『友との約束』

荒い息と共に、その男は力無く笑った。

視界は霞み、よろよろと立っているのが精一杯と言う状況の中で。

退路は断たれた。

生きて帰れる保証は皆無だ。

彼の軍の、どのくらいの連中が生き残っているのか…

血だらけの手で剣を握りしめ、それでも男は戦い続ける。

狂ったように笑い、叫びながら相手の首に剣を振り下ろす。

その様子に、優勢な筈な相手の兵士もたじろいでいる。

『こんな酷い世の中なんだ。せめて、お前だけは笑って生きてくれよな』

それが、旧友と交わした約束。

男は戦う。

血だらけの腕を振い上げながら。

男は戦う。

狂ったように笑い、叫びながら。

それが、男が旧友と交わした、たった一つの約束だから。