No.730491

『舞い踊る季節の中で』 第154話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 一刀の仕掛けた罠に陥る恋に、一刀は己が全てを賭ける決断をする。
 祖父との約束を破り、己に掛けられた戒めを解き放つ決断を。

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2014-10-16 20:00:12 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3934   閲覧ユーザー数:3155

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割編-

   第百伍拾肆話 ~終なる舞に、始まりの幕が開かん~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、初級医術

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

 

 

 

 

 

 

 

霞(張遼)視点:

 

 

「がはっ!」

「あがっ!」

 

 石突に額を突かれ、矛の峰で首下を強打されて、あっさりと侯成(こうせい)宋憲(そうけん)が地面へと倒れる。一応、胸が上下に動いている所を観ると、生きてはいるようやな。

 恋の咆哮の後、ウチに背を向けて一目散に駆け出した時は驚いたけど。一刀からそう言う事もあるゆうことを聞いてたから、すぐさま追いかけたはいいけど。後ろから不意打ちっちゅうのもおもろうないから。親切に声を掛けてから仕掛けてってゆうのに、あっさり倒れすぎや。

 もう少し面白い戦いが出来ると思ったんやけど、此れは外れを引いたかな。

 周りを見回せば、そろそろ決着がついて来ている。

 勝敗はそれぞれやけど、他人の闘いに手を出さん辺りは、さすがは恋が鍛えてきただけあるな。

 まぁ困惑はしているみたいやけどな。

 おっ、思ぃ~(思春)ちゃんの相手は高順か。あっちの方が面白い戦いが出来たみたいやけど、こればかりはくじ運みたいなものやからしゃーないか。

 明ちゃんは………、とうに決着がついてるみたいやな。眭固を倒せたっちゅう事は、蜀にいる間にまた一つ腕をあげたみたいやな。これはウチもうかうかしとれんな。

 蓮ちゃんの相手は……張楊か。雪蓮がいないちゅう事は、蓮ちゃんに任せたって事なんやろうけど。ち~~~と、厳しいんやないか? あれはウチでも手古摺る相手やで。

 でもまぁ、蓮ちゃんの目はやれると言うとるさかい、此処は師として大人しく見守るべきなんやろな。

 問題の一刀は………正直、見たあない。

 一刀が心配とかどうこうより、ウチの本能が全力でアレには関わるべきやないと言うとる。

 さっきチラッと恋を見ただけで、ウチは一瞬、死を覚悟したで。

 いったいアレは何や? アレが恋の本気の本気と言うのなら、正真正銘、恋は化け物や。

 一刀の本気は、心を吸い込まれそうになるのに対して、恋のアレは全身を持って行かれそうな感覚や。しかも魂いごとな。

 一刀はアレと向かい合ってるっちゅうんかい。

 ああなると知っていて、一刀は恋に戦いに挑んだんか?

 あんな恋と……。

 獣と化した恋と……。

 

 

 

一刀視点:

 

 

 はぁはぁ。

 息が乱れそうなのを必死で抑える。

 竜巻のような呂布の攻撃を紙一重で躱し続ける。

 速さも、力もさっきまでとは桁違い。

 しかもこっちの攻撃も、先程以上に明確に読まれているときている。

 だけど……。

 

「がぁぁぁ-------っ!」

 

 これなら、行ける。

 呂布の咆哮と共に横から振るわれる戟を、左の鉄扇で逸らしながら右の鉄扇で持ち手を打つ。

 むろん躱されるが、呂布の攻撃を断続的にさせる事が出来る。

 呂布の攻撃で地面をあえて打たせ。飛び上がる日用品を手にする事無く、そのまま鉄扇で呂布へと打ち払う

 呂布、彼女の動きが今まで以上に良く分かる。

 彼女の持つ能力。それは北郷流の起源の一つ。

 声なき者達の声を聴く。

 言葉の交わせないモノと心を交わす。

 人と動物を繋げていた太古の力。

 そんな人が元々持っていた能力の一つが特出し、変質したもの。

 生き物の声だけでは無く、心を、そして生き物を構成するものの一つである"氣"を。

 周りに生物がいればいる程、彼女の身に集まる"氣"は大きくなる。

 だから昔の人達は、彼女みたいな人間をこう呼んだ。

 

 【 森の巫女 】と。

 

 だけど、それは諸刃の剣。

 人は、犬でも猫でもましてや熊でもない。

 何処まで行っても人は人。そして同じ人同士だとしても、自分以外の心と"氣"は異物でしかなく、自分を塗りつぶして行く毒となる。

 知らずに繰り返して行けば、待っているのは自滅。

 自分以外の何かに心を塗りつぶされ、自我が崩壊して行く。

 俺はそれを知っている。

 そしてどうなって行くかを。

 

「がぁぁぁっ!」

「!」

 ずささささささーーーーーーーーーっ!

 

 衝撃と共に身体の右を地面に擦られて行く。

 戟を避けた拍子に姿勢を踏ん張りきれなかったために、呂布の蹴りを躱し損ねた。

 幸い、咄嗟に地面転がっていた樽を体の間に挟み込めたおかげで、もろに喰らう事は避けられたけど。

 

ずきっ!

 

 ……完全に左腕を折られたな。

 砕けてはいないようだけど、此れでは満足に動かせないか。

 やっぱり(アイツ)の時と違って、そう簡単にはいかないか。

 そりゃそうだ。今俺の目の前にいるのは、伝説の武人の呂布だ。簡単にいかなくて当然。

 そんな事は最初から覚悟していた筈だろ。

 

 すーはー、すーはー。

 

 覚悟を決めろ北郷一刀。

 呂布は本気の本気だと言った。

 つまり、全てを賭けて俺の思惑に乗ってくれたんだ。

 なら、俺も全てを賭けるのは当然だろうが!

 だから、爺っちゃん。ごめん。約束を破るよ。

 あの時に二度と使うなと誓わされたけど、放っておけないんだ。

 あの時の(アイツ)と同じ道を歩んでるあの娘を。

 

 ぶつつ。

 

 小さく震える手で袖口から取り出したのは、目に見えるか見えないか程の細い特殊な鋼線。

 魏が攻め込んできた時に俺が使いこなしきれなかったために、短く切れてしまったそれを、朱然達は手分けして掻き集めてくれた。

 そんな皆には申し訳ないけど。はっきり言って、切れたそれを結んで繋いだところで、もう二度と以前のようには使う事は出来ない。

 それでも別の使用用途なら使う事も出来る。

 皮膚を突き破り、何本もの糸が体中に入り込んでゆく感触に寒気を覚えながら、俺の周りを警戒しながら回る呂布を睨みつける。

 まだ弱り切っていない獲物を警戒しているだけなのかもしれない。

 だけどそのおかげで覚悟を決める事も、前準備をする事も出来た。

 

「行くよ。これが君の見たがっていた俺の本気の本気だ」

 

 地を蹴る。

 以前と比べ、特に速さが変わったわけじゃない。

 当然ながら、力も同じか、怪我と疲労の分弱くなってるくらいだ。

 それでも、呂布と向かい合う。

 

しゅっ。

 

 斜めに振り下ろされる檄。

 だけど舞い独特の緩急のある足取りで、戟の軌跡の外側でやり過ごす。

 更に踏み込む俺を今度は石突が俺を襲うが、頭を横に振って躱す。

 髪の毛が数本吹き飛んだけど気にしない。 風圧で飛んだだけだ。

 もしも今のが掠っていたのなら、衝撃で脳震盪を起こしていたはず。

 散々、俺に踏み込まれたせいか、呂布の反応も早い。

 石突を突いて来た側の肘を立てて俺を迎え撃とうとするが、その肘に左掌を添えて、呂布の勢いを利用する様に、右肘を呂布にたたみ込む。

 

びしっ!

 

 だが、呂布の左手に防がれる。

 …でも、最初からそれが狙い。

 呂布の右肘に添えていただけ左掌を掴みながら。右肘をそのまま打ち上げる。

 変則の背負い投げ。

 

くるっ。

 

 やはりそこは所詮は変則。

 落とし込みが足りない分、呂布は投げられつつも、身体を猫のように空中で回して、地面に背中から叩きつけられる事なく、足元から着地する。そればかりか、その勢いを発条として地面を蹴りあげ此方に突っ込んでくる。

 右…、左…。そして下から……。

 呂布の攻撃を一つ一つ躱す度に身体が悲鳴を上げ続けてゆく。

 当たり前だ。本来反応できない速度を、無理やり動かしているんだ。

 

 北郷流裏舞踊、傀儡の舞い・巴。

 

 特殊な鋼線を身体中に張り巡らす事によって、通常の運動伝達神経を使わずに無理やり動かす技。

 本来は他人を操る北郷流裏舞踊の中でも外道の技。だけどこの巴は違う。

 人間は視神経から脳へ1秒。そして脳から格末端神経まで1秒かかると言われており、それを"氣"で巡らせた糸を使う事で限りなく零にする事が出来る。

 本来は年老いた使い手や怪我をした時のための技だけど。使い方次第ではこういう使い方があるんだ。

 呂布の北郷流に似た技は、強力だけど技術としては稚拙。だから同じ北郷流の使い手からすれば丸分かりなんだ。

 問題は、今の暴走状態の呂布の動きについて行けるかどうかということだけ。

 呂布は俺の動きについて来れても、俺は呂布の動きについて行けない。

 それをこの技で、ほんの少しだけ誤魔化す事が出来る。

 

シュシュシュッ!

 

 まだだ。

 まだ本気じゃない。

 本気の本気は此れからだ。

 だから持ってくれよ俺の身体。

 そして俺の……。

 

「がぁぁ」

 

 あがるのは呂布の咆哮では無く、俺の苦悶の声。

 呂布の攻撃を受けたわけでも、裏傀儡の舞いによる自滅でもない。

 ある意味呂布と同じ。

 『 』を身体に通すのではなく、身体に留める。

 毒でしかないそれに、自分が喪失して行くのが分かる。

 無意識にあげたのはその圧力による自己防衛の声。

 だけど、そのおかげで自己を保つ事が出来るのは皮肉な話だ。

 己の中で俺を染めゆこうとする圧力に必死に耐えながら、俺は舞う。

 さっきまでの戦いの真似事では無く、真の北郷流を。

 相手を倒すのではなく、救う舞を。

 

 

 

 

 北郷流裏舞踊・仕舞い

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 


 
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