No.72902

心・恋姫†無双 第五話

南風さん

四話と五話の同時投稿です。この作品はオリジナル要素・オリジナルキャラが強いです。苦手な方は申し訳ありません。

2009-05-10 19:34:53 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:13184   閲覧ユーザー数:9959

心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~

第五話 ~劉璋~

 

初陣が終わって巴郡に戻った俺は法正と張松にも怒られた。

「北郷、お前は馬鹿か!」

「・・・・・・馬鹿ですね。」

 

だけど、厳顔さんには

「男はそうでなければの。」

といってお酒を進められた。

そして俺は厳顔さんに武を学びたいと申し出た。

「やめておけ、お主は文官向きだ。」

「・・・・・それでも、俺より弱い人や自分の身は守りたいから。」

「ふむ、・・・・・・そこまで言うなら仕方がない。」

「ありがとう!」

「じゃが、タダではないぞ。」

「・・・・・・まぁ出来ることならやるけど。」

「なに、戻ってきて早速でなのじゃが、わしと成都に行ってくれるか?」

「成都?・・・・・・それなら大丈夫だけど。あと、聞きたいって言ってたことはどうする?」

「ならば出発は五日後、話は向こうで聞こう。それまで体を休ませておれ。」

「わかった。」

その五日間俺は、朝は鍛錬・昼は雑務・夜は勉強とハードな日々を送った。

勉強にいたっては徐庶さんがまだお怒りで、スパルタ教育のレベルがあがっていたのは別の話。

 

 

 

五日後明朝、俺たちは成都に向けて出発した。

「北郷、これに着替えるのじゃ。」

そうして渡されたのは一般の服より少し高価そうな服。

「・・・・・・どうして?」

「その格好は目立つからの。」

「わかったけど・・・・・・。」

「あと、北郷。お主はこれから厳郷(げんごう)と名乗り、わしの養子という事にするぞ。」

「なんで?」

「行けばわかる。」

厳顔の顔が暗くなる。

「わ、わかった。」

そんな表情をされたら断れないじゃないか。

「あと、ここから行く先何を見ても、わしが良いというまで口を開くでないぞ。」

「・・・・・・・(コクッ)」

「すまぬな、では行くか。」

 

俺たちが巴郡を抜けて暫くたつと、道端に人が倒れていた。

俺は助けようとするが兵に止められる。

「もう死んでいます。」

兵からの一言。

たしかに、その人の周りには蝿が舞っている。

そしてよく見ると小さい子供を抱えていたが、子供も死んでいた。

そして、そんな光景を成都に行くまでに何度も見た。

死体は道端に転がり、小さい邑は人はいるがゴーストタウンのようだった。

俺は憤りを覚える。

役人は何をしているのだと心で叫ぶ。

そして、俺は今まで何も知らないで生きていたことを悔いた。

先日の黄巾との戦いよりも不快感が強くなる。

 

成都に着いたのは巴郡を出て三日後のこと。

俺たちは外に天幕をはり、成都を歩いている。

「今日は、これから州牧・劉璋のとこで月の定例会議がある。そこに出席するために成都に来たのじゃが・・・・・・これまでの道で何を思った?」

「・・・・・・・・。」

「話せ。」

「酷い、ただその一言だ。」

「だろうの、ではこの成都は?」

「腐ってる。」

「ふむ、的確じゃの。」

腐ってる・・・・・・その意味は簡単。

役人らしきもの達が先程から横暴をつくしている。

店に女性に・・・・・・。

そして、一度路地裏に目をやるとボロボロで老若男女問わず、人が蹲っている。

俺は怒りを募らせながらも城へ入った。

 

 

――玉座の間――

そこには武官・文官の偉いだろう人々が並び座っていた。

そして、その中に黄忠さんの姿もある。

一瞬だけ目をあわせ、わずかに頷きあいさつを交わした。

厳顔さんの座る場所は玉座に近く、意外と偉いのかと俺は内心驚いた。

俺と厳顔さんが座って待つこと半刻。

「益州州牧・劉璋さまご到着。」

その言葉に皆が一斉に立ち上がる。

 

そして入ってきたのは俺より少し年上だろう優男。

しかし、その目は鋭く欲望に満ちた目をしている。

 

「我が劉璋だ。・・・・・・この度の月の定例会議にも遠方など関係なく全員出席してくれた事を感謝する。」

「さて、紫苑よ。つい先日の賊退治、見事なり。後で褒美をつかわす。」

「ありがとうございます。」

黄忠さんの褒美の話から始まり、現在の納税状況・治水・政の報告行なわれていった。

「さて、桔梗・紫苑。」

「「っは!」」

「話は戻るが、黄色の賊の事を黄巾党というらしく蒼天已死黄天富立というのを信条にしている馬鹿どもだ。謎が多く首謀者も張角という名前以外わかっておらん。そして、その黄巾党の多くは農民や貧困にあえいでいる卑しいものばかり。」

卑しい者!?

俺は耳を疑いそうになる。

「そして、現在の王朝に敵対していることから討伐命令がでた。よって我が益州の黄巾党の討伐を二人に一任する。」

「「御意!」」

「はやく、あの卑しいものどもを片付けろ・・・・・・・さて、時に桔梗よ。お主の後ろのその者は誰だ?始めてみる顔だ。」

「この者は、半月ばかり前にわしが拾って養子にした者。」

周りがざわめく。

「静かにしろ・・・・・・ほぅ、お主ほどの者の養子か。では凄い奴だろうな。」

「っは・・・・・・まさに国士無双の存在になる者ですぞ。」

「国士無双か・・・・・・楽しみだ。しかし、その目は確かに強い光がある。我を滅ぼしそうなほどの。」

「・・・・・・わしの養子ですぞ。そのようなことありますまい。」

「・・・・・・・なら良い。お前の名前は。」

「・・・・・・厳郷です。」

「厳郷か・・・・・・覚えておこう。その眼・・・・・己に磨きをかけ、桔梗の顔に泥を塗る出ないぞ。」

「・・・・・・当然です。」

こうして会議は何事もなく終わった。

最後の劉璋と厳顔さんの腹探りあい以外は。

偉い人たちはこうも腹黒く、抜け目ないものかと俺は思うばかりだった。

 

 

――郊外、天幕――

俺と厳顔さんと黄忠さんは今後の方針を決めるために会議をしていた。

といっても俺はいるだけだけど。

「して、北郷。遅くなったが、初陣の結果は徐庶や焔耶から聞いておる。じゃが、お主から見てどう思うた?」

そう言えば約束してたな。

「あぁ・・・・・・何か不快だったよ。自分が・・・・・・・。」

「己が?」

「あぁ、俺は何も知らないで生きてきたんだ。それが許せなかったんだよ。」

「じゃから、馬や武や勉学にはげむのか?」

「最初は恩返しがしたかったんだけど・・・・・・今は何だろうな、俺も何か出来たらって考えるからさ。」

「やはり、行かせたのは間違いではなかったの。」

「といっても、今の俺に何が出来るかなんてわからないけどな。」

「・・・・・・劉璋のボウズはどう思うた?」

「・・・・・・・・・・。」

「正直に言ってみい。」

「殴りたいって思ったかな。・・・・・・・なんで、あんな奴が州牧なんだって思ったよ。厳顔さんや黄忠さんみたいな人が州牧ならいいのにって思う。」

「わしや紫苑はそういう器では無いからの。」

「そうなのよ。私や桔梗は将として上には立てても、それ以上の事は出来ないわ。」

「そういうもんか・・・・・・。」

「そういうものじゃよ。さて、今夜は三人で飲み明かそうではないか。」

「は!?ちょっと勘弁。」

黄忠さんはともかく、厳顔さんがどれくらい飲むかは知ってるぞ!

そんなのにつき合わされたら・・・・・・。

「女子の誘いを断るのか北郷は?」

「それとも、こんなおばさん達とでは飲めないかしら?」

「い、いえそんなことないです。」

こうして俺の終わらない夜が始まった。

 

暫くたって、

「そう言えば、黄忠さん。」

「?」

「あの、兵隊さんは大丈夫だった?」

「えぇ、傷は回復に向かってるわ。」

「そうか、なら良かった。」

一刀は心から良かったという笑みをこぼす。

そして、その笑みに心を奪われる厳顔と黄忠。

「やっぱりいいわねぇ~。」

「紫苑にはやらんぞ。」

「あら、負けないわよ。」

 

「ん?何の話?」

「こちらの話よ。」

「女子の話に男は首を突っ込むものではないぞ。」

「わかってるよ。」

「なんじゃ、北郷の杯が空ではないか。」

「大変、つがなくちゃいけないわね。」

「い、いや・・・・・・もう、やばいんですけど。」

それに、なんだその幸せそうな何か企んでる笑みは?

「男じゃろ、遠慮するな。」

「そうよ、女の子の酌は受けなくちゃ駄目よ。」

「は、はい。」

厳顔さんと黄忠さんの笑顔に負けて、俺は生まれて初めて二日酔いするはめになった。

 

 

巴郡への帰り道、俺は厳顔さんの馬に揺られながら頭をかかえていた。

「頭痛い、気持ち悪い。」

「あれしきの酒で酔うとは、そちらも鍛えた方がよさそうだの。」

「いや、厳顔さん達みたくはなりたくないです。」

「どういうことじゃ?」

「・・・・・・なんでもありません。」

 

そしてまた三日かけて巴郡へと戻り、暫くは普段と変わらない生活だった。

乗馬の練習は上手くいき、何とか一人で乗れるようになり、やっと徐庶のスパルタ教育から一つ解放された。

勉学のほうも何とか字は書いて読めるようになった。

まだまだだけど、それでも徐庶に

「ここまで来れば、日常で困ることはありません。」

と言われてほっとしが

「やっと基本が終わりました。今後は応用ですね。軍略から政になどについて勉強しましょう。」

そう言われて俺の心の中は脆くも崩れるのであった。

 

武は今は法正と張松に稽古をつけさしてもらっている。

「おらおら、まずは体力だ!」

といって法正と一緒に体力づくり。

「ここは、こうです。」

張松には武の基本を教えてもらった。

 

 

 

俺がこの世界に来て一月と少しが過ぎた。

そんな中、俺たちの元に黄巾の大軍が攻めてきているという報が届く。

「まず、ここ黄巾党は五万の大軍を率いて州境に展開しています。おそらく、まだまだ多くなるでしょう。」

「ふむ、では紫苑とともに急いで討伐に向かおうかの。」

「「「御意!」」」

「北郷と焔耶で先行し軍を動かすのじゃ。」

「ワ、ワタシとこいつでですか!?」

「なんじゃ文句あるのか?」

「い、いえ・・・・・・。」

「よろしくな、魏延。」

「前みたいな事はするなよ。」

「わかってるよ。」

こうして黄巾党との戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

第五話 完

 

 

予告

なぜ人は争うのか。

 

生きるためか。

 

怒りか。

 

戦に何がある。

 

命をかけて何をする。

 

その答えは誰も知らない。

 

次回 心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~

第六話 「黄巾党」

 

「人が人である限り戦は消えないんだ。」

全ては運命か。

 


 
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