No.711561

義輝記 星霜の章 その十壱

いたさん

義輝記の続編です。 颯馬の日ノ本での過去が若干変わってます。 よろしければ読んで下さい!
8/27 誤字訂正、朱里と雛里の台詞を少し修正しました。

2014-08-27 00:53:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1100   閲覧ユーザー数:994

【 星達が見たモノ の件 】

 

〖 徐州 下邳 晋軍陣営 にて 〗

 

星「皆、気を付けろ! あの軍は……なにやら得体の知れない気配がする!」

 

斥候『はい──っ!』

 

夜の闇を利用して黄河を渡り、目指す陣営に偵察へと近付く人影。

 

己の疑問を解消させようと訪れた星、桂花の命を受け……再度の侵入を試みる斥候役の兵士三人。 ──────息を殺し様子を窺う。 

 

星「お主達の調べ物はなんだ………?」

 

斥候1「はっ! 荀軍師は疑っておいでです! かの『松永久秀』自身が、『洛陽軍の軍師』様と対決を熱望しているのは、周知の事実! それなのに、遠く離れた地で怠慢に動く……この軍勢。 かなり違和感を、覚えていらっしゃいます!」

 

星「そうか………私と似たような考えをお持ちだったか………」

 

斥候2「趙将軍も────!?」

 

星「………私は、『筒井順慶』を疑ったのさ! 最初に斥候として、この陣営に来た際は驚いてな……。 

 

煮え湯を飲ませて差し上げた将が、この陣営で『松永久秀』と共に、私を笑いながら見ているのだ! 生きた心地がしないのも………当然だろう?」

 

斥候2「──────!」

 

星「しかし………一向に此方に向かって来ない。 半里(約200㍍)しか離れていないのに、気付かない奴ではない! これは……何かある! そう感じて、再度ここまで来たのだ!」

 

斥候3「私達も……その件、調べてみたいと思います。 洛陽軍の忍びには到底及びませんが……私達も出来るだけ調査致します! では───!!」

 

星「また、必ず会おう!! 私も探れるだけ探って見るからな! ……月が真上に来る時が集合時間! それまで戻れよ!!」

 

斥候1「趙将軍も、御無理なされずに────!!」

 

星「………お互いにな!」

 

★☆☆

 

斥候達と別れ、先に進む星。

 

前は、昼間に少し遠くより眺めて終わらせたが、今回は忍び込んでの行動。

 

ーーーーー

 

夜は……視覚が闇に遮られる為、潜入し易いと考えられる方も多いだろう。 

 

しかし、聴覚がその分高まり、周りには騒がしい喧騒も消え、娯楽も少ない。

 

かなり神経を使うのが現実であり、その中で得た情報は貴重だったのだ。

 

ーーーーー

 

申し分のない程度の柵で囲まれた、幾つもの並ぶ天幕。

 

流石に四十万の軍勢だけあって、活気が溢れ深夜にも関わらず、人影が多数見える。 よく見ると、鳥丸の兵士らしき男が、美麗な衣装で飾り、美しく着飾った、若い漢民族の女性を連れて歩いている。

 

星「人が集まれば、深夜と言えど商売は成り立つか……。 あの娘は、花街柳港からの遊女かもしれ………むっ!?」

 

何やら甘い雰囲気が漂い、会話が聞こえ……その都度に、若い二人が唇を重ねる。 そんな甘い動作に驚いた……訳では無い。 

 

そのような事は……昔、勤めた花街柳港の用心棒時代に、見飽きている。

 

驚いたのは『会話』だ。 

 

正確には……声! 

 

会話の中身は分からない故に知らぬが、女の声が『余りにも野太かった』に違和感を抱いたのだ! 驚いた星は、再び念入りに女を見入る!!

 

顔は間違い無く小顔の美人! 胸も膨らみが、なかなかどうして魅力的。 

 

しかし、視線を中間に合わすと、天幕より漏れる明かりにより、鮮明に見えたのだ! 女性では分かりにくい筈の『喉仏』と『髭』がハッキリとぉぉ!!

 

得体の知れない正体は、これだったのか! と……口を抑える星であった。

 

★★☆

 

更に調査すると、似たような同伴者、寂しいお一人様達が彷徨いていた。 

 

結構な美人に見える者が多いのだが、中には漢女と称するのが似合いの男?も見てとれた!  

 

 

例えば……その者は、顔が真っ白で、夜の闇の中でも驚く程、視認がし易い! 筋肉質なのが着物を着ていても、外見で分かる程に鍛え込まれている。

 

 

不思議なのは、その漢女の需要が多い事。 同伴者の半数以上が……漢女とイチャイチャしていた。 

 

星「…………いかん! これ以上、こんな風俗ばかり見ていると、頭がおかしくなりそうだ!! 精神安定薬を食し、回復に努めねば!!」

 

懐からメンマ壺を取り出し、急ぎメンマを掴み上げ、口に投げ込み咀嚼(そしゃく)して飲み込んだ。 普段は、決してしない緊急の不作法な食べ方。

 

普段の星ならば、最初に目でメンマ職人の技術を楽しみ、次に香りでメンマの熟成を感じ取り、ようやく口に入れて、メンマの歯応えを噛み締める! 

 

正しく、この道に精通した者しか分からない、食べ方しか行わないのだ。 

 

その星が……ただ……メンマを食べる。 今の状態は、それだけ緊急事態だった事を物語っていた!

 

星「ふぅ──危ないところだった! ………こんな事なら、朱里と雛里も連れてくれば……いやいや! 狂喜して動かなくなるかも知れぬな! それでは、私が危険を冒し、何を確認をしに来たのやら………」

 

星は一人呟いて……情報を集める為、暗闇にと消えて行った…………!

 

◆◇◆

 

 

【 颯馬の罪過 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

《 星達の突入より二刻前 (約4時間前) 》

 

颯馬「もう少しで………対峙するんだな………」

 

ーーーーー

 

洛陽を出発して十日。 此処で夜営をする為、皆が準備にてんてこ舞いだ。 

 

ただ、俺は『軍師だから身体を休めろ!』と皆に心配され、夜営近くの木に寄りかかり、前方の平野部の遥か彼方を………望んでいた。

 

赤い夕焼けが……辺りを赤く染めていく。 左手に見える山が鶏洛山だったかな? 前方には、広々とした平原が見えた……………。

 

あの向こうに、日の本を出航する際、俺を泣いて引き止めた姫武将……『松永久秀』殿、『筒井順慶』殿が居るんだ! 敵として…………。

 

俺は、遠くの地平線に目を向け、日の本での出来事を…………回想していた。

 

★☆★  ★☆★  ★☆★ 

 

当時の俺は、軍師ゆえ将と接する機会が多かった。 そのため、軍師として将を立て、円滑な関係を望み奔走していた。 

 

しかし、幾ら相手は勇将、知将の名は高くても……花も恥じらう乙女達。 誠心誠意に付き合う内に、済し崩しに肉体関係を持つ事も………あったよ。

 

だが、日の本統一に近付くにつれ、一人の乙女に心を奪われたんだ! 

 

俺の足利学校時代の学友にして、足利家の重臣。 心許せる友、政務での相談役、そして………生涯、添い遂げたいと願うようになった『明智光秀』!! 

 

俺は……ある時、光秀に告白した。 

 

幾度もの戦いに挑んだが、この時ばかりは……俺の知も謀も……何も役に立たなかった。 ただ、自分の決めた覚悟だけを持って………!

 

結果……光秀も……俺を憎からずと想っていてくれた! 恥ずかしげに返事を貰った時の嬉しさは、今でも忘れられない───!!

 

その後………俺は……気付いた。

 

俺と身体を重ねてしまった姫武将は……どうなる? 

 

俺は……どうすればいい? 

 

俺は、この機を理由に……関係を清算するつもりだった。 

 

具体的には……三人の姫武将『竹中半兵衛』『筒井順慶』『松永久秀』。

 

半兵衛殿は、優しい笑顔で………許してくれた。 

 

多分、自分の寿命を知っていたのだろう。 余りにもあっさりしていたので……驚いたが……今では理由は、おぼろげながら分かる………。

 

しかし、久秀殿と順慶殿は………荒れ狂った! 俺も散々酷い目に合わされたが、二人の気の済むように任せた!

 

だが……その狂気が……光秀に向かう気配を感じ、俺は恐怖した! 

 

光秀まで惨い目に合わされる! もしかしたら……俺よりも………!?

 

そう悩み思案していた時、ある知らせを受け取る!

 

日の本統一後、義輝が大陸に渡る為、俺に誘いを掛けてきたのだ。

 

天から助けと思い、俺と光秀は義輝の誘いに乗り、他の仲間達を伴って出航したのだ! 順慶殿と久秀殿の懇願を……冷たく払いつつ。

 

でも、まさか……こんな何十人も付いてくるとは、想定外だったけど………。

 

★☆★  ★☆★  ★☆★ 

 

 

そして、その禍根となる二人は、月様の大陸平和を阻み為、力を付けて、再度現れた。 日の本に居た当時とは……段違いに強くなった二人が…………。

 

颯馬「……………身勝手だな………俺は……………」

 

久秀殿や順慶殿の懇願を……にべも無く払いのけた挙げ句、敵対すれば容赦なく討たなくてはならない! 出来れば助けてあげたいが……余りにも兵や民の犠牲が大きい! どう考えても『死罪』にしかならない!!!

 

やるせない気持ちが……再び込み上げる! 胸が痛む! 呼吸が苦しい!!

 

原因は……俺にある。 俺にもあるんだ────!!

 

愛紗「どう……されましたか? 天城様?」

 

ふと、後ろから愛紗から……声を掛けられる。  

 

振り向けば、艶やかな黒髪を夕日に染め上げ、俺を覗き込みように眺め、急に俺の額を片手で当てた。 一瞬の出来事で、何をされたのか分からなかった。

 

愛紗「熱は………無いようですね? ですが、顔色が悪く、呼吸が荒い…。

 

───はっ! も、もも、申し訳ありません! ご、ご主人様と同じように気安くして触ってしまい────!!」

 

颯馬「………ありがとう! 心配してくれたんだよね?」

 

愛紗「うぅぅぅぅ……………はぃ………//////////」

 

消え入りそうな声と朱に染めた顔を見て、このオナゴは、あの『関雲長』なのだろうか……と思う。 

 

この世界は、三国史の別世界。 

 

銅鏡が平和を望み、俺達と月様達を結びつけた異世界。

 

有名な武将が、オナゴばかりと言うのは驚きだが、北郷殿も俺の世界の将はオノコばかりだったと言っていたな。 一度、見てみたいものだ………。

 

愛紗「あ、あのぉ………天城様?」

 

泣きそうな顔で、此方を見ている愛紗。 

 

ふと、その顔が我が主君である月様の顔に重なる。 

 

颯馬「大丈夫だよ、大分楽になった!」

 

いかんな……。 采配を預かる身で、将を心配させるとは………。

 

俺は出来る限り、優しく微笑むと……愛紗の顔に笑顔が浮かぶ!

 

愛紗「そうですか! 良かったぁ!!」

 

………今は、私心で考えて行動してはいけない。 義輝の『上善如水』の行動、月様の大陸平和の総仕上げ……! 必ず勝たなければならないんだ!

 

…………戦乱の源が……俺を恨んでの行為であろうとも!!

 

 

★☆☆

 

 

長慶「……また、一人で悩んでいるようだな。 いい加減、私にも相談をして欲しいものだ! 素直に頼らないと拗ねてしまうぞ………!」

 

一存「もう少し、楽に考えればいいのに……。 それにしても羨ましいなぁ! ───おいっ! 颯馬!!! 俺とそこ替われぇぇぇ!!!」

 

小太郎「私が愛紗さんみたいに看病したいですよぉ~~!!!」

 

凪「…………………天城様、最後まで……お供致します!」

 

左近「颯馬! お前は……友としては誇りに思い、オナゴとしては……慕っている。 私は、お前がどのような決断を下そうが付いていくぞ!!」

 

信長「人生五十年………その短い一生で、己の天命を如何に達成するか……難しいものである。 颯馬よ! 今、この時、この場所こそ、己が天命への岐路! 行けぇ! お主の為さねば成らぬ事を突き進むのだ!!」

 

明命「大丈夫です! 私達の掛け替えのない孫呉の将を救い、国や民の危機を回避させた天城様なら………きっと!!」

 

亞莎「わ、私は…………信じています! 貴方の目指す先は、平和な世の中である事を!!!」

 

鹿介「三日月よ……ご照覧あれ !! この天城颯馬、世でも稀有な英傑と存じる!! このような傑物を捨て置いて──我が悲願! 成就など出来ようか!!!」

 

いつの間にか……将達が俺の後ろに並び、口々に思い思いの言葉を投げかける! 俺を励ます者、冷やかす者、それぞれだが…………。

 

 

 

義輝「お主が悩む必要なぞ無いぞ……颯馬。 

 

よぉく考えてみよ! あの者達の狂気、今更では無い! それに、もし颯馬と光秀の関係を、あの二人が知られていたら、どうなっていたと思う!!」

 

光秀「颯馬………………」

 

 

 

義輝と光秀が……俺の前に立つ。 夕日が、もう僅かで地平線に隠れるため、輝きは更に増して……二人を神々しく照らし出す!! 

 

颯馬「えっ!? 義輝……まさか……知っていて!?」

 

義輝「お前達の男女の仲など……わらわの目でも丸分かりじゃ!! つまり、久秀や順慶も察知していた可能性が高かったのでな! だから、誘いを向けたのじゃよ!! 勿論、軍師としての手腕も期待しておったがな!!」

 

颯馬「……しかし、久秀殿達の狂気の原因は、間違いなく俺にある! 俺が、もう少し……上手く説得出来れば………」

 

義輝「……やれやれ。 人が良すぎるぞ、颯馬よ! 考えても見るがいい! 

 

久秀は……わらわの暗殺まで企んだ将ぞ!? 光秀を殺害し、後釜に座る事、何とも思わない奴じゃ! 

 

順慶も、可憐な容姿に騙されるでない! 嫉妬深さと自己中心的な考え……何度も経験しておろう! 光秀が害される可能性は大じゃぞぉ!!!

 

それとも───颯馬! 

 

お前は───光秀を捨てる気か!? 

 

光秀を捨て、久秀や順慶に乗り換える気か!?」

 

 

颯馬「─────────!!」

 

 

光秀「……貴方が、複数の姫武将と関係を持っているのは、知っていました。

 

 

半兵衛殿の颯馬を仰望する──眩しそうな顔!

 

順慶殿が時折見せる……輝くばかりの笑顔!

 

久秀殿の……稀に見る無邪気な寝顔!

 

 

全部、颯馬が傍に居た時、見えた顔ばかり………。

 

だから……私は……心配していたんですよ。 いつか、私を捨てて……二人の下に行ってしまうのでは、ないかと───心配ぃ!?」

 

 

慌てて駆け寄った俺は、光秀を力強く抱きしめる!! 光秀の話が途中だが、後でたっぷり聞かせて貰う! 今は……ただ……光秀を感じていたかった。

 

 

颯馬「すまん! 光秀に心配掛けたくなかったんだ! 光秀を傷つけたくなかった! 光秀を………失いたくなかったんだぁぁぁ!!」 

 

光秀「颯馬ぁ……! 颯馬ぁぁ! 颯馬あぁぁ!!!」

 

互いに手を背中に回し、抱きしめながら泣く二人。 

 

愛紗「…………………………」キュッ

 

静かに見守る将達。

 

夜の帳は…………静かに降りていく。

 

颯馬と久秀達を巻き込んだ、大陸最後の大戦。 

 

遅々と、だが確実に……すぐ傍まで近付いていた…………。

 

◆◇◆

 

 

【 命運を担うモノ の件 】

 

〖 徐州 下邳 城内 謁見の間 にて 〗

 

星達が斥候を果たした次の日、『下邳城内、謁見の間』において、調査報告を桂花達軍師が行っていた。 

 

華琳「………斥候や星は?」

 

桂花「………はっ! 無事に帰還できました! しかし、些かおかしな様子で私としても……どう対策を立てればいいのか……戸惑っていまして……」

 

華琳「…………どういう事?」

 

桂花「敵本営に存在を明らかにしていた、松永久秀、筒井順慶の両人! 木の板に描かれた、精巧な絵であることが判明!」

 

華琳「──────!」

 

桂花「ですが……敵本営の中に、警備な厳重な天幕があり! 人影を確認しましたが……かの二人であるか……正体が分かりません!!」

 

華琳「……知謀の将、一騎当千の将。 両人が、陣営内に居るか分からないのね……。 小賢しい策謀……だけど、私達は攻めなければならない!! 」

 

桂花「………このまま座していれば、洛陽の軍勢が押し潰され、私達は滅亡! かといって、下手に攻めれば……松永の術中に嵌まる──!?」

 

朱里「か、華琳しゃま! はっ!? はわわわわぁ───!」

 

雛里「お、落ちついて……朱里ちゃん。 あ、あの……華琳様! 唐突ですが申し上げさせて頂きます! 私達に、指揮を任せて貰えないでしょうか?」

 

華琳「貴女達に……? 勝敗の見通しは出来ているの? 相手は颯馬でさえも仕留めれなかった知謀の士。 荷が重いと思うけど………」

 

桂花「雛里、朱里! 貴女達が、私よりちょっと劣るけど優秀な軍師なのは、承知してるわよ! だけど……」

 

朱里「………もし、この戦が負けになれば……私達の首を晒して貰っても構いません!! ですので………どうか!!」

 

雛里「コクコク!」

 

桂花「ア、アンタ達!?」

 

華琳「────その訳を聞きましょう! そこまでの決意を固めた理由を!」

 

朱里「……天城様は、先の孫呉の戦で……不慮の事故で策が不完全だったのを、御自分の責任として背負い……苦しんでいました。 また、策を実行するに、己の身体を省みず、前線へと赴きました!」 

 

雛里「それなのに……私達は、軍を思うがままに指揮するだけしか……考えていなかったんです! 天城様の策に取り組む姿勢を見て、策の成功は、自分の命を投げ出す覚悟が必要だって………!」 

 

朱里「─────私達は、そう学んだのです!!」

 

雛里「わ、私達は直接戦う事は無理です! しかし、命を掛ける事は出来ます! ですから、私達の命を掲げ、策の後押しを行いたいでしゅ!!」

 

華琳「……成る程。 朱里達が命を張れば……将や兵は奮起して戦ってくれる! 天の御遣いの軍も居るから、勝率はかなり上がるわ!!」

 

桂花「し、しかし、黄河を渡るとなれば、古来より、川を渡りきる途中を狙うのが定石!! 我が軍勢が渡る前に全滅する危険も────!!!」

 

朱里「そこは、一刀さん達が作成した『兵器』があるため、ある程度対処が出来ると思います!」

 

雛里「はいっ!! 敵も絶っ対に嫌がる強力な『兵器』ですぅ!!」

 

華琳「そこまで言うなら、貴女達に任せます!! 戦は明朝! それまでに準備を整えるように、各自に伝令を送りなさい!!!」

 

桂花「はいっ!!」

 

ーーーーー

 

朱里「やったね! 雛里ちゃん!! 一刀さんに急いで連絡しなきゃ!!」

 

雛里「で、でも………あの匂いは………勘弁して欲しいぃよぉ………」

 

朱里「……私達の命運が掛かってるんだから! アレくらいじゃないと!!」

 

雛里「…………………コクッ」

 

★☆☆

 

〖 徐州 下邳 民家の地下室 にて 〗

 

沙和「蛆虫共ぉ!! お前達が好む臭いが充満する所で、仕事を与えた得てあげたのぉ! 歓喜に身を震わせながら、沙和に感謝しろぉ────!!」

 

曹兵『サー・イエッ・サー』ゴホッ ゴホッ!

 

ーーーーー

 

とある民家の地下室に、『ある物』が壺に入って、所狭しと置かれている。

 

これは、『徐州 下邳』での名物………の副産物。 本来は塵で捨てる予定だったのを、一刀が見つけて壺に封印して地下に封じ込めた。

 

地下室の中は、強烈な悪臭が漂い……何人かの兵士が気分が悪くなり倒れる!

 

因みに……名誉の為に言えば、とある料理の失敗作では無い! ただでさえ貴重な食料を、そんな事に使われたら『勿体ないお化け』に襲われてしまう。

 

………そんな恐るべき壺を地上に解放させるべき、一刀達が動いていた!!

 

ーーーーー

 

一刀「うぐっ! た、耐えられない! ちょっと空気を吸いに!」

 

真桜「隊長~! 早う戻って来ておくんなはれよ? ウチだけ兵の中に残されるのは、なんぼ何でもきついわ!!」

 

真桜の悲しき叫びを背に受けながら……外に飛び出す一刀。

 

麗羽達も手伝うと申し出てくれたが……今の麗羽は、華琳並みの活躍が出来る将ゆえ、斗詩達と一緒に軍師の補佐や訓練へと出向いていた。

 

★☆☆

 

一刀「ふうぅ─────! 空気が旨い!!」

 

あんな環境の中で、久しぶりに吸う空気は旨い! まだ、四半刻(約15分)しか経っていないのに……このように思うのは、それだけキツイ環境だった為か?

 

それとも、一刀の仕事が、主にデスクワーク中心に行っていた為なのか? 

 

 

??「………貴方が、この世界の北郷一刀……ですか?」

 

一刀「────誰だ!!」

 

于吉「私の名は、于吉。 しがない道士……ですよ」

 

眼鏡を掛けた白い道士服の少年、『于吉』が背後より現れる!!

 

ーーーーー

 

一刀は、驚きの余り、少しの間だが動けなかった。 

 

しかし、動かなければ負けだと、この世界で身に付いた教えを思い出し、身体を動かす。 そして、冷静に于吉を観察しながら対峙する。

 

一刀「いや……その身体から滲み出る……得体の知れない感覚! お前……」

 

于吉「なかなか鋭いですね! 多分、貴方の想像通り───」

 

『───敵ですよ!』と于吉が、応えようとした時、予想外の言葉が返ってきた。 

 

一刀「やはり、お前も貂蝉と同じ────『漢女』か!!」

 

于吉「───────はぁ!?!?」

 

一刀「近付くな! どうも雰囲気が、貂蝉と似ていたから、おかしいと思ったんだぁ!! 俺は普通に、異性に興味ある健全な男子だ! 同性を恋愛対象で見たような覚えなんか───無い!!!」

 

心外である! 誠に心外である!! 私を貂蝉のような化け物と一緒にするなんてぇ─────!! 

 

于吉は、一刀の過ちを指摘するため、説明した!!

 

于吉「お待ちなさい! 誤解! 誤解ですよ!? この于吉、興味があるのは相方の左慈だけであって、北郷一刀……貴方はタイプではありません!」

 

一刀「どこが誤解だ!! ……いや、それより俺じゃないとなると──狙われるのは儁乂か! ヤバい! 誰か、誰かぁ────!!」

 

曹兵「はいっ!」

 

一刀「張儁乂将軍に緊急連絡! 男を好む変態が狙っているから、気をつけろと伝えろぉ─────!!! 念のため、皆も用心するんだ!! こいつ、こいつだからな!? よく覚えておくんだ!!」

 

曹兵「はっ、はいっ!!」ダッ!

 

────更なる誤解が、誤解を生んでしまったようだ!

 

于吉「……やってくれますね、北郷一刀! この外史の鍵となる男だけあります! ──────しかし、覚悟しておきなさい! 

 

貴方は、天城颯馬と同じ、この世界の運命を握る者。 天城共々殺害し、この世界を破滅へと導きましょう!!!」

 

そう告げると、于吉の姿は消える! 

 

誤解を残したままで去ったが、いいのだろうか? 

 

一刀「……天城様と……この俺が………?」

 

一刀は、于吉の残した言葉を頭の中で反芻しつつ、唖然とするのであった。 

 

 

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

天城の過去が若干『戦極姫4』と変わってしまいました。 

 

話の都合上という事で、お許し願います。

 

金曜日にいろいろと忙しくなりそうでしたので、急ぎで投稿。

 

よろしければ、また次回も、読んで下さい!!

 

 


 
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