No.733115

命日和2

初音軍さん

一話完結その2 風邪回。瞳魅×命。ちゅーしたりするけど
う、浮気とかじゃないんだからね///

2014-10-28 00:08:52 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:484   閲覧ユーザー数:484

命日和2

 

 あれだけ自己管理のできる瞳魅さんが熱を出して寝込んでいた。

 

「大丈夫ですか、おかゆ食べれられます?」

「えぇ…手間かけさせて悪かったわ」

 

 部屋に入ると重い空気が漂って匂いもいつもと違っていた。

傍に寄って熱を計ると38度6分とやはり高い。

 

 体温計の数値をリセットさせていると瞳魅さんは私をジッとみていることに気づく。

 

「何かして欲しいことあります?」

「ええと…。計っておいて悪いけど…」

 

 少し甘えたそうに小さな声で呟く瞳魅さんが新鮮で少し可愛い印象があった。

苦しそうにして目が潤んでいて顔も赤み差していたからだろうか。

以前に萌黄に看病された時も風邪や熱を出してるときの子は可愛いだとか

言っていたけれど、あながち違うわけじゃないなと考えを改めた。

 

 ちょっと不謹慎かな…。

 

 瞳魅さんの頼みごとはおでこで熱を計ってほしいとのことだった。

触れることで安心できるかもって言ったときは私も何となくその気持ちがわかる

ようだった。

 

 本来近くに来ると移りそうだから遠慮しがちだけど、心細くなった時こういう

何気ない行動が気持ちを安らげさせることもある。

 

「いいですよ」

 

 私は微笑みながら瞳魅さんの額と私の額を合わせる。すごく近い、相手の吐息が

強く感じられるくらい傍にいてもう少し近づくと口がついてしまうくらい。

 

 この時の瞳魅さんの目の力は強くて普段何ともない私も引き込まれそうになる。

胸がドキドキしてうっとりしてしまいそうなくらい。

 私が額を当てながらボーっとしていると瞳魅さんの両手が伸びて私を引き寄せてくる。

その際に私はバランスを崩して瞳魅さんの上に倒れこむようになりその直後に気づく。

 

 瞳魅さんの唇と私の唇が重ね合い、熱を持ったしっとりとした唇が吸い付くように

して離れようとしても瞳魅さんの両腕ががっしりと私を捕らえて離してくれなかった。

 

「ごめん…甘えたくなっちゃって…。今日だけ…今日だけ許してくれないかな」

「…」

「だめ?」

 

 熱のせいとはいえ目を潤ませて捨てられそうになる子犬のような瞳で見られたら

嫌とは言えない。しかも本当に嫌という気持ちになれないのだから困る。

 

「わかりました…。今日は好きにしてもらっていいです」

「へへ、やった~…」

 

 子供が嬉しそうにしているような表情を浮かべるものだから見ていて悪い気は

しなかった。萌黄とは違った愛しい気持ちが湧いてくる。

 

「もっとキスさせて…」

「仕方がないですね…」

 

 移るのを心配していた人とは思えない強請り方ですけど、こんな姿は全く見なかった

ので新鮮だった。普段は私が断るとあっさりと引き下がってくれたから。

 

 でもこれまでずっと我慢していたのが溜まっていたのかと思うと少し心苦しい。

 

 チュッチュッ

 

 口の中がすごく熱い。最初に軽く触れ合うような口付けから、瞳魅さんから

舌を入れられる。具合が悪いのにこういう時は元気なんだなぁと呆れる一方で

少し安心した。

 

 キスをしているうちに瞳魅さんの額から汗が出てくる。

少しすると水分がけっこう出ていたのか口の中の粘り気が強くなってきた。

その時若干息が荒くなってきたので私は無理にでも口を離して口の中のものを

飲み込んで笑った。

 

「ほら、無理するからですよ。今おかゆとお薬持ってきますから」

「うん…ありがとう…」

 

 

***

 

 萌黄が帰ってきてから事情を話すと萌黄はマナカちゃんの相手になってくれて

私は瞳魅さんの看病に集中できてありがたかった。

 

 けど二人の間で何をしてるかはかなりぼやかして言ったことで

二人の秘密が少しできてしまったのが気がかりだった。

 

 二人はテレビを見るかゲームをして時間を潰しているのを見て私は必要なものを

用意して瞳魅さんの部屋に向かった。

 

 ガチャッ

 

 扉を開く音に少し反応をしてから私は声をかけた。

 

「おかゆ持ってきましたよ~」

「食べさせて」

 

「え?」

「ほら…なんていうの…? あーんってやつ」

 

 自分で言っておきながら少し照れくさそうに言うのがなんだか可愛らしかった。

 

「何だか今日はあまえんぼさんですね」

「別にいいでしょ~」

 

「ふふっ、むくれてる表情も見れるし。色んな顔が見られてちょっと嬉しいです」

「うくっ…」

 

「はい、あーんしてください」

「あーん」

 

 私はスプーンでおかゆを掬ってから息を吹いて冷まして、瞳魅さんの口の中に

入れる。ゆっくりとスプーンからおかゆを口の中に入れてしっかり租借して喉に流す。

 

「うん、美味しい」

「そうですか?」

 

「特に命の息で冷ました分がね」

「へ、変態的な感想ありがとうございます」

 

「言うねえ…」

 

 食べてから解熱剤を飲ませてから買い置きしておいた冷えピタを額や効果が出そうな

場所に貼り付けていく。

 

「ヒィン」

 

 軽く一瞬可愛らしい悲鳴が聞こえて思わず笑ってしまった。

冷たいものを当てると私もよくあげてしまいそうになる。でもこれがまた気持ちいいんだ。

貼った後、静かに寝るように言って横にならせた。

 

「寝るまで居てくれるかな…。さすがにそこまでは悪いか…」

 

 薬が効いてるのか熱が上がってきてるのか、ぼんやりした眼差しで私を見ながら

言うと私は瞳魅さんの手を取って頷いた。それで安心したのか瞳魅さんは私の握った手を

少しだけ強く握って目を閉じた。

 

 そういえばみゅーずちゃんから教わった歌があったことを思い出して私は囁くように

瞳魅さんの傍で歌った。早く治りますようにという気持ちを込めて。

 

 いつしか寝息を立てていた瞳魅さんの表情はとても安らかで幸せそうな笑みを

浮かべていた。

 

 

**

 

「おはよー」

 

 2日間しっかり休息を取った瞳魅さんは清々しい顔をして階段を降りてきた。

食欲も熱も全部元に戻ってみんなと一緒に朝食を取る。

やはりみんな揃っているほうが私も嬉しいし、みんなの会話も多くなるのがわかった。

 

 その後、萌黄と瞳魅さんが出社するとき。萌黄が家を先に出た後、

見送りに出た私とマナカちゃんを見た瞳魅さんが私の耳元で私にしか聞こえない声で

囁いてきた。

 

「また機会があったらこの間のような世話をお願いね」

「…!」

 

 その言葉で看病したことが全部鮮明に浮かんで思わず出かけた言葉を飲み込んで黙った。

そんな私を不思議そうに見上げるマナカちゃん。そして何事もなかったかのように家を

出る瞳魅さん。

 

 静かになった玄関にいる私たち。マナカちゃんは不思議そうな表情で私に尋ねてきた。

 

「ねぇ、命。思考が停止してるみたいだけどどうかしたの?」

「なんでもないです…」

 

 心が読めるマナカちゃんでも今の私の中は読めないようで首を傾げて聞いてきたが

私は恥ずかしくなってはぐらかした。

 

 顔は火照ってしまって何とも言えない甘酸っぱい思いで満たされてしまう。

だから何も考えず思わず、自然と呟くように瞳魅さんがいた場所を見ながら言ったのだ。

 

「バカ…」

 

 普段言わないことを呟いてから気づいた。体が熱くてぼんやりする。

あぁ、おそらく私も熱が出てしまったのだろうってそう思うことにした。

体温計には変化はなかったけれど、熱のせいにすることにした。

 

 マナカちゃんに告げた後、私もバイト先に向かって涼しい風に辺りながら歩いた。

少し冷たい風が今の私には心地良くてこのまま私の熱を全て奪っていってほしいと

青い空を見ながら願うのであった。

 

お終い

 


 
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