No.702114

外史を駆ける鬼・戦国†恋姫編 プロローグ

どうもこんにちは。

いや、今の時間帯ならこんばんはなのか?
まぁいいや、どうもザイガスです。
前々から思っていたのですが、このTINAMIのサイト、戦恋小説が少なすぎないか?っと思っていたのですよ。

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2014-07-20 01:17:09 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1772   閲覧ユーザー数:1636

外史を駆ける鬼・戦国†恋姫編 プロローグ

鳥や動物の鳴き声程しか聞こえない森林の中、そこにいくつか浮かぶ影があった。

その影の数は数で言えば20あまりと言ったところであろうか、一つは必死に先頭を走り、もう一つはその先頭を追いかけている感じである。

「……くっ、一体なんなのよ!!」

そんな愚痴を零した先頭を走る影を観察してみると、頭から首元にかけて黒布を巻き、胸の方には豊かな膨らみが二つ程ついていることを見るに、女性であろう。

胸元の谷間が露出している紫の服を着て背中に『()』の一文字がある。

腹部や最低限の防具を付けており、下半身は擦れることのない動きやすさを追求した膝下までの短いパンツ、いやズボンというべきか、その生地の下に少し穴の大きさが大きい網目状のタイツでも履いているのか、それらしきものが膝から見えている。

跳躍力を重視してか、足下の足袋はしっかりと結ばれているが、しかし長時間走り続けているせいか、足の親指と人差し指より僅かであるが血が滲み始めている。

そんな女性の格好を見て判断するからに、彼女は忍びであろう。

だが先程述べた胸の谷間のことであるが、くノ一であれば男を籠絡させる為に房中術を使うことがしばしばあるために、そういう露出が多い格好をするくノ一も多々いる。

しかし彼女の膝から出ていた網目状のタイツ、よく見るとそれは胸元の露出している部分からも見えていた。

恐らくであるが察するにこれはタイツではなく、鎖帷子ではなかろうか。

網目状の穴が大きいのは、よく織り込まれ、伸ばしている証拠だと思う。

また、胸の露出があるのは、男を籠絡させる目的ではなく、ただ単に胸が収まりきれないだけであろう。

彼女の名前は加藤段蔵。

女性の名前で『段蔵』というのは些か疑問が残るであろうが、それにはキチンとした理由がある。

加藤家の源流は常陸国、今の茨城県である。

常陸忍者の棟梁である加藤家では、代々その一族の長には『段蔵』の名が受け継がれ、彼女は第2代目加藤段蔵である。

本来正史で語られる段蔵は優れた忍びであり、かの有名な上杉謙信や武田信玄も彼を重宝したが、戦国時代、一番有名と言っても過言でない服部半蔵の様に、名が現代まで残ることは無かった。

それは何故か。

段蔵は優秀過ぎた。

優秀過ぎるがゆえにその才をまず最初に恐れた上杉謙信が、彼を暗殺しようとした。

しかし彼は難を逃れ武田信玄に仕えたが、信玄もまた彼を恐れて、重臣である馬場信春に命じて彼を殺した。

この世界の加藤段蔵も正史と違い女性であるが、その才を恐れられて謙信と信玄に追放をくらっている身分である。

才あるものは才に溺れるとある典型的な形であり、彼女は自分の主であった謙信や信玄に対して懸命に仕えたのだが、「胡散臭い」や「何か裏がありそう」などと怪しまれて追放されたのだ。

そんな誰かに仕えることに嫌気をさして、彼女は彼女で気ままに生きるために、浪人忍者として各地を回っていた。

仕事があれば引き受け金を貰う。

そんな感じの生き方も悪くないと捉え始め、彼女はある依頼を引き受けて山に入った。

その依頼とは、その山付近で奇怪な物怪が出ると言うものであり、その調査であった。

彼女は元来、自分の見たものしか信じないたちで、鉄砲が日の本の国で流行り始めた頃も三十間(さんじゅっけん)(約50メートル)先までの的を撃ち抜くその有効性を直に目の当たりにするまで鉄砲の力を信じなかった。

勿論今回もそんなものなどいるわけがないと思い調査に向かった。

調査の対象はとある山小屋であり、その山小屋に物怪は出入りしているらしい。

段蔵は辰の刻(8;00時)頃より、こちらからは見晴らし良く、向こうよりは見にくい木の上で張り込みを始めた。

張り込みを始めて二刻半(五時間)程、忍びといえど食料は必要な為、しばしの腹ごしらえの後、彼女は張り込みを続けた。

結局その日は何の動きも無かったので、彼女は少し場所を移して睡眠を取り、一刻(二時間)たったあたりで元場所に戻った。

そんな作業を1週間続け、依頼期間の最終日となった。

今日何も無ければ、段蔵はこの退屈な仕事より解放されて、依頼金を貰い受けてそのままお役御免であったが、夜中の寅の刻(4;00)。

あいも変わらず森には秋の季節を表現する鈴虫の鳴き声と、梟の鳴き声しか聞こえてこない。

夜食の鼠をかじりながら早くあと期間のまでの二刻(四時間)たたないものかと待ち望んでいると、急にあたりの空気が変わった。

鈴虫や梟の声は消え辺りは物々しい空気に変わったとき、段蔵は腰からクナイを抜き取り戦闘態勢に入った。

張り込み地点である小屋の方向より、何か重々しい足音と小枝が折れる音が小屋の近くより聞こえてくる。

息を殺して注目していると、獣道をかき分けて、何か大きな物体が進軍してくるのが見えた。

そこには七尺(約200~210cm)はあろう化物が数匹小屋に向けて進軍していた。

その化物が抱えているのは、既に殺されて虚ろな目になった男や、生きたまま囚われた村娘らしい姿が見えた。

人間の方は死体を含め30体と言ったところであろうか。

娘達は縄に縛られ木に結ばれた。

物怪は集めた死体に群がって、皆でその人間の死体を喰らい始めた。

腕や頭、肉体から引きちぎられて飛び出た内蔵、骨でさえも残さずに喰らい尽くした。

僅かに生きていた男達はそのまま絶叫のままに捕食されるか、何か怪しげな者を飲まされ、そんな宴を終えたのか、物怪たちは満足したかのように口のヨダレを拭うと、次に攫ってきた娘たちを犯し始めた。

遠目からでも見える物怪のソレは人間の男のソレは明らかに違い過ぎ、物怪は娘達の秘所にソレを無理に押し込んだ。

忍びであるが故、いくつもの戦場の乱取りにて兵士が女を強姦しているのを見かけている為、強姦自体はさほど珍しいものではないのだが、それでも見るのも(おぞ)ましき物怪が、女性を強姦していることなど見たこともないので、その光景に彼女の顔の血の気は引いていた。

彼女は以前より、こんな噂を耳にしており、日の本の畿内を中心に、鬼が出るという噂だ。

彼女が今いる武蔵国(むさしのくに)(今の東京)は、畿内から比べてそれなりに距離があるはずなのだが、何故こんな所に”鬼”がいるのかわからなかったが、依頼の目的はこれで十分である。

ここから離れようとした時、彼女の肩にマムシがスルリと近づいてきたのだが、それをクナイで一突きし、絶命を確認した時に改めて鬼の方向を見ると、数匹の鬼がこちらの場所に気付いていた。

自身の中で「何故バレた!?」と自問自答しながらも、彼女は急いでその場を離れる。

彼女はその高い身体能力・技術故に、『(とび)加藤』と称されており、逃げる際その高き身体能力で、木から木へと鳥が滑空(かっくう)するように跳び、鬼との距離を大分伸ばし、後ろから鬼が来ていないことを確認すると、彼女は地面に降り立った。

懐より巻物を取り出すと、書かれている文字の上を筆でなぞり消す。

今回彼女の所に来た依頼は鬼退治ではなく、調査である。

命あっての物種であり、あのような奇怪な物怪の相手をするのに、これだけの報酬じゃ安すぎた。

とっとと帰路に付き、依頼主より報酬を頂こうと思った時、後ろより何かの気配に気付き、咄嗟に身を屈めると、後ろより小さな鎌が飛んできて、直ぐに目の前の木に刺さったのだ。

直ぐに後ろを振り向くと、金色に光る眼光が闇夜の林から見え、先程見かけた鬼が後ろに立っていたのだ。

鳶加藤と言われる自分の能力を過大評価しているわけではないが、それでも常人より優れた身体能力を持つ自分に追いついてくるのは、既に相手は人より優れた能力を持っていることの現れであろう。

長き爪を持ち、常人では計り知れない大きすぎる肩幅を持ち、何といってもその牙は、人間の骨ごときなら直ぐにでも噛み砕く様な大きさである。

彼女は逃げた。

追いつかれれば先程の娘たちの様に、自分も犯され、最後には捕食されるのだろうと思いながら、だが鬼たちは疲れることを知らず、徐々に段蔵を追い詰めていく。

やがて段蔵は一つの岩に足を取られて転倒してしまう。

普段であれば絶対にやらかさないようなことをやってしまうとは、彼女の心に余裕がない証拠だが、彼女は立ち上がり再び逃げようとするが、足が言うことを聞いてくれなかった。

自身の足を見ると、逃げる際走りすぎたせいで足のマメは潰れ、右足は転倒した拍子にくじいてしまったのか、足に激痛が走る。

やがて鬼たちが動けない自分をジリジリと囲み出した。

「……いやっ」

そんな言葉が出てきてしまう。

鬼たちは自ら股間についたソレをこれ見よがしに見せつける。

彼女もかつて『段蔵』の名を継ぐ前は、商人である鋳物師の夫がいた。

自分が忍びあるにも関わらず、彼は自分を愛してくれて、やがて二人は結ばれた。

『段蔵』の名を継いだあとも変わらず暮らしていたのだが、夫は流行病により早世してしまった。

そんな夫とも勿論閨を共にし、男のソレに関してもそれなりに知識はあるが、だが目の前の怪物のソレは明らかに愛しき夫のソレとは違っていた。

「いやぁぁぁぁっ!!来ないで!!近寄らないで!!」

そう物怪に叫ぼうとも、奴らは辞めることはない。

自分の服が破かれ、秘所が丸出しになって物怪のソレが自らの秘所に入り込もうとしたとき、彼女は心の中で叫んだ。

【誰か助けて!!】

目を瞑り次に来る痛みを想定してしまったが、いつまでたっても痛みは来なかった。

むしろ何かが自分にかかっている様な感じである。

恐る恐る目を開いて確認すると、目の前の物怪のソレは無残に切り落とされ、物怪のソレは地面に転がっていた。

さらに上を眺めると、鬼の頭も綺麗に切り落とされ地面に転がっており、頭なしの物怪の体からは股間と頭より大量の血液が吹き出している。

周りにいた鬼の頭も綺麗に切り落とされており、彼らは絶命しドンドンと体は後ろに倒れていった。

そして段蔵の視線の先にいた者は、赤い奇怪な篭手を付けた、金色の目をした者の姿であった。

 


 
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