No.699032

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第136話

2014-07-07 00:29:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2606   閲覧ユーザー数:2369

 

~飛行船内~

 

「―――それでは私達が向かう実習地――――”メンフィル王公領セルノ・バルジア統合領”の中心都市に当たる”レティカ”について説明しますね。」

「よろしく頼む。」

「ん。」

「お願いします。」

一方B班のメンバーはプリネから説明を受けようとし、プリネの言葉にガイウスやフィー、エマは頷いた。

 

「”統合領”だと?」

「まさか……元は他国だったのか?」

一方プリネの言葉が気になったユーシスは眉を顰め、ラウラは尋ねた。

「ええ。というかメンフィルは元々国としては小さかったのですが、とある戦争がきっかけで他国の制圧や同盟によって次々と吸収して、今に到るんです。」

「”戦争”ですか……?」

プリネの説明を聞いたエマは不安そうな表情で尋ねた。

 

「――――”幻燐戦争”。当時の”メンフィル王国”に反旗を翻したお父様がメンフィルの王となった数年後に起こったレスペレント地方全土を巻き込んだ戦争です。」

「そう言えば以前、メンフィルはリウイ陛下の反乱によって建国され、その後に起こった戦争で全ての国に勝利して今に到ると言っていたな……」

「…………という事は戦争が起こったきっかけは国として若いメンフィルを狙った事が原因なのか?」

プリネの話を聞いたユーシスは頷き、ある事が気になったラウラは尋ねた。

 

「いえ。当時レスペレント地方に存在していた大国――――”カルッシャ王国”の陰謀がきっかけで起こった戦争です。そして元々内乱によって国が別れた事によって険悪な仲であった”セルノ王国”と”バルジア王国”もその戦争に巻き込まれ、カルッシャ王国の支援を受けたバルジア王国のセルノ王国侵攻をきっかけに、当時バルジア王国との和解を望んでいたセルノ国王の妹であり、後にお父様の側室の一人となった女性――――ラピス・サウリン王女が劣勢となったセルノ王国を救う為にメンフィル王国に救援を求めた事がきっかけで、メンフィルはセルノ王国を救援後バルジア王国に侵攻して勝利後様々な経緯があり、セルノ王国とバルジア王国もメンフィルに統合される事になり、二つに分かれた国が再び一つになった領なんです。そして”レティカ”は元々セルノ王国の王都だった都市なんです。」

「へえ。じゃあわたし達が行く実習地は元々他国の王都だったんだ。」

「一つ疑問がある。何故そのラピス王女とやらはメンフィルに救援を求めたのだ?話を聞く限り元々メンフィルとは何の関係もなかったように聞こえるが……」

実習地の事を知ったフィーは目を丸くし、ユーシスは不思議そうな表情で尋ねた。

「ラピス王女はかつて幼い頃に出会ったお父様の父親―――グラザ様の息子であるお父様を頼って護衛もつけずにメンフィルに単身訪ねたと聞いております。」

「お、王女様が護衛もつけずに一人で……ですか……?」

「下手をしたら人質にされて、政治に利用される可能性もあったというのに、随分度胸のある姫君だな……」

「そしてメンフィル……いや、リウイ陛下は会った事もないラピス王女の救援に応えるとは随分懐が広い方なのだな。」

プリネの話を聞いたエマは信じられない表情をし、ラウラは驚き、ガイウスは静かな笑みを浮かべた。

 

「フフ……―――ちなみに今の領主はラピス王女とお父様の娘であり私の腹違いの姉―――アリア・サウリン・マーシルンとバルジア王国王女にしてお父様の側室の一人になったリン・ファラ・バルジアーナ王女とお父様の息子にしてアリアお姉様の夫―――グラザ・ファラ・マーシルンによって治められ、二人の子供達には”ファラ・サウリン”の名前が付けられているんです。」

「……という事はオレ達が向かう実習地の領主はプリネの姉と兄なのか……」

「”ファラ・サウリン”だと?確かその名前は……」

「”ブレイサーロード”の貴族としての家名だね。」

説明を聞いてある事に気付いたガイウスは目を丸くし、ユーシスは眉を顰め、フィーは静かに呟き

「そ、それに……どうしてメンフィルが侵略して制圧した国の王女様がリウイ陛下の側室になっているんですか……?」

「恐らく政略結婚だろうな。リン王女は敗戦した祖国を守る為にリウイ陛下に嫁いだのだろう……」

戸惑いの表情をしているエマの疑問にラウラは静かな表情で答えた。

 

「確かに普通に考えたらそう見えますよね。ですが、リン王女はラピス王女同様お父様の事を一人の女性として愛していたと聞いています。というか、お父様の側室、愛人は全員女性としてお父様を愛していたと聞いていますし、それぞれが産んだ子供達も差別される事なく立派に育てられ、メンフィル帝国の為にそれぞれの道を歩んでいます。」

「そ、そうなんですか……?」

「フフ、それ程多くの女性に愛されるとはリウイ陛下の”器”はよほど大きいのだろうな……」

プリネの答えを聞いたエマは目を丸くし、ガイウスは静かな笑みを浮かべ

「それで何故”ブレイサーロード”の家名がその二人の王女の子供達の家名と同じなのだ?」

「そうですね……まずは”転生”について説明しないといけませんね……」

ユーシスの疑問を聞いたプリネはディル・リフィーナの常識――――死した者はいつか必ず生まれ変わる”理”を説明し、エステルはラピス王女とリン王女の生まれ変わりで、”執行者”によって謎の睡眠状態に陥った自分とイリーナを救った事を功績とされ、ミントと共に爵位を与えられた事を説明した。

 

「て、”転生”ですか……」

「死した魂はいつか生まれ変わる……伝承にもあるが、本当にあったのか……」

説明を聞き終えたエマとガイウスは驚き

「ちなみに”黄金の百合”が貴族の爵位を与えられた理由は何なの?」

ある事が気になったフィーは尋ねた。

 

「ミントはエステルさんの”パートナードラゴン”ですから、常に傍でエステルさんを守り、遊撃士でもありますから民を守る存在です。その事から常に民の為に戦った伝説の聖騎士であり、お父様の側室の一人でもあったシルフィア・ルーハンス様の家名―――”ルーハンス”の爵位を与えられたと聞いています。」

「伝説の聖騎士……それはかの”槍の聖女”リアンヌ・サンドロッド卿のような存在なのか?」

「ええ、似たようなものですね。ちなみにシルフィア様の息子が現メンフィル皇帝であるシルヴァンお兄様になります。」

「……何?シルヴァン陛下が側室の息子だと?正妃が産んだ子供は皇位を継がなかったのか?」

ラウラの質問に答えたプリネの話を聞いたユーシスは眉を顰めた後不思議そうな表情で尋ねた。

 

「正妃――――初代イリーナ皇妃は事故で子供を産まずに若くして亡くなられましたから、初代イリーナ皇妃の子供はいないんです。」

「”初代イリーナ皇妃”?」

「わたしたちが出会った”聖皇妃”じゃないの?」

プリネのある言葉を聞いて気になったラウラは首を傾げ、フィーは尋ねた。

「正確には違いますが、今のイリーナ皇妃は”初代イリーナ皇妃”の生まれ変わりですから、ご本人と言ってもおかしくないですね。」

「ええっ!?じゃ、じゃあ今のイリーナ皇妃は長い年月をかけて生まれ変わって、再びリウイ陛下と出会って、結ばれたんですか……!?」

「まるでおとぎ話のような話だな……」

プリネの説明を聞いたエマは信じられない表情をし、ガイウスは目を丸くし

「―――なるほどな。”クロスベル自治州”の議長を務めているマクダエル議長の娘であるイリーナ皇妃がリウイ陛下の正妃になれたのはそれが一番の理由なのだな?」

ある事を察したユーシスは尋ねた。

「ええ。ちなみに今のイリーナ様はある出来事で”神格者”になりましたから、ずっとお父様と共に生きていけるようになったんです。」

「”神格者”?何それ??」

プリネの説明を聞いたフィーは首を傾げ、プリネは”神格者”について説明した。

 

「い、異世界にはそんな存在までいるんですか……」

「つくづく思っていたが異世界は非常識と伝承だらけの世界だな……」

「”神話”の世界と言ってもおかしくないのではないか?」

説明を聞き終えたエマは表情を引き攣らせ、ユーシスは呆れた表情で呟き、ガイウスは考え込みながら呟き

「そう言えば”聖皇妃”に会った時に気になったんだけど、隣にいたメイドって”聖皇妃”のお姉さんか妹?」

「確か……エクリア殿だったか。イリーナ皇妃と非常に容姿が似ていたが……」

「エクリア様ですか?えっと、エクリア様には色々と事情がありまして。実は―――――」

フィーとラウラの疑問を聞いたプリネはエクリアの事とイリーナの関係を説明した。

 

「ええっ!?イ、イリーナ皇妃の姉にして元敵国の将軍で女神の力を受け継ぐ”神格者”ですか……?」

「敵国の王女……それも姉が妹のメイドを務める等普通に考えてありえんぞ。……ん?”エクリア・フェミリンス”?まさか――――」

「”ブレイサーロード”達と一緒にいるフェミリンスって名前の女神と関係があるの?」

説明を聞いたエマは驚き、ある事に気付いたユーシスは信じられない表情をし、フィーは静かな口調で尋ねた。

「ええ。フェミリンス様の力を一番強く受け継いでいる方がエクリア様で、エクリア様やエクリア様の親戚筋に当たる私達はフェミリンス様にとって子孫に当たりますね。」

「つまりプリネやリウイ陛下達は”女神の子孫”という事になるのか……」

「まさかオレ達の身近な所に”神”の血を引く人がいるとは思わなかったな……」

プリネの説明を聞いたラウラとガイウスは驚きの表情でプリネを見つめていた。

 

「アハハ……――ちなみにエクリア様がかつてカルッシャ王国の将軍であった時は、王女の身分でありながら将軍職を務めていた事から”姫将軍”の異名で有名だったそうです。剣術は達人クラス、魔術はフェミリンス様の力を受け継いでいる影響で凄まじい魔力をその身に秘め、まさにフェミリンス様の力を受け継ぐ者として相応しい方ですよ。お父様には及びませんが、少なくともファーミシルス大将軍と互角か、下手をすればそれ以上の腕前を持っています。」

「”姫将軍”……」

「あの”空の覇者”と名高いファーミシルス大将軍と互角かそれ以上とは……」

「あのメイド、そんなに強いんだ。」

苦笑しながら答えたプリネの話を聞いたガイウスとラウラは呆け、フィーは目を丸くし

「ええ。エクリア様が本気になれば、国一つ滅ぼす事も容易いと思われます。」

「た、たった一人の人間が国一つを滅ぼす……ですか……」

「さすがは女神の力を受け継ぎし者と言った所か……」

「普通に考えたらありえないけど、フェミリンス自身の強さを見ていたら納得かも。”アハツェン”の砲撃を易々と防いでたし。」

プリネの答えを聞いたエマは表情を引き攣らせ、ガイウスは真剣な表情で考え込み、フィーは静かに呟き

「それ程の人物が一体何があって、メイドになったのかが全く理解できんぞ……」

「アハハ……まあ、色々とあったんですよ。」

疲れた表情で溜息を吐いたユーシスの言葉を聞いたプリネは苦笑していた。

 

その後飛行船はリベールの王都”グランセル”に到着した…………

 

 

 

 


 
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