No.73125

とある母の日のとある思い出

華詩さん

皆様は母の日をどのように過ごされたのでしょうか。そんなわけで今回は彼女の母の日を覗いてみたいと思います。
彼女の母の日はどんな日だったのでしょうか。

2009-05-11 21:59:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:765   閲覧ユーザー数:676

 机の上に飾ってある二輪の花。これを渡された時、すごく嬉しかった。貰うまであの子達があんなにもおねだりした意味を知ることが出来なかった。私は咲いている花を指でさわりながら昨日の事を思い返していた。

 

 今日は母の日。弟妹を連れて近くの花屋でプレゼントする花を見にきた。今年は連休にあったある事への後押しへの感謝と日頃の感謝。両方の感謝の気持ちを込めてプレゼントする。

 

 なので少しだけ豪華な花をプレゼントすることにした。カーネーションとアジサイの組合せが今年の主流なのかな。どのセットにもアジサイが添えられている。アジサイは庭に植わっているから、カーネーションだけの物にしよう。

 

 私は定番の真っ赤なカーネーションとピンクの組合せを見つけ出し。お財布と相談して決めた。メッセージカードが付けれるようなのでラッピングをしてもらっている間に書く事にした。

 

「ほら、よう君。ここに書くんだよ。」

 

 私は弟にペンを持たせてカードに言葉を書かせる。

弟はカードいっぱいに「ありがとう」の文字を書いていた。一人一枚かな、カードを二枚貰う。

 さて、次は妹に書かせよう。まだ字は一人で書けない、一緒に書かないとな。そう思って当たりを見渡す。すぐ側のバケツの中に入っている花で遊んでいるみたいだ。

 

「りょうちゃん。こっちおいで」

「おねえちゃん。おはなきまったよ。」

 

 そういって妹が切り花を二つもって私の所までやってくる。真っ赤なカーネーションの切り花を嬉しそうに持っていた。遊んでいたのではなくどうやら選んでいたみたいだ。

 

「キレイだね。でもお花はあれにしたから。お祝いの言葉をここに書こう。」

 

私がそういってラッピング作業している方を指差し、ペンを渡そうとすると妹は拗ねた。

 

「いや、わたしもぷれぜんとするの。」

「一緒に渡すのじゃ、ダメなのかな。」

 

私はしゃがみ込んで妹と目線をあわせる。妹はすごい勢いで首を横にブンブンとふる。

 

「おねえちゃん。ぼくも」

 

 妹とそんなやりとりをしている間に、弟もいつのまにか同じように花を二本もってきていた。この子達の大切な想い。これは許していい我侭だよね。私は自分に言い聞かせる。

 

「わかった。でも一人一本だよ。いい。」

「だめ、ふたついるの。」

 

 妹は泣きそうな顔で私を見つめる。弟を見るとどうしようかと両手を見ている。そんな顔や仕草をされたら、ダメとはいえなくなってしまう。甘いのかもしれないけど、私は二人の頭を撫でる。

 

「いいよ、二本ずつ買おう。」

「やった。」

 

 お店の人に花を四本渡してそれもラッピングしてもらう。まとめますかと言われたので一応二人にどうするかきくと。両手で一本づつ持ちたいと言いだしたので一本づつラッピングしてもらった。

 

 そして、家につきお母さんが帰ってくるのを待つ。私はその間に、オムライスを作る。休みの日は仕事から帰ってきたお母さんが夕食を作ってくれる。だけど今日は私が作る事にした。夕食の準備を進めていると玄関のチャイムがなる

 

「あっ、おかあさんだ。」

 

 台所で私が作っている様子を眺めていた、二人が走って玄関に向かう。しばらくするとお母さんが二人に連れられて台所に入ってきた。

 

「おかえり。もうすぐで、ご飯できるから。」

「ただいま。良い匂いね。着替えてくるね。」

 

 お母さんが着替えに部屋に戻る。私は二人においでおいでをして、そばに寄らせる。

 

「ほら、よう君。りょうちゃん。さっきのお花を持ってこないと。」

 

 二人はニコニコしながら花を取りにいった。そして同じようにニコニコしながら花を手に持って台所に戻ってきた。私も買ってきた花をテーブルの下に置く。

 

「おまたせ。ご飯にしようか。」

「お母さん。いつもありがとう。それとこの間はありがとう。」

 

 私はそういってテーブルの下から花を取り出して渡す。お母さんは嬉しそうな顔をしてありがとうと言って受け取る。それにつづいて二人が花を渡す。

 

「おかあさん、はい。」

 

 二人は一本づつ花を渡す。そしてお母さん抱きついた。

 

「ありがとう。よう君、りょうちゃん。さて、お手てにあるもう一つはどうするの?」

 

 お母さんが二人に抱きつかれながら聞く。二人は顔を見合わせて笑い、そして私を見る。なんだろう。お母さんから離れて私の所にくる。

 

「はい、おねえちゃん。ありがとう。」

「ありがとう。」

 

二人が花を私に差し出す。どういうことなんだろうか。

 

「亜由美。受け取ってあげなさい。この子達が自分で考えたんだから。」

 

 昨日の夜。私が、母の日にお花をあげる事を話した。

 私たちにご飯を作ってくれたり、お洗濯したり、お掃除したりしてくれるお母さんにありがとうをお花と一緒に伝える日だと簡単に説明をした。

 

 その後、布団の中で弟妹がお母さんにおねえちゃんもあげないでいいのと言ったらしい。なんでと聞くと、おねえちゃんもご飯を作ってくれたり、遊んでくれたり、色々してくれるから。そう答えたらしい。

 

 じゃ、おねえちゃんにもお花あげないとね。そんなやりとりをしていたらしい。それで花が二つ欲しかったんだ。よかった我慢しなさいって怒らなくって。

 

「ほら、亜由美。泣かないの。」

「え、泣いてないよ。」

 

その話しを聞いているうちに私はいつの間にか涙を流していた。

 

「おねえちゃん。うれしくないの。」

 

 不安そうに二人が見つめてくる。

 

「違うよ。嬉しいよ、ありがとうね。」

 

 私は二人をぎゅっと抱きしめる。嬉しくてしかたないのに涙が止まらなかった。

 

「ちゃんと見てるんだよ。この子達は。亜由美ありがとうね。これならいつでも母親になれるね。」

 

 お母さんはそういって私の頭を撫でる。顔をあげてみるとお母さんも少し泣いているみたいだった。

 

「アナタなら良い母親になれるよ。けどこの間もいったけど、まだ授かっちゃダメだからね。」

「もう、またそんなこといって。」

 

 私がそう言うとお母さんは私たち三人をギュッと抱きしめてくれた。嬉しいのに涙を流した母の日。そんなことを思い返していると部屋のドアが勢いよく開けら大きな声がした。

 

「おねえちゃん。あそぼう。」

 

振り返ると二人が部屋に入ってきていた。

 

「こら、ドアは静かにね。なにして遊ぼうか。」

 

 私はさわっていた花から指を離して二人に声をかける。二人はいつものように笑顔でいっぱいだった。いつの日か自分の子どもに同じようにされたらまた、泣いちゃうのかな。

 

fin


 
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