変わりに、重火器や戦車、ミサイルなど、魔法の国とは思えないほど、科学兵器が大量に見つかった。

もちっろん、使えないように小細工を設置している。

しかし、なぜ、敵に基地に潜入して、自分用の兵器を探しているというと・・・・・。

 

「くっそーいったいどこにあるんだよ。俺を討伐するために作り上げた巨大人型兵器は!つーかロボっわ!!」

 

北郷一刀。推定年齢19歳?まだまだ、ロマンを捨てられない大人であった。

 

「ん?この廊下だけ、やけに厳重だなぁ。なにか大切なものでもあるのか?」

 

一刀が見つけたのは暗くて幅が広い一本道の廊下。それは厳重という言葉にふさわしく、魔法式の地雷や赤外線の警報レーザー、タライ、火炎放射器、酸のプール、タライ、トゲトゲの針の床、熱湯風呂、タライ、風船、タライなどわなのパレードリーが向こう側のドアまで続いていた。

 

「行ってみるか」

 

 一刀は一歩ずつ、罠としてバレバレのトラップの廊下を歩く。

 よって罠が作動する、はずなのが、なぜか作動せず、赤外線のセンサーやレーザーが一刀の周りで湾曲し、トラップ作動の魔方陣や地雷などが起動せず、熱湯風呂は水面を歩き、針の床は針先から針先へ渡り歩いた。

 

「やっぱり一方通行のベクトルは便利だなー。その分、脳の演算で頭が痛いけど…」

 

 ベクトル操作で、センサーやレーザーの方向を曲げ、床や針の先端を踏むときに乗せる重さと重心をゼロにし、熱湯を反射してアメンボ状態で、トラップを作動させないようにしていた。

 ここで、説明しておくが、一刀が使う能力はほとんど錬金術による技術と知識によって現象を再現・発現しており、超能力類は錬金術の演算と理の法則操作で発現させてる。簡単に言えば、学園都市により脳の開発とニードレスのフラグメントのゼロ『覚える』の中間のようなものであり、一時的に能力者になっているのだ。ただし、念動力系や移転魔法などは、操作が難しいものはそれなにり、演算処理や脳の負担がかかるため、能力の使用中または使用後は頭痛がするので、戦闘中では一瞬の隙が死につながる可能性があり、あまり使わないのだ。

 一刀は少し痛む頭を耐えながら、廊下を歩き終えて、扉の前に立つ。

 

「鉄じゃないな。鉛もまじってる。対魔法用に無理やり開けられないように設計されてるなコレ」

 

 コンコンと扉を叩き材質を確認する。鉛は魔力を吸い取る性質をもっており、扉は金庫並みに複雑で分厚く、外から専用の鍵と魔法ではあけられないようになっていた。

 

「…この場合はRPGに適合するので、他人の自宅に侵入してアイテムやお金を取ったりしても、主人公特権が適用されるため人道的に許されるよな。俺、一様主人公なのでドロボーじゃないしさぁ。なので、お宝をもらっていってもOK♪ってことで」

 

 そう、自分に言い聞かせて、確信犯の一刀はパンっと両手を合わせて、その両手で扉を触れた途端、扉に施された術式が解除され、内側の鍵がガッシャンと音を立てて開いた。

 

「対魔法用の扉でも、俺の錬金術は関係ないな。さてっと、お宝御開帳~!」

 

 金銀財宝や秘密兵器のロボなどを重たい扉を外側に開くと、そこには・・・・・・・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっ?幼女??」

「・・・・あなた・・・・誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両腕に鎖がついた枷がかけられた、オレンジ色のツインテェールの幼女が立っていた。

 幼女に聞かれ一刀はとりあえず、名乗った。

 

「俺は北郷一刀。今はブレイド・H・フェイクドールって名で通っているんだ。君は?」

「…アスナ。アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア・・・・・。長いからナギにアスナって呼ばれた」

「ナギ?君、ナギと会った事あるの?」

「ウン。…戦場いたとき…助けてもらった」

 

 アスナはコクリと頷く。

 

「あなたはナギの何?」

「うーん、何っていうか…とある縁で、拳を交えた友かな?」

 

 一回しか会っていないが、とりあえず友と呼んだ。アスナは、首を横にこってんと傾ける。

 

「友…ってなに・・・・・?」

「友は友達のことだよ。わかるかな?」

「????」

 

 ?マークを大量に浮かべるアスナに、一刀はどう答えればいいか考える。

 

「簡単に言えば、えーと、仲良しっ!そう、一緒にいて、喧嘩して、笑ったり、励ましたり、離れても相手を想ったり、信じちゃう、そういう人たちを友達っていうんだよ」

「…ナギと遮那みたいなもの?」

「あーーまぁーそういうことかな?うん!」

 

 ナギと紗那のやりとりから、そう思って結論する一刀。もっとも、一刀からみれば、あの二人のやり取りは夫婦漫才しかみえなかったが。

 

(アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアっていえば、テオが言ってた、魔法を無効化する能力をもつ黄昏の姫御子とよばる子の名前だったよな。なんでここにいるんだ?)

 

 連合との戦争についてテオから教えられ、アスナのことも知っていたが実際をみるのははじめてであった。

 聞かされた当時は、テオ以上の幼女ババァとしか考えていなかったが、目の前にいる幼女は監禁された空っぽの無表情の少女でしかなかった。

 

(…目に光がない。それに、この細い腕と体は栄養失調だけじゃなく薬の副作用もあるな…。テオと変わらない子を戦場で利用されるなんて、どうかしてるよ連合は。いや、むしろこの戦争自体がどうかしている…)

 

 長年旅をしていた一刀は、さまざまな戦争にも参加しているため、今起きている戦争の違和感を抱いていた。情報を集めているが確証したモノはないが、この戦争に裏があると直感していた。そして、なぜかアスナと出会ったとき、この娘が重大な鍵であるという風に思えてしまう。むしろ、それ以上に一刀はアスナを他人とは思えなかった…

 そんな、アスナはジッーと自分をを見つめていた。

 

「なにかな?アスナちゃん?俺の顔を見つめて?」

「…あなた、まるで…空みたいだなーって・・・・・・」

「空?空ってあの上のソラのこと?俺が?」

「うん。…わたし・・・・いままで…なにも感じなかった。わたしに聞こえるモノは悲鳴と雄たけびとなにかが爆発する音・・・・。うつるモノは変わらない青と黄色と赤と黒に変化する景色…。そして、痛みで血を吐くわたし・・・。そんなのが永遠に続く日々に・・・・わたしがわたしをわすれて、いつしかわたしが人形になったの…いずれ壊れていく人形に。・・・・・けど、ナギたちと出会ってから、わたしの中でなにか変になった。いつも見てる空が、いつもよりきれいに感じたり…ナギたちとまた会えるかなぁって考えたり・・・・感じなくなった痛みをいつもより痛くなったり・・・・・。こんなのいつもの・・・・わたしじゃないように・・・・思えてくるの・・・・。それなのに、空だけはいつもみているの・・・・かわらない空を・・・・・・」

 

 アスナは左腕で胸倉をつかみ、苦しそうな表情で一刀を見つめる。その瞳は光がなく、暗い緑と青のオッドアイで、声は、おびえそうに震えていた。

 そして、両手で一刀のシルバーコートの服をつかみ、訴えるように問いかけた。

 

「ねぇ、教えて。…これはなんなの?わたしどうなったの?どうして、あのソラを求めているの?どうして、こんな気持ちになるの?壊れるだけの人形だったに?じぶんをわすれた、わたしなのに…どうして、わたしはここにいるの?ねぇ、どうして、わたしがこんなことを言うの?ねぇ、どうして…!」

 

 狂ったように叫ぶアスナに一刀は黙っている。答えない一刀に、アスナは一刀の胴体に顔を埋めて、心の底から這い上がる疑問を小さく呟いた。

 

「…いったい、わたしはなんなの?」

 

 震える声と小さい体。顔を埋めているがその眼には涙を溜めていた。

 一刀はアスナの背中に手を回して、やさしく抱きしめた。

 

「アスナ…君が知りたかった答えを教えてあげる。それはねぇ、欲求っていう心なんだよ」

「欲求…?」

「なにかを求める渇望。なにかに執着する意思さ。それは誰もがもっているものなんだ。俺も、君もね」

「わたし…にも…?」

「求める心は生きる力になるんだ。たとえ人でない者でも人形でもあるんだ。そして、君は己の疑問に気がつき、なにかを求めた。自分を知るために。己が欠けているもの気づきそれを埋めようと…。自分のために、世界に流されるだけ自分に抗おうとしているんだ」

 

 一刀はなぜ、アスナを気にしていたかわかった。彼女は自分と同じなのだ。自分が何者なのか、自分がなにをすべきなのか、自分と同じゼロであったからだ。

 顔を埋めていたアスナは上目遣いで一刀を見つめた。

 

「なら・・・・わたしはいったいなにをすればいいの・・・・・・?」

「それを知りたいなら、まずは求めろ。君にはその欲求と手足があるんだ。たとえ、ねだっておおごえをあげても、手を伸ばして求めろ。そして、前へと一歩、進めろ。いつか、求めるものが手に入るまで・・・・。たとえかなわないものであっても、求めるものがあるかぎり、俺たちは俺たちのままでいられるから」

 

 ゼロであったとしても、前には進める。かつて一刀はそうだった。どれほど険しい道でも、絶望的な現実が襲っても、悲しみを背負っても歩みを止めない。煩悩の相棒と魂の師の背中を見てきて、わかったことがあった。

 どれほど、業を背負っても、それを枷にしてはいけないということ。業で己を変わってはいけないこと。なぜなら、業は己の過去でしかないからだ。それゆえに、今の自分が変わらずに存在するのだ。

 過去を背負い、未知な未来へ進みながら、今の自分と自分の護りたいものを護るために。

 それが北郷一刀の変わらない現在だ。

 

「でも・・・わたしは、なにも知らない…わたしは…空っぽ・・・・わたしの中身がない箱・・・・一人で、どこにもいけない」

「大丈夫。かつては俺もそうだった。けど、友達がいたから、今の俺がいるんだ」

 

 アスナの両手についている枷を一刀は両手の握力で破壊し外した。

 

「一緒に来る?君の、なにも変わらない音を聞き飽きるほど聞いたその耳で、なにも変わらないモノを見て見飽きたその眼で、何度も同じにおいを嗅いだその鼻で、君が知らなかった新しい世界を知をしろう。なんだって、この世界は、おもしろいものがいっぱなんだから♪」

 

 一刀はアスナの目線まで腰を下ろして言う。その瞳はまるで子供のように純粋でやさしいかった。

 笑顔で微笑む一刀に、アスナは一刀の笑顔を見つめてあることに悟った。

 

 

 

――あーそうか・・・わたし…ナギがうらやましかったんだ…。

 

――ナギの自由に羽ばたける翼が・・・・隣に一緒にいてくれる友達が…ナギたちがいる広い空(世界)が・・・・

 

――だから求めたんだ。自由に羽ばたける翼を…一緒に入れくれる者を…わたしを受け入れる空(世界)を・・・・・

 

 

 無表情であったアスナは涙を流して、一刀の首に抱きついた。まるで、親から離れない子供のように。

 

「・・・・・・つれって行って…わたしを…カズトと一緒に…!」

「…あぁ。連れて行くとも。同じ、無知だった者同士、君のそばにいてあげる。アスナ…」

 

 一刀はそう言って、アスナの頭を何回も撫でる。滑らかできれいなオレンジのツインテェールが指にからめ通るたびアスナは一刀に強く抱きしめる。

 

 

――ようやく見つけた、わたしだけの翼・・・・わたしだけの友達・・・・わたしだけの空(世界)・・・・

 

 

 このとき、この瞬間、少女の未来は未知のモノへと確定した。

 

 

――わたしが求めていた・・・あなたを・・・・・わたしは・・・・・・まっていた・・・・

 

 

 

 それはまるで、物語の歯車が狂うかの如く、神さまのシナリをは大きくずれた。

 

 だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ずっと一緒にいよう・・・・・・・・・・・・・・カズト

 

 

 

 

 

 

 

 

 これこそが、世界が天に望んだ破壊である。

 

 

 

 

 

 

つづく


 
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