No.708135

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第195話

2014-08-12 11:22:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1590   閲覧ユーザー数:1492

 

 

同日、13:30―――

 

~ガレリア要塞~

 

―――実習中の士官学院生たちに連絡。定刻通り、軍事演習の準備が完了した。なお、演習場へは装甲車で移動する。各自速やかに格納庫に集合せよ。繰り返す―――

 

「ナイトハルト教官の声……もうそんな時間か。みんなに声をかけつつ格納庫に急ぐとしよう。」

その後格納庫に集合したリィン達は装甲車に乗り込んだ。装甲車は狭く、窮屈で……地面からの振動も激しく、鉄の棺桶のような心地をリィン達に味あわせた。そして―――外の形式が見られない状態で10分あまり揺れ続けた後……リィン達はガレリア要塞に併設された『軍事演習場』に到着するのだった。

 

~軍事演習場~

 

リィン達が軍事演習場に到着すると多くの戦車達が配置についていた。

 

「主力戦車”アハツェン”……」

「奥に見えるのは旧式戦車……軍用飛行艇まで来てるのか。」

「ノルドの地でも見かけたな……」

「―――よくぞ参った。」

配置されている兵器にリィン達が呆けた様子で見つめている中、逞しい声を持つ男性が声をかけてきた。

 

「あ……!」

近づいてきた男性を見たエリオットは驚き

「あれがエリオットの……」

「……ぜんぜん似てない。」

「あはは、髪の色はソックリみたいだけど。」

「エリオットさんはフィオナさんに似ていましたから、お母様似なんでしょうね。」

リィンは目を丸くし、フィーは静かに呟き、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、セレーネは微笑みながら言った。

 

「お疲れ様です、中将。」

一方ナイトハルト少佐はサラ教官と共に敬礼をした。

「ナイトハルト、ご苦労。バレスタイン教官だったか。お初にお目にかかる。」

「お目にかかれて光栄です。クレイグ中将閣下。本日は、士官学院のカリキュラムに協力して頂き、感謝いたします。」

「なに、将来我が軍に来るやもしれん若者たちだ。それにヴァンダイク元帥にはお世話になっているからな。して、そちらが……」

サラ教官の言葉に頷いた男性はリィン達に視線を向けた。

 

(っ……)

(何と言う眼力……)

(さすがは猛将と名高い”紅毛のクレイグ”か……)

(そこそこ強いね。)

(えーっと……)

男性の力強い眼力にリィン達がそれぞれの想いを抱えている中、エリオットは複雑そうな表情をした。

 

「よ~く来たなぁ、エリオット!」

するとその時男性は嬉しそうな表情で声を上げてエリオットを見つめた。

「へ……」

「!?」

「え、えっと……?」

突如豹変した男性にマキアスは呆け、フィーは驚き、セレーネが戸惑ったその時男性はエリオットにかけよって笑顔で抱きしめた。

 

「半年ぶりか~、元気だったか!?写真では見ていたがなかなかカッコイイ制服じゃないか!」

「ちょ、ちょっと父さん……」

「むむ、まだまだ筋骨隆々には程遠いな……ううむ、天使のようなエリオットにこのままでいて欲しくもあるが……だが―――帝国男子として逞しく育って欲しいのも事実ッ!涙を呑んでお前を士官学校に入れた父さんの漢気をわかってくれい!」

「苦しい、苦しいってば……!」

男性に力強く抱きしめられているエリオットは悲鳴を上げた。

 

「……えっと。」

「なにあれ。」

その様子を仲間達と共に冷や汗をかいて見守っていたリィンは戸惑い、エヴリーヌは呆れ

「聞いていたのと激しく違うんですけど……」

「そ、そうですね……」

「え、えっと、家族思いな素敵な御父上のようですね……」

ジト目のアリサの言葉にエマは戸惑いの表情で頷き、セレーネは苦笑し

「わはは!楽しいオッサンだなぁ。」

クロウは声を上げて笑った。

 

「ハア……」

「ふふ、楽しい上官をお持ちのようですね?」

溜息を吐いて片手で顔を隠すナイトハルト少佐の様子を見たサラ教官は口元に笑みを浮かべて見つめ

「……言葉もない。」

ナイトハルト少佐は肩を落として答えた。

 

「もう、いい加減にしてってば!フィオナ姉さんに言いつけるよ!?」

「ハッ……!えー………それはともかく。帝国軍・第四機甲師団司令、オーラフ・クレイグ中将だ。本日の合同軍事演習の総指揮を任されている。以後、見知りおき願おう。」

そしてエリオットの口から自分にとって最も恐れる存在の人物の名前が出ると男性―――クレイグ中将は一瞬でエリオットから離れて威厳を持ってリィン達に自己紹介をし、クレイグ中将の豹変っぷりにリィン達は冷や汗をかいた。

 

「こ、こちらこそ……」

「よ、よろしくお願いします……」

(凄いお父さんだな……)

(はあ、言わないでよ……)

アリサとマキアスは戸惑いの表情で答え、リィンに視線を向けられたエリオットは肩を落とした。

 

「さて―――簡単に説明しておこう。本演習は”実戦”を想定した機甲師団の総合演習である。主力である戦車部隊を中心に歩兵部隊、装甲車部隊、軍用飛行艇が高度に連携―――機動力を活かして敵目標群に壊滅的な打撃を与えるものとする。目標群としては、旧式戦車を使用。自動操縦による回避、反撃も行うが、それらにはペイント弾を使用する。ただし―――それ以外の演習部隊は全て実弾を使用する。」

「……!」

「実弾……実際に破壊するわけですか。」

クレイグ中将の説明を聞いたアリサは表情を引き締め、ラウラは真剣な表情になった。

 

「フッ……そうでなくては本格的な演習とは言えぬからな。現在、14:00―――うむ、定刻通りだな。」

そしてリィン達は軍事演習の見学を始めた。

 

「――これより本日の合同軍事演習を開始する!第四、五機甲師団共に順次作戦行動を開始せよ!帝国と、帝国軍に栄光あれ!―――それでは始め!」

「イエス・サー!」

クレイグ中将の号令に兵士達はそれぞれ敬礼をして答えた。

「第五機甲師団、戦車部隊前進!装甲車部隊と歩兵部隊は後に続け!」

「第四機甲師団、戦車部隊、歩兵部隊共に前進!装甲車部隊は左右に展開せよ!」

そして”アハツェン”の軍団は軍用飛行艇と連携して旧式戦車の部隊を圧倒し始めた!

 

「……………」

「……すっごいねー。」

「こ、これが……」

「近代戦―――機甲師団の破壊力というものか……」

「恐ろしい威力ですね……」

軍事演習を見学していたガイウスは真剣な表情になり、ミリアムは呆け、エマとマキアスは驚き、セレーネは不安そうな表情をし

「……くっ……」

ユーシスは唇を噛みしめて見守っていた。

 

「あの戦車……”アハツェン”といったか。」

「ええ、ラインフォルトで2年前に開発された主力戦車……スペックは知ってたけどまさかここまでだったなんて……」

ラウラに尋ねられたアリサは複雑そうな表情で説明をし

「大陸でも最強の重戦車かも。」

「あんなんが、正規軍には数百台も配備されてんだろ?正直、やってらんねーよな。」

フィーとクロウはそれぞれ真剣な表情で答えた。

 

「……正面からやり合ったら太刀打ちできないでしょうね。国外にしても、国内にしても。」

「つまんな。あんな玩具の砲撃、エヴリーヌなら余裕で防げるけど?あれなら魔導兵器の砲撃の方がもうちょっと威力を出せるよ。」

サラ教官の推測を聞いたエヴリーヌはつまらなさそうな表情で答え

「お、”玩具”って……」

「……今のを見たらどう考えても生身で”アハツェン”の軍隊とまともにやり合えないと思うぞ?」

エヴリーヌの発言を聞いたアリサは表情を引き攣らせ、ラウラは真剣な表情で忠告し

「くふっ♪この後、見せてあげるよ。エヴリーヌ―――”魔神”には人間が作った”兵器”は通用しないって事を。」

忠告されたエヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべて答えた。

 

「……はは……どうしてもダメだなぁ……大砲の音を聞くだけで何だか震えが来ちゃって……」

「……無理しなくていいさ。この音に慣れるということは……何かを失くす事でもあると思う。」

「……リィン……」

(……これも”力”か……)

エリオットに慰めの言葉をかけたリィンは突如ドクンと振るえた胸の部分を抑えながら演習を見守っていた。

 

その後演習は終わり、ついにエヴリーヌとベルフェゴールが”魔神”の力を見せつける時が迫り、エヴリーヌとベルフェゴールは生身で”アハツェン”と軍用飛行艇の部隊と対峙していた。

 

 


 
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