No.706377

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第179話

2014-08-05 15:14:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1612   閲覧ユーザー数:1489

 

 

 

その後課題を終えたリィン達は支部に戻って書類整理をした。

 

~夕方・遊撃士協会・レグラム支部~~

 

「あ、そちらは終わりました?」

「ああ、ようやく片付いてきたところだ。」

「やれやれ、なかなか骨が折れたな。」

「書類の量が凄かったですものね……」

疲れた表情で溜息を吐いたラウラの言葉にセレーネは頷いた。

 

「すー、すー……」

「むにゃむにゃ……」

「このガキ共は……二人揃ってのんびり昼寝とはいいご身分だな。年下のセレーネですら、手伝っているというのに。」

ソファーで眠っているミリアムとエヴリーヌをユーシスは睨んだ。

 

「あはは……地味な作業ですし仕方ないですよ。それに、こちらもそろそろ終わりそうですから。」

「はは、そうか。それにしても……改めてトヴァルさんの凄さがよくわかるよな。こういった雑用も依頼も、全部一人で回してるんだろう?」

「ああ、その上で他の地方にまで顔を出しているのだから恐れ入る。そのフットワークと解決能力はさすが遊撃士と言った所だろう。」

「撤退した今もなお、精力的に活動されてるみたいですね。私達をバリアハートで助けようとしたそうですし……膨大な記録を見るだけでも、人々からとても頼りにされてるのがわかります。」

「ふむ……確かにな。………」

リィン達のトヴァルへの評価にガイウスは頷いた後考え込んでいた。

 

「……どうした?」

「何か気になる事でもあるのですか?」

ガイウスの様子を見たユーシスとセレーネはそれぞれ尋ねた。

 

「いや……少し思ったのだが。”遊撃士”というものは、やはり必要なのではないか?」

「それは……」

「……確かにそうかもしれない。単純に治安維持以外のサービスだけじゃない……”民間人の保護”を第一とする彼らの精神には、ある意味高潔さすら感じられる。」

「あ、それはわたくしも思いました。”民の騎士”と言ってもおかしくないと思います。」

ガイウスの意見にエマが複雑そうな表情をしている中、リィンとセレーネはそれぞれ頷いて答えた。

 

「……高潔さに民の騎士、か。今の貴族が失いつつあるものかもしれんな……」

二人の意見を聞いたラウラは重々しい様子を纏って考え込み

「いや……一概には語れんだろう。ギルドはあまりにも理想的すぎる。公的援助や寄付金などで維持・運用費を賄うだけでは限界もあるはずだ。『今の帝国から排除されるのも当然だったと言えるだろう』―――……いつか兄上もそんな事を言っていた。」

ユーシスは静かな表情で語った。

 

「ユーシスさん……」

(お兄さんのことが気になっているみたいだな……)

「……なるほど。そういう見方もあるか。」

「どうしても冷たい物言いに聞こえてしまうが……あの御仁の言葉となると重みが違ってくるな。」

そしてリィン達がそれぞれ考え込んでいるとミリアムとエヴリーヌが呑気に寝言を呟いた。

 

「むにゃむにゃ……いいんちょのおっぱいおっきいね~……えへへ………ふかふかだ~……」

「すー……すー……エヴリーヌは……絶対プリネとの結婚を……認めないんだから……!」

二人の寝言を聞いたリィン達は脱力した。

「ミ、ミリアムちゃん……!?」

「えっと、もしかして夢の中でレーヴェさんに出会っているのでしょうか?」

「あ、ああ、多分な。」

エマは顔を赤らめ、セレーネとリィンは苦笑し

「……このガキ共は……」

ユーシスはジト目で呑気に眠っている二人を睨んだ。

 

「コホン、えっと……」

「ふふ、とりあえず書類整理も一通り片がつきそうだ。そろそろ戸締りをして子爵邸に戻るとしよう。」

「ああ、そうだな。」

そしてリィン達が戸締りをしようとしたその時、扉が勢いよく開かれた。

 

「す、すみません!誰かいませんか!」

「おや、そなたは”ワトー商会”の……」

支部に入ってきた娘を見たラウラは目を丸くした。

 

「ああっ、ラウラ様!?あ、あのっ!トヴァルさんか、セリカ様達のどなたかはいませんか!?」

「トヴァルさんなら今は出かけて、セリカ殿達は遊撃士の仕事の関係で留守にしていて、そろそろ帰ってくると思うけど……」

「……何かあったのか?」

「ア、アイツらが帰ってこないんです……――ユリアンとカルノが”お城”から帰ってこないんです!」

血相を変えた娘が声を上げるとリィン達も血相を変えた。

 

「そ、それって……」

「”お城”という事はまさか……」

「”ローエングリン城”のことか!?まさか……子供たちだけで湖に出てしまったのか!?」

町の子供達が湖に出た事にラウラは血相を変えて尋ねた。

 

「は、はい……『冒険に行くんだ』って、ボートで勝手に……ぐすっ、夕方になってもぜんぜん帰ってこなくて……!」

「……どうやら由々しき事態のようだな。」

「ああ、その上トヴァルさんやセリカ殿達も不在の今……とにかく、俺達で出来る限りの事をしてみるしかない。」

「そうだな……ただ待っているわけにもいかないだろう。」

「湖を探すとしたら代わりのボートが必要だな。すぐに爺に連絡して手配させよう。」

「私、その間にミリアムちゃんとエヴリーヌさんを起こして一端町の中を探してみますね!」

「あ、わたくしも手伝います!」

「フン、全員で手分けするか。」

話を聞き終えたリィン達は子供の捜索をする事を決めた。

 

「よ、よろしくお願いします!」

「ああ、ひとまず我らに任せておくといい。」

その後、リィン達は手分けして町の中をくまなく探したが、やはり子供達の姿はなく……やがて町の人々が騒ぎに気付く頃には、夜も更けてしまうのだった。

 

 


 
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