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『舞い踊る季節の中で』 第153話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 一刀の言うこの世界の将達の弱点、それが今明らかになろうとする。


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2014-10-13 20:00:01 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3798   閲覧ユーザー数:2996

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割編-

   第百伍拾参話 ~紅き衣に纏いしは魂の宴~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、初級医術

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

 

 

 

 

 

恋(呂布)視点:

 

 

 おかしい。

 あと少しの所で攻撃が当たらない。

 相手は呼吸を乱していると言うのに、それでも恋の攻撃は寸前の所で当たらない。

 ううん、逸らされる。

 なにより、恋の動きがどこか変。

 ほんの少しだけ、反応が遅れる。

 疲れは……ない。 

 攻撃は……最初の右手だけ。

 それも、もう回復した。

 なのに、…何故?

 

とん

 

 まただ。

 一刀はさっきからそればかり繰り返す。

 恋の攻撃の内側に入り込んでは、一撃を入れる事ができずに、そんな囮の攻撃ばかりを恋にいれる。

 無駄。ぞくぞくしない攻撃以外は、恋には囮だと分かる。

 恋はあの攻撃は、もう喰らわない。

 それは一刀も、分かってるはず。

 

とん

 

 だと言うのに繰り返す。

 今のだってそう、恋の攻撃を完全に逸らす事が出来ずに、頬を浅く斬り裂かれながらも恋の攻撃の内側に入り込んでも、それだけしかできなかった。

 ううん、頬だけじゃない、服のあちこちから、小さく血が滲んできている。

 一つ一つは、髪の毛一筋分程度のもの。

 恋は負けない。そして一刀に勝ち目はない。

 だと言うのに一刀の目は、そんな事を少しも思っていない。

 

 ざんっ!

 くんっ

 

 今も恋の攻撃を完全に躱しきれずに、一刀の服を少しだけ裂く。

 引っ張られる服に姿勢を崩しながらも、一刀は恋から間合いを取るどころか恋に向かってくる。

 受けた傷の事などまるで気にしていないかのように。

 うん、もう終わらせよう。

 恋は嬲るのは好きじゃない。

 恋と同じ匂いがする一刀を、これ以上苦しめたくない。

 だから……、

 

 

 

 

 

 

 

がくっ

 

「えっ?」

 

 膝が小さく崩れる。

 次に体が重く感じる。

 なんで?

 恋は、攻撃を受けていないのに。

 

しゅっ

がっ!

「んっ」

 

 そんな恋を一刀が見逃す訳も無く、何時の間にか握られた一刀の鉄扇が恋を襲う。

 引き寄せた方天画戟で真っ直ぐと突き込まれた鉄扇を受け止める。

 下から掬い上げるように襲うもう一つの鉄扇を、地面を蹴って後ろに飛びすさる事で躱すと同時に、一刀と距離を置く。

 

 身体が重い。

 何故?

 それに熱い。息が乱れそうになる。

 毒? ……ううん、違う。

 一刀はそんなことしない。これは絶対。

 

「はぁ……はぁ……、やっと、効いて来たみたいだ」

「……っ!」

「はぁはぁ……、君達の最大の欠点。それは人並み外れた身体能力自身だよ。

 早く、強く、そして頑丈。だからその力に過信する」

 

 一刀は教えてくれる。

 眼が良いからこそ、それを利用され惑わされる。見えているものに過信して。

 早い攻撃に反応できるからこそ、攻撃とも言えない遅い攻撃には無関心になる。いつでも避わせると。

 威力が無いと判断したなら、その攻撃は無意味と油断すると。当たった所で支障はないと。

 だから恋は理解できた。恋の身体に何が起きているのか。

 一刀の本当の攻撃は、あの身体に触れただけに見えた手。 軽く手を添えただけにしか見えない一打一打こそ一刀の攻撃の本命。最初の一撃から全て仕組まれていた事。

 あれにさえ気を付ければいいと思わせるための仕掛け。

 そして、文字通り身を削りながら、恋の身体に見えない傷を貯め込んでいた

 一刀の息が整ってゆく。一刀の中に、恋と同じものが入り込んでゆくのが分かる。

 

「っ!」

 

 背筋に震えが走る。

 恋では無く、身体が反応する。

 ……恐いと。だから、恋は決意する。

 

「……ごめんなさい」

「?」

「……正直、恋、なめてた。……一刀、強くないと」

「……そっか」

「だから、恋、本気出す。

 恋の本気の本気」

「ああ、それをまっていたんだ」

「……ん」

 

 本当は音々に止められていた。

 恋が本気の本気を出すのは駄目だと。

 恋も出したくなかった。

 あれは恋を喰らうから。

 恋を真っ白にするから。

 でも、出さなければ、この人には勝てない。

 そう恋の身体が教えてくれる。

 

「あぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!」

 

 声を高く高くあげる。

 音々との約束。

 どうしようもなく、恋が本気の本気を出さなくてはならなくなったら、皆に知らせる。

 危険だと。

 恋の傍にいちゃいけないと。

 唯一の例外である音々意外は、恋の傍にいてはいけないと。

 真っ白になった恋は危険だから。

 恋が皆を喰らうから。

 そんなのは嫌だから。

 皆に知らせる。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!」

 

 

 そんな恋を、一刀は静かに待ってくれる。

 温かい瞳で。……でもどこか悲しげな瞳で。

 だから、恋はそんな一刀に礼を告げる。

 

 

 

「………呂・奉先、行く」

 

 

 

 

 

更紗(高順)視点:

 

 

 

「かふっ!……」

 

 地面に身体を叩きつけられた衝撃で息が詰まる。

 攻撃を受けた左腕は痺れてはいるもののまだ動く。

 痛みは、気合いでと言いたい所ですが、痛みによる痺れのおかげで気にはならぬ。

 

「ほう、まだ立つか」

「はぁはぁ……、何を当たり前の事を、はぁはぁ」

 

 震えそうになる膝を何とか無理やり抑え込みながら、声の主を睨みつけてやる。

 甘寧は高く纏めた髪は既に解け、顔や腕にもいくつかの痣や裂傷にまみれていると言うのにも拘らず。最初のままの表情を少しも崩していない。

 

「くっ」

 

 いらつくのです。

 冷たく、見下したかのような態度ではないのです。

 本人が、そんなつもりでいる訳では無いと言う事は、受けた拳から十分に伝わってくる。

 某達を馬鹿にしているのでも侮っているのでもないと言う事は、合わせた矛から理解できたのです。

 だからこそイラつく。

 

「……ならば行くぞ」

「くっ」

 

 突きだされる左拳を、右手で払いながら左肘を突き込もうとした所を、突き上げられた右膝に阻まれるどころか、此方の上体を逸らされる。

 其処へ更に右の掌打が某の顔を狙って来た所を顔を逸らすどころか上体事無理やり回転させ、右の回し蹴りを叩きこんでやるのです。

 

がっ

「っ!」

 

 声にならない悲鳴と言うより、悔しさ。

 甘寧は、それより一瞬だけ早く上体を一気に落とし込み、某の蹴り出す軸足を払う。

 

どかっ

「がはっ!」

 

 蹴りだそうとした所へ足を払われたため、地面に背中どころか首にも大きな衝撃を受け、先程以上に体中の空気を一気に吐き出させられる。

 此れでは動ける状態ではないと、頭では理解できてはいるが、それ以上に鍛えた肉体が反応してくれる。

 酸欠で頭が真っ白になりながらも、地面を転がるようにして、肩膝を地面についた状態に体勢を無理やり立て直す。

 ぼやけた視界の中で、つい先ほどまで某が倒れ込んだ場所に、甘寧の膝が地面深く刺さっているのが見える。 手など欠片も抜いていない。紛れも無く本気の攻撃。

 だと言うのに、某は、まだこうして戦えている。

 槍を折られ、剣を弾かれ、それでも某はこうして甘寧と戦っていられる理由は簡単な事。

 某が槍を折られた瞬間、目の前の相手も模擬剣を腰にしまったゆえ。

 それからは徒手空拳、つまり白打による戦闘。

 それが悔しくてたまらない。

 湧き上がる怒りで、気絶してなどいられない。

 此奴は、手を抜いているわけでも、某達をなめている訳では無い。

 某達に求めているのは、死でも敗北でも、ましてや生かしまま捕虜にすることでもない。

 

 

 此奴等が我等に求めているもの、それは、………屈服。

 

 

 某達の心が折れるのを……、いや、折る事を狙っている。

 それが分かっていて、どうして膝をつく事が出来よう。

 だいたい、此奴はなんなのですか。

 何打か某の良い攻撃が入っているはずなのに、少しも顔を歪めようとしないなど、痛みを感じないとでも言うつもりか。

 

『うぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!』

 

 其処に突然聞こえてくる絶叫。

 聞き間違えようのない声。

 恋殿の合図。

 だが、これは!

 

だっ!

 

 恋殿に何が起きたかを考えるより先に身体が動く。

 地を蹴り。動かぬ身体に鞭を打って駆ける。

 声とは逆の方へ全力で。

 恋殿の咆吼を聞いたのならば、その声の聞こえぬ所まで駆け行く。

 疑問に思う事も、応援に駆けつける事も許さず。

 ただ只管に、その命令を守る事を順守する事を強いた恋殿の絶対命令。

 だた一人、アイツ(ねね)以外を除いて。

 死にたくない訳では無い。

 戦で死ぬ事など、とうの昔に覚悟している。

 その覚悟が出来ていないものなど、恋殿の配下には誰一人いない。

 恋殿に拾われた時より、某達の命は恋殿のためにある。

 そんな某達がこうして恋殿と逆の方向へ駆ける理由はただ一つ。

 恋殿を悲しませたくないから。

 恋殿が間違って同胞を討ち、その事で恋殿に涙を流せたくないから。

 恋殿の心配はいらない。

 ああなった恋殿は絶対無敵。

 あるのはただ一方的な虐殺。

 だから駆ける。

 恋殿の願いのために。

 苦渋の決断で持って地を駆ける。

 

 

 

 

「はぁはぁ……、此処まで来れば」

「呂布の攻撃圏外と言う訳か」

「なっ」

 

どがっ

 

 思いもしない声に虚を突かれる。

 おいて来たはず。置き去ったはず。

 幾ら某が疲労していたとはいえ、全力でもって駆けてきた。

 ましてや、あの反応について来れるはずないはず。

 頬を殴られ、揺れる視界と思考の中で、紅い人影が鈴の音と共に、某を再び地面へと叩きつける。

 

「……っ!」

 

 今度こそ声も無く、息が詰まる。

 完全な不意打ちに驚愕しながらも、身体は反応してくれる事に、其処まで鍛えてくれた恋殿に感謝しながら、諤々と揺れながらも身体を無理やり起こす。

 見れば、某だけでは無く似たような者達が何人も見受けられる。

 ………何故? 目の前の相手だけならともかく、他の全員もとなると、その事に疑問を覚える

 

「なるほど、我等が追い付いた事が不可解か。

 ならば、教えておいてやる。我等は知っていたと言うだけの事。

 呂布が何らかの合図を送った時、こうなると言う事をな。

 だから戦場から全速で離脱しようとする貴様等に即応できた。それだけの事だ」

 

 此奴等っ!一体、何処まで某達の事をっ。

 いや、そんな事より、此奴等が其れを知っていたと言う事は、恋殿のアレを知っていて尚、こうなるよう仕掛けたと言う事。

 ならば、此れは罠っ!

 

「貴様の相手も飽きてきた。

 そろそろ決着を付けよう」

「ふざけるなっ。

 その話を聞いた以上、某は一刻も早く恋殿の下へ駆け付けねばならぬ」

「……それは我等も同じこと。

 来るがよい。今度こそ、貴様の(こころ)を叩き折ってくれる」

 

 もはや、甘寧の言葉など、某の耳には届かぬ。

 体中に残る"氣"を掻き集める。

 命を糧に、"氣"を練り上げ続ける。

 後先の事など考えない。この命、もとより恋殿のためにある。

 今は目の前の邪魔物を全力で倒して、恋殿の下へ駆け付ける事だけを考えれればいい。

 大気が歪むほどの"氣"を練り上がってゆくのが分かる。

 痛みも、身体の重さも、"氣"が満ちる事で補ってくれる。

 

「……懐かしいな。これが昔の私の姿と言う訳か」

 

 何か戯言が聞こえる。

 だが、今の某を止める事などできやしない。

 今の某は、先程までとは力も、速さも違うのですぞ。

 

「あぁぁぁぁっ!」

 

 声にならない声と共に地を蹴る。

 後方で地面が砕け、砂埃が舞うのを感じながら、甘寧へと向かう。

 振るう拳が空気を裂きながら、甘寧へ…。

 

どがっ!

「…………ごほっ………」

 

 ……?

 ……何が?

 揺れる視界の中、某の腹に拳が突き刺さっているのが見える。

 何故? そんなものが……。

 

「……なるほど、無駄に"氣"を込めすぎると言う事はこういう事か」

「……くっ!」

 

 掛けられる言葉と共に、何か起きたか理解する。

 反射的に拳を振り、続いて膝を蹴り上げる。

 くっ、当たらない。

 某の今の動きは甘寧の反応速度を超えている筈。なのに、何故?

しかもそれだけで視界が揺れ赤く染まって行く。鼻から何かが零れ落ちてゆく。

 

「……長くは持ちそうもないな」

「がぁぁぁぁっっっ!」

 

 獣の咆哮。

 それと共にすべてを込める。

 この手に矛を握らなくとも、最も鍛錬した技を。

 某の全てを込めた突きを。拳に乗せて。

 

「っ!」

 

 今度こそ某の目は甘寧の動きを捉える。

 某の突き出す拳を、右手で添えるように上へと押し出しながら踏み込んでくる姿が。

 そのまま右手を折り曲げながら、踏み込んだ半身。左肘を某の鳩尾へと打ち込む姿が…。

 

「………っ!」

「貴様の魂、しかと見せてもらった」

 

 世界が白んでゆく。

 目の前が……、

 頭の中が……。

 ……某は、駆け付けねば……ならぬ

 れ……れん……どの………の……もと……へ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 


 
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