No.709323

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その24 ~終結~

2014-08-17 00:43:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3517   閲覧ユーザー数:1177

アザゼルを撃破し、無事に騒動を解決する事が出来たOTAKU旅団。

 

被害の出た海鳴市は街の人々によって少しずつ復興中で、異界は支配人やUnknown達の協力によって厳重な封印を施される事となった。しかし今回の事件で犠牲になってしまった命も多く、海鳴市の人々がすぐ立ち直るのにはしばらくの時間が必要だった。

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、木材こっちに持って来てくれー!」

 

「こっちは終わったぞー!」

 

あれから二日後。海鳴市では現在、復興作業が行われている真っ最中だった。亡霊やゴーストショッカーがいなくなった今、街の人々は海鳴市を元の平和な海鳴市に戻そうと奮闘している。そんな光景を、二百式はビルの屋上から見渡していた。

 

「…空しいな、何もかも」

 

今回の騒動による被害は決して小さくはない。ゴーストショッカーの襲撃で、中には命を落とした者だってたくさんいる。それだけ被害の大きい騒動を、何故もっと早く止められなかったのか。旅団ほどの大きな勢力を持ってしても、被害を抑える事は出来なかったのか。

 

(あの時の事だってそうだ。キリヤを助けようとした時、俺は何者かの妨害を受けた…)

 

あの妨害の後、二百式は敵の攻撃を受けて石化してしまった。幸いにもロキが発動させたアイオンの眼の力で復活する事が出来たものの、下手をすれば命を落としかねない事態だ。二百式が戦った怪人の中に、地形を変化させる能力を持った怪人がいたとは考えにくい。つまり今回の妨害は敵ではなく、味方側に実行した者がいたという事になる。

 

「ロキを覚醒させる為だけに、俺の行動を妨害したっていうのか……嘗めやがって…!!」

 

二百式の握っていた柵がミシミシと音を立てる。それ程までに、二百式は理不尽な妨害に対する憤りを感じ続けていた。

 

(上からの指示で俺を妨害したというのであれば、俺は問い質さなければならない……この旅団という組織その物が、何を計画しているのかを…)

 

二百式は通信機を取り出し、クライシスに連絡を取ろうとする。しかし…

 

「…くそ、何故繋がらん…!!」

 

クライシスが通信に出る事は無かった。何度やっても通信は繋がらず、二百式は苛立ちのあまり拳を柵に思いきり叩きつけ、柵が更にひん曲がる。

 

(こんな状況じゃ、誰が敵で誰が味方なのかも碌に分からん。いや、そもそも味方なんざ必要ない……誰も信じられない今、俺は一人でやるしかない……俺の邪魔をする奴は、誰だろうと潰すだけだ…!!)

 

二百式は通信機をしまい、懐から取り出したはやての写真を見つめる。

 

「はやての為にも、俺は突き止めなければならない……旅団が一体、何を成そうとしているのかを」

 

自分のやるべき事がハッキリした以上、すぐに取り掛からなければならない。二百式は転移魔法を発動し、海鳴市から姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、楽園(エデン)の食堂では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディアーリーズ、支配人、真司の三人は真っ白な状態のまま、食堂の机に突っ伏していた。離れた位置の席に座っているawsとガルムは、隣に座っているmiriに問いかける。

 

「…ヤケに真っ白けだな」

 

「なぁmiri、あの三人に一体何があったんだ?」

 

「あ、あぁ……昨夜、色々あったらしくてな」

 

話は少しだけ遡る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『冥界への入り口を開くのに、少し手間がかかる。だから三日間ほど時間をくれ』

 

あの騒動の後、冥界に送られる事なく地上世界に取り残されてしまった雲雀、クレア、真司、そして子供の亡霊達。彼女達を改めて冥界へ送る為、現在Unknownが冥界への入り口を開く為の準備を進めており、クライシスの許可の下、彼女達は約三日間だけ猶予を与えられる事となった。当然霊体のままでは不便がある為、雲雀逹も真司と同じようにokakaの貸し与えたアンドロイドに憑依して過ごす事となっている。そこまでは何の問題も無かったのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アキちゃんから聞いたわよ。ウルちゃん、まだ経験は無いんですって?』

 

『ちょ、いきなり何を言い出すんですか雲雀さん!?』

 

『せっかくだし、この三日の間に体験しちゃいなさいよ♪ 大丈夫、私が手取り足取り教えてあげるから』

 

『いやいやいやいや!! 流石にそればっかり勘弁し…ほがぁ!? し、痺れびれ、ぇ…!!』

 

『雲雀さん、このままこのヘタレを部屋に引き擦り込んじゃって下さいまし』

 

『あら、kaitoちゃんナイスよ♪』

 

『ちょ、kaitoさんもグルかよよよよよ…!!』

 

『さぁて、ちゃっちゃと始めましょうか♪ あ、アキちゃん達も呼んであげなくちゃね~♪』

 

『み、美空さん……こ、この人を止めて下さ―――』

 

『あ、あの、ウルさん…』

 

『へ…?』

 

『その……や、優しく…して下さい、ね…?』

 

『み、味方がいなかったぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!』

 

『さぁウルちゃん、諦めてこっちに来なさ~い』

 

『いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…』

 

『行ってら~』

 

ディアーリーズの場合。kaitoの協力を得た雲雀によって、美空やアキ達ディアラヴァーズの全員と夜の営みを体験する羽目になり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エヘヘヘヘ~…レ~イ~♪』

 

『ん、何だクレア……うわ、酒くさっ!? おま、どんだけ酒飲みやがったんだよ!!』

 

『良いじゃん良いじゃ~ん♪ それよりレイ~、私何だか、身体中が暑いよ~?』

 

『な、まさか媚薬入りか!? おい誰だクレアに飲ませたのは!!』

 

『俺だ』

 

『私だ』

 

『蒼崎そしてkaitoお前等ァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

『レ~イ~』

 

『おい待てクレア何する気だコラちょっやめ…ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

支配人の場合。蒼崎とkaitoに媚薬入りの酒を飲まされたクレアによって、こちらも夜の営みを翌日まで行い続ける事となり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『城戸真司、だったか? 仮面ライダー龍騎』

 

『はい?』

 

『kaitoからお前の事は聞いている。ちょうど良い、俺と少し模擬戦しようじゃないか』

 

『はぁ!? ちょ、待ってくれよ、何で俺とアンタが戦わなきゃいけないんだよ!!』

 

『理由は単純さ。俺とお前が、仮面ライダーだからさ』

 

『!? アンタも、ライダー…』

 

『と言っても、俺はお前の知ってるライダーとは少し違う。人間の自由と平和を守る為に戦う戦士、それが俺の知る仮面ライダーだ』

 

『自由と平和を、守る……そ、そっか。他の世界じゃ、仮面ライダーは正義の味方なんだな…』

 

『まぁ、それぞれの世界のライダーで戦う理由はまた違うけどな。それはともかく、俺はお前が持つ仮面ライダーとしての強さを見たい。俺と模擬戦をしてくれないか』

 

『えっと……遠慮する、のは駄目?』

 

『駄目だ』

 

『即答!?』

 

『三日も猶予があるんだ、少しくらい良いだろう? さぁ、死ぬ気で俺と戦ってくれ』

 

『いや俺もう死んでるし……え、ちょ、その手は何ですか? え、何これ強制? ちょ、待ってお願い誰か俺を助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?』

 

『ガンバレ~』

 

真司の場合。kaitoから情報を仕入れたげんぶによって一日中、彼との模擬戦に付き合わされる羽目になってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「全部お前の所為かkaito」」

 

「テヘペロ☆」

 

しかも三人共、kaitoが余計な事をしたのが原因だった。当の本人は悪気も無さそうに舌を出し、awsとガルムは呆れたように溜め息をつく。

 

「お前も本当によくやるよ。いつかマジで殺されるぞ」

 

「後悔も反省もしない、するべきと思った時はとにかくイタズラを実行する、それが自分!」

 

「団長に処罰される事になったらどうするんだ?」

 

「スライディング土下座して謝罪する」

 

「「「揺るぎ無ぇなオイ」」」

 

彼等がそんな話をしている中で、真っ白けになっている三人はと言うと…

 

「ディア~…生きてるか~…?」

 

「生~き~て~ま~す……真司さんは~…?」

 

「お、俺も何とかぁ~…」

 

机に突っ伏している状態でも一応、彼等は意識を保ってはいた。ディアーリーズと支配人は散々搾り取られた所為で、真司は散々しごかれた所為でだいぶ気力を失いかけているが。

 

「はは……ウル、レイ、お前等も苦労したんだな…」

 

「そういう真司こそ、疲れてんじゃねぇか…」

 

「まぁね……そういえば、子供達は~…?」

 

「あの子逹なら、アンク逹が今頃面倒を見てくれてると思うぜ~…」

 

「そっかぁ~…美空ちゃん達は~?」

 

「美空さんや雲雀さん達は今、僕の部屋で休んでると思いま~す…親子水入らず、二人でゆっくり話もして欲しいので」

 

「そっか…クレアも今頃、俺の部屋でぐっすり寝てるだろうな…」

 

「「「…ふぅ~」」」

 

三人同時に息を吐く。

 

「…真司さん」

 

「…ん?」

 

疲れ切っていた筈のディアーリーズは突然真剣な表情になり、真司の方に顔を向ける。未だ机に突っ伏しているままなので、だいぶシュールな光景である。

 

「今回は、色々ありがとうございました。真司さんも、あの子供達も、今回の戦いに巻き込むような事になってしまって…」

 

「あぁ、良いって良いって。ゴーストショッカーだっけ? アイツ等も無事に倒せたんだし、雲雀さんやクレアちゃんも助け出せたんだし」

 

「…それでも、被害は相当デカかったけどな」

 

支配人も話に介入する。

 

「ソラさんから聞かされた。ユウナちゃんの教え子がいるんだけどよ……その娘の弟さん、怪人共の手にかかってしまったらしい」

 

「「!!」」

 

「ロキ逹が今頃、その弟さんの葬儀に参加してる最中だ。弟さんだけじゃない、他にも怪人達によって殺された人間は多く存在している。今回の件で、海鳴市はだいぶ傷付いちまった」

 

「…俺達の所為だ。俺達が早く、奴等を止められていれば…」

 

「全ての元凶は他でもないアザゼルだ、お前達の責任じゃない。それに、今更俺達がどれだけ後悔しようとも、状況は何も変わりはしない」

 

「レイ…」

 

支配人が机に突っ伏していた状態から起き上がる。

 

「二度とこんな被害を出さないように、俺達が戦い抜くしかない。どれだけ傷付こうとも、どれだけ死にかけようとも……お前だってそうだろ、ディア」

 

「…はい」

 

ディアも同じように起き上がる。

 

「今回の事で、僕も改めて認識しました。僕が戦うのは、守りたい物を守る為……守り抜く為に、僕は生き続けなければならない。死んでいった人達の為にも」

 

「…本当に凄いよな」

 

そして真司も起き上がる。

 

「俺、二人みたいに何でも出来る訳じゃないからさ……ライダー同士の戦いを止めたい。モンスターから人を守りたい。そう願って戦って、結局俺は死んじゃった」

 

「ウル、レイ……お前等も一緒だったら、俺は戦いを止められたのかな」

 

「真司さん…」

 

少しだけ暗い雰囲気が続き、数秒経った後に支配人が両手を叩く。

 

「ま、暗い話は一旦終わりだ。ひとまず飯でも食おうじゃねぇか」

 

「え、支配人さん……大丈夫なんですか? その状態で」

 

「何とかなるさ……若干、身体中が痛いけどな」

 

「お、俺も手伝うよ! 餃子なら作れるからさ!」

 

「あぁ、頼むぜ真司」

 

「「「ウルお兄ちゃ~ん、遊ぼ~う!」」」

 

「うげ!? ちょ、今はちょっと休ませ…あらぁ~!?」

 

「「…頑張って~」」

 

「裏切り者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

ディアーリーズは子供達によって強制的に連行され、支配人と真司は敢えて助け舟を出さずに厨房まで向かうのだった。

 

「本当に元気だな、あの子逹は」

 

「ははは…」

 

支配人が調理の準備に取り掛かり、真司もそれに続く。

 

(お前今頃、願いを叶えられてるのかな……蓮)

 

ある時は戦い、ある時は共に戦った、かつての友達の事を思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は再び変わり、海鳴市…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリヤ兄さん、花束買ってきました」

 

「あぁ、ありがとうルイ」

 

墓地にはタカナシ家一同、刀奈逹ユウナの教え子達、そしてスノーズといったメンバーが集まっていた。彼等がここに集まっている理由はただ一つ…

 

「…隼」

 

刀奈の弟―――湯島隼の弔いの為である。

 

「ごめんなさい、スノーズさん。ここまで付き合って貰っちゃって…」

 

「構わないよ。一度関わっちゃった以上、付き合えるところまで付き合うだけさ……それで、刀奈ちゃんの今後はどうなってるんだい?」

 

「あの娘は私達の家で暮らす事になりました。親戚の方達は海鳴市から遠い街に暮らしてますし、彼女の通学に負担をかける訳にはいきませんし…」

 

実を言うと、現時点で海鳴市に住んでいる教え子は刀奈だけであり、他の三人は小学校を卒業した後それぞれ別の街へ引っ越したとの事。今回は夏休みを利用して四人が久しぶりに再会し、刀奈の弟である隼も交えて一緒に楽しく過ごそうと計画していたのだが、買い出しに出ていた刀奈と雅也が外で異界に引き込まれ、隼と共に留守番を任されていた静香と優馬も同じように異界に導かれてしまい、そして今回の騒動に至るという事らしい.

 

「よし、準備が出来たぞ」

 

スノーズとユウナが話している中、ソラが墓に花を供え終えた。その後は全員が墓に向かって、両手を合わせて静かに合掌する。

 

(あなたの分まで、私が生きてみせる……だから見守っていてね、隼…!)

 

(今の刀奈には、誰か支えが必要だ。だからこそ、俺達が彼女を支えてみせる……彼女の“希望”としてあり続けてみせる…!)

 

合掌する中で、刀奈とロキはそれぞれ決意を固める。その意志には、一切の揺るぎは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽霊騒動から三日目…

 

 

 

 

 

 

「遊園地?」

 

「あぁ。ロキ逹もどうだ?」

 

ロキは楽園(エデン)の自室にて、支配人から遊園地への誘いを受けていた。この時点ではソラがクライシスの仕事を手伝っている為に不在、ルカは今頃アリサやすずかとのデートに付き合わされている真っ最中だろう。

 

「静香ちゃん達も、刀奈ちゃんを元気付けようとしてるらしくてな。まぁ無理にとは言わないが」

 

「う~ん、でもなぁ」

 

支配人の話によると、ユウナやルイ、ディアーリーズ一同、クレアに真司、スノーズも一緒に向かう事になっているらしい。しかし幽霊騒動が収まってからまだ三日目であり、まだ刀奈も気持ちの整理はついていないのではないかとロキは不安に思っていた。しかし、その心配は杞憂だった。

 

「私は大丈夫です」

 

「! 刀奈…」

 

支配人に来ていたのだろうか。ロキと支配人の間から、刀奈がひょっこり顔を出した。

 

「もう良いのか?」

 

「はい。隼の分も私が精一杯生きる、そう決めましたから」

 

「だそうだ。本人はこう言っているが、どうだ?」

 

「…仕方ないな」

 

ロキの答えが出るのも、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」」」

 

「「「ヒャッホォォォォォォォォォウッ!!」」」

 

そして遊園地。

 

早速ディアーリーズ達がジェットコースターに乗って絶叫し、スノーズとユウナはそんな彼等をのんびりと眺めていた。

 

「やれやれ、随分とはしゃいでるものだね」

 

「あははは……まぁでも、良いじゃないですか。刀奈さんも少しずつ、元気を取り戻していってますし」

 

「まぁ、別に良いけどさ……ところで、何で君はさっきから手を離そうとしないのかな?」

 

「ん、何かおかしいですか?」

 

柵にかけられていたスノーズの手は、ユウナにしっかりと掴まれていた。ユウナはそれが当然であるかのような反応を返す。

 

「だってこうでもしないと、スノーズさん一人で何処か行っちゃいそうですから。せっかくこの海鳴市に来たんです、少しくらいは楽しんだらどうですか?」

 

「…全く、君には敵いそうにないよ」

 

「それはどうも」

 

スノーズが溜め息をつき、ユウナも楽しそうに笑ってみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も…

 

「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ヒャッホォォォォォォォォォォォォウッ!!!」

 

「ぬぉ、く、結構キツい…!?」

 

「…!!」

 

真司やロキ、ディアや美空達がジェットコースターに乗って楽しんだり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真司、先に行くぜ~」

 

「あ、ちょ!? くっそ、俺だって負けねぇからな!!」

 

「ちょ、真司さんぶつかりますって…のごわっ!?」

 

「ありゃりゃ、飛ばすねぇ二人共」

 

「…二人共、単純」

 

「「~♪」」

 

カートに乗った支配人と真司が競争し、ディアの乗っていたカートがそれに激突。フィアレスやユイがそれを眺める中、ハルトとルイは二人仲良く走行する。

 

他にも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッホーウ!!」

 

「あぁ~気持ち良い~♪」

 

「お~い、ウル~見てる~?」

 

「はいはい、見てますよ~」

 

「皆、楽しそう…です…!」

 

空中ブランコ型のアトラクションに乗るロキ逹を、ディアーリーズと美空が楽しそうに見たり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い、楽しいか~?」

 

「「「楽しい~!」」」

 

「ちょ、美空さん、胸が…!!」

 

「? どうか、しましたか?」

 

「い、いえ、何でも…」

 

(((((羨ましい…!!)))))

 

「あらあら♪」

 

「「ニヤニヤニヤニヤ」」

 

「ちょ、そこ笑うなー!!」

 

メリーゴーランドでは真司が子供達の面倒を見ている一方で、ディアーリーズは相変わらず美空に後ろから抱きつかれており、他のディアラヴァーズが羨望の目を向ける中で雲雀やハルト、そして支配人逹が面白そうにそれを眺めていたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわわわ!? こ、こら、刀奈さん押さないでくれってば!?」

 

「何よ雅也、アンタだって男でしょ? バンジージャンプくらい余裕で挑んでみなさいよ!」

 

「諦めろ雅也、俺もさっきチャレンジさせられた」

 

「え、えっと…ファイトです!」

 

「ちょ、市崎君に三川さんまでぇ!?」

 

「あぁもう、良いからとっとと行きなさい!!」

 

「え、ちょっと待…ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」

 

(…どんまい、羽柴雅也)

 

バンジージャンプでは、刀奈によって蹴り落とされた雅也の事をロキが内心で同情したり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、次はお化け屋敷だ」

 

「ごめん、俺はパ―――」

 

「さぁて、真司君も一緒に行こうじゃないか」

 

「ちょ、やめてー!? 俺お化け苦手なんだってばー!!」

 

「既に死んでる人間が何を言ってるのやら…」

 

「どうしよっかな~、私も幽体離脱してお化けを脅かしてみよっかな~?」

 

「クレア、お化け役の人が可哀想だからやめてやれ」

 

「はい次、誰がウルとペアを組むか決めようじゃないの!」

 

「よっしゃあ、ジャンケン勝負じゃあ!!」

 

「あらあら、ウルちゃんも人気者ねぇ♪」

 

お化け屋敷においては、真司がロキによって強制的に連行され、幽体離脱でイタズラしようとしたクレアを支配人が止めたり、ディアラヴァーズは誰がディアーリーズとペアを組んで入るかジャンケン勝負を何度も繰り返したり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コーヒーカップ? そんなので良いのかい?」

 

「あなたにとってはそんなのでも、私にとってはとても利益がある事です」

 

「ふぅん……まぁ、僕は良いけどさ」

 

「なら、早く乗りましょう。時間も惜しいですから」

 

「はいはい、分かったから手を引っ張らないでくれると助かるな。別に逃げはしないって」

 

ユウナはユウナで、スノーズを強引に連れてからコーヒーカップに乗せていたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ゲフゥ…」」」

 

「こちらkaito。邪魔なゴミ虫は全員片付けた」

 

『こちらokaka。了解、そのまま一同の監視を続けてくれ』

 

「イエッサー!」

 

「…ようやるよ、お前等も」

 

一同が楽しんでいる裏で、女性陣をナンパしようとした不良共をokakaやkaito逹が全面的に排除し、ガルムがそんな様子を見て苦笑していたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「たっか~い!」」」

 

「はいはい、そんな覗き込まなくても外は見えますよ~」

 

「うっはぁ、最近の観覧車は凄いな。足元まで丸見えだぜ?」

 

「あ、あぁ…ちょっと怖いと思ってる俺がいる…」

 

「スノーズさん、どうですか?」

 

「…うん、悪くないかな」

 

最後は全員で観覧車に乗ったりと、一同は最後まで徹底的に一日を楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時刻は夕方……いよいよ、別れの時はやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、もうじき時間だ」

 

楽園(エデン)の屋外エリアにて、Unknownは冥界の入り口を開く準備を完了していた。既にディアーリーズ達もエリアに集まっており、雲雀やクレア、真司や子供達は憑依していたアンドロイドから離れて再び霊体の姿に戻っている。

 

「この魔法陣に乗れば、冥界まで転移出来る。別れの言葉があるなら、今の内に言っておくと良い」

 

「いよいよお別れ、か……なぁ真司」

 

『あぁ。何か、色々ありがとな一城』

 

「良いって事よ。餃子のレシピも教えて貰ったしな」

 

「俺としては、もう少しお前と模擬戦をしたかったんだが…」

 

『ちょ、そろそろ本当に勘弁してくれ本郷さん…』

 

「真司さん」

 

『お』

 

げんぶが両手をパキポキ鳴らすのを見て真司が若干青ざめているところに、ディアーリーズが駆け寄る。

 

「短い間でしたけど、本当にありがとうございました」

 

『いやぁ、俺なんか何にもしてないって。まぁとにかく、ウルも元気でな』

 

「はい、真司さん」

 

真司とディアーリーズが握手すると、そこに雲雀も歩み寄って来た。

 

『そろそろ、私達もお別れね。もうちょっとだけ、美空ちゃんやウルちゃん達の事を可愛がってあげたかったんだけど』

 

「はぁ…雲雀さんのおかげで、色々と凄まじい体験でしたよアレは」

 

『あら、ウルちゃんだって相当なテクニックだったわよ? 昨日だってあんなに激しく―――』

 

「雲雀さん、そこまでです!!」

 

「あぅぅぅ…!!」

 

「「「「「ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ」」」」」

 

「ちょ、皆して僕を見ないで下さい!!」

 

雲雀の危うい発言でディアーリーズと美空は顔を赤らめ、周囲のメンバーはニヤつくか、もしくは暖かい目で二人を見据える。

 

更に離れた位置では…

 

『うぅ~ん、もうちょっと一緒に過ごしたかったんだけどな~』

 

「料理作りに散々付き合わされるのも困りもんだがな。お前の趣味に付き合った結果、だいぶ食材が減っちまったからな」

 

「…食材、また買い直さなきゃいけない」

 

『えへへ、ごめんちゃい☆』

 

「にゃはは~。本当に変わらないねぇ、クレアちゃんも」

 

「はん、マイペース過ぎて逆に安心したぜ俺様は」

 

『あぁそうだ、ヴァニシュさんにもよろしく言っておいてね。結局一日目の一回しか顔を合わせられなかったから』

 

「分かった、伝えておくよ」

 

『あぁそれと……レイ、ちょっとこっち来て』

 

「? 何を―――」

 

支配人の台詞が遮られた。何故なら…

 

『ん…♪』

 

「ッ…!?」

 

支配人の唇と、クレアの唇が重なったからだ。

 

「「うわぉ」」

 

「…不意打ち過ぎ」

 

フィアレス逹が見ている中、クレアは支配人から唇を離す。

 

『今度はもう会えないだろうからさ……良いでしょ?』

 

「…全く、やるならやるで言ってくれ」

 

『あはは♪』

 

支配人は溜め息をつきつつも、拒絶はしなかった。クレアの目からほんの僅かに、涙が零れ落ちていたからだ。クレアが嬉しそうに笑うのを見て、支配人も同じく笑ってみせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、そろそろ魔法陣に乗ってくれ」

 

Unknownに声をかけられ、雲雀逹は魔法陣の上へと乗る。

 

『皆、向こうでも元気に過ごしなさいね♪』

 

『ふん……精々、のんびり過ごすんだな』

 

『『『は~い!』』』

 

『あ~らら。メズールもアンクも、すっかり親子みたいになっちゃって』

 

『まぁ、今に始まった事じゃないがな』

 

『みんな、げんきでね~』

 

メズールとアンクが子供達と別れの挨拶をしているところをカザリ逹が見守る中、雲雀と真司もディアーリーズ達と向き合っていた。

 

『それじゃあ皆、元気でな』

 

『間違っても、あっさりこっちに来るような事があっちゃ駄目よ?』

 

「はい。二人もお元気で」

 

「お母さん……さようなら」

 

『えぇ、さようなら美空ちゃん。元気でね』

 

雲雀は美空の頭を優しく撫でてから、真司と共に魔法陣の上へと乗る。

 

『それじゃレイ、それに皆。元気でね!』

 

「あぁ、達者でな」

 

「バイバイ、クレアちゃん」

 

「…バイバイ」

 

「はん、向こうでも元気にしろよな!」

 

『あはは♪ それじゃ、もう行くね』

 

クレアも魔法陣へと飛び乗り、いよいよUnknownによって冥界までの転移が行われ始める。

 

『それじゃあ皆、さようなら』

 

『皆、すぐに死んだりするんじゃないぞ~!』

 

『レイ~! それに皆~! さようなら~!!』

 

『『『さようなら~!』』』

 

「「「「「さようなら~!」」」」」

 

ディアーリーズ達が手を振る中、魔法陣から光の粒子が上がり始め、雲雀逹を包み込んでいく。そして最後は光と共に、彼女達の姿もその場から消えていくのだった。

 

「じゃあな、クレア…」

 

「雲雀さん……真司さん……僕、必ず守ってみせます。美空さんの事も……皆で過ごす、この日常を…!」

 

「お母、さん……さよう、なら…ッ…!」

 

僅かに残っている光の粒子を見据えながら、支配人やディアーリーズ、美空はそれぞれの人物に最後までお別れの言葉を告げる。他のメンバー達も、そんな三人の事を静かに見守り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、楽園(エデン)団長室にて…

 

 

 

 

 

 

 

 

「この日、六名の魂が冥界へと導かれました。アザゼルのいた異界も、厳重に封印を施されたとの事です」

 

「…そうか」

 

竜神丸は今回使ったガイアドライバーとデスメモリをクライシスに返却し、今回の出来事についての報告を完了していた。クライシスは椅子に座ったまま、報告書を静かに見つめている。

 

「もっと早く、この騒動を解決したかった。そんな顔をしてるのですか?」

 

「私とて万能ではない……だが、もっと早く予測は出来たのではないかと、自分を卑下するような事ばかり考えてしまうよ」

 

「おやおや。あなただって今更、弱音を吐いていられるような余裕は無い筈ですが?」

 

「それは分かり切っている事だ。私も今更、団長としての責務を放棄するつもりは無い」

 

「それなら良いのですが……あぁそうそう」

 

竜神丸は思い出したかのように一枚の写真を取り出す。

 

「今回の騒動中に撮れた写真です。如何でしょう」

 

「…!」

 

クライシスは差し出された写真を見て、すぐに表情を切り替えてから写真を竜神丸に返す。

 

「okakaに調査へ向かわせろ。場合によっては、彼も“こちら側”に引き入れる事になるかも知れん」

 

「承知しました」

 

「それと」

 

クライシスが指を鳴らす。すると一人の侍女がスーツケースを持って竜神丸の前まで移動し、スーツケースを開いて中身を彼に見せる。スーツケースの中には、刀の形状をしたパーツの着いた黒いベルトが入っていた。

 

「戦極ドライバーがようやく完成した。まずはお前が性能をテストしてから、okakaや他のメンバーにも配給してくれ。場合によっては、そちらで好きなように調整してくれて構わない」

 

「ほほう……えぇ、畏まりました。こちらで何とかやってみましょう」

 

竜神丸は黒いベルト―――戦極ドライバーを手に取り、興味深そうに眺める。

 

「そして、こちらもお前に任せる」

 

するともう一人の侍女が現れ、もう一つのスーツケースを開く。その中には戦極ドライバーとはまた違った形状の赤いベルト、そして『ELS-01』と描かれたレモン型の錠前が入っていた。

 

「おやま。ゲネシスドライバーどころか、エナジーロックシードも完成していたとは」

 

「今のままでも性能は高めにしてある。くれぐれも、あまりやり過ぎないように」

 

「了解しました。ククククク…♪」

 

竜神丸は赤いベルト―――ゲネシスドライバーを手に取って面白そうに眺める中、彼の手元からは先程の写真が落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その写真には、旅団と共に戦った鮮血の魔法使い―――クリムゾンの姿が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだまだ、波乱は続きそうである。

 


 
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