No.709058

義輝記 星霜の章 その七

いたさん

義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。

2014-08-16 00:36:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:917   閲覧ユーザー数:821

【 益州での奇策 の件 】

 

〖 益州 成都近辺 街道 にて 〗

 

迷吾「左慈とか言う小僧に誑かされた(たぶらかされた)と思ったが、そうでもなさそうだな? 氐の王よ!!」

 

阿貴 「その言葉、私が言いたい事だったぞ? 羌族の王!!」

 

二人の逞しい身体の男が、豪華な衣装を着け先頭を進む。

 

少し傾斜がきついが…道筋はかなり広い。 馬に乗った者達が横に四列で並んでも大丈夫な程。 街道は、それなりに整備されていたが、街道筋両側面は緩やかな上り斜面を描き、人の侵入を容易く許す表情をしていない。

 

まぁ、余程事情が無ければ………好き好んで入ろうと思う奴はいない。

 

そんな敵国の道を…………四列に別れた兵士が続く。 

 

各五十万の編成で………計百万。 しかも、全員騎馬での進軍!! 

 

広大な大陸を歩いていれば、疲労等が溜まり、普段の戦闘が差し支える恐れが出てくるので、最低限に抑える事が目的!! 

 

また、遊牧民族ゆえに馬の扱いは慣れているため、多少の山道も乗りこなし、迅速な進軍が可能だからだ!

 

◆☆◆  ◆☆◆  ◆☆◆

 

羌族の王……迷吾。 

 

年の頃三十代の若き肉体を持つ偉丈夫。 槍を片手に持ち、目を釣り上げて敵兵が有無を確認しながら進む。 身を包む革鎧から見える身体には、無数の傷跡が見え……先陣を好み武人の性格を伺わせる。

 

氐の王……阿貴 

 

年の頃四十代の髭だらけの巨漢。 腰に立派な佩刀を付けて、畏怖堂々と道を行軍をするのは、王から醸し出せる威厳ゆえか?

 

迷吾のように力だけの王では無い事は、道筋に斥候を放ち、様子を窺うのを忘れていない慎重な態度からして、察する事ができた。

 

◆☆◆  ◆☆◆  ◆☆◆

 

迷吾「………兎に角だ! 先陣は俺が行かせてもらう! 腑抜けな父者や兄者は先に漢王朝に下ったようだが………俺は違う!! 家族や仲間達を踏みにじってきた奴らを皆殺しにして、大陸に羌族の独立国家を建国するんだ!!」

 

阿貴「………気持ちは分かる。 私とて氐の独立国家を考えている。 しかし、今の益州は危険だ!! 太守が劉焉だった時なら攻める隙があったが、現太守代理は大将軍何進! 神に守護された将だと噂が流れている!!」

 

迷吾「ふんっ! どこかの臆病風に吹かれた奴の情報なんだろう!! 本当に守護されているのなら、その奇跡を俺達に見せつけてみろってんだ!!!」

 

阿貴が慎重論を展開するが、迷吾は………全く意に介さない。

 

 

??『…………では、奇跡を見せれば、漢王朝に服従するのか?』

 

 

───────誰かの声が聞こえた。 

 

★☆☆

 

迷吾「誰だぁ!」

 

阿貴「─────漢王朝の手の者か!!」

 

二人の将が怒鳴りながら、声がする場所を探るが………誰もいない。

 

何進『………漢王朝の臣 何進! お前達の相手をする者だ!』

 

しかし、声だけが聞こえてくる!!

 

迷吾「野郎おぉ~! 早くも俺達をからかう気かぁ! 出てきやがれぇ!!」

 

短気な迷吾は、槍を振り回して辺りを突くが……反応がなく、二里(約850㍍)先に鎧を着用した男が一人現れる。

 

何進「どこを見ている! 儂は何進! 追いつけれると思うなら追いついてみろ! だが、儂は貴様達なんぞに討たれなどせん!!」ダッ!!

 

何進は、そう言い放つと……徒歩で逃げ始めた!!

 

迷吾「直ぐに追いついて……串刺しにしてやるぜぇ!!」

 

阿貴「待てっ!! 敵の罠だ!!」

 

迷吾は、自慢の馬捌きで、何進に直ぐに追い付こうと馬を進めようとするが、阿貴が手綱を抑え、動かさないように固定する。

 

迷吾「何しやがる! 奴が逃げるじゃないか! 早く放せぇ!!」

 

阿貴「頭を冷やせ! このまま行けば、お前が討たれるのは間違いない! そんな中で、残された羌族達はどうすればいいのだ!? お前の配下の兵士十数人で追撃を掛けて生け捕らせろ! 煮るのも焼くのも好きにさせてやる!!」

 

迷吾「──ケッ!! 分かったよっ! 野郎共! あの将を捕まえて、俺の前に引っ立ててこいやぁ!!」

 

羌兵『へいっ! お頭!!』ドドドドドッ!

 

阿貴「我が精兵よ! 先程の場所を調べてみよ! 些細な事も見逃すな!!」

 

氐兵『承知!』ガサガサッ!

 

◆◇◆

 

【 合流…そして混乱へ! の件 】

 

〖 徐州 下邳城 謁見の間 にて 〗

 

曹兵「た、大変でございます!」

 

数日前より、国境付近に現れる敵兵対応にどうすればいいか、皆で相談していたところ、一人の兵士が駆け込んできた!

 

秋蘭「落ち着け! 曹孟徳様の御前だぞ! 慌てずゆっくりと話せ!」

 

曹兵「は、はいっ! 実は洛陽から『天の御遣い様方』が、お目通りを願い城門に来ていらっしゃいます! 如何いたしましょうか?」

 

華琳「『天の御遣い』は沢山いる! その者達は何と名乗ったか?」

 

曹兵「はいっ! 『大友』、『島津』と名乗られています!」

 

華琳「一刀! 島津は分かるけど『大友』なる将は知らないわ!? 新しい御遣いの一人なの!?」

 

一刀「………多分、立花道雪様を含む三人が来たと思う。 元々大友家の重臣だったから…………」

 

春蘭「何ぃ!! 鬼が二人も来たのか!? 華琳様、是非に勝負を挑ませて下さい!!」

 

秋蘭「姉者! 相手は洛陽側の側近達だ! もし、何か御怪我をすれば、我々との関係に亀裂が入る可能性があるぞ!!」

 

華琳「………まずは、お通しして。 失礼無きよう丁重にね!」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

 

道雪「……お目通り許可して下さり、ありがとうございます! 曹孟徳様! 大友勢……立花道雪、高橋紹運、立花宗茂三名、ご挨拶申し上げます!」

 

義久「………妹達がお世話をお掛けしました~! 島津家当主、島津義久と申します~! 島津家も御尊顔を拝見させて頂き、感謝しております~!!」

 

華琳「丁重な挨拶痛み入ります! 今回、この城に参られた理由は……天城颯馬様からの命令……という事で宜しいので?」

 

道雪「その通りです! 軍師殿は曹孟徳殿の援兵として私達を遣わせました。これからは、貴女の指揮下にて奮戦したいと、私達は望んでいます!」

 

華琳「それでは、我が軍の臨時の客将で対応させていただく!」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

 

色々と話し合いがあり……謁見が終わり、道雪達は部屋を案内されようとしたが、華琳が呼び止める。

 

華琳「私個人で話をさせて欲しい。 配下の将を除き皆、人払いをお願い!」

 

…………将以外の者が退室した後、華琳は道雪達と義久達の前に跪き、顔を伏せつつ礼を述べる。

 

華琳「この曹孟徳、昨今より今に至るまで、天城颯馬や皆様に並々ならぬ配慮を頂き、今……この場に立つ事ができた! そして、是非とも話をしたいと思っていた将達が……ここに居る! 重ね重ね御礼申し上げたい!!」

 

………☆  

…………☆

 

義久「あらあら、どうしましょう? 本来なら颯馬君が受ける賛辞を、私達が受けるのには、理屈が合わない気がするんだけどぉ?」

 

道雪「いいではありませんか? 私達が証人となり華琳殿より礼を受け入たと伝えるのもよし、戦に勝って、本人へ直接申し上げて貰うのもありですよ?」

 

義久「それは駄目ぇ~! こ~んな可愛い子が、颯馬君の傍に来られたら~、お姉ちゃん……見向きもされなくなっちゃうもん!」プンスカ!

 

歳久「無いとは言えない………というのは、惚れた弱みですかね?」

 

華琳「はあぁ~!? あのねぇ! 私は、颯馬の事は気に入っているけど、別に好みじゃないの! ちゃんと、他に好きな…………ゴニョゴニョ」

 

一刀「確かに凄いからなぁ…天城様。 あの活躍、的確な判断、何が何でも守り抜くという意志! ………俺が女の子だったら惚れてかも……」

 

??「(こ、これは!? ………脈ありだよ!)」

 

??「(う、うん! ……いい構図を考えなきゃ!)」

 

コソコソ喋る二人の後ろから……近付く人影が。

 

宗茂「わ、私も……こんな小さい可愛い子が来てくれたら~~」テレテレ

 

朱里「はわわわわっ!」ギクッ

 

雛里「あわわわわわ!」ギクッ

 

ーーー

 

春蘭「天のお使いよ! 私の頼みを聞いて貰いたい!」

 

秋蘭「あ、姉者! 御遣いだ! 御遣い!!」

 

義弘「あぁっ! え~と………夏侯さん……だっけ!?」

 

家久「姓だけじゃなくて字も付けなきゃ! 二人いるんだから!!」

 

義弘「えっ? えぇ~とぉ、げ、げ、元さん!」

 

春蘭「待てぇい!! 何だ、その職人みたいな名前は!! 夏侯元譲だ! 元譲! く、くそぉ~! 私の名を辱めるとは───許せん!!」

 

義弘「ご、ごめんなさいっ!!」

 

ーーー

 

紹運「私も是非、この三国の英雄と手合わせを願いたい!」

 

星「フッ! 強者が集うのも何かしらの縁! 華琳様、是非参加の許可を!」

 

鈴々「鈴々もー!!」

 

季衣「チビッ子が参加するならボクも~!」

 

ーーーーーーーー

 

その後の展開は…………想像にお任せする。

 

ただ、今回の事で道雪達の合力が入った。 兵数は僅かに五百だが、曹操軍に更なる力を与えてくれる事は間違いないだろう。

 

◆◇◆

 

【 種明かし の件 】

 

〖 益州 成都近辺 街道 にて 〗

 

羌兵「ヒャハァー! 俺達を侮る馬鹿を直ぐに捉えてやるぜぇ!!」

 

羌兵「大人しくしやがれぇぇ!!!」

 

ドドドドドドドドドド──────ッ!

 

数人の騎兵が、徒歩で歩く何進に近付く。 

 

もう少し近付けば、何進を容易く捉え、頭である迷吾より褒美を貰える! 全員が……そう考えていたところ、思わぬ事が生じた!!

 

七歩(約10㍍)まで近付くと同時に、左右の両側から……急に木の枝が目の前に現れた! ………その距離は「零」であり、避ける事など思いもよらない!!

 

ビョーン! バサバサバサッ!!

 

羌兵「グギャアアァァア!!」バシィン! ゴロゴロ!

 

先頭に居た羌兵達に当たり、落馬して転げ落ちた!!

 

そして、後続の馬は………………急に止まれない! 

 

羌兵「うわ─────っ!」

 

ドドドドドッ─────!

 

…………………間一髪、横に転がり難を逃れた羌兵達。 

 

後続部隊が戻ってきて無事を確認、直ぐ近くでいるであろう何進を探すと! 

 

何故か付近に居らず……ここよりも三里(約1,2キロ)先を進んでいる!?

 

あの豪華な甲冑、貫禄ある体型、まして、大軍を後ろに控えているのに関わらず、のんびり物見遊山のように歩く者など、普通は居ない!!

 

羌兵「…………どうなってやがる?」

 

羌兵達は、仲間の一人を報告に行かせ、残りの人数で追い掛け始めた!

 

★☆☆

 

氐兵「阿貴様! 此方を!!」

 

阿貴「何か見付かったか?」

 

阿貴は、氐兵に呼ばれた場所に近付く。 

 

阿貴「ふ~ん? 迷吾殿! 此方に来て貰えないか?」

 

迷吾「何かおもしれぇもんでもあった………なんじゃこりゃ!?」

 

阿貴が迷吾に見せた物は、『底に穴が開いた中華鍋』と『竹筒』……。

 

阿貴「配下の者が見付けた時は、こうなっていたそうだ………」

 

中華鍋の底に竹筒を差し込み、その様子を見せる。

 

迷吾「それがどうしたんだよ!?」

 

訝しがる迷吾に、阿貴はやれ!と指示を出す。

 

『あー、あー、聞こえますか? 本日は晴天なり! 本日は晴天なり!』

 

迷吾「うぉっ!? 鍋が言葉を喋るだとぉ!? それに、この地域は霧が名物だろうがぁ! 見ろ! こんなに曇っているのに晴れは無いだろう!? 晴れはぁ~! あぁ~!?」

 

中華鍋にツッコミを食らわす迷吾。

 

『す、すいません! こういう時は、このように喋るようにと家訓で……』

 

迷吾「チィ! 鍋の家訓じゃ………しかたねぇ!!」

 

盛大に舌打ちをした後、ふと……どうでもいいことを考えた…………。

 

( 鍋を喋らせるとは、何進……恐るべし! いや、それを簡単に再現できた阿貴も侮れねぇ────っ!! )

 

ブワッと顔から汗が吹き出し、滝の如く流れ落ちる……脳筋の迷吾。 

 

阿貴「……単純な細工だ。 遠く離れた場所で、竹筒に耳を寄せて声を聞く。 その後に竹筒を通じて返答をすれば、あたかも人が居るように勘違いを起こせる。 しかも、鍋を利用する事で、性能を倍増させるか………」

 

迷吾「……………」

 

阿貴「……かなりの知恵者が関わっているかもしれん。 油断は禁物という物だ………ん?」

 

羌兵「た、大変です!! 敵将『何進』が────!!」

 

 

◆◇◆

 

 

【 于吉の詭策 の件 】

 

〖 兗州 鳥巣 鳥巣砦 にて 〗

 

 

左慈「ふんっ!」

 

于吉「…………そう来ましたか」

 

順慶「颯馬様が! 颯馬様が! やっとお会い出来ますわぁ!!」

 

久秀「……………………」

 

 

机の上に大陸の地図を広げ、状況を確認する四人。

 

左慈「山越兵………口先だけの弱兵か。 俺達のお膳立てしてやった事を、此処まで生かせなかったとは………つまらん!!」

 

于吉「ですが、時間は稼げましたよ? 大陸中の英傑が、我々の行動を阻めば……流石に、やりにくくて困りますものねぇ?」

 

左慈と于吉が交州を眺め、怒っていたり笑っていたりと様々。

 

順慶「……他には、西涼で百万の五胡と馬寿成率いる軍勢の戦いが勃発…!」

 

パチン! と置き石を置く順慶。

 

久秀「益州では、同じく五胡勢百万と何進勢との激突!」

 

パチン! と久秀が置く。

 

久秀「………これでは、颯馬といえど、後ろを気にしない訳にはいかないようね? それに、西涼では董卓、益州では何進と、主君と相方まで前線に出ているもの! …………精神的には、かなり辛い筈よ!?」クスクスクスクス

 

順慶「ふんっ! 颯馬様の隣に居るのは、この順慶ただ一人! 誰にも譲りませんわよ!?」

 

久秀「………………………」

 

順慶「勿論、久秀にも………! 久秀……どうかなさいまして? ボォ~としていましたが?」

 

久秀「………何でもないわ。 アナタの言葉に呆れて返事が出来なかっただけよ! 颯馬は、久秀が手に入れるの。 だけど、そうねぇ……久秀が死んだら、順慶に譲ってあげてもいいわよ?」

 

順慶「その前に、私のモノだと宣言させて貰いますわ!!」

 

★☆☆

 

于吉「フフフフッ! とうとう天城颯馬が動きましたか! 最終の戦いに相応しい舞台に仕上げていただき、感謝しておりますよ!!」

 

左慈「于吉が仕掛けた陰険極まりない罠だからな。 天城も運が無い男よ…。だが、ここまで耐えた骨のある奴も久しぶりだ! たっぷり相手をして葬らせて貰うか!!!」

 

二人の道士は、嗤いながら地図の上を見ている。

 

順慶「颯馬様を……上手く罠に嵌めれば、私のモノにしていいのですねぇ?」

 

于吉「それは勿論! 私達の目的は、この世界の破壊! 北郷一刀共々始末したいのですが……貴女方に差し上げましょう!」

 

順慶「うふっ! うふふふっ! 颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様~! この順慶が終生……貴方のお傍に居させて貰いますわぁ~!!」

 

久秀は、配置を見て首を傾げる。

 

久秀「………颯馬の軍の動かし方を見ると、私達を包囲するように見えるわね? 颯馬の軍は、寡兵と言うのも気にかかるわ。 いったい狙いは何なのかしら………?」

 

于吉「心配には及びません! 天城の軍が十万足らず、曹孟徳軍が三十万、孫呉の兵が四万。 それに比べ、私達の軍勢が七十万以上、五胡の兵力が二百万! 五十万に満たない軍勢より五倍以上も多い我が軍勢!

 

そして、万が一となれば、この于吉の術で………傀儡兵を呼び寄せる! 

 

完璧! 完璧ですぅ!! あはははははは──────っ!」

 

左慈「……于吉! 忘れるなっ! 俺達のもう一つの狙い、董卓所持の『銅鏡』完全破壊! いくら北郷達を倒しても、世界の破壊は実行できん!!」

 

于吉「………ふふっ! 妬いてるのですか? さ・じ『ドゴオォォン!!』 ブベラハァアァァ────!!!」ゴロゴロ!

 

左慈「─────それを行う為にも、お前達には頑張って貰わないと……非常に困るんだ!! 久秀! 順慶!」

 

順慶「お任せを……老師! 颯馬に寄り付く虫達共々、私が始末してあげますわ!!」

 

久秀「…………………………」

 

 

◆◇◆

 

 

【 奇門遁甲? の件 】

 

〖 益州 成都近辺 街道 にて 〗

 

阿貴「『縮地の術』か…………」

 

羌兵からの報告を聞いて、一瞬に悟る阿貴。 

 

『なんだそりゃ?』と顔に表情を浮かばす迷吾。

 

阿貴「昔……読んだ竹簡の中に『仙人』なる者が使う術があった。 我らが一足踏み出せば、彼らは一里(約400㍍)を進む。 遠くの道を、術で手前に持ってきて、一足踏み込めるようにする。 これが縮地の術だ!」

 

『─────────────!』

 

羌兵、氐兵共に驚く! 

 

敵は仙人!? ならば、我らが何十万集まろうが、者の数には入らないではないか! 仙術でドーンとやられば、あっと言う間に倒されてしまう!

 

迷吾「………ふん! そんな物は所詮イカサマに過ぎん! 俺が追い掛けて………『待て! 私に任せろ!!』 何か出来んのかぁ?」

 

阿貴は、付近の叢より枝を数本持ってきて、井桁状の小さい『祭壇』を作る。

 

その後、近くに居た自分の配下と迷吾の配下を十名並ばせ、祭壇に火を点ける。 枯れた枝の為、簡単に火が点き……勢いよく燃え上がった!

 

阿貴は、腰の剣を抜き上段に構え、呪文を唱える。

 

阿貴「…………何進なる者の妖術に従う者よ、阿貴の名において命じる! 我ら同朋を惑わす不届き者、疾くと去ね!!!」

 

─────ザッシュ!!  バサン!!

 

剣は、井桁状の祭壇を………真っ二つに切り裂かれ、左右に崩れる。

 

阿貴「これで、何進の術は破れた!! もう、奴に術など使えぬ!!」

 

これを信じた方がいいのか、疑った方がいいのか……それぞれが話し合っていると、何進の後を追っていた羌兵の一人が戻ってきた!

 

羌兵「で、伝令! 敵将何進! 急に山の上に登り、見晴らしのいいところで飯を食べ始めた模様! 至急、応援を求むと!!」

 

この伝令から話を聞き終わった阿貴は、すぐさま大声を上げた。

 

阿貴「うむっ! 私の術が何進の妖術を破ったようだ! 者共! 好機到来である!! 直ぐに向かうのだ!!」

 

『おおおぉぉ────!!!』

 

ドドドドドドドドドドッ!!

 

迷吾「氐の王よ! 驚いたぜぇ! まさか……あの術を破る方術が出来るなんてな!!」

 

阿貴「気にするな! 何進の術など、ただの惑わしの術、仙術でも方術でも有らず! 兵の士気を落とさないように、偽方術を偽方術で打ち破ったまでよ!!」

 

迷吾「…………………………」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

最後の話は、某三国志と似ていますが、終わりは全く違いますので。

 

それと、この小説にコメントを頂いた方が、他のサイトで投稿デビューされたようです。 名前が一緒ですので、その方だと思いますが、もし違ってましたらごめんなさい。

 

ですが、この小説より出来はいいです。 面白いですもの!

 

作者も応援していますので、是非、完結目指して頑張って下さい!!

 

また、次回もよろしければ読んで下さい!

 

下の話は、一刀と大友勢の再見話です。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

◆◇◆

 

【 悪いのは………の件 】

 

〖 徐州 下邳城 謁見の間 にて 〗

 

立花道雪……斜陽の大友家を支えた名将の一人。 俺の知ってる立花道雪は、入道姿の男性なんだが……何故、美小女になって目の前に居る。

 

道雪「貴方が……宗茂の佩刀を切り落とした方ですか?」

 

涼やかな瞳で、此方をみつめる道雪様。 

 

稀代の豪傑と言うより、深窓の令嬢のようなたおやかな姿。 久しぶりに着物姿の麗しい女性に、直視されると体が固まってしまう!!

 

一刀「は、はいっ! そうです! 俺が……やりました!!」

 

後ろでは剥れて(むくれて)いる宗茂様、慰めている高橋紹運様が並んでいる。

 

道雪「そうです……か。 私も宗茂より……話は伺っていたのですか……」

 

道雪様は、可愛く首を傾げて、こちらを見た。

 

ーーー

 

あの時、黄巾賊討伐戦で御息女の宗茂様と対峙、結果は……俺の負け。 

 

闘氣の刃で体調を狂わされ倒れたが、こちらも薬丸自顕流の意地にかけて、宗茂様の佩刀『波斬り』の剣先を切り落とした!!

 

今から半年以上も前の話だが………大事な御息女の佩刀を、切り落としたんだから、文句の一つも言いたくなるよな。 いや、鬼道雪だから一つじゃすまない、百か千ぐらい来るかもしれない!!

 

ーーー

 

道雪「お名前は、北郷……一刀殿で宜しいですか?」

 

一刀「はいっっっ!」

 

こんな返事をするのも、学校に通っていた時以来。 

 

道雪様の氣が少し高まり、目が細くなったと思うと……意外な言葉を発しられた!!

 

道雪「一刀殿! 誠にありがとうございます! この立花道雪、感謝に堪えません!! よくぞ、あのような素晴らしい技を御披露下さいました!」

 

一刀「すいませんでし────はっ?」

 

腰を九十度に曲げて、謝罪姿勢をとる俺の頭に、感謝の言葉が掛けられた!

 

様子を見ていた曹操軍の将達も………唖然としている。

 

道雪「宗茂は、私が厳しく教えながら育てた娘ですが、その……何ですか……殿方を蔑むところがありまして………」

 

宗茂「義母上! それは私より技量の高い者が少ない為、仕方が無い……」

 

道雪「お黙りなさい! 時と場合によっては殿方を立てる術も必要です。 特に……この世界では、殿方の力量不足が目立ち、些か増長するところがありました。 …………誠にお恥ずかしい話です」

 

一刀「………えっと、それでは……刀を斬った事の苦情申請ではなく……」

 

紹運「………天狗の鼻を叩き折ってくれて、御礼を申し上げたい! と言う話ですな! 姉上?」

 

宗茂「わ、私は天狗なぞなっていません! 強いからそれなりの態度を示しただけで!!」

 

道雪「その態度が、天狗の鼻のように増長しているのです! 御覧なさい! 貴女の嫌う殿方が、努力と鍛錬で貴女を一時的にも上回った! それが、刀の捌き方に現れたのですよ! 反省なさい!!!」

 

宗茂「そ、そんなぁ~!!」

 

一刀「は、ははは、はぁ……! 良かった…………」

 

道雪に再度怒られる宗茂を横目で確認し、心底安心したと………のちに語ったそうだ。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
9
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択