私は昨日文から聞かされた話をアイツにするために、いつも溜まるお店で、アイツが来るのを待っていた。
昨日、文から打ち明けられた話はかなり衝撃的だった。
「亜輝ちゃん、どうしたらいいかな。」
昨日そう言った、文の表情は迷っていた。自分なりに答えを出しつつも、その答えに不安をもっていて、誰かに後押ししてもらうのを期待しているそんな表情だった。その表情を見て、文らしいなって思った。でも感情的には迷うのは当然だけれども、現実を見れば答えは一つしかない。
「そうだね、選択肢は二つあるよ。でも、私たちが選択できるのは一つしかない。」
いつものように、淡々と答えた。私の言葉を聞いて、文の顔が泣きそうになっていた。付き合いの長さからか、私がどちらを選んだか、わかったみたいだった。やはり、文はもう一つの選択肢を選ぼうとしていたようだった。
「やっぱり、それしかないんだよね。」
もう一つの選択は、ダメなんだよね。文の瞳が、私に訴えてくる。少し胸が痛んだけど、文ともう一人のことを考えるとこの答え以外はありえなかった。
「そうだよ。残念だけど。」
文の迷いを断ち切るように、強く言った。
文はしばらく目をつむり、そして目を開いた。顔は泣きそうなままだったが、「そうだね。」と小さくでも強く返事をした。
「それなら、お金準備しなきゃ。とりあず、そうだな、良司にメールしてみるよ。」
そう言いながら、良司の携帯に「明日、二時にいつもの所」とだけメールした。
そう、この事を解決するには、まずお金が必要だった。でも、私と文の二人だけで用意するのは正直きつい。だから、他にも協力を頼む事にした。私は、その一人として良司にメールで連絡した。
アイツが一番、協力してくれるはずだ。でも、少し不安だった。文が心の奥にしまい込んだ思いを、引きずり出しそうだからだ。
ふっと時計に目をやると約束の時間まで、あと十分。私はカップに入ったコーヒーを一口飲み呼吸を整えた。
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どこかで起きていそうで、でも身近に遭遇する事のない出来事。限りなく現実味があり、どことなく非現実的な物語。そんな物語の中で様々な人々がおりなす人間模様ドラマ。